明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【ラビット・ホラー(2011)】

2012年08月30日 | 映画


『呪怨』の清水崇監督と、ぼくらの満島ひかり様による怖くないホラー映画。

冒頭50分間、何度もウサギの着ぐるみが出てきて脅かされるも何も怖くない。怖くないどころか全く先が読めずホラーであることさえ疑わしい。この映画どこに行ってしまうのかと心配になるも徐々に謎は明かされてゆき、着地どころはいかにもJホラーらしいところに落ち着く。さすが清水監督とホッと胸をなでおろす。

ところが・・・おしい。丁寧に行間を埋めていけば結構良質なお話だと思うのだが、いかんせん作りが粗い。少女の自己中心的な内面への逃げ込み描写や「弟」という幻想の伝搬など、映画館のシーンやらに尺を使うのであればもっと丁寧に描けるところがあったはず。ただ実はこの映画『ラビット・ホラー"3D"』が正しい題名。3D描写中心のシーンに重きを置いてしまうのはいたしかたない。ただ画面の作りのアトラクションっぽさなどもあり、ホラーとしては不自然さを感じ話の深みも出し切れていない。というかまだこのジャンルが未完成なのかとも思う。それをDVDで家で2Dで観てるほうが悪いのだが、たぶん3Dで観ることで真価を発揮する映画だったのではないか。

清水崇監督といえば、かの『呪怨(2002)』を手がけ、そのハリウッドリメイク『The Grudge』、(日本版タイトル『THE JUON/呪怨(2004)』)にて全米興行収入No.1を叩き出し世界的にも名監督の仲間入りをした。その後日本に戻り『輪廻(2005)』という優香主演のスマッシュヒットホラーを撮影し、最近は何をしているかと言えば『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH(2009)』という、富士急のお化け屋敷「戦慄迷宮」とタイアップした3Dアトラクション映画を制作。そして次がこの『ラビット・ホラー3D』となる。

素人目からしてホラーで3D作品というと“ 画面から飛び出してきてビックリ!” というお化け屋敷感覚に使うのだろうと安直に考えてしまうが、“観客を仮想空間に引き込みリアルに恐怖体験をさせる”にもうってつけなギミックのはずである。遊園地の幻想的な夕景、納屋の奥に横切る異形の影、そして螺旋階段と、2Dで見れば不自然さを感じたこれらも、3Dであれば清水監督の創りだした不穏な幻想空間に引きこまれて見られたのかもしれない。

そう考えると『ラビット・ホラー3D』は清水監督にとって大きな実験作だったことが伺われる。日本のJホラーブームの立役者であり、世界にそれを広めることに成功。その後たまたま監督を依頼された『戦慄迷宮3D』にて3D作品におけるホラーの可能性に気がつき、既存のJホラーと融合を図ったのが本作なのである。たぶん。

子供だましな「飛び出す動画」の域から脱し、かのJホラーの雰囲気をいかに3Dでつくり上げるか。その途上にあるのが本作でありその目論見はまだまだ未完成と感じられるところではある。しかし数年内にはこれこそ“Jホラー3D”だという作品が劇場を席捲してくれることを期待して止まない。3D作品でありながら、かの伽椰子が背後に感じられるような作品が出来上がればこんなに楽し恐ろしいことはない、と思う。


...って、今回3Dで観てないボクが熱く語っても意味なしで失礼だけどなw

ナニハトモアレ清水監督には新しいJホラーの可能性をぜひ模索していってスバラシイ作品を作っていって欲しいと思ってます。オウエンo(^-^)o



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ところで「世界で一番3Dが似合う女」と評された『貞子3D』。残念ながら未見ですが、こちらは明らかに「飛び出す動画でビックリギャー系」。噂にはこちらも貞子がただのバケモノ化してしまっており、Jホラーの系譜としてはさんざんな様子ですが、とにかくイロイロやってみて下さいよ監督の皆さん!

貞子3Dの宣伝カーが怖すぎる件

【プロメテウス(2012)】

2012年08月23日 | 映画


【ネタバレあり】

予告で「人類の起源」と煽りまくられた結果『2001年宇宙の旅』レベルのものを期待しながら鑑賞。結果、猛烈な「オモテタノトチガウ」「コレジャナイ」感とともに帰宅の途につく。そもそも某映画のビギンズものであることを隠す必要もないし、おバカなクルーがフェイスハガー(隠してないしw)の劣化版にやられた時点で、鑑賞前からすでに今年一番の座を準備して挑んだことに激しく赤面。本当にこれがリドリー・スコットの作りたかったものなのか。。。


さて、まずは率直な思いの丈をつぶやいてみましたが、それでも近年の凡作リメイクや凡作ビギンズに比べれば相当面白かったと思われます。映像美や造形美にはさすがはリドリー・スコットと目を見張るものがありますし、某映画へのオマージュ(ってか同じ監督だしな)も見ているだけで嬉しくなっちゃうこと請け合い。さらに大好きなセロン様の美しさのご相伴に預かれたのはそれだけで足を運んだかいがあったと言うものです。

「“あの方"とは?」「なぜデヴィッドはあのような行動をしたのか?」など、随所に散りばめられ残された謎も多く、鑑賞後に脳内補完して遊ぶにも十分です。スターウォーズで言えばまだエピソードIらしく続編は作られるようですので、このへんの謎は次回に期待するとして、一点だけ面白く脳内補完した謎について書いておきます。

多くの方が驚ろかれたように、本作の最大の謎である「人類の起源」については、開始冒頭5分でほぼネタバレしてしまいます。その後どうもお話としては「何故エンジニアは人類を滅ぼそうとしたのか」にスイッチし、最終的には某映画(一作目)エピローグのリプリーよろしく「私はエリザベス。。。プロメテウス号最後の。。」と彼女はその謎を探りに新たな旅に出るという作りとなっています。

この「エンジニアが人類を滅ぼす理由」については大きく分けて2つ考えられると思います。壁画を見る限りはエンジニアが人類を作ってから何千年もの間は人類に知恵を授け、我々の来た星はココさと伝えたりするなど非常に友好的に描かれているのがわかります。これが何かを機に「人類イラナイ」に変わるのですが、考えられる一つは「(1)もう用無しである(飽きた、も含む)」そしてもう一つは「(2)人類は危険種である」といったところです。そこに作品中一つおもしろいポイントがありました。首チョンパになっていたエンジニアの年代を調べた時に「死後2000年程度」と言っています。本作の舞台は2093年なので、2000年程度前に何が起こったかと考えると、そうイエスの誕生です。そこから(1)(2)の理由を鑑みると。。

【理由(1) 人類は用無しになった】
人類を作ったのは、エンジニアのコピーである人類が神へと成長する(イエスの誕生)過程を観察するため。神が誕生した時点でその目標は達成した。エンジニア達も自らの起源を探るための一つのシミュレーションを行なっていた。

【理由(2) 人類は危険種である】
人類は神となったイエスを処刑した。神というすばらしいプレゼントをぶっ殺してしまう人類は大変危険であり、このまま成長させても無駄という判断。
この場合イエスは理由(1)のように自然発生したものでもよいし、エンジニアが与えたもの、もしくは地球に時々来ていたエンジニア自身であったということでも良いかもしれません。最後の説が「どうしてそんなに私達を憎むの!?」というエリザベスの叫びにはシックリくる気もします。

まああんな危険な生物兵器を使わないと滅ぼせないような人類でもないでしょ、とも思わんでもないし、残念ながら宗教的意味を深読みできるような知見もないのが残念ですが、本作ではエリザベスが結構敬虔そうなクリスチャンであることが描かれていたり、進化論を覆す系の発言もあり、人類とは!?というか神とは!?というところがそのへんとイロイロ合わせ技にして進んでいくことは間違いないでしょう。このへんが次回以降どのように展開/解明されていくのかが非常に楽しみになってきました。


さて私的には美しきセロン様を堪能できたことが一番の収穫なのですが、実は彼女はウェイランドの娘の記憶を植え付けられたアンドロイドで次回作にも出演してくれたりすることを期待してます。あのパーフェクトボディーは造りもんでしょw。ボクも10分後にお部屋に行きますっ!



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アーネスト・ボーグナインさん死去

2012年08月10日 | 映画




■米俳優アーネスト・ボーグナインさん死去、『マーティ』でオスカー獲得(AFP)
http://www.afpbb.com/article/entertainment/news-entertainment/2888566/9231760



アーネスト・ボーグナインさん亡くなっていたのですね。1ヶ月も存じ上げずにおりました。
95歳とのことで大往生ですね。大好きな俳優さんでした。

最初にハマったのは『エアウルフ』。子供の頃にTVにかじりついて観てたなぁ。

それ以後も映画鑑賞の折々で出会っては、そのパワフルで個性的な演技に圧倒されたものです。

ボクの青春は『ワイルドバンチ』『特攻大作戦』『ポセイドン・アドベンチャー』で出来てますよ。

『北国の帝王』の車掌役は印象に残りまくりだし、『コンボイ』『ニューヨーク1997』や『ブラックホール』にも出てたなぁ。好きな作品ばっかり。そういや『ガタカ』でも脇役ながら存在感あった。やっぱステキだ。


『レッド/RED』が遺作になった様子。追悼に拝見させていただきます。


また好きな俳優さんがいなくなってしまったのですね。。
ご冥福をお祈りします。



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【ピラミッド 5000年の嘘(2010)】

2012年08月09日 | 映画


【ネタバレあり】

オカルト好きとしては見逃せないタイトル。TSUTAYAに3本入荷後、待つこと2週間と意外に人気。

本作は「ギザの大ピラミッドで常識とされる定説を、科学的分析により覆し、新たな驚くべき仮説を提唱するドキュメンタリー」との触れ込み。私的にはドキュメンタリーでもフィクションでもオカルト的に面白ければOKなのですが、残念ながら今回はあまりいただけない出来でした。

全体の三分の二は定説の検証なのですが、まずもってこの部分が「面白い」という観点からしてかなり不足です。

「ピラミッドは8面体であった!」というのような新しい事実を提示してくれており興味深くはあったのですが、ソレ意外はほとんどが既出のものです。「当時の道具ではあの精度の建造物を作るのはムリ」とか「石を運ぶのがムリ」とか、考古学者の意見と建築家や精密加工業者などの専門家の意見を交互に流してムリさ加減を強調していきます。ライナー・シュタデルマンなど考古学研究の大家が出演しているので「おぉぅ」と思ったりもしたのですが、彼らのインタビューは悪意をもって歪んだ形で利用され、専門家達の “ただの一方向からの意見” と対立させることで、ほらムリでしょうとドヤ顔で並べていきます。全くの欠席裁判のようで考古学者の方々が可哀想に見えてしまいました。その上、考古学界の陰謀論も持ちだしてハナっから検証する気などありませんという風体です。確かにそんな精密なもん作るのムリかもとは思わざるを得ないですが、「科学的に検証する」ってのが売りにしてはその姿勢が疑われます。

あとは黄金律と円周率が隠されているっていうよく聞くヤツを延々とおハナシしてたりします。理系のボクでも飽きます。しかもその情報源は伏せられているという体たらく。相手は名指しで攻撃しといて、こっちは謎のブレーンからの情報って、科学的って謳ってるんだから情報の出所もちゃんとしないと。大槻教授を連れてきたなら韮沢さんも連れてこないと、って違うか。

最後にたどり着く仮説はピラミッドの謎としてはお初なご意見なのかもしれません。しかしマヤ暦の終わる2012年に合わせてきたようなオチで「やっぱりそのへんに落ちるのね」と思ってしまうものでした。また他の遺跡との関係など駆け足すぎて科学的な検証はまったくなしです。まあここは「大胆な仮説」ですので面白ければOKなのですが、オカルトの定番のポ○ルシフト、地○気の反転などもごちゃごちゃと混ぜこぜたのはオカルト的にも練り切れていないオチで、お茶を濁した感じがしました。

オカルトが面白いためには「どうしようもなく怪しいけど内容が面白い」「きちんと検証してみて本当か!?と思わせるに足る」のどちらかでないと面白いものとして成り立ちません。そのどちらの観点から見ても中途半端なものだったかなと少々残念でした。監督自身は本当にドキュメンタリーだと思っているのかもしれませんので、であればボクとはオカルト魂が違う作品でした。


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【崖っぷちの男(2012)】

2012年08月06日 | 映画


サム・ワーシントン自身がもう崖っぷちなのか!?と映画ファンなら誰でも思いつきそうな小ネタは別にして、そんなビッグネームが出演するには非常に地味~な作品。ところがこれまでの彼の作品中で一番のはまり役です。地味なだけに。

『フォーンブース』みたいなワンシチュエーションものなので、通常は最後のオチ一発的なところがありますが、本作では「高層ホテルの窓の外になぜ主人公がいるのか!?」という理由(オチ)については、結構早い時期に分かるようになっており、あとは予測範囲のシナリオで最後まで持っていった感じです。弟が再度登場してきたところでまあ大体最後までの予測がつきますよね。それでも本作が面白いのは、予測の範囲内にあるそれを少しずつ広げながらずらしながらみせてくる手法にあります。例えば交渉人が彼女である理由であったり、ぷちミッションインポッシブルだったり、相方や刑事の裏事情のからみ方であったり、主人公が犯人にされた理由であったりと、何をやりたいのかはわかっているのだけどそこに少量ずつおいしくなる調味料を加えていくのです。そして最後のエピローグでバーテンダーが。。。えぇっそこから騙されてたのかよっ!って。

それに金持ちの悪いやつを庶民が打ち負かすってのはやっぱり痛快ですよ。エディ・マーフィーとダン・エイクロイドの名作『大逆転』を観たような後味がありました。

いろいろリアリティが足んないとか詰めが甘いとかありまくりですが、大変見やすいポップコーンムービーとしてオススメです。

あとは、、、
エド・ハリスが痩せすぎ歳取りすぎでビックリしました。病気?好きな俳優なだけに心配。ジェネシス・ロドリゲスは目の保養になりました。ごちそうさま。そして交渉人役のエリザベス・バンクスのタンクトップ姿やちらりと見える八重歯がアラフォー熟女好きにはたまりませんでした(*^_^*)

最後に『崖っぷちの男』という邦題は久しぶりに原題を超える名訳です。よくぞつけました。


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【おおかみこどもの雨と雪(2012)】

2012年08月03日 | 映画


細田守監督といえば今や宮崎駿監督に並んで名前でお客の呼べる数少ないアニメ監督。さっそくその名前に釣られ観てきました。

「おおかみこども」という秀逸なネーミングと貞本キャラとの組み合わせならもう勝ったも同然w。どんな楽しいお伽話を見せてくれることやらと期待してましたが、今回は前作『サマーウォーズ』のような派手さは一切なく、非常に真摯に丁寧に描かれた親子の成長ムービーとなっていました。

「おおかみこども」という一件トリッキーな設定は、子の成長を分かりやすく描くための記号程度の利用に抑えられており、その名前から期待されるファンタジックさやスリリングさは少なめです。むしろそのため作品としては純粋に人間ドラマを紡いでいく必要があり、越えなければいけないハードルはより高く設定されていると言えるのですが、分かりやすく複雑な伏線もなく真正面から親子の絆を描いているストーリーが清々しく、軽々とそのハードルは越えられていました。

本作はふたりの子どもの成長物語であることはもちろんですが、それ以上に母親である花の成長物語です。花の行動は悪戦苦闘でいきあたりばったり感が満載ですが、それこそがまさに本当の子育てなのではないかと思います。ボクが子供の頃は大人というのはなんでもできる絶対的存在に見えていたものですが、実際はこんなに未熟な状態で自分を育ててくれていたのだろうなと目頭熱く自身の親に感謝しました。

ただし作品上では思いのほか “苦労している感” は薄めの味付けになっています。「おおかみこども」の親として誰にも頼れない花ですので、その苦労をこれでもかと描いていくというのも脚本としてはアリかと思います。ただし前半で「しっかり育てる」と強く決意した後、「いつも笑顔でいる」という彼女の行動上そのような浪花節的な描写はほとんど意味をなさないのでしょう。そのため後半はご都合主義的に話が進んでいくように感じられた点もあり少し残念でしたが、その裏にある本当の苦労を行間に感じられたかどうかが、この作品の評価を左右するポイントだろうと感じました。

また「親はなくとも子は育つ」までは言わなくとも、「あれこれと親が手を焼かずとも子どもは自立していくものである」という点も本作の主題の一つと言えます。唯一の「おおかみおとこ」として自身のアイデンティティを押し殺し身を隠して生きてきた父に対し、二人の子らは母の愛のもと自らの野生と人間性に従い生きる世界を定め立派に巣立っていきます。「しっかり生きて!」この最後のセリフこそが “あまり余計な事をしない” 正しき愛が結実したものでしょう。

映画が終わって子供たちの成長をもっと見ていたいと思わされた時点で監督にしてやられた感じでした。


ところでジブリも細田組もどちらも日テレがおさえているというのはどんな商売上手ですか。



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