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対テロ戦争を利用することで野望を実現しようとする政治家と、女性ジャーナリストとの駆け引きを中心に、志願兵となることを選択した2人の若者と彼らの恩師である大学教授、そしてその教え子との会話と、アメリカに潜むテロ戦争に関する問題を3つの視点で描く。
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原題は『Lions for lambs』。直訳すれば「羊のためのライオン」(?)。これは安全な場所にいる(愚かな)政治家によって危険な戦場に送られる兵士達を揶揄している言葉らしい。
「大いなる陰謀」という邦題や、「人は何の為に戦うのか、人は何の為に死ぬのか」というキャッチのもとアドバタイズされていた予告編/CMからすると、議員の陰謀をジャーナリストが暴くという社会派サスペンス娯楽作だとばっかり。ところが実はオバマ大統領選に向けての民主党応援のプロパガンダ映画。ロードショー公開時期もちょうどそのへん。それによく考えればロバート・レッドフォードだものね。
対テロ戦争の悲惨さ、泥沼さ、そしてそれを収束させる気がないどころか、自らの利権のために利用する政治家像を見せることで、共和党のアホさ加減を強調。こんなん見せられればオバマちゃんに入れたくなるわな。
ところが作品として面白くないかといえばそんなことはない。どころかかなりの面白さ。トム・クルーズ×メリル・ストリープ×ロバート・レッドフォードというハリウッド屈指の豪華キャストによる見事な対話劇に仕上がっている。
・有望(だが愚かな羊)な上院議員とベテラン女性記者。
・志願兵の恩師である大学教授と弁が立つが政治不信を唱えるだけで何もしない学生。
・愚かな上院議員の作戦により死に瀕する有望学生だった志願兵2名
まるで密室の舞台劇のように描かれる独立した3つの視点。それらは絶妙に絡み合わさり「これから我々はテロ戦争をどうしてゆけばよいのか!?」という問題提起を明確に示していく。
そしてそれは政治家やジャーナリズムましてや軍人ではなく、今後国を担っていくべき学生の視点で終わりを迎える。非常によくできた脚本である。
また92分という時間も小気味良い。編集の妙も味わえて一粒で2度おいしい。
ただし本作、これだけ豪華でできのよい映画にもかかわらず、対して目立つこともなく終わりそう。もともとアカデミー最有力とか言われていたのに箸にも棒にもかからなかった。やはり政治的に偏りすぎなのだろう。
評価:★★★★☆
鼻につく部分も多いが、迫真の会話劇が楽しめます。
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