たびびと

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文化的背景 ホンジュラスの風

2010年06月14日 | こころの旅
基本的にラテン人は時間に対してストレスを感じない。のんびりしている。
日本人の視点からの話であり、彼らの間ではそれが標準だ。
逆に、ラテン人から見ると、日本人社会は時間に厳しく、ストレスで一杯だろう。

ホンジュラスでのんびりと生活をしているとストレスはない。経済的な利害関係などがないからだ。ところが、仕事で公式書簡を取り付ける必要があるときなどは非常に焦る。締め切りがあるからだ。

では、なぜホンジュラス人は時間を守ることに対してのんびりと構えているのだろう。
約束を守ることに対しても。

レンピーラ酋長の逸話について書いたことがある。
とても素晴らしい話で反響もあったので、再掲載してみる。

ホンジュラスの通貨単位はレンピーラ。歴史のヒーロー。
そのレンピーラ酋長の有名な逸話がある。
レンピーラ酋長の歴史的事件が逸話となり、それが文化的背景となり、現在のような民族性が形成された。
どんな事件だったのだろう。

かつて、スペイン人が現在の中米地域を侵略していた。
そのとき、レンピーラ酋長率いる一団が強い抵抗を示す。
勇敢、有能なレンピーラ酋長の部隊を、スペイン軍はなかなか思うように進撃できずにいた。
そこで、スペイン侵略軍は、和解案をレンピーラ側に提案。中間地帯で和解会議を開く書簡を送る。
レンピーラ酋長はそれ以上に見方に血が流れるのを見たくなかった。そこでその会議に参加することを承諾。

会議の日。
和解案に書かれていた通り、数人の仲間とともにその指定された場所へ赴く。
会議が開始。
和解案に署名し、一時の平和が訪れるはずだった。

ところが、この会議場にはスペイン暗殺部隊が潜んでいた。
レンピーラ酋長とわずかな護衛は、命を一瞬のうちに奪われてしまうのだ。

和平会議はスペイン軍の策略だったのである。

レンピーラの死の知らせは、レンピーラ軍に多大な精神的打撃を与えることになる。あれほど強固であったレンピーラの部隊は、瞬く間にスペイン軍に滅ぼされることになった。

これ以降、
「約束を守り、相手を信用することにはメリットはない。ただ自分が損をするだけだ」
という社会通念のようなものが、この地域に広がった。

あくまで逸話であり、どこまで信頼できるものかはわからない。
ただ、こういう歴史的な背景を聞いてしまうと、何となく彼らが約束時間に来なかったりしてもあまりイライラとはならない。

ただ、これが免罪符になってはいけない。
この事件を教訓として、約束を守ることの大切さを感じ取ることもできる。
一つの現象から何を学び取るかは、各個人の視点に任されている。

アメリカの情報公開制度で、パールハーバー襲撃について、事前に攻撃情報が確認されていたことがわかっている。
つまりアメリカ人も日本人も当時のアメリカ政府の策略により日米開戦に火蓋が切られた。
時間が経過しているためか、誰もそのことについて言及したり、教科書に掲載されたりということはない。
それでもこの事件から、だまされたのだから、もう何も信じないで、いいかげんな人生を送っていこうという人は皆無だろう。

社会的背景はあくまで背景であり、上記の逸話を知るホンジュラス人もそれほど多くない。けれども、彼らと話していると、何でも許せてしまう。子どもがそのまま大人になってしまったような無邪気さを彼らは持ち合わせているのだ。

車を見せびらかしたり、新製品にすぐに夢中になったり、貯金をしなかったり、すぐにムキになって言い訳をしたり、それでも彼らの表情にはストレスによる緊張は見られない。

自由に、彼らなりの社会観で楽しく生きている。

まるでグローバリゼーションに抵抗するかのように。

地球規模の経済発展には参加しないとの意思表示をするかのように。

ホンジュラス人は今日もマイペースで生きていく。