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世界に広がる日本病という記事

2019-09-01 21:23:37 | 日記
[FT]世界に広がる日本病 投資の不安材料に
経済 ヨーロッパ 北米 FT
2019/8/28 16:42日本経済新聞 電子版

Financial Times
市場には再び景気後退の懸念が忍び寄っている。だが、多くの投資家やアナリストがより恐れているのは、もっと深刻で構造的な変化だ。すなわち、世界経済が「日本化」にのみ込まれることだ。


■懸念される「日本化」

日本は30年近くデフレや低成長と格闘し続けている。大規模な金融緩和を実施するが、効果はむなしく、政府債務が膨れ上がるなかで国債金利が低下する。日本化(ジャパニフィケーション、ないし、ジャパナイゼーション)とは、このような状況を指して、エコノミストが使う言葉だ。

アナリストは以前から欧州がこの状態に陥ることを懸念してきたが、米国はその運命を避けられると期待していた。米国は欧州よりも人口動態が良好で、経済に活力があり、金融危機後の回復も力強かったためだ。

だがその米国も、インフレ率が低迷し、減税の景気刺激効果が薄れ、米連邦準備理事会(FRB)が金融危機後初めて利下げを実施するなかで、徐々に日本化の様相を見せ始めている。米中貿易戦争による景気減速効果も加わると、世界中で日本化が広がることを警戒する声も出ている。

「低金利やマイナス金利には中毒性がある」と米モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)リサ・シャレット氏は話す。「非常に恐ろしいことだ。日本はいまだその状態から抜け出せていない。世界は今、非常に危うい状況にある」

■世界に広がる国債のマイナス金利

国債金利がマイナスになるケースが今夏世界中で急増した。これは日本化の広がりを端的に示している。現在、16兆ドル(約1690兆円)分を超える国債がゼロ%未満の利回りで取引されている。これは世界の国債取引全体の30%を超える。

ドイツ銀行によると、日本国債がその半分近くを占めているが、現在、ドイツ国債とオランダ国債も全量がマイナス金利で取引されている。また、ほんの数年前まで財政危機でユーロ圏からの脱落が懸念され、借り入れコストの増大に苦しんでいたアイルランド、ポルトガル、スペインでさえ、今や発行済みの国債の相当部分がマイナス金利に陥っている。

この結果、米国債はもはや環境の悪い地区でいちばん立派な家と言うよりは、むしろ崩れずに残っている唯一の家と言うべき状況だ。米バンク・オブ・アメリカによると、全世界で取引可能な投資適格債の95%は米国債が占めるという。

■米国よ、おまえもか

米国経済は、消費の堅調さが製造業の弱さを補い、そこそこの成長を続けている。インフレ率はわずかながら上昇もした。しかし、製造業の縮小が消費に悪影響を及ぼすとみるエコノミストは少なくなく、2019年および20年の成長率予測値は下方修正された。景気後退が差し迫っていると懸念する向きもある。

「ブラックホール金融経済、つまり金利がゼロに張り付き、その状態を脱する見通しが立たない、欧州や日本市場に対する見方が市場では定着している。両市場ではゼロまたはマイナス金利が1世代にわたって続くだろう」。サマーズ元米財務長官は先週、そのように指摘した。「1度でも景気後退が起きれば、米国もその仲間入りをするだろう」

同氏はこう付け加えた。「ブラックホール問題、長期停滞、日本化。呼び方はどうあれ、各国の中央銀行が気にすべき問題だ」

先週、中央銀行首脳は国際経済シンポジウムでジャクソンホールに集合したが、当然ながら厳しくなる世界経済の展望が主要な議題に上った。貿易関係での緊張の高まりや、金融政策が成長促進に目立った成長促進効果を持たないという厳しい現実が、同会議の議論に暗い影を落とした。

■中央銀行のあり方に再考を迫る

「ただならぬ事が起きている。そして、それは中央銀行のあり方や金融政策についての考え方を抜本的に再考することを迫っている」とセントルイス連銀のブラード総裁はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「来年には事態は正常化するなどという考えは捨て去るべきだ」

アナリストや投資家のほとんどは、FRBが成長を下支えするために利下げする意志を示したことから、今も米国の景気後退は回避可能だとみている。一方で、いまだ高値の株価や金利先物から判断すると、日本化のシナリオをたどる可能性は一段と高まっている。全面的な景気後退よりはましに見えるかもしれないが、その示唆するところはポジティブとは言いがたい。

例えば今後、かなり長期間にわたって国債金利が低迷する可能性がある。借り手にとっては良いニュースかもしれないが、日本の例を見れば、長引く低金利が必ずしも経済成長につながらないことは明らかだ。

■悪化する年金、保険の財務

また、確定利付債からの確実なリターンに頼っている年金ファンドや保険会社などの長期投資家にとっては、低金利は問題の種になりかねない。

例えば、長期債務を高格付け債の平均利回りを用いて計算する「確定給付型」年金にとってはとりわけ都合が悪い。年金提供者にとっては金利が下がれば期待できるリターンが減り、財務状況が悪化して、より多くの資金を用意しなければいけなくなる。

米コンサルティング会社マーサーによると、米株価指数S&P1500種構成企業の年金積立不足額は7月に140億ドル増加して3220億ドル(約34兆円)に達した。その主因は国債金利の低下だ。英国の株価指数FTSE350種の構成企業では20億ポンド増の510億ポンド(約6兆6270億円)に達した。この数字には8月の国債金利の下落による影響は含まれていない。

国債市場の外側にいる投資家にとっても日本化の展望はいい話ではない、と米JPモルガンのシニアストラテジスト、ジョン・ノーマンド氏は指摘する。

「成長率やインフレ率、国債金利が既に低下している状況で日本化が広がり、長引くという見通しには、誰も心穏やかではいられないはずだ。『日本化』が景気循環の下降局面と同義であれば、債券や株式市場の投資家は自らの収益見通しを見直すべきだ。日本の『失われた10年』のほとんどの間、日本株のリターンは日本国債を下回っていたのだから」

By Robin Wigglesworth

(2019年8月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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