細身の体形に整った顔立ちのヨーゼフ・メンゲレ。しかしその実体は、40万ものユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツに所属した、『死の天使』の異名を持つ恐るべき医師である。
大学で人類学と遺伝学を学んだ後、ナチス・ドイツに入党したメンゲレは、1943年からアウシュヴィッツへ派遣された。
そこで数多くの非道な人体実験を行い、食糧不足の際には4万人もの囚人を殺害している。
囚人をモルモット扱いしていたメンゲレが、特に好んだ実験材料は10歳前後の双子だった。
彼は数千組の双子を集めて、冷水と氷を満たした水槽に浸したり、激痛を伴う注射で、胃液や体液を抜いたりしては結果を比較した。また、両目の色が違う双子にも異常な執着を見せ、目に化学染料を注入したり、目玉をアルコール漬けにしたりした。実験中に失明すると、子どもはすぐさまガス室送りにされたと言う。
1945年、連合軍によってメンゲレの実験室が爆破された。
その際、メンゲレは捕虜になりすまして脱出し、ブラジルへ逃げ延びている。
そして、34年に及ぶ逃亡の末、海水浴中の事故で死亡した。
ナチス戦犯の一人でありながら、最後まで彼が裁かれることはなかった。
世界と日本の怪人物FILE
暴虐と狂気に魅入られた者たち