Good looks versus survival: Antler properties in a malnourished sika deer population
「かっこいい?」それとも「生きる?」:貧栄養なニホンジカ集団の角は健康な集団の角とどうちがうか
シカの角(antler)はオスジカの視覚的ディスプレーとして機能し、実際に角を絡めて突き合わせて押し合いをする武器でもあり、順位を決める上で重要である。したがってオスは見かけが立派であり、長く、丈夫な角をもつほうが繁殖成功を高めるのに有利。しかしウシ科などの角(horn)と違い、毎年落ちるからコストがかかる。もし資源が乏しいと、そのような角をもつことと生存の両立がむずかしくなる。
この研究はシカが高密度にいる島のシカの角に何が起きるかを調べる。そのために栄養状態のよい本土集団と角の長さ、周、密度を比較した(図1)。ポイント(枝)は1歳では本土、島とも1本だが、2歳になると本土は2本以上になったが、島では1本だった。その後島が本数が少ないが、5歳になるといずれも基本4本になった(図2)。長さは本土では1歳の200mmから直線的に増加し、5歳以上で400mm以上になった。島では2歳までは<50mmで、その後長くなって6歳以上で400mm前後になった(図3)。重さは本土では1歳の20gから6歳で>400gになったが、島では1,2歳は<10 gで、その後増加して200 gほどになった(図4)。密度は年齢、長さに無関係で島は本土より小さかった(図5)。体型/長径比も年齢、長さに無関係で島が小さく、偏った楕円形であった(図6)。同じ重さであれば、島の方が長く、より「スリム」であった(図7)。枝の重量比は島のほうが大きかった(図8)。
このように、島のオスは貧栄養環境下で角への投資は抑制しながらも、バトルのための機能を最大化しようとしているようだ。

図1 計測部位

図2 年齢とポイント数(○本土、●島)


図3 年齢と角の長さ(○本土、●島)

図4 年齢と角の重さ(○本土、●島)


図5 年齢と角の密度(○本土、●島) 角の断面

図6 年齢と断面の長径/短径の比(○本土、●島)

図7 重さと長さの関係(○本土、●島)

図8 角全重に対する枝の重さの割合(□本土、■島)
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