明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【極道めし(2011)】

2012年12月23日 | 映画



獄中で繰り広げられる「正月おせち争奪・シャバでの美味い飯思い出大会」。くだらない、しょーもない、かわいらしい話です。

原作の評判は認識していましたが未見、こんなお話だったのですね。グルメ漫画としては少々異色の設定が興味を誘い、これならさぞ漫画としても面白かろうと感じました。ただこの映画に限って言えば「極道めし」というよか「ムショめし」といった風情。みんなチンピラ程度で極道って感じではありません。

美味い飯の思い出話ですので延々と食べるシーンが続きます。オムライス、カレー、カルボナーラ、イカ・エビ・ホタテの浜焼きに、味噌仕立てのすき焼きと、たしかにこれはコンセプトどおり「ゴックン」ときますね。ただ個人的に一番ウマそうと思ったのが一番最初の黄金めしの話でしたので、それ以外のメシでは微妙にテンションがたもてず。お話の最後に向けてどんどん美味さ/巧さがUPしていってくれると盛り上がったかと思います。

また残念ながら「感動=美味い」ではないため、「ゴックン」の評価に説得力が不足。そのへんのバランスがキチンとれていたのもやはり最初のホストくんのお話が唯一だったかと思います。ただし食い物の話とそれぞれのエピソードの見せ方は飽きさせず良い感じです。また単純にハッピーエンドで終わらせなかったところも高評価かと思いましたね。小さな幸せにも手が届かない切なさがこの作品のテーマですから。

お金もかかってなさげで作りとしては大変チープですが、そこはそれ邦画の得意分野といったところ。麿赤兒さんやら勝村さんやら個性派俳優の存在感と若手俳優陣のパワーで魅せてくれます。あわせて最近話題の木村文乃さんの可愛さも大変目の保養になりました(♡o♡)。地味なので映画館の大画面でみる感じでもないですが、冬の夜長におうちでレンタルで観るにはぴったりです。ただ夜中にハラが減ってしまうのでダイエット中の方にはおすすめできませんw

あと、キャベツは試す価値ありそうです。


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【最強のふたり(2012)】

2012年12月16日 | 映画
 


噂のフランス映画をやっとこさ鑑賞しました。真反対の境遇二人によるバディものなので基本的には安牌ですね。もちろん十分期待した通りの作品でしたが、結果それ以上のものを魅せていただけた気がします。

社会的通念や常識、差別や偽善を越えて、人と人が出会い自然に感情が紡がれていく様が気持ちよく描かれています。映画的に楽しいドリスの破天荒な魅力はもちろんですが、フィリップのドリスへの接し方、例えば寄り添うところは寄り添い叱るところは叱るという、一人の人間として彼を尊重する距離の持ち方の素晴らしさに唸りました。そんな中でドリスも成長していく様がとてもステキに思います。

そんな感動作ではありますが、それ以上にこの手の障害者を扱った映画としては大変非凡な出来となっています。全編earth wind & fireのディスコサウンドが散りばめられ、冒頭から「September♪」に載せてマセラティが疾走、刑事サスペンスものにも負けないカーチェイスが繰り広げられます。時にはクラッシック音楽から一変し「boogie wonderland♪」で皆が踊りまくったりと終始ノリノリのシーンが楽しいです。また二人のやりとりもまるで漫才の掛け合いのようで最高です。障害者ものとしては不謹慎と思われかねないシーンも多いですが、それがそのまま二人の絆の深さを魅せる場面となっていますね。しかし若干シモネタが多いのはドリス故のご愛嬌ということでww。数年前のフランス映画『潜水服は蝶の夢を見る(2007)』も同系の作品と言えますが、どちらも観客の心に重荷を感じさせず個人の尊厳についてサラリと魅せてくれるところはさずがオシャレの国の映画といったところ。日本でもハリウッドでもなかなか作れない空気感かと思います。

原題は『INTOUCHEABLES / UNTOUCHABLE』ですので意味が何重にもかかっていて深い題名と思いますが、これを『最強のふたり』とした邦題は、安易なようでいて実はよく考えらておりこれも成功した要因かと思います。またそもそもフランス映画らしくないフランス映画ですので、ハリウッドのリメイクもうまくいくのではないかな。そちらも楽しみです。

最後の映像は反則ですよ~。現実と映画がリンクして涙が止まりません。


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【カラスの親指(2012)】

2012年12月12日 | 映画



阿部寛さんの相棒にあの元祖スベリ芸人村上ショージさんを起用というチャレンジブルなキャスティングが話題の作品。そしてこれが面白い感じに成功しています。

いわゆるコン・ゲームもので詐欺師のお話なのですが、ストーリーの巧妙さやピリピリとした駆け引きの緊張感を魅せるというよかは、家族ものの要素を足し合わせることで全編ゆるやかでホンワカとしたホームドラマを見ているような気持ちにさせてくれます。

今回ショージさんは関西弁を封印し全編標準語にチャレンジしています。トツトツと話すそのセリフ回しには冒頭その大根役者ぶりに少々心もとない気もしますが(失礼っ!)、(そもそも出演者に大根さんが多いのでw 更に失礼っ!)それもすぐに気にならなくなり、そのなんとも言えない暖かさから逆にそれが作品の魅力に変わっていきます。

コン・ゲームとしてもお金の準備、小道具の説明など作戦の準備段階を丁寧に描き、玄人素人混合チームとしての役割分担の面白さなども十分で、非常に分かりやすく仕上がっています。逆に分かりやすすぎると思うところもありますが、それは最後に観客も騙すための伏線。よく出来ています。

160分という長尺のため見慣れた人には考える猶予がありすぎて少々オチバレしてしまうでしょう。ただそれでも飽きずに観られるのは、本作自体がコン・ゲームでありながらも家族モノとしてゆったりした空気感を味わうことを狙った結果かと思います。同系作品として9月に公開の「鍵泥棒のメソッド(2012)」は職人内田けんじ監督の渾身の一作としてその巧みさが面白かったですが、本作はまた違った魅力のある作品となっており観て損はしないと思います。

村上ショージさんはこの作品でブレーク!次々と話題作にオファー!とはならないと思いますがw、ステキな役者さんとしての一面を魅せていただけました。もちろん阿部ちゃんは手堅いし、小柳トムさんの息子もよかたーです。それより、、、なにはともあれ能年玲奈が超カワイイ。明らかにそのカワイさを見せるがためだけのカットが何箇所もあり彼女のPVとしてもおすすめ。姉役の石原さとみさんもステキなのですが今回は若さと健康美には勝てませんですw


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【悪の教典(2012)】

2012年12月06日 | 映画




“みんなの海猿”伊藤英明くんを主役に据えることで一般大衆へのエントリバリアを下げながら、裏では三池監督を採用することで「普通の人に(も)すごく不快なものを見せてあげよう」という意図が感じられ大変微笑ましい作品。ボクの周辺では評判悪かったのですが、やっぱり興味があったので観てきました。


ところでサイコパスという言葉はもう一般的になったのでしょうか。もともとボクはそれほど異常犯罪者について興味や造詣が深かった訳ではないのですが、10年ほど前にロバート博士の『診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち』を読み25人に1人がサイコパス(アメリカで。日本ではこの10分の1と言われる。)であるという記述を読んでからはがぜんそちら方面に興味が湧きました。以後あれこれと関連書籍、関連映画を漁るようになり、特に『アメリカン・サイコ(2000)』でクリスチャン・ベール演じる主人公のサイコぶりを観て自身の理解の及ばない人間への恐怖をまじまじと感じたのを覚えています。(まああの作品はブラックコメディとして観るべきかもですが。あの狂ったナルサイコの演技がすばらしくて、クリスチャンペールを追っかけてきたらこんなに大きく育ちましたw)

さてこの『悪の教典』なのですが、全編に渡りサイコパスの特徴がきちんと網羅されており好感が持てます。

・他人への愛情や良心を持たない。(自分へも)
・しかし口達者で一見魅力的に見えるよう装っている
・他人を目的達成の手段、物としか考えていない
・この世をゲーム程度にしか考えていない
etc.

ただし面白くないと言えばそうでもないのですが、いかんせん行儀良すぎる映画に感じました。単純にサイコパスってこういう人だよってのを教科書的に見せられた感じです。ですので「サイコパスを知らない普通の人に不快なものを見せる」という意味では成功作なのかもしれませんね。

映画前半はその特徴の羅列に終始し、後半はというと学園全体を巻き込んだジェノサイドが繰り広げられるのですが、三池監督ながらの直接的な残酷描写は少なく殺戮方式もショットガンのみのため全体的に単調です。これはエントリバリアを下げたが故の配慮なのでしょうが三池節が薄くサミシイ想いをした人が多かったろうと思います。また残念ながらストーリー展開としても練られた感が薄く、例えばもっと生徒一人ひとりの特徴を生かした攻防戦などがあってもよかろうもんと思います。画的にもバトルロワイヤル亜種に見えているのも残念です。また終わりのハスミンの行動もありがちでイマイチ新鮮味はありません。このへん原作ではどうなのでしょうか。あの分厚い2冊組なのでそのへん深められているのだろうと想像しています。

あと一つ気になったのがショットガンに“目”が出てくるところです。あくまでもサイコパスってのは感情浅く冷静な状態であの行動を行なっているのが基本。実際生徒たちを淡々と殺していく姿はその点を描いているはずなのですが、あの“目”が出てくることでハスミンが狂っているようにも見えてしまいサイコパスの本質がブレてしまっています。本編の中ではアメリカでのシーンでわざわざ殺人快楽者との違いも描かれていましたので、この点大変残念に思いました。

一方、伊藤英明さんの演技はとても良かったです。海猿でみるアツい男から一変、全編抑えた演技の中、魅力的なサイコパスを演じきっていました。新境地として十分ですね。この映画で得したのは彼だけかもw


この映画、ボクみたいな犯罪者映画が好きな人が観ると不足感があり、伊藤英明を入り口として入ってきた一般の人には不快でしかない(like大島優子)作品になってしまったのかと思います。BeeTVでやった<序章>がTSUTAYAでレンタルされているようですのでそちらを観るとまた感想が変わってくるかもしれません。


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【ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012)】

2012年12月02日 | 映画



【ネタバレあります :-)】

各種企業におけるエヴァコラボ企画や街中にあふれるエヴァグッズを見るにつけ、ああこのアニメはもう日本のひとつの文化になっちまったのだなと感じます。その反面こんな訳のわからないカルトアニメが一般に受け入れられている様子をいまだにいぶかしがっている自分も同時に存在していたりします。一連のジブリ作品のように“誰もが楽しめるアニメ”ではないはずのオタク(ロボット)アニメであるこの『エヴァンゲリオン』は一体誰が支持しているのでしょうか。うちの嫁を今回の新作に誘ってみても「そんなオタクアニメ観ないわよ」と一笑に付されてしまうこの悲しさw。支持している側のオジサンであるボクはあいかわらず頭を抱えていますw。

さて、なんにせよ再びエヴァが観られる喜びを噛み締めながら、嫁に振られたボクはもう一人のオタクのオッサンと共に観に行く事としました。

「リビルド(最新技術での焼き直し)」を標榜して制作が始められたヱヴァンゲリオン新劇場版シリーズですが、『序』『破』は原作アニメを少しいじった程度でしたので安心して観ていられましたが、なぜかこの『Q』は冒頭から完全新作になりました。しかも本シリーズのお家芸である「細かいことは説明しないので行間は勝手に想像で埋めてください」が大炸裂です。いや逆に今回は「行間だけ見せて本編は観せません」ぐらいのレベル。こりゃあ唖然、スゴイ。なので冒頭から「さあまた始まりやがった」と思い、ストーリーの理解は放棄し日本最高峰のアニメをカラダで感じて鑑賞することとしようと決めたのですが、ワケワカラないながらも結局あれこれ考えたりこねくり回したりしてしまう悲しい性。しかし判らないながらも迫力は充分。緻密な作画で次々と繰り広げられる新しい映像世界の数々に最初の戦闘シーンからすっかり引きずり込まれてしまいました。この無限地獄を楽しいと思ってしまう人たちがこの作品を支えているのでしょうなぁと納得。

まあそんな状況でも朧気ながら話の全貌が分かってきます。今回観客にもシンジくんにも一番やさしいwカオルくんがこの14年間で何が起こったのかを少しだけ説明してくれます。『破』のラストではやはりサードインパクトに近いことが起こり地球はさらにハチャメチャに崩壊しています。さらにネルフ(ゲンドウ)が地球を守る組織でもなんでもないことに気がついた人々が、旧ネルフメンバを中心にヴィレという組織を作り反旗を翻したらしいということと、分かったのはそれぐらいですかね。最初のシンジ救出作戦と最後のほうのリリス(だったもの)とかカシウスの槍とかの辺のやりとりはポカーン (|| ゜Д゜) ハァ?です。あとは頭のいい人達のブログが解明していってくれるでしょうからしばらくはそれで楽しめそうです。

ところでこのヱヴァンゲリオン劇場版ですが「序破急」ということもあり、もともと三部構成と言われていました。つまり結局エヴァってのは自と他、個と全体について描かれた物語であった訳です(よね?)。それが人(リリン)とL.C.L.(生命のスープ)の境界線(ATフィールド)であり、ゼーレの描く人類補完計画とはその境界線をリセットし、すべての人類(リリン)が一つ(リリス)に戻るということを目指していました。それをシンジくんの心情風景に照らしながらお話を紡いでいった訳です。つまりこれはいわゆるワンネス思想であり、2012年12月22日に起こると言われているアセンション(次元上昇)に関係してきます。そのため最終話と期待していた本作をわざわざ2012年末を狙って完結させるのであろうと思っていたのです。ところがエヴァという作品は私の想像できる範囲で終わる作品ではなかったようです。

結局4部作になり次作 は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が題名とのこと。でこの『:||』ですが、映画の最後のいつものミサトさんの予告で見てナンジャラホイと思っていましたが、楽譜の繰り返し記号であるというのが正解のようです。神の領域に踏み込んで次元も超越したお話が描く先と言えばもうタイムリープですよねやっぱり。カオルくんが「同じ事を何度も繰り返せば良い。自分がいいと思えるまで」って言っていたのがとても気になります。しかも題名の記述も『シン・エヴァンゲリオン』に変わっていますし。まああちこちのブログでも似たような考察が出てきてますが、あのエヴァがそんな簡単に観客の予想通りのことをしてくるのかってのも無いような気もしますので、さらにさらに裏をかいてきて欲しかったりします。つまりは次回作がとても楽しみだってことですよ。ところで最終回は逆にメチャクチャ親切で分かりやすいエヴァを作ってみるってのはどでしょうか、庵野監督さま。


あとマリの「グランプリの鷹」がストライクで笑いました。当時は「マシーン飛竜」のが好きだったのですがw




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