まだ読み終えていないが、面白いので・・・・。
「判事とペテン師」ヘンリー・セシル著(中村美穂訳)2005年12月論創社
1951年、作者2作目の作品で、作者自身が法廷弁護士・判事という経歴の持ち主。
よくもまあ、こんな面白いモノが50年以上も未訳のままであったのか不思議な感じもする。
こうした法廷ものは1940年~50年台はイギリスでは大人気だったらしい。
日本の法廷ものは、裁判そのものの勝敗とか自己目的に汲々とした人間ばかりが登場し、ともすれば暗いイメージや殺伐とした社会の反映のようなものばかりが多い。
ところが本書は、息子がペテン師まがいのいい加減さでありながらもそれを愛してやまない判事の右往左往と、娘が競馬の違法行為で裁判となった教会牧師とのからみを両輪として物語が展開する。
法廷の内幕、競馬の内幕、そして底辺でうごめく人間の欲望などが、落語の人情噺的な面白さで語られる。
図書館から借りてきたものだが、今回は気楽に読みたいという私の気分に見事にはまった。
実は、まだ読んでいる最中だがとくに最後にどんでん返しなど期待もしない。
各ページがユーモアに溢れ過ぎており、退屈しない。
専門的な長い説明調になろうとすると、作者が「どうでもいいような説明に時間を取っておりますが、あと少しのご辛抱。直ぐに話は本筋に戻します」などと断りを入れる始末。
競馬をはじめとして、賭け事や人の欲の中に入り込む経済犯など時代は変わっても、手口などはまったく今と同じで、昔の手口だから古い、今の時代には通用しない犯行の手口などと言ってはおれないことがよく判る。
そういえば「オレオレ詐欺」なんて、まだ健在である。
我が息子は、自分のことをオレオレなんて言わないが、名前を名乗ってきたら間違う可能性も無きにしもあらずだから・・・・そうだパスワードでも決めておこうか。