goo blog サービス終了のお知らせ 

竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

蛤のふたみにわかれゆく秋ぞ (松尾芭蕉)

2018-08-26 | 


蛤のふたみにわかれゆく秋ぞ (松尾芭蕉)
      蛤=はまぐり

行く秋 季語の意味・季語の解説
==============================
 冬が迫り秋が滅びゆく様子、あるいはその時期を表わす季語。
 ほかの晩秋の季語、例えば、秋深し、秋寂ぶ、暮の秋などに比べ動的で、季節の移ろいをとりわけ強く感じさせる。

 晩春の季語「行く春」と同様に、過ぎゆく季節への惜別の情を抱かせるが、寂寥感は「行く秋」の方が強い。
 芭蕉は『おくのほそ道』の旅の終わりに、美濃の大垣で次の一句を詠んでいる。

  。

 この句は、大垣の人々と別れ伊勢の二見浦(ふたみがうら)へ旅立つ際の「惜別の情」を、「ゆく秋」という季語に託して表現している。
 なかなか分かれたがらない蛤の「ふた(蓋)」と「み(身)」が分かたれるように、名残を惜しみながら人々と別れゆくという句意であるが、「蓋・身」と「二見」がかけられていて機知に富んだ作品である。

 ただ、この句を、「おくのほそ道」の旅を締め括るにふさわしい、味わい深い一句としているのは、「行く秋」という季語の持つ寂寥感であると私は思う。

31秋の季語・時候・行く秋(デジカメ).jpg
        デジカメ写真


季語の用い方・俳句の作り方のポイント
==============================
 行く秋と言う季語は、俳句を鑑賞する者に、過ぎゆく秋への惜別の情を抱かせます。
 そして滅びゆく秋の寂寥感を感じさせます。
 さらには、その年の秋に観た風景、感じた思いなどを走馬灯のように脳裏に蘇らせます。

 ですから、行く秋と言う季語は、目に映った何かさりげないものと取り合わせてやるだけで、しっかりと心に沁みる一句を成り立たせます。 

  行く秋や手をひろげたる栗のいが (松尾芭蕉)

  行く秋や抱けば身に添ふ膝がしら (炭太祇)

  火ちらちら秋も行くなり峰の堂 (加藤暁台)

  長き藻も秋行く筋や水の底 (黒柳召波)

  行く秋やどれもへの字の夜の山 (小林一茶)

  行く秋や書棚の隅の砂時計 (凡茶)


参照  http://haiku-kigo.com/category/7337841-1.html


牛部屋に蚊の声闇き残暑かな (松尾芭蕉)

2018-08-25 | 




牛部屋に蚊の声闇き残暑かな (松尾芭蕉)


 残暑 季語の意味・季語の解説
==============================
 立秋(8月8日頃)を過ぎても、なお残る暑さのことを残暑と言う。

 多くの俳句歳時記が、残暑の副題に秋暑(しゅうしょ)を挙げているが、残暑という季語と秋暑という季語の持つ印象は、少し異なっている。

 残暑と聞くと、暦の上では秋になった地上に、べったりと貼りつくように居座っている「夏の暑さ」を連想する。

 一方、秋暑と聞くと、どこか弱さというか、儚さのようなものを帯びた、「秋らしい暑さ」を連想する。

 俳人である以上、これらの使い分けを楽しんでみたい。

 なお、餞暑という副題には、やがて衰えてしまう暑さを惜しむ気持ち、過ぎゆく夏を見送る気持ちがこもる。



季語の用い方・俳句の作り方のポイント
==============================
 「残暑」という季語からは、秋になったにもかかわらず、べったりと貼りつくように居座る「夏の暑さ」を連想します。
 ゆえに、この季語を用いて俳句を作る場合は、「しぶとい暑さ」を感じさせるような一句にしたいと思います。

  牛部屋に蚊の声闇き残暑かな (松尾芭蕉)
      
  かまきりの虚空をにらむ残暑かな (立花北枝)

  城裏に床屋匂へる残暑かな (凡茶)

  網棚に味噌忘らるる残暑かな (凡茶)

 「秋暑(しゅうしょ)・秋暑し(あきあつし)」という副題は、暑さの中にある、秋らしいささやかな涼しさを感じさせる季語です。
 ですから、秋暑という季語を用いて俳句を作る場合は、夏の暑さにはない「弱さ」「儚さ」を一句の隠し味にしたいと思います。

  秋暑し水札鳴方の潮ひかり (加藤暁台)
      水札=けり。チドリ科の鳥。  鳴方の=鳴く方の。

  秋暑し午後の目覚まし鳴り止まぬ (凡茶)

 「餞暑(せんしょ)」という副題には、近いうちに弱まっていくであろう暑さを惜しむ心がこめられています。
 俳句歳時記を見ても、あまり例句は載っていませんが、我々が積極的に使って、頻用される季語へと育てていきましょう。 
 
  テーブルに紙縒散らかる餞暑かな (凡茶)
      紙縒=こより。紙などをよって作った紐(ひも)。

参照 http://haiku-kigo.com/article/160895661.html



無医村の棚田ひつぢを立たせけり (凡茶)

2018-08-24 | 



櫓田



無医村の棚田ひつぢを立たせけり (凡茶)
落日やひつぢ田帰る応援団 (凡茶)


穭・稲孫(ひつじ・ひつち・ひづち)は、
稲刈りをした後の株に再生した稲である。
いわば、稲の蘖(ひこばえ)である。二番穂とも呼ばれる。
稲刈り後もしくは穂刈り後に放っておくと、再び穂が出る。
穭稲(ひつじいね)・穭生(ひつじばえ)ともいい、
稲刈りのあと穭が茂った田を穭田(ひつじだ)という。


季語の意味・季語の解説
==============================
 稲刈りのあと、その刈り株から再び萌えだした青い芽を「ひつじ」と言います。
 そして、ひつじが一面に生えそろった田んぼを「ひつじ田」と言います。


季語随想
==============================
 稲の一生には二つの時期があります。

 一つは、田んぼに植えられてから刈り取られるまでの時期。
 おいしい米をいっぱい実らせようと育っていく時期。
 それは、人々の期待の中で、精一杯人々のために生きる時期です。

もう一つは、収穫後の、誰も見向きもしなくなった田んぼに、青々としたひつじとなって、再び萌えだした時期。
 やがて冬の風に枯らされるまでの短い間、晩秋の色づいた景色や、初冬の小春日和を満喫する時期。
 それは、他人に何かを期待されることがなくなっても、最後まで精一杯自分を成長させようと生きる時期です。

 どちらの時期も、稲にとっては、かけがえのない時期なのです。

参照 http://haiku-kigo.com/article/133882668.html

気配りを生来知らず放屁虫 流伴

2017-12-16 | 
気配りを生来知らず放屁虫




放屁虫は虫の仲間なので季語は秋の分類だが
人間の飼っている放屁虫は
炬燵の中などで無礼きわまりない
気配りは生来知らず
これって最高だな(笑)

原句 12/8/2016 街123

気配りはもともと苦手放屁虫
わかっているから苦手
生来知らずは許せるわけではないが(笑)

選外といふ一括り菊花鉢 流伴

2017-11-29 | 
選外といふ一括り菊花鉢



ちょっと時期遅れになったが菊の展示発表会がさかんだ
毎年この日のために1年がかりで丹精した菊鉢を運び込む

審査で賞を得た鉢には大仰な賞名が冠せられる
選外は一括りで
会場によっては展示すらされることはない


発表 2016/11/7 岳40-1

瘤に創素手でたしかむ松手入れ

2017-11-09 | 
瘤に創素手でたしかむ松手入れ




松の瘤は松節といって
松の樹自身が害虫などから身を守るために
樹皮が変化するものだという
漢方薬にもなっているそうだ

毎年松の木に上って手入れの真似事をするが
馴染みの瘤の手ざわりは格別だ

原句2012/12/1
瘤に創老いも興とす松手入れ

老いも興とす
は悪くなさそうだが言い過ぎだったようだ

古手紙残らず焼べて秋収む 流伴

2017-11-06 | 
古手紙残らず焼べて秋収む 



古希をこえてしばらくになる
身辺の不要なものを整理しないといけない
これが少しも進まない
昔の手紙を読み返すこともないのだが捨てられない
ごみと一緒にはしたくない
庭の焚火もままならない
どんど焼」にでも焼べてしまおうか

掲句は机上の句

冬隣国の記憶に抑留記 流伴 

2017-11-02 | 
冬隣風国の記憶に抑留記



立冬も近い
書棚に読み止しの「シベリア抑留気」がある
何度も手に取るが最後までは読みし〆ることができない
戦争は戦後も終わってはいなかったのだ
決して記憶から置き去りにしてはならない
父の戦友も抑留されていたという

原句2015/11/15
日脚伸ぶ記憶遺産の抑留記

記憶遺産では他人事になってしまう

虎落笛野天風呂への長廊下

2017-11-01 | 
虎落笛野天風呂への長廊下




秘湯といっても最近はあまり苦にならない

道路も整備されたし旅館からの送迎もある
携帯電話もほとんどが通話可能だ

古い旅館の歴史深い温泉が良い
露天風呂までの長い廊下を
ミシミシと音立てながら
寒さに身を竦めて進
遠く近くに虎落笛があったりすれば
この旅はまた最高点にランクインだ

原句 2016/11/2
梟ぞ野天風呂への長廊下

季語を変えただけだが虎落笛で成功かと思う?

泪目の大鮭一尾簗終い  流伴

2017-10-31 | 
泪目の大鮭一尾簗終い




那珂川の簗には何度も訪れた
春の上り鮎
秋の落ち鮎
近くの店で塩焼きにして食することができる

2年前に丁度、簗を終うところへ遭遇した
簗に一尾の鮭が横たわっているのを見た



原句 2015/11/15
那珂川の鮭に泪目冬隣
季語が不適
季語を変えて語順を変えてきた

秋夕焼切絵のように鳥の列  流伴

2017-10-30 | 
秋夕焼切絵のように鳥の列




秋の夕焼けは夏のそれとは違ってもの寂しい
空が住んでいるので空は本当に焼けているようだ
切絵のような山影
鳥が列成して飛んでいく

原句 2015/11/15
夕まぐれ切絵のやうな鳥渡る
雄まぐれが唐突の措辞
鳥渡るもそのまんま 

来し方も行方も揺るる尾花波

2017-10-28 | 
来し方も行方も揺るる尾花波




近くの河川敷には芒が密生していて
風に一斉に揺らいでいる
西から東への風が多い
芒穂は同じ方向に頭を揺らす
私に向かってくる波が
私を超えてなた流れるように進んで行く


原句2015/11/15  
一生のはじめのおわり芒晴
これは言い過ぎているようだが
句意が不明だった

ジョギングに破調の増ゆる朝の冷え

2017-10-25 | 
ジョギングに破調の増ゆる朝の冷え




ジョギングはもう出来ないが朝の散歩は欠かさない
小さな神社まで往復40分
寒くなると歩調がそろわない
無理をしないで 無茶をするなよ
どこかで囁かれているような
掲句はジョギングにして気取っている


原句 2014/11/15
ジョギングに悴む手足破調なる
悴む手足では説明し過ぎだったと気づいた

無無しの男気だのみ松手入れ 流伴

2017-10-24 | 
無無しの男気だのみ松手入れ




玄関の前に赤松がある
植栽したのは40年ほど前になる
植木職に年に1度手入れをしてもらっていたが
10年ほど前から見様見真似で自分で手入れしている
最近は梯子に上るのにも勇気を要する始末で
なけなしの男気を絞っての作業だ
去年はさぼってしまった、今年もまだ手付かずでいる

原句2014/11/15
無無しの男気しぼり松手入れ

新豆腐そえし一葉にあらたまる  流伴

2017-10-23 | 
新豆腐そえし一葉にあらたまる



新豆腐は今年収穫した新しい大豆でつくった豆腐。
その秋にとれた大豆だけに滋味深い。
市販ではなかなか食卓にはのぼらないが
たまに手に入るととっておきの器に一葉をそえてみたり
風情のある夕餉が演出される


原句 2014.11.14
新しき器に一葉新豆腐
新しき器はほとんど無駄啞言葉だった
新豆腐と一葉でじゅうぶんだろう