大事な問題から政治が逃げていると社会がよどんでしまう。11月の県知事選で民主党県連は対応を決めあぐねている。いったいどうするつもりなのか。
党本部の安住淳選対委員長は玉城デニー、瑞慶覧長敏の両衆院議員に対し、出馬の意向を示している宜野湾市長の伊波洋一氏との選挙協力はできないとの考えを伝えた。
その理由について安住氏は、県内移設に強く反発する伊波氏とは「政治スタンスが違う」ためだという。
玉城、瑞慶覧両氏は党県連の中にも社民や共産など国政野党との相乗りに難色を示す意見がある、という状況を説明し、大筋で安住氏に同調したという。
これには首をかしげる。与野党の別ではなくまずは政策で判断すべきだ。
衆院選で玉城氏は「危険極まりない普天間の海外移設は政権交代で早急に協議し即実行する」、瑞慶覧氏は「住宅地での旋回飛行は恐怖のどん底である。普天間の県外・国外移設に積極的に行動を起こす」と公約した。
県外移転に向け即刻アクションを起こすという公約はどうなったのか。知事選候補の政治スタンスを論じる前に、二人が議員としての立ち位置を明確にすべきではないか。
民主党は「沖縄ビジョン2008」で普天間は県外移設と明記し、鳩山由紀夫前首相も「最低でも県外」を公約した。菅直人首相も過去に何度も「海兵隊撤退」を主張していた。ところが権力を取るやいなや公約を破棄しあっさり「辺野古回帰」を決めた。
民主党が「政治スタンス」を論じるおかしさは他にもある。沖縄の民意を遺棄したことだ。
参院選の全国選挙区のうち沖縄だけ公認、推薦も出さず、不戦敗とした。政策への信を問う民主主義の手続きさえも放棄した。
これは民主党だけの問題ではない、と考えるのは先の参院選で「普天間」が争点とならなかったからだ。社民、共産を除くと、全国で普天間問題を訴えた候補者がほとんどいなかった。
沖縄問題は「火中のクリ」のように疎まれ、国会議員はみな普天間を避けている。
移転先の名護市で容認派が後援組織を組んだ自民党の島尻安伊子参院議員でさえ県外移転を主張したため、普天間は争点とならなかった。
県外移転を訴えた県選出国会議員は党中央の政策と自身の選挙公約に違いがある場合、党にとどまることは有権者への裏切りにならないか。
北沢俊美防衛相が6日、仲井真弘多知事と会談した際、「仲井真さんに当選してほしい」と語ったらしい。もちろん県内移設に協力してもらいたい、という期待があるのだろう。
県議会、市町村議員を含め民主党県連のすべての議員はいよいよ旗色を鮮明にする時がきた。国政野党と相乗りすることに違和感があるというのなら、さっさと独自の考えを明らかにすべきだ。
選挙で態度を決めきれない政治集団は、存在そのものが県民にとって迷惑だ。