樹庵のお気楽ナビ

チビデビル ルックと
天使キャラ セントの日記です。

「トマシーナ」

2009年07月16日 | 本と雑誌

このブログを書き始めた頃、よくご紹介した河合隼雄先生の本の中で、
ポール・ギャリコの「トマシーナ」を知りました。
河合先生は無類の猫好きだったようです。
樹庵も生まれた時から同じ年の猫と過ごしましたから、猫は嫌いではないです。
ここ15年は犬派ですが、
ルッくんの猫への尽きない興味もあって
最近また猫さんたちとの交流も増えています。

マクデュイー氏は、
腕はいいが治すのも早ければ殺す(安楽死させる)のも早いという、
動物に対してさらさら愛情のない獣医だった。
人間に対してさえほとんど心を動かさない彼が、
唯一愛情を注いでいたのが娘のメアリ・ルーだった。
マクデューイ氏が獣医なんてね、だし、
彼の親友が牧師のペディ氏というのも、なんてね、である。
でも、そうじゃなかったらこの話はできない。

娘が可愛がっていたトマシーナを、
マクデューイ氏はろくに手当てもせず安楽死させてしまった。
メアリ・ルーは傷つき、心の中で父親を殺してしまう。
トマシーナは子供達が谷の空き地に作ったお墓に埋められる。
その谷には、「赤毛の悪魔」「いかれたローリ」、
あるいは傷ついた動物を癒すことができ、
天使や妖精と話ができるといわれる若い女性ローリが住んでいた。

…というのが、まあイントロとしては適当かと。

ここから先は、私が笑ってしまったところ。

このトマシーナさん、気位の高い猫で先祖はエジプト出身といわれるが、
トマシーナが死ぬのと入れ替わりにローリのところに現れたタリタという猫は、
いきなり
「わが名はバスト・ラー、ブバスティスの猫の女神。
第12王朝の紀元前1957年、セソストリス1世の御世に、
そして第13王朝においても、わらわはクフ王神殿の女神であった。」

とのたまって、ローリの取り巻きの猫たちをポカンとさせる。

タリタさん、いやバスト・ラーさんはローリを自分に使える巫女だとし、
狭くて小さい小屋を神殿だとし、
今でも十分に神通力が使えると思っているのだが、
どうも時代が変わった感じが否めない。
ローリが危険に向かって出かけていった時、取り巻き猫の1匹がいう。

「いかんな。良くないことが起きそうで、毛がぞわぞわと逆立つよ」
マードックがたずねた
「ローリをどうにか止められないのかい、タリタ?」
「できぬ。」
黄土色の猫は鼻で笑った。
「あんたもたいした神さまじゃねえな、ええ?」
あまりの憤りに、わらわはいっそ泣き伏したかった。
いやしき黄土色の牡猫ごときに、わが栄光を踏みにじられるとは。

最後はめでたしな物語ですが、突然現れ突然去っていく猫の神さま。
河合隼雄先生は、それを
「猫がたましいの顕現として見られることを如実に示していて、
さすがギャリコは上手いなと感嘆する。」

とおっしゃった。
それにしても、神さまも世が変わればいろいろとご苦労なさるのですね。

実はトマシーナを読むのは2回目です。
1回目は去年の春、高度医療センターに入院したイヴちゃんに
毎日面会に行く時に電車の中で読んだのです。
でも、今回読んでまったく新しい話なのでびっくりしたのと同時に、
あの時食い入るように読んだ箇所があるのですが、
それがどこだったのかわからないという不思議な思いをしました。
ローリが瀕死の動物を助ける場面だったのかなぁ。
もしかすると、私はその時そこだけを必死で読んでいたのかもしれません。
イヴちゃん、安らかに。

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