明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2012)】

2012年05月03日 | 映画


【ネタバレあり】

留守電に残る「Are You There?」という父からのラストメッセージ。それを受け取る事を拒絶した少年は、花瓶の中に見つけた鍵が指し示す先に父の真のラストメッセージがあると信じます。

現実から目をそらし心を封印し、自分に厳しく母にも辛く当たりながら自分の心の鍵穴を探し続ける少年。かの隣人に心情を吐露し、それが苦しみの洪水と化していく場面は子どもながらに、いや子どもだからこそ無防備で直接的に痛々しく、心を揺さぶられるというよりも観ていてかなり呆然とさせられてしまいました。

父を亡くして苦しむアスペルガー(の疑い)の少年が主人公という設定から、前半はかなり重苦しいものがありますが、途中から旅のお供となるマックス・フォン・シドーの暖かでユーモラスな演技により後半は小さな冒険もののような楽しさへと変わっていきます。また映像としてはほとんど登場しないはずのトム・ハンクスですが、その父としての存在感が作品全体を通してみごとに感じられ、身勝手に見える少年の行動も父目線で応援したくなります。

そして少年の喪失の旅路の先には、結果、求めていたものは見つかりませんでしたが、実はそれは彼を見守る深く暖かい愛を発見する旅路でありました。ものすごくうるさくて、ありえないほど近い存在。母親とはそういうものなのでしょう。


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