最近パチンコになるアニメって多いでしょ。「あなたと合体したい!」ってはずかしいコピーがまるで釣りバカ日誌みたいだった『創聖のアクエリオン(2005)』が有名か。あとは『新世紀エヴァンゲリオン(1995)』とか『交響詩篇エウレカセブン(2005)』とかね。パチンコ自体はもう学生の頃でやめてしまったので実際に打つことはないのだが、なぜかこれらの採用されたアニメって観たくなっちゃうんだよね~。もともとロボットアニメど真ん中世代なんで、実は観るためのキッカケ探しちゃってるだけなんだけど。
で、前出3作は観た自分ですが(正確にはエヴァはパチンコに釣られてではない)、今度2009年2月にSANKYOから出るという『蒼穹のファフナー(2004)』もポチポチと全26話を観てしまった。
この『ファフナー』、実はいわくつきなアニメ。当初設定がエヴァに似すぎていて相当ネット等で叩かれてたのだ。当時、一度は興味を示したボクだが「劣化エヴァ」などあまりのボロクソな言われ加減に「そういう作品なのね~」と興味をなくし、その後忘れてしまっていた。
そして今度のパチンコ化での興味の再燃である。
一週間ほど前に観始めた頃は、確かに「こりゃエヴァすぎ(^m^;;」と思うことしかり。しかし観終わった今、この名作に遅れて出会ってしまった事をひどく後悔している。オレノバカ(NON STYLE風)
最近は2012年のアセンションが近いせいか(?)「我々生きとし生けるものはそもそも一つの存在である」といういわゆる"ワンネス思想"を取り入れた作品が各メディアで氾濫している。スピリチュアル本がビジネス本の横に平然と並び、それらが未曾有の売り上げを叩き出しているというる姿は数年前には想像もできなかったものだ。しかしそれらによく見られる浮世離れしたあいまな思想表現から来る消化不良感に対し、『ファフナー』は現実に生きる人々への明確な解を導き出している。
このアニメ、あえて初期設定を真似る事で「エヴァ越え」を狙ったのではないかと言うと言いすぎか。熱狂的人気を誇った『エヴァ』であるが、結局何が言いたかったの?と実は消化不良な人たちを大量に生産しただけな部分も多い。引きまくった伏線を分投げ、ロボットアニメであることもぶん投げ、ネガティブな精神世界への追求に没入するという意味不明な話がなぜこんなに世の中に受け入れられたのか。誤解を恐れずに言えば「なんだかわからないものを高尚と思うよくある日本人気質」がたまたま時代やタイミングと一致しただけの作品だったのではないか。圧倒的なディティールとリアリティへのこだわりなど、エヴァが切り開いたアニメへの功績は確かに尊大だ。しかし本当にストーリー的に面白かったのかと言われると胸を張って「うん」と言える自信はない。
『エヴァ』も『ファフナー』も"自"と"他"とは何か、ということが描かれていたと思う。しかし『エヴァ』が他者を"拒絶"しながらも、受け入れれられることを"渇望"するという相反する苦しみ(ATフィールドにおけるリビドーとデストルドー)が描かれていたのに対し、『ファフナー』は他者を"対話"により"理解"しようとするという"受容"について徹底して描かれていく。
無作為に他者を融合することで一つとなろうとする敵フェストゥム。それはあたかも武力をもって布教活動を推し進めてきた西洋史のようにも見える。皆が同じ思想、同じ信仰であることを良しとし、それに反するものをすべて敵とみなし破壊していく。
しかしフェストゥムが発する「あなたはそこにいますか?」というメッセージに、人類は「私はここにいる!」と力強く答えることで対抗していく。それは「他者を否定し拒絶する」ことよりも「それぞれの個性を尊重することで、全体が一つとして調和する。」という現実に生きる我々に向けたワンネス実現への明確な解なのだ。そこに一切の"あいまいさ"はない。
当初、純日本人であるはずの主人公達が"マークアイン"や"ジークフリードシステム"などというドイツ由来のマシン名を使っているのがなんとも心地悪かった。しかし物語の最後が「ワルキューレの岩戸」に帰着した時には、厳格なキリスト教圏であるドイツと日本の神話との融合に"受容"という意味合いでの面白さを感じた。
「受け入れるのも一つの力」。乙姫(つばき)が最後に残した言葉も印象深い。
世界で戦争ばかりしている国々。そして普段の生活でも他者を批判ばかりして生きているボクらにも、ここから大いに学ぶことがあるだろう。
作画が粗めなのも許そう、ロボがあまり魅力的でないことも許そう、顔に描かれた謎のギザギザも許そうw。ここ数年内に観賞したアニメの中では間違いなく傑作の部類。人間存在のすばらしさをこれでもかと教えてくれるのだ。(エヴァとは違って)
観終わったばかりだからかもしれないが、今ボクの中では『エヴァ越え』は成立した。
評価:
★★★★★
最初の12話まではガマンして観るのじゃ!その後怒涛の展開がキミを待っている!
P.S.
ちなみに最近のパチンコ台は液晶の大型化とこれらの版権により1台30~40万円と高値。この7%程度が版権会社に落ちるらしい。当たれば100万台も出るというパチンコ台。考えただけでもすげー収入。『エヴァ』はどうあれ『アクエリオン』も『エウレカセブン』も『ファフナー』も作品の出来はどうあれ既に押入れに寝かせてしまっていたアニメ。これがこんな値段で売れるんだから。パチンコ業界もアニメ業界もWin-Winで、打ち負けた客だけがLose…と。
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