私の書いた本のうち主要なものを一般向け、専門書に分けて新しいものから古いものへの順に紹介します。末尾にはリストをのせました。
<一般向け>
「ホネホネ博物館」2014,

麻布大学の標本をたくさん紹介できました。
『唱歌「ふるさと」の生態学』, 2014. ヤマケイ新書

前から暖めていた唱歌「故郷」の歌詞を読み解くということをしてみました。少し背伸び気味に社会のこと、文化のこと、歌のことについても書きました。歌好きとしては楽しい体験でした。
「動物を守りたい君へ」2013, 岩波ジュニア新書

2006年に「野生動物と共存できるか」を書きましたが、その後、少し違う視点で若い人に動物のことを考てもらいたいと思い、この本を書きました。家畜やペットについても考てもらうように書きました。
「北に生きるシカたち」復刻版 2011, 丸善書店

1992年に書いた初版はその後増刷されないでいましたが、どうぶつ社の閉鎖にともない丸善書店から復刻出版されました。
「捕食者なき世界」2010. ウィリアム・ソウゼンバーグ、野中香方子訳(高槻解説)文藝春秋社

自然界の食物でつながる構造を考えたとき、生産者である植物、それを利用する草食動物、そしてそれを食べる肉食動物がいることは頭では理解されている。実際にはさらに肉食動物を食べる肉食動物もいるし、つながりは線というより編み目のように複雑だが、基本構造はそうなっている。この肉食動物がいなくなった場合にどういうことが起きるかを、実例を紹介しながら紹介し、そのおそるべき事例を解説する。高槻はこれの解説を書いた。内容はかなり難解な部分を含むし、「堅い理系」の本のわりにはよく売れたらしい。
「野生動物を見る2つの視点」2010. 南正人と共著. ちくまプリマー新書

同僚の南さんとの共著で、南さんは金華山のシカのプライバしーに立ち入った研究事例を、高槻は同じシカでも植物との関係を紹介し、ひとつの動物でも視点が違えば異なる調べ方があり、それらを統合することでシカが立体的に理解できることを説明しました。そのほか学生との調査や展示活動のことなども紹介しました。全体を貫くのは「生き物へのレスペクト」です。
「ヒトと動物の関係学, 4. 野生と環境」, 2008. 池谷和信・林良博(編)

高槻は「ヒトに翻弄されるアジアの野生動物 - 有蹄類を中心に」としてモンゴルのモウコガゼルやニホンジカと人間のかかわりを分担執筆しました。
「野生動物と共存できるか」2006. 岩波ジュニア新書

保全生態学を紹介するために、具体的な事例を紹介しながらやさしく解説しました。おかげさまでよく読まれて、2015年3月段階で7刷になりました。うれしいことに、この本の一部は中学生の国語の教科書にも採用されました。そして中学や高校の入学試験の国語の問題としてよく引用され、2007年には全国で一番よく引用された本に選ばれました。表紙はツキノワグマの線画ですが、木村しゅうじ画伯による描きおろしです。
「ヒトと動物」2002. 林 良博、近藤誠治との共著、朔北社

ヒトと動物との関係というとき、動物には大きく分けて、家畜、ペットそして野生動物があります。このそれぞれにさまざまな問題がありますが、高槻は野生動物について、絶滅の問題、増えすぎて問題になっている動物などをとりあげて紹介しました。
「歯から読みとるシカの一生」1998. 岩波書店

「自然史の窓」というシリーズの一冊で、小さな窓から大きく、深い自然を読みとこうという趣旨で作られた。私は自分が研究してきたシカの一生が1本の歯につえこまれているというおもしろい研究を紹介した。生物学のなかで「過去のもの」とされがちなナチュラルヒストリーは「自然誌」とも「博物誌」とも訳されるが、その精神は被造物を賛美することにあり、当然よく観察することなしにそれはできない。生物学が進歩しても、生物が神の創造したものではないことがわかった今でも、生物をよく観察することの重要性はかわっていない。そういう精神を記した。
「北に生きるシカたち」1992. どうぶつ社

この本は私の処女作で、30代を費やした岩手県五葉山での調査を、成果だけでなく、フィールトワークと何を考えて調査をしたか書いたものです。すぐに売り切れて困っていましたが、2014年に丸善書店から復刻されました。
<専門書>
「動物応用科学の展開」2011. 培風館
麻布大学獣医学部動物応用科学科の教員が中心となって書いた一種の教科書で、高槻は「リンク学」の提唱を書きました。動物応用科学や獣医学ではおもに動物の個体レベル以下の生物現象を扱うのに対し、生態学は個体以上の現象を扱うこと、その中でも私は、生態系全体という漠としたものではなく、種間のつながりがとくに重要だと考えていることを書きました。シカが群落を変えることや、ゾウが種子散布をすること、放牧が訪花昆虫を減少させることなどは、こうした例であり、それを私は「リンク学」と呼ぶことを提唱しました。
「Sika Deer」2009. eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki, K. Kaji. Springer-Japan

アメリカのD. R. McCulloughさんはシカの個体群学の大家ですが、彼は日本の研究者によるニホンジカの研究のレベルの高さに感銘を受け、しかしそれらの成果が日本語で書かれていたり、欧米人が目にしない雑誌に書かれているので、もったいないということから、ぜひまとまった英語の本を出そうと考え、高槻と梶光一さんに声をかけて編集をすることになりました。原稿集めから添削、修正に3年くらいがかかったと思います。金華山のシカも紹介されることになりました。
「シカの生態誌」2006. 東京大学出版会
長年研究してきたニホンジカについて総括的な書物となりました。ひとつの哺乳類についてこれだけの本が書かれたのはサルを除いてはないといわれています。内容は自分の調べたシカの食べ物や植物との関係が主体ですが、共同研究者の南正人さんや大西信正さんの研究にもページを割いたほか、ニホンジカの遺伝学や日本の哺乳類の歴史や、人間社会と野生動物の問題などにも言及しました。東大出版会のNH(Natural History)シリーズのひとつとなったことを誇らしく感じています。
「哺乳類の生物学,5.生態」1998. 東京大学出版会

「哺乳類の生物学」という5巻シリーズで私は粕谷先生と監修をしました。そしてその5巻を担当して生態学を書きました。ここでは哺乳類をとりあげながら、生態学の基本的な概念、生息地、個体群、食性、種間関係、保全などをとりあげました。日本の教科書で、哺乳類の生態学がまとまって紹介されたのはこれが最初です。
***********************
1 高槻成紀.1985.共著 「現代生物学大系,12b,生態B」
2 高槻成紀. 1986. 猟師にきいたシカの話.
3 高槻成紀.1991. 草食獣の採食生態-シカを中心に-. 朝日稔・川道武男(編)「現代の哺乳類学」:119-144.
4 高槻成紀.1991. 胃内容物からみた食性:37-48. 「カモシカ,氷河期を生きた動物」
5 高槻成紀.1992. - 「北に生きるシカたち」
6 高槻成紀.1993. 有蹄類の食性と植物による採食適応. (監修 川那部浩也,編 鷲谷いづみ・大串隆之)「動物と植物の利用しあう関係」:104-128,
7 高槻成紀.1996.共著 - (樋口広芳,編)「保全生物学」
8 高槻成紀.1996.共著 - 「森林の百科辞典」
9 Schulze, E. -D., F. A. Bazzaz, K. J. Nadelhoffer, T. Koike and S. Takatsuki.196. Biodiversity and ecosystem function of temperate deciduous broad-leaved forests. (eds. H. A. Mooney, J. H. Cushman, E. Medina, O. A. Sala and E. -D. Schulze) "Functional Roles of Biodiversity: A Global Perspective",
10 高槻成紀.1997. 東北地方のササと雪. 小島圭二・田村俊和・菊池多賀夫・境田清隆(編)「日本の自然,地域編2,東北」:70-71,
11 高槻成紀.1997. 信仰の島・金華山のシカと植生. 小島圭二・田村俊和・菊池多賀夫・境田清隆(編)「日本の自然,地域編2,東北」:107-109,
12 高槻成紀.1998. 「哺乳類の生物学,5.生態」
13 高槻成紀.1998. - 「自然史の窓,2.歯から読みとるシカの一生」
14 高槻成紀.1998.共著 (沼田真,編)「自然保護ハンドブック」
15 高槻成紀.1999. シカが育てるシバ草原. 「種子散布,助けあいの進化論,2」上田恵介(編著);65-85.
16 高槻成紀.2001.共著 動物との相互関係からみた植物群落. 生態学からみた身近な植物群落の保護大沢雅彦(監修)協会,編集.
17 高槻成紀.2002.共著 - 「五葉山」
18 高槻成紀.2002.共著 野生動物. 「ヒトと動物」;48-171.
19 高槻成紀,共著. 2003. - 「生態学事典」,
20 高槻成紀,共著. 2003. 哺乳類と生態的役割. 「森林の百科」211-224,鈴木和夫,編
21 高槻成紀. 2004. 哺乳類. 「森林保護学」:31-37、朝倉書店
22 高槻成紀,共著. 2005 哺乳類の多様性と標本から読み取ること. 「Systema Natuirae 標本は語る」(大場秀章編):145-186.
23 高槻成紀. 2006. - 野生動物と共存できるか-保全生態学入門-
24 高槻成紀. 2006. - シカの生態誌
25 高槻成紀. 2006. 植物による草食獣の採食に対する生存戦略.「プラントミメティックス~~」監修,甲斐昌一,森川弘道:590-599. プラントミメティックス-植物に学ぶ-. 甲斐昌一・森川弘道. 監修:590-599.
26 高槻成紀. 2007. 「夜の目」代わりのすぐれた道具. 自然の見方が変わる本
27 高槻成紀・山際寿一、編. 2008. 日本の哺乳類学, 2 中大型哺乳類・霊長類.
28 高槻成紀.2008. ヒトに翻弄されるアジアの野生動物 - 有蹄類を中心に. ヒトと動物の関係学, 4. 野生と環境. 池谷和信・林良博(編):111-140.
29 Ohnishi, N. M. Minami, R. Nishiya, K. Yamada, H. Nishizuka, H. Higuchi, A. Nara, M. Suzuki and S. Takatsuki. 2009. Reproduction of female sika deer in Japan, with special reference to Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 101-110. Springer, Tokyo.
30 Takatsuki, S. and U. K. G. K. Padmalal. 2009. Food habits of sika deer on Kinkazan Island, northern Japan with reference to local variations, size effects, and comparison with the main island. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 113-123. Springer, Tokyo.
31 Takatsuki, S. and T. Y. Ito. 2009. Plants and plant communities on Kinkazan Island, northern Japan, in relation to sika deer herbivory. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 125-143. Springer, Tokyo.
32 Ito, T. Y. , M. Shimoda, and S. Takatsuki. 2009. Productivity and foraging efficiency of the short-grass (Zoysia japonica) community for sika deer. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 145-157. Springer, Tokyo.
33 Ito, T. Y. and S. Takatsuki. 2009. Home range, habitat selection, and food habits of the sika deer using the short-grass community on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 159-170. Springer, Tokyo.
34 Takatsuki, S. 2009. North-south variations in sika deer ecology as a forest-dwelling cervid. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 217-230. Springer, Tokyo.
35 Takatsuki, S. 2009. Geographical variations in food habits of sika deer: the northern grazer vs. the southern browser. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 231-237. Springer, Tokyo.
36 Takatsuki, S. 2009. What is "natural vegetation? A reconsideration of herbivory by wild ungulates. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 239-247. Springer, Tokyo.
37 Yabe, T. and S. Takatsuki. 2009. Migratory and sedentary behavior patterns of sika deer in Honshu and Kyushu, Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 273-283. Springer, Tokyo.
38 Minami, M., N. Ohnishi, A. Okada, and S. Takatsuki. 2009. Reproductive ecology of sika deer on Kinkazan island, northern Japan: reproductive success of males and multi-mating of females. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 297-296. Springer, Tokyo.
39 Minami, M., N. Ohnishi, N. Higuchi, A. Okada, and S. Takatsuki. 2009. Life-time reproductive success of female sika deer on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 319-326. Springer, Tokyo.
40 Takatsuki, S. 2009. A 20-year history of sika deer management in the Mt. Goyo area northern Honshu. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 365-373. Springer, Tokyo.
41 Minami, M., N. Ohnishi, and S. Takatsuki. 2009. Survival patterns of male and female sika deer on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 375-384. Springer, Tokyo.
42 高槻成紀・南 正人. 2010. 野生動物への2つの視点 - ”虫の目”と”鳥の目” ちくまプリマー新書
43 高槻成紀. 2011. 野生動物管理 培風館
44 高槻成紀. 2011. シカの生態学:「リンク学」の提唱 動物応用科学概論
<一般向け>
「ホネホネ博物館」2014,

麻布大学の標本をたくさん紹介できました。
『唱歌「ふるさと」の生態学』, 2014. ヤマケイ新書

前から暖めていた唱歌「故郷」の歌詞を読み解くということをしてみました。少し背伸び気味に社会のこと、文化のこと、歌のことについても書きました。歌好きとしては楽しい体験でした。
「動物を守りたい君へ」2013, 岩波ジュニア新書

2006年に「野生動物と共存できるか」を書きましたが、その後、少し違う視点で若い人に動物のことを考てもらいたいと思い、この本を書きました。家畜やペットについても考てもらうように書きました。
「北に生きるシカたち」復刻版 2011, 丸善書店

1992年に書いた初版はその後増刷されないでいましたが、どうぶつ社の閉鎖にともない丸善書店から復刻出版されました。
「捕食者なき世界」2010. ウィリアム・ソウゼンバーグ、野中香方子訳(高槻解説)文藝春秋社

自然界の食物でつながる構造を考えたとき、生産者である植物、それを利用する草食動物、そしてそれを食べる肉食動物がいることは頭では理解されている。実際にはさらに肉食動物を食べる肉食動物もいるし、つながりは線というより編み目のように複雑だが、基本構造はそうなっている。この肉食動物がいなくなった場合にどういうことが起きるかを、実例を紹介しながら紹介し、そのおそるべき事例を解説する。高槻はこれの解説を書いた。内容はかなり難解な部分を含むし、「堅い理系」の本のわりにはよく売れたらしい。
「野生動物を見る2つの視点」2010. 南正人と共著. ちくまプリマー新書

同僚の南さんとの共著で、南さんは金華山のシカのプライバしーに立ち入った研究事例を、高槻は同じシカでも植物との関係を紹介し、ひとつの動物でも視点が違えば異なる調べ方があり、それらを統合することでシカが立体的に理解できることを説明しました。そのほか学生との調査や展示活動のことなども紹介しました。全体を貫くのは「生き物へのレスペクト」です。
「ヒトと動物の関係学, 4. 野生と環境」, 2008. 池谷和信・林良博(編)

高槻は「ヒトに翻弄されるアジアの野生動物 - 有蹄類を中心に」としてモンゴルのモウコガゼルやニホンジカと人間のかかわりを分担執筆しました。
「野生動物と共存できるか」2006. 岩波ジュニア新書

保全生態学を紹介するために、具体的な事例を紹介しながらやさしく解説しました。おかげさまでよく読まれて、2015年3月段階で7刷になりました。うれしいことに、この本の一部は中学生の国語の教科書にも採用されました。そして中学や高校の入学試験の国語の問題としてよく引用され、2007年には全国で一番よく引用された本に選ばれました。表紙はツキノワグマの線画ですが、木村しゅうじ画伯による描きおろしです。
「ヒトと動物」2002. 林 良博、近藤誠治との共著、朔北社

ヒトと動物との関係というとき、動物には大きく分けて、家畜、ペットそして野生動物があります。このそれぞれにさまざまな問題がありますが、高槻は野生動物について、絶滅の問題、増えすぎて問題になっている動物などをとりあげて紹介しました。
「歯から読みとるシカの一生」1998. 岩波書店

「自然史の窓」というシリーズの一冊で、小さな窓から大きく、深い自然を読みとこうという趣旨で作られた。私は自分が研究してきたシカの一生が1本の歯につえこまれているというおもしろい研究を紹介した。生物学のなかで「過去のもの」とされがちなナチュラルヒストリーは「自然誌」とも「博物誌」とも訳されるが、その精神は被造物を賛美することにあり、当然よく観察することなしにそれはできない。生物学が進歩しても、生物が神の創造したものではないことがわかった今でも、生物をよく観察することの重要性はかわっていない。そういう精神を記した。
「北に生きるシカたち」1992. どうぶつ社

この本は私の処女作で、30代を費やした岩手県五葉山での調査を、成果だけでなく、フィールトワークと何を考えて調査をしたか書いたものです。すぐに売り切れて困っていましたが、2014年に丸善書店から復刻されました。
<専門書>
「動物応用科学の展開」2011. 培風館
麻布大学獣医学部動物応用科学科の教員が中心となって書いた一種の教科書で、高槻は「リンク学」の提唱を書きました。動物応用科学や獣医学ではおもに動物の個体レベル以下の生物現象を扱うのに対し、生態学は個体以上の現象を扱うこと、その中でも私は、生態系全体という漠としたものではなく、種間のつながりがとくに重要だと考えていることを書きました。シカが群落を変えることや、ゾウが種子散布をすること、放牧が訪花昆虫を減少させることなどは、こうした例であり、それを私は「リンク学」と呼ぶことを提唱しました。
「Sika Deer」2009. eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki, K. Kaji. Springer-Japan

アメリカのD. R. McCulloughさんはシカの個体群学の大家ですが、彼は日本の研究者によるニホンジカの研究のレベルの高さに感銘を受け、しかしそれらの成果が日本語で書かれていたり、欧米人が目にしない雑誌に書かれているので、もったいないということから、ぜひまとまった英語の本を出そうと考え、高槻と梶光一さんに声をかけて編集をすることになりました。原稿集めから添削、修正に3年くらいがかかったと思います。金華山のシカも紹介されることになりました。
「シカの生態誌」2006. 東京大学出版会
長年研究してきたニホンジカについて総括的な書物となりました。ひとつの哺乳類についてこれだけの本が書かれたのはサルを除いてはないといわれています。内容は自分の調べたシカの食べ物や植物との関係が主体ですが、共同研究者の南正人さんや大西信正さんの研究にもページを割いたほか、ニホンジカの遺伝学や日本の哺乳類の歴史や、人間社会と野生動物の問題などにも言及しました。東大出版会のNH(Natural History)シリーズのひとつとなったことを誇らしく感じています。
「哺乳類の生物学,5.生態」1998. 東京大学出版会

「哺乳類の生物学」という5巻シリーズで私は粕谷先生と監修をしました。そしてその5巻を担当して生態学を書きました。ここでは哺乳類をとりあげながら、生態学の基本的な概念、生息地、個体群、食性、種間関係、保全などをとりあげました。日本の教科書で、哺乳類の生態学がまとまって紹介されたのはこれが最初です。
***********************
1 高槻成紀.1985.共著 「現代生物学大系,12b,生態B」
2 高槻成紀. 1986. 猟師にきいたシカの話.
3 高槻成紀.1991. 草食獣の採食生態-シカを中心に-. 朝日稔・川道武男(編)「現代の哺乳類学」:119-144.
4 高槻成紀.1991. 胃内容物からみた食性:37-48. 「カモシカ,氷河期を生きた動物」
5 高槻成紀.1992. - 「北に生きるシカたち」
6 高槻成紀.1993. 有蹄類の食性と植物による採食適応. (監修 川那部浩也,編 鷲谷いづみ・大串隆之)「動物と植物の利用しあう関係」:104-128,
7 高槻成紀.1996.共著 - (樋口広芳,編)「保全生物学」
8 高槻成紀.1996.共著 - 「森林の百科辞典」
9 Schulze, E. -D., F. A. Bazzaz, K. J. Nadelhoffer, T. Koike and S. Takatsuki.196. Biodiversity and ecosystem function of temperate deciduous broad-leaved forests. (eds. H. A. Mooney, J. H. Cushman, E. Medina, O. A. Sala and E. -D. Schulze) "Functional Roles of Biodiversity: A Global Perspective",
10 高槻成紀.1997. 東北地方のササと雪. 小島圭二・田村俊和・菊池多賀夫・境田清隆(編)「日本の自然,地域編2,東北」:70-71,
11 高槻成紀.1997. 信仰の島・金華山のシカと植生. 小島圭二・田村俊和・菊池多賀夫・境田清隆(編)「日本の自然,地域編2,東北」:107-109,
12 高槻成紀.1998. 「哺乳類の生物学,5.生態」
13 高槻成紀.1998. - 「自然史の窓,2.歯から読みとるシカの一生」
14 高槻成紀.1998.共著 (沼田真,編)「自然保護ハンドブック」
15 高槻成紀.1999. シカが育てるシバ草原. 「種子散布,助けあいの進化論,2」上田恵介(編著);65-85.
16 高槻成紀.2001.共著 動物との相互関係からみた植物群落. 生態学からみた身近な植物群落の保護大沢雅彦(監修)協会,編集.
17 高槻成紀.2002.共著 - 「五葉山」
18 高槻成紀.2002.共著 野生動物. 「ヒトと動物」;48-171.
19 高槻成紀,共著. 2003. - 「生態学事典」,
20 高槻成紀,共著. 2003. 哺乳類と生態的役割. 「森林の百科」211-224,鈴木和夫,編
21 高槻成紀. 2004. 哺乳類. 「森林保護学」:31-37、朝倉書店
22 高槻成紀,共著. 2005 哺乳類の多様性と標本から読み取ること. 「Systema Natuirae 標本は語る」(大場秀章編):145-186.
23 高槻成紀. 2006. - 野生動物と共存できるか-保全生態学入門-
24 高槻成紀. 2006. - シカの生態誌
25 高槻成紀. 2006. 植物による草食獣の採食に対する生存戦略.「プラントミメティックス~~」監修,甲斐昌一,森川弘道:590-599. プラントミメティックス-植物に学ぶ-. 甲斐昌一・森川弘道. 監修:590-599.
26 高槻成紀. 2007. 「夜の目」代わりのすぐれた道具. 自然の見方が変わる本
27 高槻成紀・山際寿一、編. 2008. 日本の哺乳類学, 2 中大型哺乳類・霊長類.
28 高槻成紀.2008. ヒトに翻弄されるアジアの野生動物 - 有蹄類を中心に. ヒトと動物の関係学, 4. 野生と環境. 池谷和信・林良博(編):111-140.
29 Ohnishi, N. M. Minami, R. Nishiya, K. Yamada, H. Nishizuka, H. Higuchi, A. Nara, M. Suzuki and S. Takatsuki. 2009. Reproduction of female sika deer in Japan, with special reference to Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 101-110. Springer, Tokyo.
30 Takatsuki, S. and U. K. G. K. Padmalal. 2009. Food habits of sika deer on Kinkazan Island, northern Japan with reference to local variations, size effects, and comparison with the main island. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 113-123. Springer, Tokyo.
31 Takatsuki, S. and T. Y. Ito. 2009. Plants and plant communities on Kinkazan Island, northern Japan, in relation to sika deer herbivory. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 125-143. Springer, Tokyo.
32 Ito, T. Y. , M. Shimoda, and S. Takatsuki. 2009. Productivity and foraging efficiency of the short-grass (Zoysia japonica) community for sika deer. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 145-157. Springer, Tokyo.
33 Ito, T. Y. and S. Takatsuki. 2009. Home range, habitat selection, and food habits of the sika deer using the short-grass community on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 159-170. Springer, Tokyo.
34 Takatsuki, S. 2009. North-south variations in sika deer ecology as a forest-dwelling cervid. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 217-230. Springer, Tokyo.
35 Takatsuki, S. 2009. Geographical variations in food habits of sika deer: the northern grazer vs. the southern browser. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 231-237. Springer, Tokyo.
36 Takatsuki, S. 2009. What is "natural vegetation? A reconsideration of herbivory by wild ungulates. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 239-247. Springer, Tokyo.
37 Yabe, T. and S. Takatsuki. 2009. Migratory and sedentary behavior patterns of sika deer in Honshu and Kyushu, Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 273-283. Springer, Tokyo.
38 Minami, M., N. Ohnishi, A. Okada, and S. Takatsuki. 2009. Reproductive ecology of sika deer on Kinkazan island, northern Japan: reproductive success of males and multi-mating of females. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 297-296. Springer, Tokyo.
39 Minami, M., N. Ohnishi, N. Higuchi, A. Okada, and S. Takatsuki. 2009. Life-time reproductive success of female sika deer on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 319-326. Springer, Tokyo.
40 Takatsuki, S. 2009. A 20-year history of sika deer management in the Mt. Goyo area northern Honshu. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 365-373. Springer, Tokyo.
41 Minami, M., N. Ohnishi, and S. Takatsuki. 2009. Survival patterns of male and female sika deer on Kinkazan Island, northern Japan. Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 375-384. Springer, Tokyo.
42 高槻成紀・南 正人. 2010. 野生動物への2つの視点 - ”虫の目”と”鳥の目” ちくまプリマー新書
43 高槻成紀. 2011. 野生動物管理 培風館
44 高槻成紀. 2011. シカの生態学:「リンク学」の提唱 動物応用科学概論
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