goo blog サービス終了のお知らせ 

すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

この季節、このブームにこの絵本

2025年05月27日 | 絵本
 今日27日で今月のこども園お話し会(読み聞かせ)は終了。期間に幅があったので、多少プログラムを変更したが、この一冊だけは手離せなかった。田んぼに水が張られ、苗が植えられるこの季節。あの生き物を取り上げたくなる。たくさん絵本が出ているが、年中児から小学三年生までどの教室でも聴き入ってくれた。




 何より書名がいい。小学生の前では「ともるってどんな意味だろうね」と軽く振ってから読み出すようにした。大きなウシガエルと小さなアマガエルが、互いの大きさの違いから声をかけられないでいたが、夕陽を眺め、そして池の中央にある島を一緒に目指すとい単純なストーリーだが、読んでいて実に味わい深い。


 画のやさしい雰囲気が醸し出す世界が、シンプルで無駄のない文章とマッチしている佳品だ。ウシガエルとアマガエルの台詞に、多少の変化を入れながらゆっくりと語っていくことだけで、聴き手を包んでくれるようだった。図書館からはあまり長期に借りられないので、これも購入した。レパートリーにできるかな。





 一つの園で演じたらあまりウケて、それまでのしっとり雰囲気が台無しで(笑)、次の会は控えた絵本がこれ。一昨年に目をつけ実は大好きなので、結局また始めた。なんせこの大相撲、横綱ブーム…まさにぴったりでしょう。しかし以前取り上げた時は引退しても「稀勢の里」イメージだった。今はもう…あの人ですね。

五月、「あ---------------」で始まる

2025年05月07日 | 絵本

 5月のこども園読み聞かせは、連休明け初日からスタート。選書期間は十分あったが、「名作を一つ取り上げる」などいくつかの縛りをかけていることもあり、少々悩む。それでも、自分が気に入っているかが基準になることに違いなく、プログラムの最初に選んだのは、図書館の新刊コーナーで見かけたこの一冊だった。

 

 この作家の本は初めてではないかな。まずは表紙絵の表情に惹かれた。めくってみると、単純明快かつ愉快痛快なストーリー、一目で気に入った。「おじいちゃん」の一人としても語り手の素質は十分あるわけだし…。結局は、愛すべき孫の機嫌を損ねてしまう展開なのだが、そこには十分な心の通い合いも感じられる。

 

 読み方として、くしゃみの前段階「あ-------------------------------」がポイントだろうな。普段の生活ではない動作ゆえに、オーバーに表現して引き付けられるかどうか。それにしても扉絵などに描かれる世界は、本当にやさしさいっぱいでほのぼのとした気持ちになる。楽しみながら温かさが流れてくる…絵本の魅力です。

 

 

 今月、名作として取り上げるのは、加古里子の「だるまちゃん」シリーズの大型絵本だ。一昨年だったか初めて読んだ時に、こちらが想像していた以上に、子どもたちがじいっと見入ってくれたことを覚えている。原作は1967年刊であり、年月を思うとその普遍性に驚いてしまう。どこが子どもの心に寄り添うのか。

 

 

 私見として、一つにキャラクターの明快さを挙げる。外見も気持ちの動き方も分かりやすく単純だ。「だるま」の認知度など発刊された当時の子どもの受け止め方とは異なるだろう。しかし共通する感覚はきっとあるはずだ。また、仕掛けを入れながら世界へ呼び込むことも基本だ。一緒に楽しみながら読み語っていく。


これが、したいことです。

2025年05月05日 | 絵本

 

 この絵本に出会ってから、もう五年以上経った。いつかどこかで読みたいと考えていたが、小学校やこども園が中心だったので、なかなか手が伸びなかった。「やってみよう」と決め、先日ようやく実現した。対象者が大人であれば、許して?くれるだろうと思った。わずか十数人だったが読んだという充実感は残った。

 

 

 全部で23の問いが連なる。文字通り最初の質問は「今日、あなたは空を見上げましたか。」(書いてすぐに外に出て、しばし眺めてみた)。意識的でも何気なくでもそんな暮らしを自分はしているか。作者は続ける。「空は遠かったですか、近かったですか。」どんな答えを、作者は求めていたのか。または求めていないのか。

 

 続く二行はこうだ。「雲はどんなかたちをしていましたか。風はどんな匂いがしましたか。」ぼんやり見れば思い出せないかもしれない。普通に息をしていては感じないかもしれない。答えられることの良し悪しを、作者は責めているわけではないだろう。ただ心の持ち様として、問いに応じられる暮らしをしたいものだ。

 

 

 そんなふうに続き、後半にこんな一節がある。「問いと答えと、いまあなたにとって必要なのはどっちですか。」唐突に尋ねられれば戸惑う質問だ。そして、もしためらっているのであれば、それはきっと「問い」こそが自分を動かしている証拠ではないか。人の生き方は選択の連続。それは常に「問い」の上書きだろう。

 

 「たくさんある問いから、一つでも心に残れば嬉しいです」と、最初から逃げをうった朗読だった。専門家のような技能はないのだから、伝えたい思いをどう表すか。質問の一つにあるように「いちばんしたいこと」はこれです、と感じてもらえるような態度だろうか。自分をさらけ出すこと。卑屈にならないこと。

 


始まりのページを開く

2025年04月16日 | 絵本
 昨日4月15日友引より、こども園のお話し会(読み聞かせ)をスタートさせた。今年はどの園も今月からOKということで、この時期にふさわしい本を選べることが嬉しい。初めて読むものを2つ取り入れた。まずは、この一冊。題名そのものがとてもいい。生きとし生ける者たちの、春を迎える喜びにあふれている。


 色調のやさしさ、展開の明快さ、そして「もぞもぞ」という語の響きが、心に染み入ってくれるはずだ。「もぞもぞ」ってどんな感じなのか、ちょっと尋ねてもいい。身体をごそごそし始める。その時の心の動きは、春の日差しにふさわしいとも言えるだろう。出来ないけれど、日差しを浴びて、外で読むのも素敵だ。



 もう一冊は意外な題名、独特の画調に惹きつけられる。新年度、一匹のワニが入園してくる。そのことを子どもから聞いた母親たちはびっくりして、連絡をとりあって園に行く。そしてワニと触れ合っている子どもたちを見て、安心(笑)する。愛らしく振る舞うワニの様子がユーモラスだ。ありえない設定ゆえに、面白い。


 実はこのワニの正体は…と最後で明かされるなかみにも納得する。現実には私も園児の「じいじ」なのだが、やはりそんなイメージかあ、とちょっとだけ複雑だ。さてこの絵本の次に「おまけ」という形で、下の一冊を出す。これは短い「ことば遊び」でとてもテンポがよく、終わると「もう一回」と声が必ずかかる。


「最強」でも「弱虫」でも

2025年03月30日 | 絵本
 春休みになった孫が暇そうにしているので、図書館へ。まだまだ自分で本選びは出来ない様子だが、ほったらかしにして(笑)こちらはこちらで新刊コーナーへ。目についた絵本をぺらぺらとめくりながら、何冊かを借りてきた。それにしても集団への読み聞かせを続けていると、どうしても選書が偏りがちと少し反省。


 ともあれ、まずはじっくりと読み進んでみよう。くすのきしげのり氏が、昨年末に発刊した本はちょっとユニークだった。恐竜好きの孫にはぴったりと、宿題を終えてから読んでやることにする。話はくすのきさんが作ったが、絵は「恐竜画家」と「貼り絵作家」の共作という形になっている。それには仕掛けがあった。


 冒頭の5ページまでを、恐竜画家がその世界をリアルに描いている。そして、雷に打たれて一気に「ワニ」たちが暮らす世界に転換するのだが、そこからは貼り絵を生かした画面構成となる。ストーリーは、恐竜世界で「最強」だった「キング」という名のオレの姿は、全く異なるものとなり、周囲のワニたちから…。


 実はこの絵本には対となる、下のもう一冊がある。それは、言い方として正確ではないが「パラレルワールド」のような筋書きで、ワニの世界で「弱虫」だった「ビビリ」という名のボクの姿は、ある日雷に打たれて…となっていくのだ。画面を構成した二人も順番を替えて担当している。このアイデア、実に面白い。



 表紙絵にも工夫がある。「はんぶんのかおを かがみに たてると、どうなるかな?」という誘いが記されている。裏には「恐竜たちの名前」「ワニと共存する生きものたち」の紹介もあり、細かい箇所まで念入りだ。さっそく孫を隣に座らせて読み始めた。あっ、少し字が小さい、教室の読み聞かせでは無理かも…(笑)。

年度最後の読み聞かせには…

2025年03月29日 | 絵本
 年度の最終週になっても、施設(こども園)での読み聞かせはある。定職を持たない者にとってはごく普通の日常だが、訪れる場所はやや雰囲気が違う。どことなく慌ただしさが感じられる。そして、卒園式を終えた子どもたちは来月からの新しい世界への希望が心の中に詰まっているだろうと想像する。そんな時に…。



 これは、落語家の桂文我が手掛けているシリーズの一つ。山の中にある小学校の入学式に、タヌキの親子が化けてもぐり込むお話。変身する動作も面白くみんなが見入る。フィクションであってもこんな学校があれば楽しいだろうと、新生活の想像をしてくれたかな。落語仕立てなので、オチがついているのも良い。



 1月に『ウィルとふゆのおきゃくさん』を取り上げた。このお話はいわば冬の季節の「暖かさ」がテーマと言えるが、これに続く『ウィルとはるのおきゃくさん』は、春の「さわやかさ」「希望」が感じられる。たった一人の「おきゃくさん」が運んできてくれる季節の意味、そして助け合い、励まし合う姿の大切さ。




 最後に短いお話を一冊。これは以前一年生に向けた最初の本として使った。初めに「一本橋」の説明をして入っていくのが常道だ。筋の単純さにみんな喰いついてきてくれた。どんな渡り方であっても、仮に落ちたとしても這い上がって、これからの学校生活を進んでほしい…と心の中でほんのちょっぴり思っている。

イソップ童話を語ってみれば…

2025年03月19日 | 絵本
 先月末から今月上旬のこども園で語った紙芝居は、イソップ童話である。どちらも有名なお話だが、今の子どもにはあんまり馴染みはないようだ。新しい魅力的な絵本やお話は次々と出版されている。しかし、それだけ扱っているのも正直忙しない心持ちになる。こうした昔から語り続けられた話には安心感を持つ。


 今回取り上げた2冊はどちらも2022年発刊であり、新しくシリーズ化されているようだ。長谷川義史、スズキコージという超有名な画家たちによって描かれていて、絵を見せるだけでも十分価値があると思う。筋は知ってのとおりだが、紙芝居なりのシンプルさ、そして聴かせどころもあり、心地よく演じられた。


 

 「きたかぜとたいよう」。人を動かす場合によく用いられる比喩だ。しかし、子どもたちにとっては登場する形象を楽しめればそれでいい。歌いながら旅人が登場する場面、そして最後に旅人が服を脱ぎすて、なんと…!!の結末が聞かせどころだ。他者との関わりにおける温かさと冷たさの本質を知り…己はどうかと。



 「きんのおの ぎんのおの」。画家の絵がかなり個性的で、子どもたちも惹き込まれるはず。見合った声の使い分けが大事だ。特に神様の台詞の表情が大切になる。勧善懲悪の典型を見せつけてやる気構えで。さて隣の樵はなぜ「三本全部自分のです」と言わなかったのか(笑)。そう考える自分の欲深さに怖ろしくなる。

本に寄り添って語るため

2025年02月27日 | 絵本
 明日は年度最後の小学生読み聞かせ。読みたい本はいくつかあるのだけれど、中学年という対象を考えて2冊をピックアップした。どちらも初めて語る。一つはマイブームの安東みきえで、昨年購入した本である。もう一つは、図書館で見つけた。県立図書館の巡回的なラインナップにあった内田麟太郎・作である。



 『メンドリと赤いてぶくろ』の絵は、アニメ風と言ってもよいだろう。ただ色彩は優しくはっきりして見やすい。舞台は現代だろうが、手編みの手袋であったり、鶏の声が朝を告げたりする設定は「昭和」だな…。中学年であっても鶏の雌雄についてちょっと前置きが必要だろう。鶏冠はどれほどの子が知っているか。

 メンドリの集団が声をあわせる台詞が面白く、物語に変化を与える。会話する相手が替わるので、その辺りの「間」に注意しなければならない。また場面転換も多く、主語の強調や言い回しに気を配る。新しい朝が来ると黙っていられないという気分は、今の子どもたちにもあるのかな。声を出す良さも感じてほしい。



 木彫りの彫刻で作ったイグアナとカモメの印象は強い。嵐の孤島で生まれ、たった一人で生きてきたイグアナは、ある日傷ついたカモメと知り合い…「ひとりぼっち」も「ともだち」の意味もわからないイグアナは、カモメと別れる日に…、坦々としたシンプルな文章表現が、存在感のある形象と絵とマッチしている。

 想像できるように、ゆったりとした語り口がベースになる。そしてカモメが去った日の夕暮れ、色調が大きく変化するページがクライマックスと言えるが、ここも抑えたままで読むことになるだろう。画のインパクトに浸らせたい。溜めて読む『ともだちのなまえ』。続くページは月夜であり、余韻が残る形になるか。

二人の話を、二つ続けて語る

2025年02月17日 | 絵本
 一昨年からの小さなマイブームは安東みきえである。『ふゆのはなさいた』『星につたえて』この二つの絵本を皮切りにして、児童書(物語)を読み、他の絵本も買い求めてみた。『ヒワとゾウガメ』(絵・ミロコマチコ)は昨秋に取り上げた。昨春に発刊されたのは『せっかちなハチドリ』(絵・降矢なな 文溪堂)も素敵な話だ。



 ヒワとゾウガメという対照的な二人が一つの島で暮らしている。ヒワは「ゾウ」という未知の動物がいることを知り、探しに出かけてしまう。おしゃべりなヒワを煙たがっていたゾウガメは、いなくなってから初めてその存在の大きさに気づく。途中で挫折し帰ってきたヒワとのやりとりに、時を超えた永遠性を見る。


 寿命の長さは、数々の別れを意味していた。だから簡単に「ともだち」にならないほうがいいと思ったゾウガメが、考え直す最終場面はシンプルだが力強い。「ぼくが ひゃくねん、わすれずにいるから。」という言葉をじっくりと噛みしめたい。個性的な描写が続く。荒々しいタッチゆえに落ち着いた語り口がいいだろう。



 主として熱帯に住むハチドリはとても小さな鳥で、最小は全長5㎝ほどだという。飛行力が強く一秒間に50回以上の羽ばたきをする。それゆえ、たくさんの栄養が必要で昆虫を食べるほかに花の蜜を吸い続ける。いわば急ぎ足の一生に対比されて登場するのが、マイマイつまりカタツムリ。問われているのは「心」だ。


 「神さまからプレゼントされた時間が、永遠とでもおもうの?」というハチドリの声は頷ける。しかし同時に「心」の存在を見えなくしてしまったら、時間そのものの意味は消えかかるだろう。ページごとの色調の明暗がくっきりしていて「人物」たちを惹き立てる。語りは声の高低・テンポの違いを工夫せねば…。

お正月のご褒美

2025年01月31日 | 絵本
 火曜日に地元のこども園へ行き、今月の読み聞かせは終了。事情があって小学校に行けなかったので、計4回だけとなった。まだ一月中であり同じプログラムでもいいかと思ったが、正月ネタを半分やめて変更した。図書館に行き、面白い一冊を見つけ試してみたかった。題名がいい!!『うちゅういちの たかいたかい』



 専門サイトに【書店員が選ぶ絵本新人賞2023特別賞】と挙げられていて、開いてみたら頷けた。「たかいたかい」がどこまでもエスカレートする、いわばナンセンスジャンルだが、その意外性は「夢」だ。もちろん「たかいたかい」が嫌いな子はおらず、目を丸くして聴いてくれた。帰って親にネダル子はきっといただろう。


 もう一つ大型絵本をと思い、個人的に好きな『うがいライオン』を読んだ。今さらながら、この文章には読点がなく、そして文末表現は最後にしか出てこないことを確かめる。つまり、初め観客に愛されたい?と思ったライオンの心の揺れを途切れなく表現していくことだ。ポイントは「ガオーッ」の箇所だけれどね。




 『ながいながいへびのはなし』と『ウィルとふゆのおきゃくさん』は、前回と同じように語った。これらも変化あり、意外性ありで子どもたちを飽きさせない。「あまり面白くて、涙がでちゃったよ」と嬉しい一言をかけてくれる男児もいた。こんなご褒美をいただき爺は超満足な気分で来月の準備に取り掛かっている。