普通の風邪と違って、治ったらスキッといつも通りということではなく、普段とは違うとか、全く軽くても何か月か何らかの症状が残り、普段とは違うという人が多いように思います。なかなかスキッとはよくならないと思った方がいいです。それは、何か月なのか何年なのかは、分かりませんが。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200712-00187789/
厚生労働省より新型コロナに罹患した患者さんの後遺症についての調査を行うという発表がありました。
コロナ元患者2千人の後遺症調査 厚労省、8月から実施
感染症の後遺症とはどういった症状を指すのでしょうか?
また、新型コロナの後遺症はどれくらいの頻度で起こり、どのような症状があるのでしょうか?
感染症の後遺症にはどのようなものがあるのか
感染症ではときに後遺症がみられることがあります。
有名なところでは、日本脳炎や細菌性髄膜炎という重症感染症で麻痺などの後遺症がみられることがあります。
こうした重篤な後遺症以外にも、感染症では様々な後遺症が現れることがあります。
例えば、エボラ出血熱は致死率が50%にも及ぶ恐ろしい感染症ですが、回復した後にも倦怠感や関節痛、頭痛、脱毛、食欲低下などの慢性症状が続くことが知られており「post-ebola syndrome(エボラ後症候群) 」と呼ばれています。
エボラ出血熱以外にも、デング熱 やジアルジア症 という感染症でも同様の症状がみられることがあります。
また、旅行者下痢症などの感染性腸炎後に過敏性腸症候群 になることがあり、これも感染症に関連した後遺症の一つと言えます。
今年の1月にジャスティン・ビーバーさんがライム病に罹っていたことを告白 されていましたが、ライム病の治療後6ヶ月以内にだるさ、集中力低下、全身の関節痛や筋肉痛を訴える患者が約10%にみられます。これはライム病後症候群(Post-Treatment Lyme Disease Syndrome) と呼ばれ、これらの症状は半年以上続くこともあります。ニュースの記事からだけでは完全には判断できませんが、ジャスティン・ビーバーさんはこのライム病後症候群に悩まされていたのかもしれません。
このように感染症に罹った後にもしばらくの間、後遺症がみられることがあります。
その原因としては、感染症によって免疫のバランスに異常が起こることが考えられていますが、まだ完全には解明されていません。
新型コロナでも後遺症がみられることがある?
新型コロナから回復された方を外来でフォローアップしていると、ときどき慢性症状に悩まされている患者さんがいらっしゃいます。
「体がだるい」「胸が痛い」「息苦しい」「動悸がする」などといった症状を訴えられる患者さんが多い印象です。
しかし、検査を行っても特に異常は見られず、新型コロナ後のいわゆる「コロナ後症候群(post-COVID-19 syndrome)」ではないかと仮診断し経過観察を行っていました。
そんな中、2月下旬から3月にかけて大規模な流行がみられたイタリアから新型コロナの後遺症(コロナ後症候群)に関する報告 が出ました。
急性期と亜急性期~慢性期の新型コロナ患者の症状の頻度(doi:10.1001/jama.2020.12603)
これによると、新型コロナから回復した後(発症から平均2ヶ月後)も87.4%の患者が何らかの症状を訴えており、特に倦怠感や呼吸苦の症状が続いている方が多いようです。
これは私の外来での実感と一致します。
その他、関節痛、胸痛、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。
32%の患者で1~2つの症状があり、55%の患者で3つ以上の症状がみられたとのことです。
4割の人が生活の質が低下していると答えており、新型コロナから回復した後も苦しんでいる方が多いことが分かります。
コロナに罹るだけでもぴえんなのに、後遺症まであるなんて、ぴえん超えてぱおんです。
ただし、この報告はイタリアの1施設からの報告であり、すでに症状がなくなっている人よりも、なんらかの症状が残っていて長く外来に通院し続ける理由のある人の方が多く研究に参加しているために、後遺症の頻度が多く見積もられている可能性があります。
加えて、どれくらいの期間こうした症状が続くのかも明らかではありません(例えばライム病やデング熱では慢性症状が数ヶ月~数年くらい続くことがあります)。
また研究参加人数も143人と少ないため、より大規模な研究の結果が待たれるところです。
いずれにせよ、新型コロナの後遺症を患わないためには、新型コロナに罹らないことが一番です。