明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【トイ・ストーリー3】 反省

2010年11月25日 | 映画



映画ブログを書き始めて2年近くになる。

実は小学校のころもっとも苦手としていたものが夏休みに書く読書感想文であった。いつも24時間テレビが始まる頃になると重い腰を上げ、手塚治の特別アニメを横目に観ながら悶絶しながら書いていた覚えがある。しかも400字詰め原稿用紙x3枚のほとんどを感想ではなくただのあらすじで埋め潰すことに普請していた。

そんなボクがなぜブログで感想なんぞを書くようになったかと言うと、最近の自分の映画の見方に疑問を持ったからである。

これまで四半世紀以上映画を観てきたが、子供の頃、ボクにとって映画はかけがえのないものだった。なけなしの金を払って映画館に行き、面白かったものは一日居座って何度も観たものだ。(昔は自由席で入れ替え制でもない←もちろん犯罪)

ビデオデッキさえもないのでTVで観る映画もその時一度きりの真剣勝負である。必死にカジりつき脳裏に焼き付けた。そして次の日には興奮して友人と語り合うことでさらに脳みそのシワ奥深くに刻まれていった。

そんな映画たちは今でもボクの血となり骨となっているのだが、現在のボクにとって映画はどうなっているのだろう。

HDDに撮りため、観たいものだけ選別。めんどくさいと3倍速ぐらいでみたりする。DVDは何枚もレンタルしてきてざっと眺める程度。映画館に至っても数見るためにシネコンで何本かハシゴしたりする。

完全に消費対象となり下がっている映画たち。深く感動した映画でさえも自分の中でそれほど反芻することなく、次の映画を上書きすることですぐに忘却の彼方へと消えていってしまう。映画を昔のように熱く語ってくれるような友人もおらず、ネットで誰かの感想を読んでみる程度。


そんな自分の映画の見方に辟易としていた時、ふと自分でもブログ書いてみるかと思った。

心に残ったシーン、喜怒哀楽、何か引っかかったもの、思いついた疑問、そんなものを書き留めておきたい。全部は無理であっても、稚拙な文章であっても、少しでもそのとき映画に感じた気持ちを忘れることなく記しておきたい。。。そしてそれが今も奇跡的に続いている。


で、2年たった今どうなったかというと、映画を観るとき「ブログにどんな能書きを垂れてやろうか」と穿(うが)った気持ちで映画を観るようになってしまったww。もともと文才はないくせに大変困ったものであるww 夏休みの苦しさを思い出せ!


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さて『トイ・ストーリー3』の感想ブログで、お前はいったいウダウダと何の話をしているかという疑問が沸くかもしれない。


つまり言いたいことはこう。
この映画、そんなボクの不順な動機を一笑に付す映画であった。


実はこのシリーズ、映画好きのくせに一作も観てなかった。他のピクサー作品はほとんど観ているにもかかわらず、いまいちアメリカ~ンなキャラに馴染めず避けてきていたのだ。

しかしこれだけ高い評判の『3』は能書き垂れとしては観ておかねば(そして能書きを垂れねば)と思い、まずは前準備として、ピクサーに関する書籍を2冊(『メイキング・オブ・ピクサー』『ピクサー流マネジメント術』)読んだ。うむ、ピクサーの哲学とはこういうものかと納得。

そして『1』『2』を観た。いやいやとてもよく出来ている。マイベストオブピクサーである『モンスターズインク』よりいいじゃないの。


さて『3』である。


これ、能書きなんぞどうでもいい。とにかく感動感動感動の嵐で、いい大人も涙腺決壊すること間違いなし。こんなにハラハラドキドキワクワクし、こんなに笑わされ、こんなに暖かい気持ちになれる映画があったなんて。

泣き所は軽く5箇所はあった。ハンカチが何枚あっても足りない。『トイ・ストーリー』シリーズを観続けてきた人であれば、冒頭のアンディの空想シーンから既に、もうすぐ訪れる別れの予感に早々に崩れ落ちてしまったかもしれない。

最後もなんとも清清しい気持ちで自然に涙があふれる。よかったねアンディ、ウッディ、バス、みんな、そして大好きなポテトヘッド。


子供の頃に感じたかけがえのなさ、心にストレートに訴えかけてくるストーリーに脊椎が感動し、体が動き出し、DNAが喜ぶ。消費映画になんか絶対に成りようがない脳みそに深く深く刻み込まれるクオリティー。こんな映画に能書き垂れることなぞできない。素直に観て素直に感動しよう。


今こそ映画消費マシーンであったDVD/Blue-Rayの役割を見直し、そのありがたみをかみ再度かみしめる時。BOXを買って何度も何度も観るつもりだ。


ありがとう、おもちゃのみんな、ありがとうピクサー。

オッサンがここまで改心して褒めまくる映画だ。皆も観なさいw


■『トイ・ストーリー3』予告編(吹替版)(Youtube)

評価:★★★★★★(5点満点の6点w)


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m

さまつなこと

2010年11月22日 | 映画
ハリポタもついに最終章。

よく出てくる鼻のない人↓ですが。

コイツ


レイフ・ファインズによく似てるなと思っていたら。。。本人でした。

第7作にして初めて知るという。。。orz

まあボク、シリーズ全然観てないしな。。


フレディとロバート・イングランドでも同じことやった覚えが。。。...( = =)トオイメ

コイツ



さまつなことです。


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【9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~ (2009)】

2010年11月21日 | 映画


吹きすさぶ風が良く似合う9人の戦鬼(?)が悪と戦うダークファンタジー。
しかし加速装置を使ったり、赤ん坊のエスパーや火を噴く中国人は出てきません。


2005年アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた11分のCG作品を、その監督シェーン・アッカー自身の手により劇場長編化。

ティム・バートンプロデュースだが、『アリス・イン・ワンダーランド』と公開時期がかぶっていたことと、上映館数も少なかった様子であまり話題にならなかった作品。近くのシネコンでもひっそりと2週間だけ上映。


一見して、ああティム・バートンが好みそうだなといった雰囲気の映像。しかしこの作品のかもし出す少しダークな雰囲気は、ティム風というより監督シェーン・アッカー自身のものだろう。ティムほどは悪趣味じゃないし、どちらかと言えば日本のアニメの感覚に近い。

愛着のある9つの個性的なキャラが協力と反発を繰り返し謎に迫っていく様はかなりの王道ストーリー。わかりやすさと感情移入し易さ、そして無駄のない演出。多様されるアクションもCGによる大胆な構図が取り入れられ楽しい。間違いなく万人ウケしそうなお話で安心して観ていられる。尺も80分とTV放映した場合でもカットなしでいけそうでちょうどいい。日本のお茶の間にピッタリ。

。。。といった感じなので、実はそのぶん目新しさには欠けるかも。


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この作品は11分の短編を80分に長編化したものと書いた。

 もとになった短編は→こちら

見比べてみるとわかるが、CGの緻密さ以外はほとんど一緒である。つまり11分で描けるものを素直に80分にした作品。もとの作品にインスパイアされて拡大させたものというよかは、行間を埋めて伸ばしたものと言える。監督が変わっていないのであたりまえと言えばあたりまえか。

手法としては丁寧と言えば丁寧なのだけど、その行間がどこかで観たものたちで埋められてしまっているのが残念。そこに新しい発見は少なく、しかも埋め方にも微妙に謎を残しているため逆に不十分さが残る。どうせなら100分程度の話にしてすべてを明確に描いたほうがスッキリするかも。

短編と比べるという見方は反則かもしれないが、そちらの方が見る人のイマジネーションを刺激して面白いと感じてしまう。昔の稚拙なファミコンドラクエの方が面白いというのに同じか。


とはいえ本作の魅力は高精細なCGで描かれるキャラクター。その魅力的な造形は日本人好みだと思う。また麻布とガラクタで作られたその顔がなんとも愛らしく、目のシャッターの開き方ひとつであれだけ感情表現豊かに喜怒哀楽を表している点は、『ウォーリー/WALL・E』を彷彿とさせた。

荒廃した未来ものとしてちょっと暗めな世界観も独特で丁寧に作られた作品。監督の思い入れも伝わってくる。CG作品が好きな人は観ておいてソンはない出来。パッケージに惹かれた人はぜひ。


追記:

ちょっと乱暴な事を書きますが。。。w

ボクはどうもティム・バートンの世界観というのが苦手である。『ナイトメア~』と『ビッグフィッシュ』は結構好きなのだけど、それ以外はどうもウマが会わない(『マーズアタック』は別の意味で好きw)。

ところでそもそも日本で生まれて日本で普通に暮らす日本人にはあの世界観は会わないだろうと思っており、『~チョコレート工場』の気味の悪い小人達を喜んで観るなんて感性は本来、東の島国の人たちにはないはずである。そんな人はツウぶった映画好きかサブカル大好きなちょっと変な人たちなのだろうと思っている。

それでも好きだと言う日本人は「ティム・バートンの作品」というものがある種のブランド化しているか、「ティム・バートン好き=ジョニデ好き」と勘違いされている女性とかなのではないかとまで勘ぐっていたりする。

で何が言いたいかと言えば、この「9<ナイン>」は先にも書いたようにティム・バートンものではありますが、ティム・バートン色は薄いし日本人好みですので、ぜひ普通の人もどうぞ、と言いたいのですw。以上。

でもボクは今後もティム・バートン映画を観ますw
だってボクはツウぶった映画好きだからw(本当にツウでないことに注意)


■『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』予告編 (Youtube)

評価:★★★☆☆


"7"が、もののけ姫すぎて笑ったw


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『サマーウォーズ』アカデミー審査対象に決定

2010年11月18日 | 映画



『サマーウォーズ』が第83回アカデミー賞長編アニメ部門の審査対象になったようです。



■シネマトゥディ
日本の『サマーウォーズ』も!第83回アカデミー賞長編アニメ審査対象作品発表!



ああ、でも『トイ・ストーリー3』には勝てないかぁ!?
いやいやがむばって欲しいです o(>_<)o

#とか言って、『シュレック』だったりしてな(=_=;


正式ノミネートは来年2011年1月25日、授賞式は2011年2月27日です。



そういやどちらも感想ブログ書いてない…。発表までに書こ。。

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【運命のボタン (2009)】 ポチっとな

2010年11月17日 | 映画



あなたならこのボタンを押しますか?押しませんか?

実は映画の中では意外に早々にボタンは押されてしまい、その後は想像のはるか斜め上を行くお話が延々と展開されていくことになります。普通この話、サスペンスものかな~なんて思って観に行くのが普通じゃろうと思いますので、かなりの割合の観客が置いてけぼりのポカーンを食らうのでははないでしょうか。トンデモさ加減で言えばあの超絶映画『フォーガットン』にも近いです(おっとネタばれるっ!)。

なんだか壮大なお話のようにも見えるし、このSFさ加減は嫌いではありません。ルーピングエンディングもある意味王道で楽しいです。今後カルト映画化するような香りもします。

ただ結局なにが起こっているのかと言えば実はよくわからない。サルトルがどうのこうの言ってますので実存主義と何が関係あるのでしょうか。人とは罪深い動物だと言いたいのでしょうか。煉獄とか言ってますので宗教ちっくな解釈もあるのでしょう。子供の陥っている状態も何かの暗喩かもしれません。でも残念ながらボクは理解にまで至りませんでした。というか深読んでみようというまでの興味が不足。それにそもそも叡智の及ばぬ世界の話でしょうから理解しなくともよいのかもしれません。大変好きなジャンルではあるのですが、全体の構成のわかりやすさに対し、チラホラと散りばめられた不条理感とのバランスがボクとは相性良くなかったのかもしれません。


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またボタンを押すことを選んでしまうことが、結構人として普通みたいな描き方も置いてかれた理由かもしれません。それにあの夫婦がボタンを押す必然のイマイチさは誰もが思うところでしょう。結構大きな家に住んでますし、コルベット乗り回してますし、NASAに勤めている人だし、実家はそこそこ裕福そうだし、ベビーシッター頼んで演劇見に行ってるし、いくら説明されてもそれほどお金に困っているほどには見えません。まああのボタンをちょっと押してみたくなるぐらい軽く背中を押されてしまうにはあの程度でよいのかもしれませんが。


しかしいくら理由があるにしても、歳をとったとは言えあのキャメロン・ディアスねえさまに「私は醜い」って言われてもなぁ。理屈としての心の痛みは理解できても腑に落ちるまでは無理ですかな。ここ好き嫌いの分かれる重要な共感ポイントかもしれない。


まあそのような点から鑑みても、そもそもこの話を映画にしてくれたこと事態が副次的なオマケと考え、実はこの作品で一番面白い点はと言えば「あのボタンを自分であったら押すか押さないか」という考察を皆に与えてくれることなのではないでしょうかね。

で、ボクはどうかと言えば。。。押さないですねぇ。たぶん。
あんな怪しげなオッサンが絡んでいるってだけでどうだろうと思うし、やっぱり人死ぬって罪悪感あるし、あぁそういや以前訪問販売で騙されてクーリングオフとかたいへんだっだ覚えがあるしw、などなどいろいろ理由をつけながら24時間経ってしまい、結局ヘタレなので押さないだろなぁと。でも1000万ドルなら押すかなぁとか、どうせなら今なら円でもらえないかなぁとか。

あ、もう脳内でグルグル遊んでるしw。
そんなリトマス試験紙として面白い映画だと思いました。
それに押さないだろうと言える自分は十分幸せなのかもねw


あとから知ったのだけど「ドニー・ダーコ」のリチャード・ケリーだったとは。なるほどさもありなんな感じですな。


■『運命のボタン』予告編 (Youtube)

評価:★★☆☆☆


歳をとってはきましたが、やっぱキャメロン・ディアスはいい女ですなぁ。


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【コントロール (2004)】 善悪

2010年11月12日 | 映画



くせ者俳優ウィレム・デフォーとレイ・リオッタという濃いぃ共演。前から観たいと思っていたものが昼に放送されていた。さすがだテレ東、グッジョブだ!


死刑囚だった男に製薬会社がその凶暴性を抑制する薬を投薬実験するという話。サイコスリラーかと思って見始めたら実は結構良質な人間ドラマでした。

低予算映画の香り高く演出や設定考証も甘いですし、安いアクションも盛り込まれているためその中途半端感は否めません。しかし作品に描かれているものは「善とは何か、悪とは何か。」という人間本質への問いかけです。


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手のつけられない凶悪犯であったリーが、薬により徐々に人間らしい善人へと変わっていきます。それが薬の作用なのか脱出目当ての演技なのかがサスペンス要素となり、善悪を不明瞭にしながら物語は進みます。

過去に自分の情動を抑え切れず重大な過ちを犯たマイケル博士と、悲惨な幼児体験により周囲を信じられなくなった男リー。博士はそれを薬の開発への冷徹な情熱に転化し、リーは社会と他人への凶暴性へと転化しています。

博士は社会的立場からは高名な科学者ですが非人道的な実験を行う悪です。リーは社会的底辺にいる悪名高き極悪殺人者でまさに悪そのものです。しかし相反するように見えながらも位相が違うだけの"悪"であった二人が、おのれ自身を"善"だと信じたい想いから心通わせていく姿がすばらしいです。

レイ・リオッタと言えば『ハンニバル』で頭をかち割られていたり、『不法侵入』のサイコさが思い出されます。そのインパクトばかりが印象に残っており、ある意味"怪優"と思っていましたが、こんなに演技力があるということに改めて感嘆しました。序盤のキレぶりから最後の博士に見せる感謝と情愛のまなざしまでそのみごとな変貌ぶりに驚きます。

またその変貌ぶりと合わせて、組織とリーのその善悪の見え方が入れ替わっていく様も見ごたえあります。

そしてウィレム・デフォーがあの顔なので最後まで何かやらかすんではないかとハラハラ気が抜けませんでしたw。


善悪を決定するもの、そして人を救うもの、それは何かを教えてくれる作品でした。
なかなか拾いもんの佳作です。



評価:★★★☆☆


あとミシェル・ロドリゲスが出ているのである意味必見作ですよw


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【ハート・ロッカー (2008)】 ホラーより怖ぇ

2010年11月07日 | 映画



言わずと知れた『アバター』と今年度アカデミー賞を競いあった映画。一応観ておかねば。


これは映画という範疇に入るものなのか。擬似ドキュメンタリー風味だけども完全に作り物であることは分かるように出来ている。しかもそれほどストーリー性はない。その上これは女流監督ゆえかそれとも狙った演出なのか、戦争に対する一歩引いた冷たい目線から淡々と爆弾処理班の日常が描かれていく。

冒頭で提示される「war is a drug.(戦争は麻薬である)」という言葉からもわかるように、この映画は"戦争中毒/依存"の映画だという。であれば少しメッセージが薄ペラく感じた。

ただし「アカデミー取る程の映画か?」という『アバター』擁護派(もしくはアンチオスカー派)の批判的な外野の意見には賛同できず、映画としてはかなり良質の部類と思うし、受賞もさもありなんと思う。

余計な説明や無駄を排除したリアリティ重視の戦場の描写は、観客さえも戦地にいると錯覚させるほどの臨場感を醸し出しているし、手に汗握る爆弾処理の描写はホラー映画よりよぽど怖い。主人公ジェームズの姿も、男性監督ならばもっと大げさな感情表現などで視覚に訴える描き方をするであろうところ、静かな中に複雑な感情の機微をいれ込むことに成功しており、よほどそこにもリアルさを感じる。


しかし残念に感じるのは、映画の主題である"戦争中毒/依存"が物語の中に不足していると思ってしまったところ。


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ジェームズは基本的にはイイヤツである。仲間を危険に晒すような行動を取りながらも、その上でリスペクトし合える良好な関係を結ぶことができる。DVD売りの少年が死んだ時には強い怒りの感情を顕(あらわ)にする。"戦争中毒/依存"と言っても決して狂っているようなキャラクターではない。

しかしジェームズは家族のもとに戻ったあと、その幸せであるはずの生活に空虚さを感じる。そして最後は再度戦場へ戻った姿で映画は終わる。

しかしここでボクは「あ、そう」と思ってしまう。

生まれたばかりの赤ん坊を置いて、死と隣り合わせの戦地に戻ろうというだけでもう十分狂っていると言いたいのだろう。ただ人間というものは刺激を求める生き物である。同じように戦争に対して精神依存に陥る映画というものは過去にもいろいろ提示されてきた。しかも本作では爆弾処理という究極の命の駆け引きを経験した者の話である。そんな心理状態になるであろうことは映画的には容易に想像できる。

狂っていない普通の人間が結局こんな選択をしてしまうということが、これまでの同類の映画と違うリアルさであり、この映画の評価されるところなのだろう。そういう意味では女流監督だから描けた映画なのかもしれない。シリアルの並ぶ棚を前に佇むシーンは本当に素晴らしいと思う。

しかしボクにとってはやはり「あ、そう」という風にしか見えなかった。

たぶんもっと彼が戦場に戻る必然や、場合によってはちょっと狂っているぐらいの映画的・物語的演出が欲しかったのだと思う。つまりは「戦争映画ってこれぐらいのことは起こるもんであり、もっと刺激が欲しいのだ。」ということである。結局は何か物足りなかったのだ。

この映画、「ボク自身が映画に対して過度な刺激の中毒になっていた」ということに気づかされた映画であった。それはそれで面白い体験だったりするw



ところで実は主役のジェレミー・レナー自体が『28週後...』で見た顔だと思ったし、レイフ・ファインズは出てるは、デヴィッド・モースは出てるは、ガイ・ピアースまで出てくるので、実はドキュメンタリーには全く見えないw。そこももっと映画映画して欲しいと思ってしまった原因かも。


■『ハートロッカー』予告編(Youtube)
評価:★★★☆☆



ところで、キャスリン・ビグローって『ニア・ダーク/月夜の出来事(1988)』の監督/脚本だったのですねっ!コレ好きなんだよなぁ。まあランス・ヘンリクセンが出ているだけでその映画は名作扱いなのですがw



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【ソルト (2010)】  しょっぱめ

2010年11月03日 | 映画



もう四半世紀以上も映画を見続けているにもかかわらず、未だに異国の人の顔と名前、役割を覚えるのがとても苦手。一応それなりの映画を観るときはそれなりのモードに頭を切り替えて挑んでいたりします。

さてこの映画、見始めてすぐに「これはアンジーを観るためだけの映画だっ!」と気づいてしまったもんだから勝手に低速ギアにシフトダウンしてしまい、誰が誰だか覚えるのを頭が放棄。どんどん突き進む高速展開から置いてかれちゃう感にパニクりそうになるも、結局はアンジーとあと4人(CIAx2,ダンナ,おやじ)の顔覚えれば十分なお話だったのでホッとする。

まあお話もなぜかいまさら冷戦時代のスパイアクションもの(が設定は現在)で分かりやすい。さらにジェイソン・ボーンの影が見え隠れするようなアクションシーンの多用に、全体に漂う大味さ。二転三転する展開にアンジーは敵か味方かというのがこの映画のポイントなのだろうが、ダンナの回想シーンが挿入されることで「彼女が悪者なわけなかろう」という安心設計。ですのでアンジー以外は気にしないで観るのがよろしい。



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ではそのアンジーの代名詞である「強き美しき女」であるが、本作には「強き女」は描かれているが「美しき女」が非常に弱い。彼女をセックスシンボルたらしめるあのクチビルはあいかわらず健在ではあるのだけど、昔のようにブラピまでをも虜にした"男であったら抗うことは不可能"と思わせる妖艶な魅力はなくなってしまっているかも。頬コケちゃってるし。

スパイ映画なんだからそんなもん必要なかろうというご意見はごもっともだが、「アンジー映画」である以上それなりのサービスは欲しい。ボクも含め短髪で男装した美しくない彼女なぞファンは観たくなかったのではなかろうか。最後の「仲間に入れて」って誘うシーンが哀しいぐらい綺麗くない。


じゃあツマラナイかと言えばそうでもない。

前述したような要素はこの映画には無用と言わんばかりに、一気呵成に走り抜けるスピーディーさは娯楽作としては大変よろしい。

また「美しい女」不足を補うものとして「恋する乙女のアンジー」の姿が観られるサービスがある。要所要所で入れ込まれる昆虫学者の夫(恋人?)とのなれそめエピソードでは、これまで見たことのないハニカミアンジー等が見られちょっと笑う。まあ結局今回の彼女の行動の原動力はすべてここから来ているのだから、この部分が興味深く描かれているというのはある意味成功だったのかも。


■『ソルト』予告編(Youtube)
評価:★★☆☆☆

嫌いじゃないけど、1800円は高いぞ。



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