FREAKY 13 DEAKY

酔いどれの誇りと踊る熊たちへ愛を込めて

傑作「梟の城」読了ォ~!

2023-10-21 12:41:28 | 読書感想
これは

面白かった。

司馬遼太郎独特の言い回しや癖のある文体になじむと良さが加速する。

隠者が時の権力者太閤の暗殺命令を受けるはなし。

通勤時間30分弱毎日数ページずつ。

一ヶ月弱だった。

この今更司馬遼太郎シリーズ。

前回の「竜馬がゆく」と比べてみると。


好みとしては圧倒的にこっち。


ラストの太閤との対峙。ドカーンと撃ち抜かれた。痺れた。

当然ながら秀吉は高枕で亡くなっている。

では暗殺失敗だったのか否か。

この作品で司馬ファンが増えたこと頷ける。

国を制圧した化け物と妖忍術使いの悪魔の対話。ラスト名シーン。


篠田正浩の映画も記憶に新しいがやはり自分の脳内で現れた登場人物の方が圧倒的に面白い。

白土三平の劇画ばりの迫力シーン満載。

ページの角を折りながら名セリフや名シーンを書き写したいとこだが長くなるのでまた改めてだ。

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4月17日ぶりの村上春樹に

2023-09-15 18:24:28 | 読書感想
『街とその不確かな壁』を読了。

五ヶ月かかった。

中断とかいろいろで再開して今日読了。

考察はもう世の中に出尽くしているので任す。

僕は村上春樹を読む。

弱っている時。精神的に参っている時。心がささくれている時。

地方の湯治場に行くように。

傷口を塞ぎに行くがごとく。


一文一文薬草を傷口に当てるようにゆっくり読み込んでいく。


物語があり人物が動く。


ストーリーは追うがそれはそれだけ。


面白い面白くないは二の次。


湯治場で身を委ねて体を回復していくのを待つだけ。

何度も何度も。


それが村上春樹とのつき合い方。


効果があるから今でも続いているのだろう。





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硯の海に浮かぶ思いの

2023-07-09 14:30:04 | 読書感想
「竜馬がゆく1~8」読了。

ある地方の無名郷士が身分を捨て世の仕組みの大転換を図るため東奔西走し日本初のアントレプレナー起業家になる話。

人々が語り尽くした大河小説。

中学二年生の時、生徒会長〇田君の自宅の本棚にずらっと並んでいた全八巻の文春文庫が初めてだった。
こちとら少年ジャンプが愛読書。〇田君が読破したことを自慢げに語っていたのを苦笑いしながら聞いていた。興味なかった。

大学生になって間もないころ下宿仲間の〇林君が司馬遼太郎を熱く語ってくれた。アメリカ翻訳本ばかり読んでいたおれにしきりと薦めた。

青春小説はやっぱり青春時代に読むべきものなのだ。
だが手遅れなことはない。
そうしたいと思った時がその時なのだと。

ああ人間が好きなんだ。自由であれが最高なのだ。
国境・人種・身分・階級・制度を取っ払って地球規模で仕事がしたいと。

人を魅了する人とはこういうことか。

ちびちび読み続けて二ヵ月間。
八巻目を手に取った時ああこの男ともお別れが近いなと思いながら読み進めた。












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年末には、松本清張「天城越え」

2022-12-17 15:39:37 | 読書感想
今年の紅白に石川さゆり出場。

なぜか思い出すのは「天城越え」。


そして清張の「天城越え」は40ページほどの短編小説。

この小説は本当にタイトルが独り歩きしている。

歌と小説は中身まったく関係なし

それくらい秀逸なタイトルだということだ。

とにかく言葉の響きがすこぶる良い。

カッコいいのだ。


伊豆半島の鬱蒼とした森の中に心臓破りの峠の坂と暗いじめっとしたトンネルも思い浮かんでくる。
現代は整備され自然美しいツーリングコースになっているのだろうが。


物語も本当に不可思議。


これは清張が人間の心の心境ほど不可思議なものはないというメッセージと感じる。


主要登場人物も4人のみ。


家出少年と温泉旅館に勤めていた酌婦と、どこか暗い影を落とす土工の流れ者と事件を追う刑事。


刑事以外みんな「ワケアリ」人間。



ジメジメドロドロした人間関係。


すごく面白くてすぐ読めるからおススメ。


清張小説の底流には貧乏の苦汁と真っ暗さが際立ている。



天城峠のじめっ暗いトンネルを抜けると異国に入った感覚、行きはよいよい帰りは恐いを地でいくヒトコワ世界を削ぎ落した簡潔な文体で描き切っている。
清張の傑作には短編が多い。映像化されるのも敢えて書かなかった余白が想像の余地になっているからだ。
さすが芥川賞作家。


怨念と憎悪を柱にしているのは間違いない。


そしてこの短編を書いたキッカケともいえる川端康成の「伊豆の踊子」への返答篇といえると想像するととてもロマンがある。

赤貧洗うがごとしで生きて抜いた清張には育ちがよく華やかな経歴の川端康成がどう映っていたのか。

怨念と憧れ。自信とコンプレックス。色んな色が混じり合った世界が渦巻いている。


私自身のなかにある暗い部分がその世界に囚われるのだ。





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一人だけの軍隊/ランボー

2022-08-12 16:17:09 | 読書感想
これだけ映画版と原作の辿る道に乖離があるのはめずらしい事でもないのか。

作者デイビッド・マレルはスタローンの映画は嫌っていない。

原作小説のランボーは凄絶に死ぬが、映画版は生き延びる。

作者はそのことについてランボー2の小説の前書きで感謝している。

映画はアクションに徹している。小説は男と男の一対一の戦いだ。

どちらも孤独を背負いどうにもならない運命的な出会いと不思議な心の交流。

でも生易しくない血が噴き出る暴力の交流。

そして山と森の容赦しない大自然の恐ろしさ。

不思議だ、殺し合わなければラブストーリーにも見えるような残酷な戦いと殺し合いの連続場面。


これは映画では描かれていない。アクションに絞っているから。

自分の弱さとの向き合い方。本当に強いとはなにか。死ぬとは。

こんなことを想像させる場面が畳みかけるようにやってくる。


デイヴィッド・マレルの筆力。確かな自然描写。文章のセリフの力強さ。美しさ。


だからこれは乱暴ではない。

むしろ、詩人ランボーの詩のごとく。地獄の「冬の」季節というところか。

いい小説を読んだ。


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