明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【THE GREY 凍える太陽(2012)】

2013年02月21日 | 映画



イマイチ地味で見たことありげな設定に少し食傷ぎみでしたが観てみてよかったです。リーアム兄やんじゃなきゃ危うくスルーするところでした。

飛行機事故で遭難した男たちが極寒の雪山でオオカミの群れと闘うという漢(おとこ)のドラマ。真っ向から自然の脅威を描き、全編通してとにかく男臭いです。なんとなく昭和な東映の薫りがします。

生き残った男たちは一人ずつオオカミに血祭りにあげられていきます。しかしこれがワザとなのか監督の力量なのか、その人物像についてあまり深堀りせずお互いの心の交流的なものもほとんど感じられないため、ヤラれても「ああ、大事な仲間が...!」感があまりありません。さらに言えば鑑賞後には誰ひとり顔も覚えていない始末w。おかげで変なヒューマンドラマに陥いることなくリーアム兄やんの目線中心にどんどん話は進みます。

そのリーアム兄やんの行動もベテランのオオカミハンターにしては「なんとなく森へ逃げる」「なんとなく川沿いに小屋があるかも」「なんとなくオオカミの巣に来ちゃった」という行き当たりばったり。通常はこれらサバイバルものの場合「あそこへ行けば助けが来る」「あの場所まで行けば敵から逃れられる」などの目標設定がなされるものなのですが、本作にはそれもないため絶望感や徒労感だけが蓄積していくというグッタリ感です。なんかもう主役の行動に説得力ないとかどうのこうの言う前に、自然の脅威の前に右往左往するしかない人間の小ささが結果的によく出ていたと思います。←これでも褒めています。

しかしそんな作品全体から漂う徒労感は、実はすべてが最後の1シーンのための前説だったのです。厳しい父に育てられ、最愛の恋人も失い、人生に絶望していたリーアム兄やん。しかし最後に追い詰められた時、これまでのすべての意味はこの瞬間に結実していると悟ったその眼力の演技は絶品!これ観るためだけに2時間ガンバったよオレ(T_T)。

もちろんその敵対するオオカミも怖い怖い。下手はホラーなんか目じゃないです。目の光や遠吠えによる姿を見せない時の威圧感がスゴイです。これは劇場で観るべき映画でしたな。

理屈抜きの男臭いサバイバル映画。人を選ぶと思いますし、理屈とか欲しい人には向きません。この真っ向さ加減が昭和な薫りがして良いのです。まあガイジンは昭和の薫りを知らんだろうけど。。。

さらにリーアム兄やん好きなら楽しめると思います(^_-)b



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【みなさん、さようなら(2012)】

2013年02月08日 | 映画



【ネタバレ少しあります】
何も入れずに見たほうがよい作品ですので一応行間空けときます。。








小学校卒業後「学校にも行かず団地の中だけで生きていく」そう決意した少年悟(さとる)くんの20年間に及ぶお話です。

その突飛な設定や濱田岳くんのキャラもあり、冒頭からしばらくは肩の力の抜けたホノボノ作品の様相を呈しています。女手ひとつで悟を育ててきた母は、そんな息子を「大丈夫」とただ見守ります。友達も無理やり彼を連れ出そうともせず、学校へ来ないことを責めたりすることもなく普通につきあっています。

そして彼には「団地はオレが守る」と意味の判らない強い意思があります。大山倍達に憧れダンボール相手にトレーニングに勤しんだり、夜の団地内パトロールを日課にしていたりと彼の行動は謎につつまれています。しかもそれが全編ゆる~く描かれていることで、クスっと笑える脱力系コメディなのだろうと思わされます。

しかし年をとるにつれ団地内だけで暮らすことの現実が徐々につきつけられます。そして「みなさん、さようなら」の意味が見え始めた頃、彼が団地から出られない理由が明かされます。悟が何から卒業できないのかそれが分かった瞬間、前半すべてのピースが組み合わされ、自分が観ていたものがコメディではなく重苦しい現実だったことににぐるりと姿を変え気付かされることになります。

本作はあるトラウマから抜けられないひとりの少年の成長譚ですが、それ以上にそれを支えていた周囲の愛のお話です。前半には可笑しく思えていた母や友人達の行動が、実は彼を気遣い、彼の成長を促し、何より彼を信じて行われていたものだということが、前述の手法を用いることでより強く表現されています。『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と同様、自分が愛されていることを再認識させてくれるチカラがある作品です。母は強し。

とはいえ濱田岳くんという邦画界きってのキャラクターですからコメディとシリアスのいいとこ取りに成功しています。12歳から30歳をそのままで演じられる役者なぞ世界中探してもいないでしょう。また中村義洋監督と彼のコンビはもはや無敵です。

最近の邦画が得意とする、ゆる系のどんでん返し系作品です。軽く笑って泣いて、周囲への感謝を取り戻す。心のお掃除をしたい方、ぜひどうぞ。


ところで波瑠のあのモッタイぶり感はどうだぁぁっ!おじさんは辛坊たまらんですよっっ!!しかも倉科カナまでもっ!最近大注目の若手女優2名とあれやこれやできるとは、岳くんウラヤマスィかったよ。。。



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【LOOPER/ルーパー(2012)】

2013年02月04日 | 映画



最近ジョセフ・ゴードン=レヴィットにはまっています。例えば『インセプション』の口数少ないクールエージェント、『メタルヘッド』の細マッチョ無頼漢、『50/50』の等身大青年の繊細さなど、作品毎に全く違った魅力が感じられ次々と過去の出演作をあさっている最中。今一番の注目株です。最もお気に入りは『(500)日のサマー』で、あのちょっと弱めのヤサ男ぶりとタレ目の笑顔にオッサンながらグッと来たりしてたりして。そしてついにこの『LOOPER。』ではブルース・ウィリスとダブル主役。さらに大好きなSFアクションと来ればもちろん観に行くに決まってるというものです。


。。。で、さてこの「ボクのジョセフはコレジャナイ...」感はどうしたものかw。ジョセフの30年後がブルースというそもそものキャスティングに無理があるのは承知でしたが、ジョセフのその風貌はもはや特殊メイクのレベルw。確かにブルースにジョセフのメイクするわけにはいかんやろし、演技派の彼はブルースの特徴をよく捉えていたりもしたですよ。でもあのマユゲやらヒゲやらに序盤は笑いをこらえきれずw。まあそれでもしばらく観ていれば慣れてきて、徐々にお話の面白さの方にに引き込まれていきました。


本作はSFタイムトラベルものです。「過去の因果が未来につながる」というその王道な設定は面白くもあり永遠のマンネリでもあります。なのでどうしても同類作には既視感が出てきてしまうのですが、最近では『ミッション8ミニッツ』やアニメ『STEINS;GATE』のように最新の量子物理学における並行宇宙論をベースとした新たなタイムトラベル作品も出てきたりして目新しさも演出しています。が、これらは体感的にわかりづらいのが難だったりします。

さて本作はといえば「過去の因果‥」の王道タイムトラベルものなのですが、大きな“反則”を犯すことでそのマンネリを回避しています。なんと「別時代の自分に会ってはいけない」という鉄則をすんなり破ってしまっているのです。通常は宇宙的矛盾が起こってしまい大変なことが起こるwみたいな理屈があったりなかったりするのですが、本作ではそもそも「未来から送られてくる30年後の自分を殺す」というすでにグルっとループした矛盾に満ちた設定をベースにしています。そしてその理屈をどうSF的に積み上げているのか作品序盤でいろいろ考えていたのですが、作中ブルースが「理屈は難しくて一日かかっても説明できんっ!」と放り投げてしまいます。ここでボクは「うはぁ、そんな荒業があったかっ!男前やっ!」と圧倒的に本作を面白いと思い込んでしまいました。なのでその後は何が出てきても肯定派。いやはや新しいオモシロSFタイムトラベルものが観られた~と満足して帰ってきた次第ですw。


TK能力の下りは設定としては面白いのに実はあまり時間旅行自体にはからんで来ないため、全体からみると物足りないとは感じました。しかし「時間軸の因果を断ち切る」という王道かつ希望の感じられる終わり方で、前半とっ散らかした割にはスッキリとまとまっていて見やすいです。映画的にはシドくんの未来に消化不良を感じる点もありますが、逆に余韻を残したこのエンディングにしたことを評価したいですね。


SF本来の理論の積み上げもぶん投げ、そして何よりブルースが強すぎて「結局ダイ・ハードじゃん」っていう力業映画ではありましたが、新しい試みとタイムトラベルの妙の味わえるなかなかの作品だったと思います。そういや結果的に新たなジョセフの魅力も開花しており、ボクのコレジャナイ感も払拭されていましたとさw。


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