高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

研究4.2 その他の動物(海外)ただしモンゴルを除く

2016-01-01 03:20:19 | 研究5 その他の動物
スリランカのゾウと他の有蹄類との資源利用
 スリランカでは農業増産のために開発が進み、森林は過去50年で国土の80%から30%にまで減少した。野生動物は国立公園などに閉じ込められる形になった。アジアゾウもその例外ではないが、乾季になると公園の外に出て農業被害を与え、問題となっている。こうした背景から国立公園内でゾウとスイギュウ、アクシスジカの資源利用を調べた。その結果、乾季にはとくにゾウとスイギュウの資源利用が重複すること、また植物はこれら草食獣の影響を強く受けていることがわかった。公園の管理はこうした種間関係を理解したうえでおこなうべきだと提言した。(Weerasingheとの共同研究)論文69

種子散布者としてのアジアゾウの可能性
 アジアゾウの保全は十分に認識され、活発におこなわれているが、その理由は「絶滅危惧種だから」というものである。私たちはそのことに生態学的根拠を与えるため、ゾウの種子散布者としての役割を示そうとした。そのために上野動物園で種子の消化実験をおこない、その結果と生息地での行動圏利用情報を組み合わせて、種子散布距離を推定した。(Campos-Arceizらとの共同研究。論文106)

スリランカのアジアゾウによる農業被害
 スリランカの農地でアンケート調査をおこない、ゾウによる被害を解析した。被害はほとんどがオスによるものであり、夜に侵入されることが多かった。イネの実ったあとの水田やバナナの葉が伸びる時期など農作物の生育と被害に対応があった。農家の塩や米をおいた部屋が破壊される事故もあった。こうしたゾウ側の情報と農業カレンダーを理解したうえでの被害対策を提言した。論文123

インドサイの種子散布者としての可能性

アジアゾウでおこなったと同じ実験をおこない、種子散布者の可能性を検討した。実験は多摩動物公園でおこなった。種子が消化管を通過して排泄されるのは30時間にピークがあり、小さいサイではやや速かった。回収率は++%程度で、種子散布者である可能性が示された。(野口なつ子との共同研究)

スリランカ熱帯林の哺乳類群集と果実利用
 スリランカのシンハラージャ熱帯林で樹上と樹下に果実をおき、自動撮影カメラによって訪問者を解明した。同時に周囲に同一種のない母樹を選び、果実と未詳の位置を特定した。その結果、樹上と地上で、また昼間と夜間で違う哺乳類が訪問しており、彼らの「すみわけ」が示された。(Jayasekaraとの共同研究)論文85, 105, 122

スリランカのサンバーの食性
 サンバーは熱帯の大型のシカでニホンジカと同じCervus属に属す。その食性は未知であったが、糞分析によってはじめて明らかにされ、グレーザー的であることがわかった。(Padmalalとの共同研究)論文86

チベットのクチジロジカの食性
 北海道大学のチームが持ち帰ったチベットのクチジロジカの糞を分析したところ、食物の主体はイネ科であることがわかった。クチジロジカはシカの中で最もオープンな環境に進出した種として知られ、北アメリカのワピチ(エルク)と同位的であるとされ、それからグレーザーであろうと予測されていたが、この分析はそれを支持するものとなった。論文31
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 研究4.1 その他の動物(霊長... | トップ | その他の動物(食肉目) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

研究5 その他の動物」カテゴリの最新記事