明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【マイブルーベリーナイツ】 かの時代のオシャレ映画

2009年02月23日 | 映画


***
 ニューヨークのとあるカフェ。失恋したエリザベスは、この店のオーナー、ジェレミーが焼くブルーベリー・パイを食べ少しだけ心癒やされる。それでも、なかなか別れた恋人のことが忘れられない彼女は、ついに宛のない旅に出る。仕事をしながらメンフィス、ラスベガスとアメリカを横断していくエリザベス。彼女はその先々で、それぞれに愛を求め愛に傷つく人々と出会い、彼らと束の間の時間を共有していく中で新たな自分を見いだしていく。(from allcinema)
***


ボクが東京に来た13,4年前、ミニシアター業界はちょっとした王家衛(ウォン・カーウァイ)ブームであった。多分にもれず自分も「恋する惑星」「天使の涙」と見たクチである。イナカから出てきたばかりの青クサい小僧にそれは、憧れであり、刺激的でもあった。その後、映画鑑賞も人生もそれなりに経験値を積み重ねてきたボクにはあの頃の映画達も、ただのブームが作った"オシャレ映画"だったなぁと苦笑する次第。

その後、もともとジャッキー・チェン世代でもあることから、これらの"オシャレ映画"により香港・台湾映画への興味を再喚起させられ、以後様々な良作に出会うこととなる。そういう意味では良いきっかけであり王家衛さまさまといった感じがある。

しかし「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」とボクの中で着実に評価を下げ続けてきた(笑)ウォン・カーウァイ。もう映画やんないのかと思っていたらハリウッドからデビューしたとのこと。ある意味これは観なければなるまいw

ただCMからも劇場予告からもこれはどう観ても「恋する惑星」。ただの"オシャレ映画"であることは明らかであった。でも観ちゃうんだな~、そんな自分がカワイイw

結局、王家衛はハリウッドに行っても間違いなくウォン・カーウァイ。オシャレ映像にもかなり笑えた。ストーリーを追う必要もないため安心して途中居眠りができたw そんな映画。

そしてあの頃の青臭い憧れを思い出し、郷愁に浸るにも十分であった。


主演のノラ・ジョーンズ、かなり好み。加藤ローサをちょっと崩してワイルドにして大味にして太らせた感じ(全く褒めてないw)。彼女を観られただけで個人的には価値あり。あとレイチェル・ワイズの匂い立つエロさもかなり好き。

評価:★★☆☆☆

点数つけるのも笑える。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。
 このブログがお気に召していただけましたらポチッとご協力お願いします。




ちなみに、『おくりびと』アカデミー外国語映画賞おめでとう。

【蒼穹のファフナー】 パチンコに釣られ

2009年02月20日 | その他


最近パチンコになるアニメって多いでしょ。「あなたと合体したい!」ってはずかしいコピーがまるで釣りバカ日誌みたいだった『創聖のアクエリオン(2005)』が有名か。あとは『新世紀エヴァンゲリオン(1995)』とか『交響詩篇エウレカセブン(2005)』とかね。パチンコ自体はもう学生の頃でやめてしまったので実際に打つことはないのだが、なぜかこれらの採用されたアニメって観たくなっちゃうんだよね~。もともとロボットアニメど真ん中世代なんで、実は観るためのキッカケ探しちゃってるだけなんだけど。

で、前出3作は観た自分ですが(正確にはエヴァはパチンコに釣られてではない)、今度2009年2月にSANKYOから出るという『蒼穹のファフナー(2004)』もポチポチと全26話を観てしまった。


この『ファフナー』、実はいわくつきなアニメ。当初設定がエヴァに似すぎていて相当ネット等で叩かれてたのだ。当時、一度は興味を示したボクだが「劣化エヴァ」などあまりのボロクソな言われ加減に「そういう作品なのね~」と興味をなくし、その後忘れてしまっていた。

そして今度のパチンコ化での興味の再燃である。
一週間ほど前に観始めた頃は、確かに「こりゃエヴァすぎ(^m^;;」と思うことしかり。しかし観終わった今、この名作に遅れて出会ってしまった事をひどく後悔している。オレノバカ(NON STYLE風)


最近は2012年のアセンションが近いせいか(?)「我々生きとし生けるものはそもそも一つの存在である」といういわゆる"ワンネス思想"を取り入れた作品が各メディアで氾濫している。スピリチュアル本がビジネス本の横に平然と並び、それらが未曾有の売り上げを叩き出しているというる姿は数年前には想像もできなかったものだ。しかしそれらによく見られる浮世離れしたあいまな思想表現から来る消化不良感に対し、『ファフナー』は現実に生きる人々への明確な解を導き出している。

このアニメ、あえて初期設定を真似る事で「エヴァ越え」を狙ったのではないかと言うと言いすぎか。熱狂的人気を誇った『エヴァ』であるが、結局何が言いたかったの?と実は消化不良な人たちを大量に生産しただけな部分も多い。引きまくった伏線を分投げ、ロボットアニメであることもぶん投げ、ネガティブな精神世界への追求に没入するという意味不明な話がなぜこんなに世の中に受け入れられたのか。誤解を恐れずに言えば「なんだかわからないものを高尚と思うよくある日本人気質」がたまたま時代やタイミングと一致しただけの作品だったのではないか。圧倒的なディティールとリアリティへのこだわりなど、エヴァが切り開いたアニメへの功績は確かに尊大だ。しかし本当にストーリー的に面白かったのかと言われると胸を張って「うん」と言える自信はない。

『エヴァ』も『ファフナー』も"自"と"他"とは何か、ということが描かれていたと思う。しかし『エヴァ』が他者を"拒絶"しながらも、受け入れれられることを"渇望"するという相反する苦しみ(ATフィールドにおけるリビドーとデストルドー)が描かれていたのに対し、『ファフナー』は他者を"対話"により"理解"しようとするという"受容"について徹底して描かれていく。

無作為に他者を融合することで一つとなろうとする敵フェストゥム。それはあたかも武力をもって布教活動を推し進めてきた西洋史のようにも見える。皆が同じ思想、同じ信仰であることを良しとし、それに反するものをすべて敵とみなし破壊していく。

しかしフェストゥムが発する「あなたはそこにいますか?」というメッセージに、人類は「私はここにいる!」と力強く答えることで対抗していく。それは「他者を否定し拒絶する」ことよりも「それぞれの個性を尊重することで、全体が一つとして調和する。」という現実に生きる我々に向けたワンネス実現への明確な解なのだ。そこに一切の"あいまいさ"はない。


当初、純日本人であるはずの主人公達が"マークアイン"や"ジークフリードシステム"などというドイツ由来のマシン名を使っているのがなんとも心地悪かった。しかし物語の最後が「ワルキューレの岩戸」に帰着した時には、厳格なキリスト教圏であるドイツと日本の神話との融合に"受容"という意味合いでの面白さを感じた。

「受け入れるのも一つの力」。乙姫(つばき)が最後に残した言葉も印象深い。


世界で戦争ばかりしている国々。そして普段の生活でも他者を批判ばかりして生きているボクらにも、ここから大いに学ぶことがあるだろう。


作画が粗めなのも許そう、ロボがあまり魅力的でないことも許そう、顔に描かれた謎のギザギザも許そうw。ここ数年内に観賞したアニメの中では間違いなく傑作の部類。人間存在のすばらしさをこれでもかと教えてくれるのだ。(エヴァとは違って)

観終わったばかりだからかもしれないが、今ボクの中では『エヴァ越え』は成立した。


評価:★★★★★

最初の12話まではガマンして観るのじゃ!その後怒涛の展開がキミを待っている!


P.S.
ちなみに最近のパチンコ台は液晶の大型化とこれらの版権により1台30~40万円と高値。この7%程度が版権会社に落ちるらしい。当たれば100万台も出るというパチンコ台。考えただけでもすげー収入。『エヴァ』はどうあれ『アクエリオン』も『エウレカセブン』も『ファフナー』も作品の出来はどうあれ既に押入れに寝かせてしまっていたアニメ。これがこんな値段で売れるんだから。パチンコ業界もアニメ業界もWin-Winで、打ち負けた客だけがLose…と。



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。
 このブログがお気に召していただけましたらポチッとご協力お願いします。

【バンテージ・ポイント】 黒き鶴瓶、健在

2009年02月19日 | 映画



***
 テロ撲滅の国際サミットが開催されるスペインのサラマンカ。大観衆の広場では米大統領によるスピーチが行なわれようとしていた。演説が始まったその瞬間、多数の警備を嘲笑うかのように大統領は一発の銃弾に倒れる。多数の群集とTVカメラの前でいったい誰が大統領を撃ったのか。物語はここから23分さかのぼる…
***

【ネタバレあり】

大統領狙撃という同じ場面を複数の視点から何度も見せる。TV局の撮影スタッフの視点、シークレットサービスの視点、地元警察の視点。アメリカ人観光客の視点、大統領自身の視点など。この「視点」が「バンテージ・ポイント」である。

このような手法は、かの黒澤明『羅生門』や最近では宮部みゆき『理由』などが思い出される。ただしこれらは個々の視点から見た事件の証言の食い違いなどが話のポイントになる場合が多いのに対し、本作では全く同じひとつの事象を登場人物まさにその"目線"から見た事実を紡ぎあげることで立体的にピースを組み上げる。一人目の視点が終わると、時間が巻き戻り二人目、三人目と非常に斬新的な表現手法で大統領暗殺の真相に迫っていく。そのため最初はかなり興味を持って観る事ができたが、4人目からは「オヒオヒ、まだ続くの?」という感じでちょっとクドい。横で観ていた老夫婦も「またぁ?」とコボしていた。観ているほうの集中力がもたなくなりそうだ。

とはいえそこは作り手側も承知の上か、上映時間が90分と短尺としてあることや、カーチェイスやアクションを交えて飽きさせない工夫もある。また最後に複数の視点が組み合わさる様もなかなかのモノではあると言える。ところができあがったストーリー自体が何の変哲もないお粗末なものであるため腰砕け。斬新なピースの形をしたジグソーパズルを解いてみたら、現れた絵がへたくそな子供の絵だったようなものである。テロリストの目的も判らなければ、人物描写もあらゆる面で薄い。最後に至ってってはたまたま大統領救出となる。

個人的には

・大好きなデニス・クエイド。痩せたな、病気?
・シガニー・ウィーバーの顔怖すぎだって!
・黒い鶴瓶フォレスト・ウィテカーがいつも通り気の弱そうなおやじを好演し満足。
・うちの愛車 プジョー206 があちこちに出ていたのでウレシイ

と本筋に関係ないところに興味あり。


評価:★★☆☆☆

豪華出演人ももったいないテクニックだけの映画に思えました。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。
 このブログがお気に召していただけましたらポチッとご協力お願いします。

【大いなる陰謀】 陰謀っていうかね

2009年02月18日 | 映画


***
対テロ戦争を利用することで野望を実現しようとする政治家と、女性ジャーナリストとの駆け引きを中心に、志願兵となることを選択した2人の若者と彼らの恩師である大学教授、そしてその教え子との会話と、アメリカに潜むテロ戦争に関する問題を3つの視点で描く。
***



原題は『Lions for lambs』。直訳すれば「羊のためのライオン」(?)。これは安全な場所にいる(愚かな)政治家によって危険な戦場に送られる兵士達を揶揄している言葉らしい。

「大いなる陰謀」という邦題や、「人は何の為に戦うのか、人は何の為に死ぬのか」というキャッチのもとアドバタイズされていた予告編/CMからすると、議員の陰謀をジャーナリストが暴くという社会派サスペンス娯楽作だとばっかり。ところが実はオバマ大統領選に向けての民主党応援のプロパガンダ映画。ロードショー公開時期もちょうどそのへん。それによく考えればロバート・レッドフォードだものね。

対テロ戦争の悲惨さ、泥沼さ、そしてそれを収束させる気がないどころか、自らの利権のために利用する政治家像を見せることで、共和党のアホさ加減を強調。こんなん見せられればオバマちゃんに入れたくなるわな。


ところが作品として面白くないかといえばそんなことはない。どころかかなりの面白さ。トム・クルーズ×メリル・ストリープ×ロバート・レッドフォードというハリウッド屈指の豪華キャストによる見事な対話劇に仕上がっている。

・有望(だが愚かな羊)な上院議員とベテラン女性記者。
・志願兵の恩師である大学教授と弁が立つが政治不信を唱えるだけで何もしない学生。
・愚かな上院議員の作戦により死に瀕する有望学生だった志願兵2名

まるで密室の舞台劇のように描かれる独立した3つの視点。それらは絶妙に絡み合わさり「これから我々はテロ戦争をどうしてゆけばよいのか!?」という問題提起を明確に示していく。
そしてそれは政治家やジャーナリズムましてや軍人ではなく、今後国を担っていくべき学生の視点で終わりを迎える。非常によくできた脚本である。


また92分という時間も小気味良い。編集の妙も味わえて一粒で2度おいしい。


ただし本作、これだけ豪華でできのよい映画にもかかわらず、対して目立つこともなく終わりそう。もともとアカデミー最有力とか言われていたのに箸にも棒にもかからなかった。やはり政治的に偏りすぎなのだろう。

評価:★★★★☆

鼻につく部分も多いが、迫真の会話劇が楽しめます。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
↑ブログランキングに参加しています。
このブログをお気に召していただけましたらポチっとご協力お願いします。

【AVP2 エイリアンズVS. プレデター】 

2009年02月16日 | 映画



前作はスピンアウトものとして大変楽しく拝見させていただいたシリーズの2作目。本作の出来は実はかなり難ありです。でもそんなあなたが大好きですw

とにかく人物シチュエーションにすべて意味がないことに笑うことしかりw

 ・ムショ帰りの兄貴とキレやすいヘタレ弟
 ・その兄貴と過去になにかあったげな正義感のある保安官
 ・ヘタレ弟に気のあるセクシー美少女
 ・軍隊帰りの母親とそれになじめない娘...
 ・その他多数の登場人物たち etc...

無駄な要素、無駄な登場人物達は主役2匹の闘いに巻き込まれることで、序盤から問答無用で排除されていきます。引いたと思った複線を拾うことなくその場で刈り取っていく新しい手法です。そして残された僅かな人々には深い意味があるのでは!?と気を抜くことなく観ていると、そんな期待も汲み取らずおどろくほど潔く終わってしまいますw

さらに今回のプレデターは「クリーナー」というこれまでのプレちゃん達よりもプロフェッショナルという設定。あちこちでエイリアンを狩って遊んだが、エイリアンを止められずどうしようもなくなった時にその証拠を隠滅するという工作員らしい。そりゃあどれほど頼もしいものかと思ってみればこれがなんとも情けない…。どんどん地球上でエイリアンを繁殖させてしまい右往左往してしまうのです。これでは間違いなくリプリーの方が強いって。。。

その上この映画がチャレンジブルなのは、密室ではなく開放的な空間に初めてエイリアンを登場させたところなんです!広場にたむろるエイリアン。。ところがそれがやっぱり全然怖くない……。狭い空間でないとエイリアンってのは意味がないのね~。ただの着ぐるみ怪獣っぽい。


しかし腐ってもAVP。胸躍る場面も多数あり。
序盤からお約束を破って子供があっさりと犠牲とってみたり、妊婦に寄生することで(これR18でもいいだろ…)スプラッターとしての醍醐味を十分堪能させてくれたり、また下水道内での闘いの超絶なカッチョよさなど、見ものとなる部分もかなりありました。合わせて最後に湯谷さんが出てくるようなマニアの方々がニヤリとする部分も多く、どこかに話としての統一感を保ってくれていればかなりのレベルになったろうにと残念です。

そういえば予算のなさ加減も見え隠れしてました。全体的に画面が暗いのはそのせいもあるのでしょうね。

評価:★★★☆☆

ボクは好きですが、自己責任でどうぞ。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。
 このブログがお気に召していただけましたらポチッとご協力お願いします。

【アイ・アム・レジェンド】 地球救いすぎ

2009年02月15日 | 映画


【ネタバレ注意】

なんかいつも地球を救ってくれている気がする男、ウィル・スミス。

・インディペンデンスデイ
・メンインブラック1&2
・ワイルドワイルドウエスト(違うか?)
・アイロボット
・ハンコック(そうか?)

お、数えてみると意外と少ない。
なんにせよ、いつもありがとうウィル。


さて、これ本当に「地球最後の男」か・・・っていう声も聞こえてきそうな本作。
原作が古典SFであり、あらゆるこれ系映画の原点とも言えるだけに、もう見飽きたよ的なストーリーではありますね。
ただし基本ゾンビ映画に甘いボクなので、ゾンビ物としての完成度からすれば、かなりよい出来ではないかと。一人だけ知能の高いボスゾンビ。とてももと人間とは思えないほど運動能力のあるゾンビ、そしてめっちゃ走るゾンビ。なかなかの迫力。怖い怖い。多彩なゾンビ的お楽しみがあります。マニアも十分堪能できるでしょう。

特に犬を追いかけてゾンビの暗闇の巣窟へとマシンガン付属のライトだけで進んで行くシーンの緊迫感の凄まじさといったら!うーん、唸るほどの出来。このフランシス・ローレンスって監督。キアヌの「コンスタンティン」の冒頭の悪魔祓いのシーンといい、緊迫感のあるシーンを描かせたら天才なのではないだろうか。

そこだけ絶賛。

ストーリーは最後の方はズッコケ崩壊します。
そんなに免疫ある人いんの!?みんな死んだんじゃなかったのかい!
最後まで孤独に戦い抜いた方が面白い秀作になったと思いまっせ、絶対。


ま、なんにせよ、また地球はウィルに救われました。

評価:★★★☆☆

犬好きな人は泣けます。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。ポチッとご協力お願いします。

【潜水服は蝶の夢を見る】ボクにも自由な想像力がある!

2009年02月15日 | 映画



***
雑誌『ELLE』の編集長として人生を謳歌していたジャン=ドミニック・ボビー。彼は突然42歳で“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”に倒れてします。それは全身の自由を奪われてしまう恐ろしい病。しかし彼は唯一動く左目のまばたきだけで自叙伝を書き上げる。感動の実話の映画化。
***

フランス映画でありながら(?)世界の映画賞を総なめにしている話題の作品を観た。ロードショー時ににはCMでおすぎが「感動しない人が一万人いたら映画評論家をやめます」なんて言っていたので気になっている方もいらっしゃったのでは。


観賞後あちこちの映画系サイトをのぞいて歩いてみたところ、次のような感想が多数あふれていた。

「難病を乗り越えた感動作。かわいそう。よくがんばった。号泣モノ」

そりゃそうだろう。全身不随の人が左目だけで本を書いたんだから感動さ。


また逆に

「病気に苦悩する部分が少なくそれを乗り越えた感が薄い」

というのも散見された。
確かにそのとおり。主人公であるジャン=ドーは、結構あっさり「ボクは自分を哀れむのをやめた」というセリフひとつで、前向きに自伝を書き始め、生きることを楽しみ始める。

よくある日本人的"哀れみ"感覚からか前記のような感想を持つ人も多いのだろう。人それぞれだとは思うが、その視点からこの映画を観るのはもったいない。

この作品のすばらしさは、決して"お涙頂戴の難病映画"なんぞには陥らないところにある。これだけの重い主題にもかかわらず"美しくユーモアにあふれた人生謳歌映画"として完成されているのだ。前出のような感想は、生をまっとうして自叙伝を残したジャン=ドーに失礼でさえある。

ジャン=ドーは自らの選択で暗くて重い"潜水服"から抜け出し、想像力と記憶力とで"蝶"のように羽ばたく自由を手に入れていく。想像(創造)の中で世界を旅し、美しい女性達と戯れる。最初は戸惑っていた周囲の人たちもそんな彼を支えながら強くその魅力に魅かれていく。

映画前半は主人公の目線のカメラワークにより主観的で不快な映像。後半は、自分の人生を受け入れるに従い客観的な鮮やかな映像に。そんな表現手法もすばらしい。

よく自己啓発系の本で書かれる「不幸も幸せもすべて自分次第」なのだということを説教くささのかけらもなく感じさせてくれる。


泣く気満々で観賞したのだが、全く泣かなかった。どころか最後はすがすがしい気持ち。 自分の魂も自由になったと感じた。

戻らないからこそ美しく輝く懐かしい日々。大切な家族や友人。湧き出る暖かい気持ち。不屈のユーモアと渾身のメッセージがここにある。


ボクの大好きな映画に「海を飛ぶ夢」という映画がある。こちらは顔以外が全身不随となってしまった主人公ラモンが、自ら"尊厳死"という名の自殺を選ぶ映画。自ら人生に終止符を打つことで生と自由を獲得する。「潜水服…」のジャン=ドーは体の不自由により逆に心の自由を手に入れる。実に表裏一体の映画。合わせて観てもらえると嬉しい。


評価:★★★★★

すばらしい、絶賛。 


ちなみに…フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を彷彿させる題名ではありますが全然関係ありません(^o^;;。SFふぁんはちょっと気になるところですね。。ソウカ?

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。ポチッとご協力お願いします。


【トランスフォーマー】 まいけるべい君の映画

2009年02月12日 | 映画



20年以上前の日米合作アニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』をリアルで観ていた人はそれほど多くないと思うけど、自分は地元で早朝早い時間に放映していたため、学校に行く前によく見ていたものです。


で、そのアニメの方は全くの子供向けなのですが、この映画は予告編が非常にシリアスで重厚だったため、全くの大人向けストーリーに作り直されているのだろうと思って観賞しました。ところがそんな勝手な期待は見事に裏切られますw


「サエない男の子のもとにロボットがいっぱい現われて、
お前は選ばれた者だと言われ、宇宙を滅ぼす悪と闘い、
最後はかっこいい車に乗って女の子にモテるようになる。」



あきらかにそれだけの映画(^m^)ププ
全くもって男の子の夢まんま。

冒頭から30分ぐらいは強烈にシリアスSF路線で行くのかと見せかけておいて、途中からストーリーも何もあったもんじゃなくなりますw

とにかくかっこいい変身シーン(トランスフォーム)の垂れ流し。しかもなぜかほのぼのアメリカンジョークを交えながら。

「いけ、プライム!メガトロンをやっつけろ!」
「バンブルビー、敵につっこめ。どか~ん!」

この映画、マイケルベイが子供に戻ってオモチャで遊んでいる脳内を映像化したのでしょう。
しかも戦闘シーンが激しすぎて誰が敵だか見方だか。。。


ただしフォーマー達の変身ギミックがとてつもなくよく出来ており、ロボット好きにはなんともたまらない映画に仕上がっています。この映像を観るだけで満足です。ミリタリーマニアも含め問答無用で観てください。

あまりにスゴイので映像酔いに注意。ちょっと『クローバーフィールド』状態。ボクは気持ち悪くなりました。。。


少し笑えたのはトランスフォーマー達全員が映画『ショート・サーキット』の、ほのぼのロボット「ジョニー5」に似ていたことでしょうか。そういえば『ウォーリー/WALL・E』もジョニー5似でしたね。ロボ好きはあの形状が好きなんでしょ。(ボク含め)



評価:映像にだけ★★★★★
それ以外は考えないことにします。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。ポチッとご協力お願いします。

【0:34(レイジ34フン)】 ジャーマンなゴア

2009年02月10日 | 映画


0:34の終電を乗り過ごし駅に取り残された女性が、謎の殺人鬼に追い立てられるというスラッシャー映画。

最初はビデオ屋でパッケージだけ観て、心理サスペンスものだったり、イケてる心霊ものだったりを期待。でもただのC級ホラーでがっかり。

ゆるい脚本、意味不明な不気味描写。監督だけが上手にまとめた気になっていそうなエンディング。

良いところはと言えば舞台設定か。地下鉄/駅を中心としたホラーなだけに圧倒的な閉塞感を漂わせているところ。イギリスの地下鉄駅構内はモダンでありながら、人気(ひとけ)がなくなると一転して冷徹な空間に変貌する。真っ白なタイルに真っ赤な血。これがなかなかの美しさ。

イギリス映画のくせに、R15の相当しつこいゴア描写のテイストがいかにもドイツ・ホラーっぽいと思ったら、エンドロールで「UK/German」合作になってました。そんなところに気づく自分がステキw

主演のフランカ・ポテンテ、気づかなかったが実は彼女もジャーマンらしい。
『ボーンスプレマシー』『ラン・ローラ・ラン』『アナトミー』とか、実は結構観てるのに観るたびに顔が違う気がする。しかもまったく好みでないと来てるところがまたこの映画を自分の中で下げてます(^_^;;



評価:★★☆☆☆

古き良きB級映画テイストはかろうじてあります。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中してます。このブログを気に入っていただけましたら、ポチッとご協力お願いします。

【ゆれる】 あやふやで正直な人の心

2009年02月10日 | 映画


***
都会で自由に生きる弟。田舎で親と同居しながら家業のガソリンスタンドで働く弟想いの兄。そして二人が好意を寄せていた幼なじみの女。女は都会に疲れて一時的に戻ってきた弟に身を委ねるが、これまで良くしてくれていた兄には強い拒否を示す。その瞬間、兄の感情は激しく揺れ動き…
***


「気持ち」とはゆれるもの。嫉妬、ねたみ、劣等感、優越感。そんなもので人のモラルはもろくも崩れ去る。そして昨日までの「関係」も簡単にゆれてしまうのだ。たとえそれが血を分け合った兄弟であっても。

一度噴出した感情はもう止められない。それがすべてを壊してしまうまで。。。

そんなせつない映画。

数年前、ミニシアター系上映ながら、ロングランとなった本作。
当初はもっと救いのない、「どうしようもない」ラストを期待していました。例えばオダジョーが罪にさいなまれて精神崩壊しまうような。ところが思ったよりサラッとしたラストに、アレ?
しかし観終わってしばらく経った後、あのラストの兄の微笑みが弟への「許し」でないのであれば、それ以上に「どうしようもない」ラストはないと思い、ゾゾッと震えました。

香川照之の完璧な演技と、オダギリジョーの存在感、空気管。最近の監督達がこぞって彼ら二人を使いたがる理由が分かります。若手と中堅の中で今最高のキャスティングと言っていいでしょう。面会室での二人の演技のぶつかり合い、すごい。。。


TVドラマも映画も原作モノばかりで辟易する中、オリジナル脚本で、ここまで勝負できるこの監督はもっとすごいです。


重たくて、せつなくて、そして最高にいい映画です。間違いなく邦画史に残る一本だと思います。



評価:★★★★★



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑ブログランキング参加中です。ポチッとご協力お願いします。