<2022年1月14日>
2022年1月14日は10サンプルを分析した(図1a)。試料ごとのばらつきはやや大きかったが、センダンの果実と種子が多い糞が多かった。果実と種子が増加した。また量は多くないが鳥の羽毛、ネズミの肋骨部分、カエルと思われる骨などが検出された。また輪ゴム、ゴム栓、プラスチック袋(菓子類などを包む薄い膜状のもの)など人工物が%検出された。センダンの種子のほか、ムクノキ、エノキの種子も検出された(図1b)。多くはないがゴム製品などの人工物が検出されている(図1b)。
図1a. 2022年1月15日の糞組成
図1b. 2022年1月14日の検出物
<2022年1月25日>
2022年1月25日に採取した糞11個を分析した。多くの試料でイネ科の葉が検出された(図1c)。イネ科の葉は消化しないまま排泄され、面的なため、ポイント枠法では過大に評価されるので、実際に食べた量はそれほど多くないと推察される。種子としてはムクノキとエノキが検出され得たほか、サンプルNo. 1からはカキノキの種子が検出された(図1d)。不明の種子も少数あった。またコメの種皮も検出された。
図1c. 2022年1月25日のタヌキの糞組成。番号は試料番号(順不同)
ユニークなサンプルとして、サンプルNo. 8はムクノキの種子が多数含まれたほか、ヤママユと思われるガの繭(まゆ)が検出された(図3b)。これは高槻の経験では初めての記録である。またサンプルNo. 11からはカニの体の外骨格が、またサンプルNo. 8からは輪ゴムが検出された。
図1d. 2022年1月25日のタヌキの糞からの検出物
1月15日から10日ほどしか経っていないにもかかわらず、内容が大きく変化し、イネ科の葉が増え、種子が減少し他ことから、タヌキの食糧事情は悪くなってきたと考えられる。
<2022年2月18日>
2022年2月18日に採取したタヌキの糞10個を分析した。サンプルごとの変異が大きく、エノキ、ムクノキなどの種子が過半量を占めたものが3例、人工物が過半量を占めたものが2例、イネ科の葉が過半量を占めたものが2例、カニが過半量を占めたものが1例などあった(図2a)。
図2a. 2022年2月18日のタヌキの糞組成。番号は試料番号(順不同)
検出物は動物としては鳥の羽毛、カニの外骨格などがあった(図2b)。羽毛が検出されたのは1例だけであったが、鳥の死体を食べたのかもしれない。カニの外骨格は赤色であったので、ベンケイガニであるかもしれない。量は多いとは言えないが、出現頻度は10例中4であったから、タヌキは池でカニを探して食べているのかもしれない。種子としてはエノキ、ムクノキが多く、センダンもあった。オニグルミの果皮のような硬いスポンジ質の果皮もあった。直径5 mmほどある落葉広葉樹の枝先も検出された。人工物としてはチョコレートなどのアルミ包装紙、食品の包装紙、ゴムのような柔らかい人工物、いわゆる「レジ袋」、輪ゴムなどがあった。食品包装紙には「伊藤園」という文字が確認できた。また皮革製品があったが、片側に白い塗装があり(皮革製品1)、糸がついたもの(皮革製品2)もあったので靴の一部ではないかと思われた。
図2b. 2022年2月18日のタヌキの糞からの検出物
人工物では皮革製品が多かったが、皮革製品の検出例は他の場所でもある。タヌキはその匂いを嗅ぐと動物の体の一部と思って食べるのかもしれない。皮革製品は片面が白い塗装をしたものや糸がついたものがあったので、靴などであるかもしれない。これらは当然全く消化されておらず、量的に多い場合はタヌキの健康上の問題もあるかもしれない。種子はムクノキとエノキがこれまでと同様に検出されたが、1例ではセンダンもあった。エノキ、ムクノキの果実はすでに樹上にはないから、タヌキは地上に落ちた果実を探して食べるものと考えられる。今回はカニを含むサンプルが4例あり、1例では54.7%に達した。またイネ科の葉が多く検出されたのが2例あった。
<2022年3月>
2022年3月9日と11日に回収した糞を分析した。今回もサンプルごとの違いが大きかった(図3a)。種子は少なくなり、脊椎動物の骨が増加した。種子はエノキが少しと、センダン、ムクノキが10個の糞のうち1粒だけあったに過ぎない。骨は太く、ヒキガエルの四肢骨と思われるものが多かった。細かく破砕されていたが、識別できるものもあり、椎骨、指骨もあった(図3b)。糞回収地の近くに白幡沼があり、ヒキガエルはよく見かけられる。節足動物の外骨格と思われる小さな半透明の剝片が多かった。ただし先月このカテゴリーに多かったカニの甲羅は検出されなかった。イネ科の葉がコンスタントに出て、量的に多いこともあった。人工物としてはプラスチック、ゴム紐などがあったが、2月よりは少なくなった。
図3a. 2022年3月のタヌキの糞組成(%)
主要な検出物を図3bに示した。前肢骨?としたのは、哺乳類には見られない中空構造でカエルの前肢である可能性がある。今後確認したい。
図3b. 3月の主要な検出物. 格子間隔は5 mm
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