すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

読書をして「潜る力」を鍛える

2019年04月02日 | 読書
 世の中、様々な企画があるもので、「題名だけ」(若干のキャッチフレーズを付け加えて)というコンクール応募要項を雑誌で見かけたことがある。もちろん小説・物語の類だったと思う。タイトルは書籍の顔なので、発想は面白いと感じた。そういう見方をすると新書なども工夫している。この題には惹きつけられた。


2019読了33
 『読書する人だけがたどり着ける場所』(齋藤孝 SB新書)



 「読書する人の端くれ」とはおこがましいが、冊数だけはこなしている。だからこんな書名に出会えば励まされた気になる。ただ帯をよく見ると「読んだ本の差で人生は変わる」ともある。本の質は全く自信がないなあ。著者が執筆した読書に関する書籍は以前から読んでいるが、ネジを巻き直すつもりで手に取った。


 「『読者』がいなくなった時代」…著者はまえがきにそう記す。それはデータに現れた読書時間の減少を指しているだけでなく、「ネット上の情報を読む」ことと読書行為との違いによるものだ。「ネットで文章を読むとき、私たちは『読者』ではありません。『消費者』なのです。」…内容やツールではなく「構え」が異なる。


 この新書のキーワードは「深い」「深める」。深さの意味と意義を前段に置き、第三章以降は「思考力を深める」「知識を深める」「人格を深める」「人生を深める」と見出しをつけた読書案内という形になる。著者の卓越した要約力とコメント力が十分に発揮され読みやすい。薦められる「名著」に手を伸ばしたくなった。


 最終章は「難しい本の読み方」。日本語ブームを作りだした一人である著者の本物志向はジャンルの幅が広いことが特徴で、漫画の紹介も面白い。本を手に取る人は、最初から「たどり着ける場所」をイメージするわけではない。深い所に行くために必須な「潜る力」が読書によって鍛えられ、徐々に場所が見えてくる。