ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

地域でのネットワーキング論 ?(最終回)<地域福祉論とネットワーキング方法>

2008年10月11日 | 地域でのネットワーキング論
今回で不連続の連載「地域でのネットワーキング論」の最終回にしたい。
社会福祉士のカリキュラム改正で、地域福祉が主流を占め、それを中核に科目編成されている感が強い。ある意味、「現代社会と福祉」と「地域福祉の理論と方法」を合わせて、社会福祉原論を構成していると考えられる。

一方、地域福祉論は脚光を浴びており、この分野での研究者が多いと思われるが、原論的な要素が強いだけに、具体的なコミュニティ・ワーク、コミュニティ・オーガニゼーション、地域でのネットワーキングといった方法へのアプローチが弱い気がしてならない。なぜなら、個人へのコーディネーション方法と地域へのネットワーキング方法が確立されて、始めて地域福祉論という原論を語ることができるからである。

そのためには、コミュニティをアセスメントし、住民と共にプランを作成し、実施し、モニタリングしていくことを、至急、先駆的な実践に学びながら確立していく必要がある。これを、現実の先駆的実践では、個別支援をベースにして、そこから地域の課題を導き出すことが多いと推測できる。それは、それとして社会福祉の専門家であれば、誰でもが初歩的に実施できるものとして確立していかなければならない。一方、地域の調査等を介して、地域の課題を見い出し、地域の仕組みを作り上げていき、最終的に個別での支援や問題発生予防ができる方法についても理論化とその実践を作り上げていかなければならないと思っている。

私は今回の連載で「地域でのネットワーキング論」と呼んできたが、それは。ある意味では、ケース・マネジメントの対概念としてコミュニティ・マネジメントという用語で整理することもできる。同時に、地域社会を対象とするマクロ・ソーシャルワークであるともいえる。あるいはマクロに加えて、メゾ・ソーシャルワークとされる「組織(organization)」もアセスメントし、プランを作っていくことも含めて、今後の検討が待たれる。そして、具体的な見える形で、支援のプロセスが示され、現場で活用された事例が頻繁に紹介される時代を迎えていかなければならない。

そして、ネットワーキングについては、住民の参加により、地域でのセフティ・ネットを構築していくものでもある。ただし、住民の参加がうまく進めていなければ、住民監視の仕組みになりかねないことも心しておかなければならない。

 私は今までケアマネジメントについて研究してきたが、ここからは、個別事例から入って、さらに地域のネットワーキングに結び付いていくことがあるということは論じてきた。下の図は、よく使われるケアマネジメントの三つの類型化であるが、包括モデルでは、個別支援を前提にして、地域のネットワーキングにまで機能が広がっており、現在多くなされている地域のネットワーキングは広義のケアマネジメントともいえるし、ケアマネジメントの連続としても捉えることができる。そのため、個別事例からではなく、地域全体を捉えることからのネットワーキングについても理論と実践をすり合わせながら創造していく必要がある。

 私も、現在こうしたネットワークに関心をもち、いくつかの調査を行い、研究を行っている。そのため、この連載は終了するが、調査から得られたものについては、逐次ブログを通じて報告していきたいと思っている。

地域でのネットワーキング論(18)<事例分析③豊中市>

2008年10月10日 | 地域でのネットワーキング論
 豊中市社会福祉協議会は、伊賀市社会福祉協議会と共に2008年度の地域福祉学会の地域福祉優秀実践賞を受賞されている。その意味では、社協活動が活発で、全国のリーダー的役割を果たしている。この社協で中心になってやっておられる勝部麗子さんから、私がやっている「地域のネットワークづくり研究会」の勉強会で話を伺った。

 ここでの活動もさすがというように思ったが、伊賀市社協同様に、多くは個別事例から問題を発見し、ケースカンファレンスを介して、地域全体の問題として捉え、地域のネットワークを開発に展開をさせていっている。確かに、一人暮らし高齢者の実態調査等も実施しているが、この調査から地域の問題を掴むというよりは、二次的な活動資料として活用されており、調査からネットワーキングにつながるということにはなっていない。

 ここでのネットワークづくりのプロセスは、システム開発という用語を使っておられるが、個別事例をもとに、これをアセスメント資料として、企画立案し、ネットワークを実際に作ることで、予防的・事後的に支える仕組みを作り上げており、基本的には伊賀市社協と同じ、PLAN,DO,SEEの過程で展開しているといえる。

 このカンファレンスやネットワークのメンバーには、行政の職員や当事者が参加していることが、一つの特徴である。同時に、個別事例の発見機能の特徴として、民生委員、ケアマネジャー等に加えて、住民から校区社会福祉委員会を介して、相談が入ることにある。これは、豊中市社協が校区での小地域福祉ネットワーク活動を活発に行っていることが基礎にあるからだといえる。その意味では、小地域活動がネットワークづくりに寄与することが大きいことを学んだ。

 昨日のブログの伊賀市社協で疑問となったケース発見の仕組みとしては、校区社会福祉協議会の活動が基盤にあることも重要であるように思えた。また、様々な課題別のネットワークを作っていくベースには、市全体で全ての地域課題を網羅したカンファレンスとして、地域福祉ネットワーク会議があり、これのブランチ的なものとして、課題別のネットワークを作っていくことで、統一的な仕組みになっているように思えた。ここでも、市全体での基幹となるネットワークを作っておくことが有効なように思える。

 事例で取り上げた伊賀市も豊中市の社協活動も、個別事例から地域全体の活動に展開しており、機関自体の機能として、利用者が相談にやってきたり、さもなければ、他の機関や団体から相談事例を集約できる機関が必要不可欠であることが分かった。

地域でのネットワーキング論?(16)<事例分析①大阪市>

2008年08月04日 | 地域でのネットワーキング論
 地域でのネットワークの具体的展開を議論するに当たって、一つは、ネットワークの枠組を作ることである。もう一つは、そのネットワークを活かしていくかの過程を示すことである。ここでは、事例分析でこれらの整理をしたい。

 前者のネットワークの枠組を作る場合に、行政主導の委員会等が作り、行政主導で実施していく場合と、ボトムアップに、社会福祉協議会等が事務局になり、ネットワークを作り上げていく方法がある。これら二つの方法には、それぞれメリットとデメリットがあり、住民の主体的な活動が弱い地域では前者が、強い地域では後者が選択されることになろう。

 ここでは、前者の行政が主導となり地域のネットワークを作っていった事例について、分析してみたい。この図は、私が委員長になり、1980年に試みた、大都市「大阪市」でのネットワークづくりの実験である。

 大阪市から地域の高齢者を支える仕組みを作ってくれないかという依頼があり、トップダウンで、委員会方式でもって、地域のネットワークの仕組みを提案し、300以上もある各小学校区ごとに、ネットワークづくりの実践を始めたものである。

 その当時、私はケアマネジメントのコーデイネーションについては一定の方法が固まりつつあったと思う。それよりも、地域での高齢者のセフテイ・ネットを創りあげることで、コーデイネーションを実施していく基盤をつくるべきであると考えていた。

 同時に、地域づくりは基本的に住民参加のボトムアップで作るものとの定説があり、ずいぶん案じたが、それではいつまでたっても、大都市では地域のネットワークの仕組みは作れないと思った。それで、あえてトップダウンで、同時にお金を使って都会型地域のネットワークが作れないかを模索するものであった。
 
 委員会では、住民が主体的に参加して行うといった仕組みを創る発想にはなれなかった。それは、大都市での地域住民間のつながりの弱さがあり、トップダウンで住民間での支援の仕組みをを作っていくことを考えた。そのため、各小学校区にネットワーク推進員という有給で専従の人を配置し、その人のもとで、地域の既存の組織や団体からなるネットワーク委員会を動かし、そのネットワークが一人暮らしの見守りや食事サービスを行っていくとした。

 これを創るに当たり、財政を説得するために、当時の高齢者保健福祉室長(局長級のポスト)であった伊藤光行様(前聖カタリナ大学副学長)は、老人ホームを一棟造ってもわずか100名程しか救えません。このネットワークを創れば、大阪市の在宅の全ての高齢者が救えるのですという説明をして、新規に予算化に成功したものである。

 これができた時は、「3層5段階の地域ネットワーク」と呼び、大阪の医師会等もこの仕組みに高い評価をしてくれたものである。その後、このネットワークは、他の大都市にも影響を与え、北九州市、福岡市、神戸市でも類似の地域ネットワークの仕組みが作られていった。

 その後、在宅介護支援センターや地域包括支援センターが配置され、他の大都市でこの仕組みが今どのように変遷しているのかは分からないが、大阪市については、このネットワークに対して、年間数億円のお金が費やされているが、自主財源でもって20数年後の今も生き延びている。

 現在このネットワークは高齢者のみから、障害者や児童にも対象を広げてきている。先日も行政から相談を受けたが、ネットワーク推進員と地域包括支援センターの関係をどのように強化すべきかというテーマであった。

ネットワーキングを進めていく手法は様々であろうが、トップダウンでもボトムアップでよいから、こうした市町村ネットワークの全体像が作られ、それをもとに具体化していくことが必要ではないのか。さらには、全体像も時間と共に修正されていくことになっていくことが必要ではないのか。

 ただ、30年前には分からなかったことで、今になればよく分かることは、ネットワーク推進員なり、今後その関係が強くなる地域包括支援センターがネットワーク委員会をいかなる手順でもって、活動を進めていくかについては、全く議論しなかった。このことが明らかになれば、大阪市のネットワーク委員会は一層活動が活発化すると思われる。

地域でのネットワーキング論?(16)<アクション・リサーチの結果>

2008年07月21日 | 地域でのネットワーキング論
 大阪ガスグループ福祉財団からの研究委託でもって、「地域包括支援センターの予防機能強化に向けての調査研究」を大阪YMACAと一緒に行ってきたが、その結果について、先日報告書ができた。まずは、委託いただきました「大阪ガスグループ福祉財団」に対して、お礼申し上げたい。

 この研究では、次の3つのことを狙いにして、アクションリサーチという研究者が実務者と一緒に直接支援に関わることでの研究を行った。

 ①地域包括支援センターの職員に対しては、介護予防ケアマネジメントの方法について学習してもらい、その成果を評価することであった。具体的には、単にケアプラン作成を学ぶだけではなく、利用者の意欲や能力を引き出し、活用していくケアプランを作成するためには、どのようなことが必要かについての研修とその研修評価であった。これについては、それなりの評価を得ることができた。

 ②介護予防に向けての地域ぐるみの一般高齢者中心自主的な活動を作り上げることであり、介護予防教室を実際に開催し、それを核にして地域住民の組織化を図っていった。調査の目的としては、介護予防教室参加者の身体機能面での変化を評価することと、どのようにすれば組織化でき、継続・発展していくかを整理することにあった。介護予防教室については、参加者の短期での身体機能面の向上が図れる効果があることが分かった。地域住民の組織化については、様々なアプローチがあり、その長短が分かった。

 ③ここでは、①と②を結びつけ、地域包括支援センターの作成するケアプランでもって、要支援者や特定高齢者が介護予防教室に参加し、同時に介護予防教室に参加した高齢者が迎えから送りまでの支援を行うことで、介護予防教室を地域の高齢者全体の社会資源に発展させることを目的にしたものである。これについては、①と②の成果が十分に反映できず、同時に時間的な制約で、今後ケアプランからつないでいくことの経過をみていくことになった。

 ここで、地域でのネットワーキング論との関係で、地域包括支援センターが地域での介護予防教室でのネットワークを形成していく上で、4つの地域でネットワークを作っていった。その際に、どこから関われば良いかについての「きっかけ」を学ぶことができた。

 実験を行った3つの地域の内で、様々なネットワークが確立しているA地域では、自治会長さんに依頼し、地域内のトップダウンで実施でき、さらにそれが継続し、発展していった。既存の健康づくり委員会といった組織にお願いし、そこに地域から回覧で参加者を募ったB地域では、自主的な活動としては低調であった。ところが、地域の食事サービスを拠点にして、食事前の時間に、他の参加者も回覧で募ったC地域の場合には、自主的な活動が発展していった。

 ここでは、地域包括支援センターの社会福祉士等が地域での介護予防での地域のネットワークをいかに作り上げていくかについて示唆が得られた。既に地域での自主的なネットワーク活動が進んでいる場合には、地域内でのトップダウンの仕組みを活用することでも、容易にさらなるネットワークを広げていくことができることが分かった。さらには、地域での既存の関連組織を活用して、そこを核に新たにネットワークを広げていくのには、拠点施設や具体的なサービスをもっていたり、責任体制がとれていることが、条件となることが分かった。その条件を満たしていない場合には、そうしたことを強化しながら、ネットワークの拡充を進めていく必要があることが分かった。

 こうした仕事を地域包括支援センターの社会福祉士ができなければ、センターも社会福祉士も不要論が起こってくることを心しなければならない。まさに、本プロジェクトの成果は、そのような仕事の道筋を考える出発点になるものを少しは提示できたと思う。

地域でのネットワーキング論?(15)<技術の一つとしてのカンファレンスの進め方>

2008年07月19日 | 地域でのネットワーキング論
 地域のネットワーキングを進めるためには、地域の組織・団体の代表が集まるカンファレンスもあれば、組織・団体の実務者が集まるカンファレンスも必要である。さらには、住民を集めたカンファレンスもあれば、同じ課題をもつ当事者が集まるカンファレンスも不可欠である。

 地域住民が有している生活問題を明らかにし、それを地域の人々と共有化し、解決方法について話し合わなければならない。その媒介になるのが「カンファレンス」である。

 そう言えば、以前にも書いたが、岡村重夫先生からカンファレンスの研究を勧められたが、もっとやっておくべきだと悔いる。

 ただ、このカンファレンスを円滑に実施するためには、多くの技術が必要となる。メンバーを集めるためには、アウトリーチによる、なぜカンファレンスが必要かをメンバーとなる者やその上司に説明する説得力や、その際に根回しが必要である。カンファレンスが始めれば、カンファレンスの目的やその方法について説明できるプレゼンテーション能力、参加者の発言を促す能力、意見をまとめていく能力が必要であり、これらの能力はカンファレンスを推進していく能力といえる。さらに、ここで決定した内容を、実施していくための、ロビイーング能力、計画作成のコーディネーション能力等が考えられる。

 以上のようなことを考えると、地域でのネットワーキングを進める上で核となる「カンファレンス」を進めていくためには、様々な能力が求められる。その能力を整理し、一定の教育が必要ではないかと考える。

 カンファレンスを自分で開き、運営できるようにするため、新しい教科書には、様々な能力開発に努めるべきである。

 





地域でのネットワーキング論?(14)<必要とされる技術>

2008年07月18日 | 地域でのネットワーキング論
 地域でのネットワーキングがうまくいっている地域のソーシャルワーカーとなっている人は天性の能力をもった者が活躍してきたのではないだろうか。それでは、マクロ・ソーシャルワーカーは育たない。

 ソーシャルワークの専門教育を受けた者なら、一応こなせるためには、planed change に基づく実践方法についての能力に加えて、技術的な能力も必要である。

 そのためには、いくつかの技術について教育し、大学や一般養成施設を卒業していく際には、身につけておくことが大切である。新しい社会福祉士の教科書づくりも宴たけなわのことと思うが、今まで通り、面接でのコミュニケーション技術のみの教育でよいのであろうか。

 地域でのネットワーキングを実践するのには、どのような技術をもっている必要があるのか。従来の教科書では、技術といえば、面接技術が通り相場であったが、果たして、地域でのネットワーキングを行っていくためには、面接技術に加えて、別の様々な技術を持ち合わせていれば、より円滑に地域でのネットワーキングの実践できるであろう。

 個々の利用者に対するコーディネーション機能を進める際に最も重要な面接技術は、地域でのネットワーキングにおいても確かに重要な技術である。さらに、根回しや段取りの能力、プレゼンテーション能力、ロビーイング能力 会議を進行し、まとめていく能力などが求められる。

 そのため、新しい社会福祉士養成の教科書には、方法に加えて、多様な技術についても習得できるよう、座学部分、演習部分、実習部分に組み込まれることが大切である。

 今からは、こうした技術をも教育し、大学や一般養成施設を卒業していく際には、身につけていけることが大切である。新しい教科書には、面接技術のみではないことを祈る。

 個々の出版社は、私の会社の教科書はどのような技術を教えるようになっているかは企業内秘密で言えないであろうが、本当は、オープンソースで最高の教科書づくりをしていくことがおもしろいとは思う。

 オープンソースという言葉を始めて聞く人がいるかと思うので、再度説明するが、既に、5月20日に「オープンソースで、BPSDへの対応方法を共有化を!」を書いている。すなわち、全てのその領域の研究者や実務者が英知を出し合った、教科書をブログ上に作り上げていくことである。この技術部分は、思想的な部分が影響を与えることが少なく、未だ実践での経験が弱い部分であることから、有益であると思う。

 出版社の皆さん、いかがでしょうか。技術部分は、どこの教科書も同じになっていくようのオープンソースでノウハウを蓄積という方法は、いかがか。

地域でのネットワーキング論?(13)<計画の作成・実施過程>

2008年06月19日 | 地域でのネットワーキング論
地域でのネットワーキングでは、計画の作成・実施を進めていく上で、計画を支援してくれる体制づくりや、それを進めるための戦略や戦術が必要となる。これについても、エレン・ニッティング他の『ソーシャルワーク・マクロ・プラクティス』は、具体的でおもしろい。以下の過程について、いくつかの事例でもって、その展開過程が示されているが、ここでは、305頁から405頁のエキスのみを示すことにする。
 
 まずは、計画を進める支援体制を作り上げるために、①どのような仮説で行うかを明確にし、②全体としての関わってもらう参加者を考え、③計画を進めることの点検をし、④計画内容を決定することになる。さらに、それらを行うに当たって、一定の指針をもとにして、実施のための戦略や戦術を選ぶことになる。

ウィリアム・ブルーグマンの『マクロ・ソーシャルワークの実践法』では、「どうにもなりそうもない課題」は削除し、「どうにかできそうな課題」について、フォーラムやフォーカス・グループを活用して、解決策を検討していく。ここで示された解決策を、①政治的実現可能性、②経済的実現可能性(便益費用分析、費用対効果分析等)、③社会的実現可能性を評価し、ランクづけをするとしている(95~102頁)。

 これらをもとに、計画での活動内容を実際に実行していくことになるが、ここでは、①計画の目標を設定し、②導き出される結果を書き、③その計画の実施過程を示し、④実行し、⑤モニタリングし、⑥評価することになる。

 この著書で評価されるべきことは、「計画に基づく変化」に焦点をあて、具体的に地域や組織を変えていくかを明示していることである。こうしたことの一定のコンセンサスを得られれば、地域での計画づくりだけでなく、多様な方法でもって、ネットワーキング機能を高めていくことができると考える。さらに、評価すべき点は、それぞれの段階で、行うことを具体的に記述することが強調されており、住民や他の専門家にソーシャルワーカーの仕事、あるいはネットワーキングの内容や意義を理解してもらっていくことに有効であると思った。

 ピンカス・ミナハンの『social work practice : model and method』の再読と同時に、本著をじっくりと読むことで、実践への方向づけをしていくことが可能なような気がする。




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地域でのネットワーキング論?(12)<地域の生活問題の分析(アセスメント)方法について>

2008年06月18日 | 地域でのネットワーキング論
前回は計画的に基づき変化させるべき地域での生活問題について言及したが、ここでは、そうした3つの生活問題をどのように抽出させることができるのかについて考えてみる。これには、個別事例から波及させていく方法と、個々の地域社会の特徴なり問題点か明らかにしていく方法がある。

 前者については、個人の相談支援をもとに、そこでの地域社会の生活課題を明らかにして、その地域での生活課題として波及的に広げていくことである。これについては、よく、旧来の市町村社会福祉協議会は、個別的な相談援助を行ってこなかったことが、活動に支障を与えたというようなことが言われるが、それは、個人の次元から地域の次元の生活問題に結びつけることが困難であったことを意味していると言える。

 後者の地域社会の生活問題を抽出する方法は、個人よりも、むしろ地域社会や、時には地域の組織に焦点を当てて、そこから生活問題を抽出することである。地域の生活問題を新たに探し出す方法としては、具体的には、相談支援に関わっている専門職や地域の団体・組織、他方当事者から、意見を聴取し、それをまとめることで行うといった、質的な調査の分析から実施することが、一つは考えられる。もう一つは、地域住民を対象として聞き取りなり郵送による量的調査を行い、地域住民や当事者の現状を分析して行う、社会福祉調査手法を駆使して行う方法がある。

 エレン・ニッティング他の『ソーシャルワーク・マクロ・プラクティス』では、地域社会の分析(私流には、アセスメント)として、①標的にする対象者層に焦点づけし、②そうした対象者層の地域での特徴や問題点を示し、③その地域独特の問題を示し、④それらの問題に対応できる地域の構造を明らかにすることが、具体的に示されている。

 ここでのニーズ・アセスメントの方法としては、6点を挙げ、その長短を整理している。(176頁)
①ヒヤリング、フォーラム開催、フォーカス・グループとの話し合いといったキーパーソンからの情報収集、
②待機ケースや担当ケースを利用した情報、
③現存のデータの分析することで、問題の原因について実証的情報を得る調査
④以前の調査で分かっていた、問題の要因や広がりについての調査結果
⑤年齢、収入、職業と言ったデータを検討した社会的指標
⑥地域のメンバーからのインタビューといった調査の実施

 なお、ウィリアム・ブルーグマンは『マクロ・ソーシャルワークの実践法』で、データ収集とその分析として、①既存データ、②社会調査、③事例研究の方法の混合アプロ-チを提唱している(93~95頁)。

 以上のように、地域を分析(アセスメント)して、次のプランニングに入っていくことになる。これは、組織の場合も一緒で、分析からスタートする。


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地域でのネットワーキング論?(11)<マクロ・ソーシャルワークとは>

2008年06月17日 | 地域でのネットワーキング論
 次に地域の生活問題の解決・緩和に向けて、地域でどのような部分に焦点を当てて業務をしていくのかを考えてみたい。前回に、アセスメントで捉える生活問題は、人と社会環境(社会資源)との関係の中で生じている齟齬として位置づけられるのではないかと述べた。具体的な齟齬として、①社会資源がなく住民が困っていること、②社会資源と住民のニーズにギャップがあり、住民が困っていること、③社会資源間でギャップがあり、住民が困っていること、の3点に整理できる。

 この社会資源を提供側から捉えると、提供組織である。そのため、地域でのネットワーキング論は、地域内の組織の変化と地域社会の変化を求めることになる。組織の変化を目指すことが、結果として地域の変化を目指すことがつながっているといえる。

 一般に、組織の変化はメゾ・ソーシャルワークと、地域の変化をマクロ・ソーシャルワークと呼ぶ場合がある。一方、この組織と地域の変化を併せて行うことでもって、すなわち、メゾを包み込んで、マクロ・ソーシャルワークと言及している場合もある。

 現在、大学院生と授業で読んでいるエレン・ニッティング、ピーター・ケットナー、スティーブン・マックマートリーの『ソーシャルワーク・マクロ・プラクティス』は、地域や組織を理解し、分析し、計画作成、計画実施、モニタリング、評価を展開していくものである。ケアマネジメントについても、ミクロからマクロの課題が生み出されてくることを実証的に言及しており、ミクロ・ソーシャルワークとマクロ・ソーシャルワークを一体的に捉えて初めて、ソーシャルワークになるとしている。

 なお、この著書も、ピンカス・ミナハンの極めて大きい影響を受け、組織や地域を「計画に基づき変化」させることを狙いにしており、私の興味は、計画的にどう変化させるかに興味をもっている。彼らがどのようにして、分析し、計画を作り、組織や地域社会を変えていくかの考え方は後日紹介することとする。

 ただ理解できることは、ネットワーキングでは上記の3つの生活問題に対して、地域内にある組織を計画的に変化させ、同時に地域社会を計画的に変化させることであると、整理できるのではないか。

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地域でのネットワーキング論?(10)<「計画に基づく変化」を中核に>

2008年06月16日 | 地域でのネットワーキング論
 地域でのネットワーキングを進めるためには、「計画に基づく変化」(planed change)を追求することが必要であると考えている。これは、専門職においては、目標に向かっての計画を作成し実施するということが求められる。同時に、計画の実施による変化が生まれるが、それはソーシャルワークの目的と合致したものでなければならない。

 私が、ケアマネジメントで求めたのは、ソーシャルワークにおいての「計画に基づく変化」を模索したものである。私がケースワークを嫌いだったのは、計画性が弱いこと、さらに変化がソーシャルワーク固有のものであることの説明が弱いこと、と整理している。すなわち、「計画に基づく変化」を追求することで、計画作成で専門性が発揮でき、変化する内容が、利用者の生活であるとしてきた。そのため、ケアマネジメントでは、計画に基づく支援でもって、主として「個人」である利用者の生活を変化させることを意識して、研究してきた。

 今回の地域のネットワーキング論についても、「計画された変化」を中心的な考え方にして、あるべき方法を模索していく必要がある。但し、その対象が「個人」ではなく、「地域」であり、同時に「組織」といったものを含むことになる。

 このため、具体的には、第一には、「計画に基づく」という用語でもって、地域を住民にとって生活しやすいように変える計画が作成され、実施されなければならない。そのためには、どのような方法で地域の状態をアセスメント(分析:アナライゼーション)するかが明らかにされなければならない。ここでのアセスメント(分析)の方法は、地域を把握するための調査といった手法を活用する方法もあれば、個々の利用者の生活問題を基礎にして、そのから同様の対象者に対応した地域の生活課題を抽出する手法もある。

 第二には、「変化」の意味では、地域での生活問題が予防できたり、解決・緩和に寄与できたり、継続的に支援できることに貢献できるように、地域社会を変えることである。ここでの生活問題とは、地域住民と地域環境との関係の中で生じている齟齬のことであり、齟齬には社会資源がなく住民が困っていたり、社会資源と住民のニーズにギャップがあったり、社会資源間でギャップが生じていることで住民が困っていたりといったことである。そのため、専門家として、この地域にある生活問題の解決や緩和という変化をもたらすことである。

 さらに、アセスメント(分析)から導き出される計画内容は用紙に記述され、その用紙を見れば、誰でもが納得できるものでなければならない。こうした目に見える、生活問題解決に向けて変化内容を示した計画用紙が提示できなければならない。この用紙があれば、住民の参加を容易にするだけでなく、最終的には住民主体の活動になっていくのではないか。同時に、ソーシャルワーカーのネットワーキング機能を社会全体で理解してもらえるのではないか。

 次には、計画の実施としては、計画内容に含まれている住民や専門家、政治家等を参加させ、実行していくかが展開されることになる。同時に、これを内容に含まれている実施過程(期限を決めての実施過程)をもとに進めていくが、計画の実施過程でのモニタリングや評価が展開されていくことになる。

 ソーシャルワークの実務に従事している方も、研究・教育に従事している方も、是非、以上のような「計画に基づく変化」を常に念頭に置いて仕事をしていくことが必要ではないかと考えている。

 私が、ケアマネジメントの研究を始める契機となったのは、かの有名なピンカスとミナハンの『social work practice : model and method』で、このplaned changeを強調されているのに触発されてのことである。すなわち、個人の何を変えるのか、さらにはいかに計画を作成し変えるのかをテーマにして、ケアマネジメントの骨格を検討していった。これこそが、科学であり、専門性を発揮する部分である。

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地域でのネットワーキング論?(9)<ソーシャルワークの基礎はコミュニティ・オーガニゼーション>

2008年06月15日 | 地域でのネットワーキング論
 大阪市立大学での社会福祉学科のカリキュラムは、私の学生時代には、「社会福祉方法論(1)」がコミュニティ・オーガニゼーションであり、(2)がグループワーク、(3)がケースワークであった。他の大学では、逆で、(1)がケースワーク、(2)がグループワーク、(3)がコミュニティ・オーガニゼーションという科目名になっていた。

 何度も岡村重夫先生の話で申し訳ないが、先生は、なぜ市大では(1)をコミュニティ・オーガニゼーションにしているかを刻々と説明し、自慢されていたことを思い出す。コミュニティ・オーガニゼーションのもとで、住民が住む基盤であるコミュニティが形成され、そこで始めて、利用者を支えるケースワークが円滑にできることになるからであると言っておられた。

 主任教授である岡村先生がコミュニティ・オーガニゼーションを担当されておられるから、1番の(1)にしたのではないのかと茶化すと、「馬鹿言え」と叱られたことがある。

 今回の不連続の連載を始めて、あの当時の先生の思いが今になってよく分かるような気がする。そこができなければ、ソーシャルワークとして成立しないと言うことである。これは、今までのコーディネーションとネットワーキングの関係とよく似ている。ネットワーキングを下部構造として、コーディネーションが上部構造として成り立っているということである。

 同時に、感心することは、こうしたコミュニティ・オーガニゼーションを実践するために、戦後の焼け野原から大阪が立ち直ろうとしていた昭和24年と、その後の28年頃の2度にわたって、「大阪市福祉地図」を作成し、先生が直々各地区に出向き、それぞれの地域の懇談会で当該地域の問題点について説明し、住民の方々に働きかける実践をしておられる。当時、岡村先生の下で、柴田善守先生や右田紀久恵先生が参加されて、こうした正面突破の実践を行ったと聞いている。

 このようなコミュニティ・オーガニゼーションの実践と研究を統合したプロジェクトが、日本でのネットワ-キングに関わる研究者に十分継承されているであろうか。得てして、研究者自身が主体と言うよりは、自治体や社会福祉協議会が作成する地域福祉に関わる計画作成をお手伝いしているのが実態ではないのか。現状認識が誤っていれば、申し訳ないと思うが、ネットワーキングの方法が、岡村先生等が実践して50年経っても未だ理論化していないのは、ここにもポイントがあるように考えるからである。

 地域に入り、懇談会に参加し、地域を一種に変えていくといった実践がなければ、「計画された地域の変化」である地域でのネットワーキング方法を具体化し、普遍化することは難しいような気がする。

 コーディネーション機能については、未だ十分ではないが、実践現場と教育現場が一体になり、その方法を模索し、今日に至った。同じ道筋を、ネットワーキングの方法を模索についても活用することが必要ではないのか。








地域でのネットワーキング論?(8)<ソーシャルワークとケアマネジメントの関係>

2008年06月14日 | 地域でのネットワーキング論
  今までソーシャルワークをコーデイネーション機能とネットワーキング機能に分け、ネットワーキング機能が不十分な状況について言及してきた。そして、これら両者の機能を併せ持つことで、実践能力のあるソーシャルワーカーに育っていくと考えている。そのためには、ネットワーキングの方法をPLAN→DO→CHECKの過程でもって一般化し、いずれのソーシャルワーカーであっても基本的な支援が可能なような理論化と教育での普及が大切であることを強調してきた。

一方、ケアマネジメントについては、日本でのケアマネジメントの実際は、個々の利用者を地域で支援する個人を核にネットワーキングを組んでいく「インデイビジュアル・ベースド・ケアマネジメント」である。しかしながら、理論的にも、実際にも「インデイビジュアル・ベースド・ケアマネジメント」と、地域を基盤にした「コミュニテイ・ベースド・ケアマネジメント」が存在するとされている。この「コミュニテイ・ベースド・ケアマネジメント」では、「インデイビジュアル・ベースド・ケアマネジメント」に比べて、担当する利用者数が少ない代わりに、地域でのネットワーキングやクラス・アドバカシー(同じ問題を有する対象者への権利擁護)を行っているとされる。

以上のことを考えると、「ソーシャルワーク>インデイビジュアル・ベースド・ケアマネジメント」が成り立つが、「ソーシャルワーク=コミュニテイ・ベースド・ケアマネジメント」ということにもなり、ソーシャルワークとケアマネジメントは微妙な関係にあることがうかがえる。

地域でのネットワーキング論?(7)<.ネットワーキングを社会に見せる>

2008年06月13日 | 地域でのネットワーキング論
 地域でのネットワーキングの具体的な方法についての議論に入る前に、ネットワーキング論の理念的な説明や必要性を論じることをさらに進めて、ネットワーキング方法のありべき方向について検討しておく。

 そのため、以下では、私のケアマネジメント研究を振り返りながら、ソーシャルワーカーには実施可能で、社会からもその仕事が分かってもらえるような工夫の重要性について整理しておきたい。同様に、ネットワーキングの方法についても見えるものにしたい。

 私は、大学での最初の授業担当は「ケースワーク」であったが、この講義をすることはあまり好きでなかった。その意味では、当時私の授業を受けられた学生はおもしろくなかっただろうし、大変申し訳ないことであったと反省し、後悔している。

 ただ、単に感情的にこの科目がおもしろくなかったのではなく、ケースワークには「いつの間にか利用者が変わる」また「話をしていれば変わる」と言ったイメージが強かった。もっと計画的なものであり、なぜ変わったかを明確に説明できるものでなければ、その専門職は社会で通じないのではないかと考えていた。同時に、変わる内容が、生活が変わったことを説明できなければ、専門職としての独自性が発揮できない思って。そのため、「ケースワーク」からいかに脱却しようかと考えていた。

 逆に言えば、ケースワークをソーシャルワーク専門職として、社会に伝えることができるものにしたかったのである。そのため、その当時は、アメリカのケースワークの理論研究をリビューする論文が多いが、ある意味「planed change」の新たなものを模索していたといえる。planedとは計画的に支援することであり、changeの中味は、生活を変えることであった。これら2つのことができれば、ソーシャルワークが見えてくると考えた。

 結果として、「プラン」や「変化」が明確でにするために、ケアマネジメントに研究をシフトしていったといえる。このシフトすることには勇気のいることであったが、社会に仕事内容を見てもらうのには、これしかないと思ったからである。すなわち、計画的に支援するし、変化はニーズとサービスと結びつけることで生活が変化するからである。

 そのため、アメリカで行われている以上に、日本では見せるための工夫を意識して行った。そのため、私の研究の舞台となった在宅介護支援センターで、おそらく日本で初めて作成されたであろう、10数枚からなる「アセスメント表」を作って、皆さんに活用していただいた。さらに、図のような「ケアプラン用紙」を作り、この用紙を使って利用者と一緒に計画を作ってもらうことを進めた。これらは、専門職であれば、PLAN→DO→SEEということのメリハリが大切であることと同時に、利用者だけでなく、社会全体に仕事内容を分かってもらうよう心がけた。

 追加して言うと、現在の介護保険での介護支援専門員であれば、誰でも使っている居宅介護支援計画書の2枚目は、この図とほとんど変わらない。作ったあの時に、特許でも取っておけば、今や左団扇の生活になっていたかもしれない。ただ、こうした工夫が、介護保険制度で活かされていることは、うれしい限りであるし、当時の厚生労働省の介護保険担当者も社会に見せるものにしたかったのだと思う。

 これは、コーデイネーションの方法の議論であり、このようにしてこの方法を定着させてきたが、今後ネットワーキングの方法についても、同じように、見えるものにしていくといった意識でもって、「ネットワーキング」の具体的展開での種々の工夫をしていかなければならないと思う。それには、多くの人の知識と知恵が必要である。是非、コメントをを下さい。

地域でのネットワーキング論?(6)<ケアマネジメントの機能範囲>

2008年04月27日 | 地域でのネットワーキング論
10年程前に、イギリスの福祉施策を研究されている有能な若手の先生から、ご質問を受けたことがある。「ケアマネジメントは制度ですか、それとも方法ですか」という唐突な質問に、返答に詰まった。とっさに、以下のような説明をさせて頂いた記憶がある。

 「ケアマネジメント研究の第一人者であるオースチンは、ケアマネジメントは『実践』と『システム』から成り立つとしたことを引用し、私の場合は、主としてケアマネジメント『実践』に力点を置いて研究しているが、ケアマネジメント『システム』についても研究すべきだと思っており、それにも関心をもっています。両者がなくては、現実にケアマネジメントが円滑に実施できないからであり、あなたのおっしゃってられることからすれば、方法は実践に、制度はシステムに相当するのではないでしょうか」

 あの当時、そのように応えたが、質問をされた方は、現在社会福祉政策研究の第一人者になられているが、そのことについて今彼がどのように考えているか、聞いてみたい気がする。

これについては、後日談であるが、私はケアマネジメント同様、ソーシャルワークが日本に定着しない理由の一つに、ソーシャルワーク実践の研究や人材の養成は十分ではないが、それなりに実施されているが、ソーシャルワークシステムの研究やその実践がないからうまくいっていないのではないかとの考えに至り、アメリカでソーシャルワークを研究してきた人たちに、アメリカでは『ソーシャルワークシステム』といった概念なり、キーワードはないか尋ね回ったことがある。この結果については、見たことも聞いたこともないということであった。

 これは、アメリカと言うところは、専門職への信頼の厚い国であることに起因していると分析をした。日本では、ソーシャルワークのネットワークを作り上げ、それを合わせて、ソーシャルワークを制度として定着させていくことが必要であると考えたし、今もそう確信している。

 ケアマネジメントは広い概念であり、狭くすれば、コーデイネーションのみであり、広くとらえれば、地域でのネットワーキングも含んでいるといえる。H.ローズは(prceeding of the confarence on evaluation of care manehement programs,1980)図(クリックすれば、大きくなります)のように、ケアマネジメントを3つに整理している。

 その意味では、前回議論した、在宅介護支援センターでの研究の際に、もっと地域でのネットワーキング手法について詰めておくべきであったと反省する。それができなかったことが、その当時チャンスがあっただけに、至極残念である。

 またチャンスは地域包括支援センターのもとでやってきた。このチャンスを逃さないよう努力しましょう。

地域でのネットワーキング論?(5)<ネットワーキングができていない現状②>

2008年04月25日 | 地域でのネットワーキング論
 ここでは、昨日のブログで書いた、地域包括支援センターの社会福祉士の業務についての自己評価と同じような調査結果を報告したい。

 昨年度、大学院生数名と2つの調査対象者に対して職務内容に関する調査を行った。調査対象者は、1つは大阪府が独自で実施している「コミュニテイ・ソーシャルワーカー」であり、もう1つは介護保険制度の「ケアマネジャー」である。その際には、多くの皆様に調査にご協力を頂いたことを、心から感謝する次第である。

 職務内容については、30ほどの職務内容について、実施状況についての自己評価と自らの役割としての認識状況を尋ねるものであった。

 ここで3つの職務内容について、両職種での実践意識と役割認識度についての自己評価違いをみてみたい。それは極めて興味深く、かつ思っていたとおりの結果となったことである。ここで取り上げる3つの職務内容は、利用者への個別支援である「利用者への支援計画作成(プランニング)を行う」、「地域にある様々な団体や機関を組織化(ネットワーク)する」、「地域に存在しない社会資源を作り出す」についてである。

 その結果が、上記の図であるが、ケアマネジャー(CM)はコミュニテイ・ソーシャルワーカー(CSW)よりも、利用者への支援計画作成(プランニング)を行うことの実践度も役割認識度も高い。一方、地域にある様々な団体や機関をネットワーキングすることについては、CSWはCMよりも役割認識度が高いが、現実の実践度では有意差がでなかった。さらに、地域に存在しない社会資源を作り出すソーシャルアクションについては、CSWはCMよりも実践度も役割認識度も高くなっていた。

 この結果の意味であるが、コミュニテイ・ソーシャルワーカーはネットワーキングを自らの業務として認識しているにも関わらず、その職務が十分にはできておらず、現状ではケアマネジャーの実施している意識情況とあまり変わらないことが分かった。ソーシャルアクションについては、両者の実践情況や役割認識の自己評価に違いがあることが分かったが、現実の実施度では、8割のソーシャルワーカーが実施していないといった自己評価であった。

 以上の結果、ソーシャルワーカーの仕事をファジーにし、独自性を見えなくさせていることが分かった。我々が考えていた仮説の通りであるが、コミュニテイ・ソーシャルワーカーが地域でのネットワークを作っていくことができているという意識になるよう、どうすべきかを考えることが今回のテーマに応えることになるといえる。

 どのようなソーシャルワーカーの属性や特徴の場合には、ネットワーキングやソーシャルアクションをやっている意識になるのかについての本調査の詳しい分析も必要である。同時に、今後議論していくことになるであろう、どのような手順や方法でネットワーキングやソーシャルアクションが実施可能かについての教科書や手引き作りも重要である。そうしたことに示唆する議論を今後重ねていきたい。