毎月19日は「食育の日」。2010年、数ある農水産物中から、県外、そして海外に誇れる商品
を静岡県独自の基準に基づいて「しずおか食品セレクション」として認定するという試みがスタ
ートした。今までに46商品が認定されている。今日はその中で「海老芋」と「桜えび」を取り上
げる。
海老芋
■由来
海老芋は、サトイモ科サトイモ属の根菜で、サトイモの品種の1つである唐芋(とうのいも)を何
度も土寄せするなど特殊栽培したもの。江戸時代(1770年代)に、青蓮院宮(しょうれいいん
のみや)が長崎から持ち帰った唐芋を、京都御所に仕える者に栽培させてできた、大型で良
質芋が海老芋の始まりとされている。栽培の際、何度も土寄せするので、その土の重みで湾
曲した形が海老に似ていることから「海老芋」と呼ばれるようになったと言われている。
■特徴として
粘り気に富み、よく締まった粉質の肉質で、優れた風味と少し甘味があり、煮込んでも煮崩れ
せず、色も変わらない点があげられる。このため一般的なサトイモとは違って高級食材として
扱われ、京野菜の1つとして知られ、京芋とも呼ばれる。海老芋を使った料理として有名なも
のに京料理の芋棒がある。また、親から子へ次々と増えて成長することから縁起物として重
用される。海老芋とサトイモが決定的に違う点は、子芋や孫芋に見られる。
サトイモは大きく、「子芋と孫芋を食べるタイプ」、「親芋・子芋ともに食べるタイプ」、「親芋だけ
を食べるタイプ」、「葉柄をずいきとして食べるタイプ」に分けられる。
一般的に「里芋」として売られている石川早生や土垂(どだれ)は「子芋と孫芋を食べるタイプ」
で、親芋は食用に向いていない。一般的には孫芋を煮物などにして食べる。子芋は「子頭」と
いわれ食べることはできるが、肉質が硬く筋が多いため、好き嫌いの好みが分かれる。
海老芋は、一般的には「親芋・子芋ともに食べるタイプ」に分類されているが、実際には子芋
の方が大きく、市場に出荷されるのは子芋と孫芋。海老芋の子芋は里芋と違って肉質が柔ら
かく煮崩れを起こさないため、細工料理に向いている。京都などの料亭では、昔から海老芋
を海老や松茸の形に細工した料理がある。海老芋の孫芋は、特性は子芋と同じで、里芋の
孫芋よりクリーミーな食感を味わうことができる。
■効能
サトイモ科の植物の主成分は、糖質とタンパク質で、腸内吸収率が高く、穀類のデンプンとは
違う性質を持っている。脂肪の燃焼に必要なビタミンB2が多く、カロリーも低いので、ダイエッ
トには最適な食材といえる。塩分の排出効果があるカリウムが、ジャガイモより豊富なので、
高血圧の心配がある者の栄養補給には適する。またサトイモ類独特の「ヌメリ」の正体は、
ムチンという解毒作用がある酵素で肝臓や腎臓を丈夫にし、老化防止に役立つといわれてい
る。
■産地
JA遠州中央管内の海老芋の生産量が全国一位で、160人余りの生産者が32haほど
の耕地面積で栽培している。
階級の多いのも海老芋の特徴のひとつで、形、大きさによって用途が違うため、ニーズに合
わせて、30階級程に分けている。大きいものは、1個当りの重量が500g以上、孫芋の小さ
いもので10gほどと大きさも様々。
■保存
海老芋を含めサトイモ類は、土を落としてしまうと乾燥して品質の低下が早まるので、土がつ
いたまま冷暗所に保存する。あまり低温になると品質低下につながるので冷蔵庫にはいれ
ない。スーパーなどで土を落としたものを購入した場合は、濡れた新聞紙で包んで乾燥を防ぐ。
■調理法
少し厚めに皮をむいて、煮物や揚げ物などの料理に使う。サトイモ類を調理する際に「アクを
とるために一度ゆでこぼす」といわれるが、皮をむいて水で洗った後、水気をふきんでふいて
そのまま煮汁で煮た方がサトイモ本来の味が楽しめる。
サクラエビ
エビ目サクラエビ科に属す深海に生息する小型のエビの一種。
■特徴
成体は体長40mm位、体は透明だが、甲に赤い色素多く保持し、透き通ったピンク色に見
える。「桜海老」の和名はここに由来する。 体の表面に155個の発光器を備えているが、
発光は微力で、維持する発光はしない。サクラエビの産卵期は5月~10月にかけての長い
期間で、なかでも6月、7月、8月が最も盛んに行われ、その主要水域は富士川河口沖にあ
たる田子の浦沖から由比沖と考えられてる。1匹の雌の産卵数は1,500~2,000粒位で
産卵は夜間海面近くで行われる。サクラエビの卵は1日半で孵化し、浮遊しながら親エビと
は全く違った姿をし、脱皮を繰り返しながら1ヶ月くらいで稚エビとなり、10~12ヶ月で成熟
した親エビになる。産卵したエビは2~3ヶ月で死ぬとされる。
■漁業
日本国内の水揚げ量の100%が駿河湾産で、主要な漁期は4~6月(春漁)と10~
12月(秋漁)。6月11日~9月30日は繁殖期で禁漁、冬はエビが深いところにいるため
休漁。
サクラエビ漁の歴史は浅く、1894年由比の漁師が、アジの網引き漁をしていた時、網が
深くもぐってしまい、そのとき偶然に大量のサクラエビがとれたことが始まりとされている。
由比漁協の由比・蒲原42組84隻と大井川漁港の大井川18組36隻、計3ヶ所の基地
に120隻の許可証を持つ漁船がある。
■利用
*鮮魚・・・生での出荷。これは比較的新しいもの。市場など入荷したものは生食可能。
*素干し・・・富士山をバックにサクラエビを、地面を赤く染めて干したもの。生のまま干
しあげたもの。
*煮干・・・塩ゆでして干したもの。別名「むきえび」。
*釜揚げ・・・塩ゆでしてあげただけのもの。最近は冷蔵で出回っていて人気がある。
■料理
なんといってもサクラエビのかき揚げ最高に美味。今年の秋漁は10月29日以降。
待ち遠しいです。
*野菜桜えびかき揚げ: http://cookpad.com/recipe/1357675