●ベネ・ミュラー氏の講演会を無事に終了しました
スイスの畑では麦が小金色に実り、向日葵が重そうに頭を下げています。真夏とはいえ、今年の7月は連日の雨で、各地で洪水の被害が相次いでいます。
早くも一月が過ぎましたが、6月には南ドイツの市民が作った再生可能エネルギー企業であるソーラーコンプレックス社の取締役、ベネ・ミュラーさんの講演会が日本各地で行われ、大盛況でした。私はドイツ側での調整と、通訳・同行を行わせて頂きました。
各地の主催者の皆さま、そして聞きに来て下さった皆様、どうもありがとうございました!
ミュラーさんの経営者の視点からの論理的かつ実践的な話への反響は大きく、どの会場でも質疑応答の時間がいくらあっても足りないほどでした。日本各地で再生可能エネルギー事業に取り組む方が増えており、会場からの質疑も実践的なものが多かったのが印象的です。
特に各地の中小企業の方々の、関心の高さと熱心さには驚きました。地域密着の企業家として、エネルギーヴェンデという事業に、地域の社会と経済の未来を見出していることが感じられました。こういった中小企業家の方々の再生可能な電力・熱・省エネ分野での活躍に期待します。
(とはいえ、訪れる各地で地元の太陽光発電の事業者の方々から、系統接続の際に電力会社から難題を突き付けられている悩みを聞きましたが・・。)
7月中旬には、ソーラーコンプレックス社の株主総会がジンゲン市で開かれ、見学に行きました。地域市民が出資した会社ですから、株主と経営者や社員も顔の見える関係で、160人が集まった会場では、随分と歓談に花が咲いていました。
総会では、再生可能エネルギー法改訂により予測される影響や、同社の最新の地域暖房や風力パークのプロジェクトの紹介、会計報告などがありました。
法的枠組みの変化により多くの再生可能エネルギー(発電の)企業が苦しんでいる中で、同社は2013年度もほどほどの利潤を出し、4%の配当を出すことが決議されていました。
こういった安定性は、同社が発電設備の開発だけでなく、発電や熱供給の設備を自社所有することによるエネルギー販売からの収入や、地域暖房分野での開発・設計、そして設備のメンテナンス事業といった多くの「柱」を持っていることによりもたらされています。会計報告では、同社にとっては特に地域暖房事業が非常に重要な収入源となっていることが良くわかりました。
また総会では、同社の監査役である建築家の方、税理士・弁護士の方、広告業者の方の3人にもお会いしました。この3人と、取締役2人(元アーチストと建築家)がソーラーコンプレックス経営陣のコアメンバーで、いづれも2000年に市民20人で起業した時からの地域の仲間たちです。共有するビジョンに向かって14年に渡り、毎月会合を持ち、戦略を話し合い、それぞれに高い専門性でもって(当初はボランティアで)同社に長年貢献してきた監査役の方々の重要性をミュラーさんは日本でも何度も言及していました。
ソーラーコンプレックス社については、次の本に詳しいので是非ご覧ください!
また次回ブログより、スイス情報もより多くご紹介していきますので、よろしくお願いします。
●単行本「ドイツの市民エネルギー企業」が出版されました
2012年に出版した「100%再生可能へ!欧州のエネルギー自立地域」(学芸出版社)では、自治体や地域のエネルギー自立に向けた運動や取組み、そしてその背景を紹介してきました。
その続編として、この6月頭に「100%再生可能へ!ドイツの市民エネルギー企業」(学芸出版社)が出版されました。著者は村上敦・池田憲明・滝川薫(MIT Energy Vision GbR)です。
この本では、ドイツで急速に進んできた分散型エネルギーヴェンデ実施主体となってきた地域密着の事業体(企業)の形を紹介しています。具体的には、市民エネルギーの株式会社、共同組合、そして自治体の公社という三つの形と、その社会的な背景を紹介しています。
電力の分野でも、省エネでも、熱の分野でも、エネルギーヴェンデは地域の手とお金によって実施されてこそ、地域にその経済的な恩恵が降り注ぎます。日本各地で芽生えつつある市民エネルギーの取組の普及・発展に、本著の内容が役立ってくれれば嬉しく思います。
本は、下記リンクからご注文することができます。
短信
●ソーラーコンプレックスの日本語版ニュースレター
ミット・エナジー・ヴィジョンの協力により、ソーラーコンプレックス社のニュースレターが下記のリンクより日本語で読めるようになりました。同ニュースレターは年4回発行されています。
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/5943192/
●ビオシティ誌59号「連載欧州中部のビオホテル探訪番外編」
7月上旬に持続可能なまちづくり・環境専門誌のビオシティ59号(ブックエンド社)が発売されました。特集テーマは環境教育で「持続可能な社会のためのひとづくり ESDと環境教育の10年」です。私の手掛けるビオホテルの連載は今回は番外編で、「ビオホテルの基盤をなす有機農業とその市場状況」として、スイスを例にとり有機農業の歴史と今日を紹介しています。ビオシティ誌は下記リンクよりご注文できます。
●スイスエネルギー財団フクシマニュース7月号
スイスの環境NPOであるスイスエネルギー財団の月刊ニュースレターに連載しているフクシマニュース(ドイツ語)の6月、7月号を下記リンクからご覧になることができます。
http://www.energiestiftung.ch/aktuell/fukushima/
●ドイツ在住ジャーナリスト村上敦さんのブログ
ドイツ在住ジャーナリストの村上敦さんのブログでは、6月頃に日本で話題になっていた「いわゆるグリーンパラドックス」に関する考察や、ドイツ議会で7月中旬に決定した再生可能エネルギー法の改訂についての丁寧な解説がなされています。日本の大手メディアの「ドイツはエネルギーシフトに失敗した」といった論旨の報道を鵜呑みにする前に、こちらをお読みになてから判断されることをお勧めします。またこの種のテーマの政治的背景については、本「メルケル首相への手紙~ドイツのエネルギー大転換を成功させよ!」(マティアス・ヴィレンバッハー著、いしずえ出版)にも詳しく描かれています。
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/
http://www.ishizue-books.co.jp/