明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【ヒックとドラゴン(2010)】

2012年07月21日 | 映画


【ネタバレあり】

10代の頃は子供らしくSFとホラーばっかり、20代はちょっとした映画ツウを気取って古典からカルトまでなんでも漁り、30代は社会派だったりの難しい題材、難しいストーリーの映画を見て考える(ふりをする)ことが好きでした。で最近、不惑をむかえてみると、そろそろ一周したのか愛やら笑いやら感動やら、単純に楽しめる映画が好きになってきてたりします。先日『リアル・スティール』の感想を書きましたが、こういう分かりやすさが弱ってきたオジサンのツボやら琴線やら涙腺やらを刺激してくるようになっています。ただし目だけは肥えてしまってますので良質なものに限りますけど。

ところでハリウッドのCGアニメってやっぱりピクサーだろうってイメージが強くて、ドリームワークスものって実はあんまり観てなかったりします。そもそも『シュレック』が食わず嫌いだし、有名どころの『マダガスカル』とか『カンフーパンダ』とかも観れば楽しいのだろうけど、個人的にはいまいちマイナー感というか大人向けでない感が拭えなかったりしてました。

そんな理由から『ヒックとドラゴン』も未鑑賞な状態だったのですが、なにげに観てみてビックリ(@_@)!。弱ったオジサンのツボ押しまくりの名作で、疎遠だったことを後悔しました。

「一族のはぐれ者が敵対する異端の者と心通わし、新しい風を吹き込む」なーんて話はよくある内容なんですよ。でもその分かりやすさ単純さを土台に、CGやらストーリーやらを素晴らしく丁寧に積み上げることでアタマ一つ上のレベルに到達していると思います。

ヒックとトゥースの友情がとにかくなんともステキです。おそるおそる伸ばしたヒックの手に、トゥースがそっと額をつける場面の温かさ優しさ。飛翔中「ちゃんと尾びれ制御しろよ」とちょっと不機嫌なトゥースの眼差しから逆に見え隠れする二人のバディ感。言葉は通じずとも心は通い合っているその樣が、どれもがCGアニメであることを忘れるほどの表情の豊かさで描かれ、観ているこちらの頬が自然と緩んでいることに気が付きます。またトゥースが炎の中に落ちていくヒックを追いかける場面は手に汗握るとともにその美麗さに釘付けにされました。

そして言葉は通じても心は通じていない親子のキズナ再生物語や、さらに同じバイキングの子ども達との友情など、これもベタなんですがスゴく温かく楽しく描かれていきます。

また本作の素晴らしさはすべてが終わったあとのエピローグ部分にあると言っても過言ではありません。最後の闘いが終わり目覚めてみるとヒックには片足がありません。これには正直驚きました。ハリウッドの子ども向け作品としてはかなりキワドいものではないでしょうか。そして同じく尾びれを失ったトゥース。その尾びれは元はといえばヒックの発明した武器により失われたもの。これにより二人は同じ傷を負ったものとして本当に一つになれたのです。このエピソードが足されることで、本作を単純なハッピーエンドの子ども向け作品に留めておかないという姿勢が感じられ、作品にも深みを与えています。


98分で無駄がなく、とても見易い名作です。子ども映画ではなく大人も十分楽しめます。そしてトゥースの愛らしさがカワユスすぎます。一周したオジサンはこういうの好きです。


→ 映画レビュー満載の日本ブログ村へ

【ドライヴ(2012)】

2012年07月12日 | 映画


逃がし屋だっていうし、おハナシとしては『トランスポーター』なのかと思って観たのですがだいぶ違いました。

往年のフィルム・ノワールな雰囲気を現代風にアレンジって感じでしょうか。男臭さと哀愁と暴力。でも観終わってみると確かな純愛映画だったのだと実感させてくれる後味があります。

人妻と子どもとのほのかな幸せ場面から一転しての、猛烈に激しいバイオレンス描写は少しヤリ過ぎ感ありですが、口数少なく表情に乏しい主人公の感情の「緩急」というか「明暗」をうまく表わしています。エレベーターでの描写はその表と裏の彼が一つにつながり昇華する素晴らしいシーンで、あのスローモーは特に往年のノワールさが出ていて、監督の好きさ加減が想像できて微笑ましかったです。

でその主人公はと言えば最近噂らしいライアン・ゴズリングなんですが、あとで作品リスト調べてみるまで『ラースとその彼女』『きみに読む物語』の彼だったとは全然気づきませんでした。この2作も口数少ない役でしたが、全く違う役柄がこなせるいい俳優さんなんですねぇ。。。それとも大根なのでセリフ少なく、観客の勝手な想像で補完させるという作戦。。。。そこは『ブルーバレンタイン』を観てから考えることにしますw

童顔のキャリー・マリガンは少しミスキャストだったかもしれません。彼が命を張るだけの説得力が不足。そこだけ残念です。ボクは好みですが。

個人的には冒頭の逃がし屋部分10分間がサスペンスフルでスゴく面白かったので、そこだけ広げた作品が観てみたかったです。


→ 映画レビュー満載の日本ブログ村へ

【リアル・スティール(2011)】

2012年07月08日 | 映画


日本ではあまり話題にならなかった感ありですが、制作にスピルバーグとゼメキスが咬んでいるっていう時点で実はかなり力の入った作品。

なんというかいい意味で「あざとい」映画。直球の親子もので、ダメな父親と息子とのキズナ再生物語。完全にハナシは『オーバー・ザ・トップ』ですね。ああ、監督も『ナイト・ミュージアム』のショーン・レビィでした。つまりそういう系です。そこに近未来SF要素とバリバリかっちょいいCGでロボ入れてって、スタローンとガンダムで育ったボクら世代はストライクでないかな。

最初は「ロボットが闘うボクシングなんてオモロイか?」と思って観たんですが、要はそれ自体がポイントではないんですね。スレ違いながらぶつかりながら同じ目標に向かって努力を積み重ね、親子のキズナを培っていく様を描きたい。その題材として上手にロボボクシングが使われている。ロボットのチューニングは “オタク”である少年が請け負い、本当のボクシングセンスはもとボクサーの父が請け負う。その上で「人に変わってロボが闘うこと」自体の迫力の弱さも “シャドー機能” でカバーするっていうニクイ演出。思った通りにストーリーが進んで思った通りに泣かされた上、きちんと最後にカタルシスを持ってきてハナシが落ちる。難しいこと一切なしで誰でも観られて誰でも楽しめることに徹した作品です。

最近ここまでストレートなハナシって観ないですね。でもこういうのが本当のエンターテイメント映画ですよ。

「右、左、アッパーカット!」日本人向けの演出も「あざとい」です :)


→ 映画レビュー満載の日本ブログ村へ