米国のコロナ感染者なぜ減ってきた? 考えられる要因と今後の予測
2021/01/30 20:09
米カリフォルニア州ポモナで、車に乗って新型コロナウイルスのワクチンを接種しに来た男性(左、2021年1月22日撮影)。(c)Frederic J. BROWN / AFP
(AFPBB News)
【AFP=時事】米国における新型コロナウイルスの新規感染者数と入院患者数は2週間連続で減少し、全体の感染者数は依然として昨秋から今冬にかけての感染爆発以前の水準を大きく上回っているものの、流行は明らかに落ち着き始めている。なぜ、米国の感染者数は減ってきているのだろうか。
専門家らが挙げる理由は、マスク着用やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の順守から、休暇シーズンが終わって時間がたったことまでさまざまある。もう一つの要因として、少なくとも一部の地域では、すでに住民の大半が感染してしまい、ウイルスにとって宿主候補がなくなりつつあることも考えられる。
だが、研究者らは各種規制を緩和するのは時期尚早で、制限を緩和すれば、現在の安定した状態が失われ、新たな感染急増を引き起こすおそれがあると警告している。今知っておくべきポイントを以下にまとめた。
■休暇が原因の感染爆発は終わった
昨年、夏の小康状態が終わって秋になると、米国の新規感染者数は再び増加し始めた。この時期、集まる場が屋内に移り、新型コロナウイルスに対して油断し始める人が増えた。
次いで感謝祭、クリスマス、新年と、感染リスクが高まる休暇シーズンが三つも続き、何百万人もが当局の指針に従わずに家族や友人の元を訪れ、新規感染者数が激増した。
時間のずれがあるため、今も1日の死者数は平均して3000人を超えているが、全体的な数字としては良い方向に向かいつつある。
米ジョンズ・ホプキンス大学の専門家アメシュ・アダリヤ氏はAFPの取材に、「休暇旅行に便乗してウイルスが広がっていたが、それもなくなってしまった」からだと語った。
■感染者が増えると行動を改める人が増える
さまざまな感染症の流行は、本質的に人間の行動と関連している。
生物統計学と感染症の専門家である米フロリダ大学のナタリー・ディーン氏はAFPに、「集団レベルでの反応の仕組み」が起こっていたとして、「自分がいる地域で感染者が増えると、それに人々が反応」したことを例に挙げた。
ディーン氏は、フロリダ州、テキサス州、アリゾナ州では夏の感染拡大後、すぐに感染状況が好転したことに触れ、「政策によるものであれ、大勢の人々が各自でちょっとした行動を改めた結果であれ、感染拡大ペースは鈍化している」と述べた。
■集団免疫の獲得に向けて一歩前進
米国で現在までに確認された感染者数は約2500万人。しかし米スタンフォード大学のジェイ・バッタチャリヤ教授はAFPに、実際の感染者数ははるかに多いと考えられ、その数は1億人から1億2500万人に上る可能性もあると述べた。
自然感染によって、少なくとも一定期間の高度な免疫が得られることは分かっている。これにワクチン接種を少なくとも1回受けた(部分的に免疫を獲得した)人々を加えることができるが、ワクチン接種を受けた人数は米国では現時点(30日)で2100万人となる。
二つの人数を合計すれば、米国の全人口3億3000万人の約40%に相当し、「真の集団免疫」を獲得できる割合としてよく引き合いに出される約85%に一歩近づく。だが、道のりはまだ長い。
■春が来て人が動き回るようになるとバランスが崩れるおそれが
疫学者である米コロンビア大学のジェフリー・シャーマン教授と先のバッタチャリヤ氏によると、問題は、人々の行動が変化することで現在の微妙なバランスが崩れることだ。
春が来て、人々が今よりも動き回るようになれば、より多くの感染者が免疫のない人々と接触するようになるおそれがある。
最後のポイントは、新たな変異株が「ワイルドカード(予測不可能な要素)」であることだ。変異株の感染力が高いと、集団免疫の獲得に必要となる統計上の閾値(いきち)は上がる。また、南アフリカの変異株は、再感染するリスクが従来種よりはるかに高い。 【翻訳編集】AFPBB News