ジェリー・ブラッカイマーとマイケル・ベイに気に入られてしまったがために一度奈落の底を見てきたベン・アフレックの監督・脚本・主演最新作です。前作『ザ・タウン』でもその手腕を高く評価されていた彼ですが、こちらは大変サスペンスフルで面白いと感じながらも私的には「オレカッコイイ感」がちょっと鼻につく作品でした。その点この『アルゴ』はとても良いです。CIAの逃がし屋として口数少なく奮闘する彼の姿は、「オレカッコイイ」でなく「誰が見てもカッコイイ」と感じられるものとなっていました。本作でついにベン・アフレック完全復活と言える出来。それどころか一周回って別のレベルにアップした感じですよ。顎が割れている人には勝手に大味なイメージがあるのですがw、『グッド・ウィル・ハンティング』の脚本からしてもともと才能のある彼なので、今後はレベルの高い作品をたくさん生み出していってくださることでしょう。大期待です。
さて本編ですが、イラン革命でのCIAによるアメリカ大使館人質救出作戦のお話。ニセの映画撮影の企画を立ち上げ、人質をロケハンスタッフということにして国外脱出させちゃおう!というぶっ飛んだ作戦。これが実話だっていうのだからアメリカっていう国には本当に驚く。一歩間違えば殺されかねないという緊張感と作戦を成功させるためとはいえその準備に費やす大人の悪ふざけのバランスが絶妙。こんなフザけた作戦が現実に行われたのも、バカSFに湯水のようにお金がつぎ込まれていた80年台のハリウッドだからこそ現実味があるのでしょう。ワーナー映画なのに20世紀FOXの『スターウォーズ』や『猿の惑星』が作中で使われているのもリアルさを追求してます。
開始冒頭イラン革命周辺事情について淡々と説明が入るので、こりゃあ予習が必要だったかしらんと少し身構えたのですが、これらの部分については誰でも分かるよう非常に簡潔に説明され安心です。しかも政治的な背景の描き方もイラン、アメリカ双方に中立的で、よくある「イスラーム人は野蛮で武装した悪!」「アメリカの石油狙いの暗躍を暴く!」的な部分は完全に薄められ、あくまでも脱出劇の中、現地で奮闘する人々の目線で物語が描かれています。作品全体から漂う「これは社会派映画なんぞではなく娯楽サスペンスなんです!」という心意気に非常に好感が持てました。
実話ベースで結論が分かっていてもこれだけ観せられる作品というのはやはり監督の力量と言わざるを得ないです。突拍子もないまさに映画のような話。大変面白かったです。あとジョン・グッドマンはいつも最高。
「ARGO fuck yourself!」
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