ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

連載「アメリカの医療の光と影」から学ぶ

2008年05月14日 | ケアや介護
 私は2週間に1回医学書院から送っていただいている『週刊医学界新聞』を楽しみにしている。この新聞でボストンに住んでおられる医師で作家の李啓充先生(『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗』(医学書院)の作者であり、アメリカの医療の問題に鋭くえぐり出しており、好著である。)が連載しておられる「アメリカ医療の光と影」は素晴らしい。

 これは、インターネットでも読むことができるので、是非読んで欲しい。シャクではあるが、私のブログよりもはるかに魅力も説得力もある。私もこの連載から学ぶことが多い。特に、4月14日の第2777号の内容について、是非皆さんにも伝えておきたいと思った。

 連載「アメリカの医療の光と影125回」において、2005年のOECDが実施した調査報告によると、調査対象24カ国中で、日本の貧困度は、メキシコ、米国に次いで、第3位で高い。大変不名誉なことであり、社会福祉研究者として責任を感じ、恥じるものである。昔の日本は最たる社会主義的な国であり、所得格差が少ないことを誇りにしていたが、それはどこに行ったのだろうか。この貧困度の高い御三家は、全て国民負担率が低い国である。一般に、国民負担率が高くなると、貧困率は低くなっている。これは、ここで示した医学書院のホームページの中の図で見て欲しいが、国民負担率が高いチェコ、ルクセンブルグ、デンマーク、フィンランド、スウエーデン等では貧困度は低く。

 日本の国民負担率について、よく50%以内に留めることで、「小さな政府」を目指すことが強調されるが、日本は別の道を選択する方が良いのではないかと、考えさせられた。

 李先生は、ある回で、アメリカと日本の国民負担率を見かけと実質の違いを示していたが、これも興味があった。確かに、日本はアメリカよりも国民負担率は見かけは低い。日本が39.7%であるのに対して、アメリカは31.9%であるが、年収700万円(50歳、自営業、4人家族)の場合に、両国での実質の国民負担率を比較している。アメリカでは民間の医療保険に入ることになり、日本での医療保険料62万円に比べて、同じ程度保障されるとすれば242万円になり、所得税と保険料が、日本では246万円(35.1%)であり、アメリカの493万円(70.4%)より、実質ははるかに低い国民負担率になるという。

 李先生の連載は大変説得力があり、ある意味、もう少し医療や介護の保険料は、とりわけ所得累進制でもって、所得の多いものからより多く取る方が良いのではないか。そして、「小さな政府」を金科玉条とすることから、少し距離をもって冷静に眺め、「小さくもないが、大きくもない政府」を模索していくことが求めらているのではないかと考える。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
李 啓充
医学書院

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