https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20200729-00190617/
人間が耐えられる最高気温はどのくらいでしょう。ある記事には、こう書いてあります。
「39℃で心臓発作のリスクが生じ、40℃で大脳に危険が及んで、41℃で生命は危機に見舞われる。」
その命を脅かす41℃をはるかに超える高温が、今週中東イラクなどで観測されています。
バグダッドで史上最高気温
イラクの首都バグダッドでは27日(月)、最高気温が50.6℃まで上昇しました。さらに28日(火)には51.8℃まで上がって、同市の観測史上最高気温を記録しています。この時期の平均は44℃ですから、それを7℃以上も上回る異常な暑さに見舞われたのです。
そのほか同国アマラでは27日(月)に52.0℃を記録しました。
なお、イラク国内のこれまでの最高気温記録は、2016年7月22日にバスラで観測された53.8℃です。
電力不足の最中の熱波
冷房が必須の状況ですが、残念ながらイラクはそのような状態にはありません。
国連などによる経済制裁の影響で、ここ数十年間にわたり電力事情がひっ迫しています。バグダッドでは一日で12時間しか電力が供給されない状態なのだそうです。
そうした中で極暑が襲い、電力不足はさらに深刻化しています。氷の需要も増えていますが、価格が高騰しており、命の危険が極めて高い状況です。
高温はいつまで
この暑さはいつまで続くのでしょうか。
バグダッドの29日(水)の予想最高気温は51℃で、再び記録が更新される可能性も否定できません。現在イラク上空に高気圧が居座っていることが熱波の主な原因です。
ただ週の後半からは低気圧が近づくため、気温が下がって、31日(金)あたりからは40℃半ばの気温で推移する見込みです。
中東の最高気温記録
中東は世界でもっとも暑い地域です。
2016年にはクウェートのミトリーバで53.9℃(※)を記録し、これが世界第2位の最高気温である可能性が出ています。
というのも、現在、世界最高気温記録として登録されているのは、米カリフォルニア州デスバレーの56.7℃(1913年)ですが、この数値の真偽が疑われているためです。もしこの記録が取り消されれば、2013年にデスバレーで観測された54.0℃に続き、世界2位の記録となります。
それだけではありません。気温と湿度から計算した体感温度の最高値も、中東で記録されています。
体感温度には公式な記録がないのですが、気候歴史家のクリストファー=バート氏の著書によれば、2003年サウジアラビアのダーランで体感温度が81℃まで上がったのが、世界最高ではないかということです。
数十年後には60℃突破も
中東の気温は今後も上昇の一途をたどるおそれがあります。
今世紀中頃までにクウェート市やアラブ首長国連邦のアル・アインなどで、気温が60℃に達する恐れがあるほか、2100年までには一部で人が住めなくなるかもしれない、などとも予測されているほどなのです。