ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

スケールメリットにどう対応するのか(2)

2009年01月31日 | ケアや介護
 現実に、今回の介護報酬改正は様々な「加算」でもって、3%のアップ分がほとんど使われた。そのため、個々の事業者は、「特定事業者加算」を取ることに目を向けることになる。但し、加算を得た事業者が、本当に利用者のサービスの質が高いかどうかについては、疑問が大きい。

 訪問介護や居宅介護支援といった居宅サービスについては、特定事業者加算を取得する敷居を低くし、取りやすくした。そのため、特定事業者加算を多くの事業者が取れるよう努力するであろう。ただし、一定の規模がなければ加算が取れにくくなっている。大規模の事業者であれば、事業所を分割することで可能になるであろう。また、居宅介護支援事業者であれば、常勤・専従の介護支援専門員が2名以上いなければ、特定事業者加算(Ⅱ)を、3名以上いなければ、特定事業者加算(Ⅰ)が取れないことになっている。

 そのため、小規模事業者は不利であることは間違いない。そうすれば、今後は小規模の事業者は集合離散していく運命になるのであろうか。小規模故に、利用者に対して質の高いサービスを提供していることを実証できないのであろうか。

 私の知っている多くの小規模の事業者には、ボランティア仲間が作った事業者や、コミュニティ・ビジネスといったシャッター街の活性化の貢献している方も多い。是非生き長らえ、サービスの質の高さを証明していってほしい。

スケールメリットにどのように対応するのか(1)

2009年01月30日 | ケアや介護
 介護保険制度の平成21年度からの介護報酬改正についてパブリックコメントをとっているが、一段落した感がある。この際に明らかになりながら、ほとんど対応しなかった課題がある。それは、スケールメリットについてである。

 2008年の「介護事業者経営実態調査」から、在宅について言えば、多くの事業はスケールメリットの影響が大きく、利用者数がある臨界点に達すると、赤字から黒字に変換することであった。ちなみに、訪問介護であれば、600回の利用になれば、訪問看護であれば200回が臨界点という結果であった。他の居宅サービスにも臨界点があり、訪問入浴介護では160回、通所介護では300回、通所リハでは450回、福祉用具貸与では100人であった。居宅サービスだけでなく、施設サービスも同様であり、定員数が少なければ収支差率が低い傾向が示されていた。

 今回の介護報酬改正では、これらのスケールメリットに対しては全く配慮されることはなかった。介護老人福祉施設については、今までは最低基準である50床を基準にしていたのを、70床を基準にするよう、国から都道府県に通達のようなものを出すことが、書かれていた。一方、小規模の訪問介護や訪問看護事業者等については、経営面で、総務部分を共同化する等の事業者間で連携していく工夫を指導している。

 確かに、利用者が少ない小規模事業者に対する介護報酬での配慮は難しいのかもしれないが、そこには、私には割り切れない思いがある。小規模事業者の方がサービスの質が高かったり、柔軟性があり、融通が利く利面性があるはしないのかということである。専門性が特化しているのであれば、配慮が必要である。

 施設の場合には、認知症者の場合、大型施設よりもグループホームのような小規模施設の方が、BPSD(行動・心理症状)が少なくなったり、表情が明るくなるというエビデンスが相当多くでている。その意味では、ベット数の違いで利用者へのサービスの質が異なるエビデンスを明らかにし、50床程度の介護老人福祉施設や老人保健施設の介護報酬単価を高くすることの議論が必要ではないのだろうか。

 一方、在宅サービスでは、小規模の方が質が高いことが実証されてはいない。研究者は小規模と大規模とで、在宅サービスの質はどのように異なるのかの研究が求められる。そのような調査結果に基づいて、スケールメリットを基礎にした報酬議論なのか、サービスの質を配慮した介護報酬議論なのかが、分かれてくるように思われる。

 小規模の在宅サービス事業者に求めたいことは、大規模事業者に比べて、どのようなサービスでの良さがあるかについて、明確に答えることができことである。どのような専門性を高くすることで、利用者へのサービスの質が高いことを実証していっていただきたい。

 そうして、3年先の介護報酬改正では、小規模事業者への配慮した改正を勝ち取って頂きたい。

介護は医療を超えられるか

2009年01月29日 | 社会福祉士
 先日、(社)全国老人福祉施設協議会の研究大会が地元三重県の四日市市であり、「介護再構築」というテーマのシンポジストとして参加させていただいた。そこで、挑発的に「介護は医療を超えられるか」というテーマで話をさせて頂いた。その思いを披露しておく。

 最近政府は『安全と希望の介護ビジョン』(11月20日)や『社会保障国民会議報告』(11月4日)の報告書を出しているが、その内容を読んでみると、介護と医療の連携が強調されている。この連携について、連携そのものは大切であるが、どのような連携をするのかが重要であるというのが、私の問題提起である。

 今までは、医療の補完として介護が位置づけられているような気がしてならない。一般に、医療にはエビデンスに基づく実績や研究の成果が数多くあり、財源も医療に重きが置かれ、国民も医療に対する信頼が高いのが現状である。こうした状況は、日本だけが特別なことではなく、どこの国でも見られる現象である。このようなことを、メディカライゼーション(医療化)と呼ばれる。

 この結果、医療が万が一実施不可能な場合に、介護が繕うといったイメージが強い。いや、医療が不可能な場合でさせ、医療に過剰に期待しているのが現状であるように考える。
   
 しかしながら、介護保険の対象である認知症の方、脳梗塞でリハビリの結果プラトーにまでたどり着いた方、ターミナルケアの方が大半を占めており、こうした人々が今後も増加の一途を辿ることになる。こうした方々にとっては、治すことよりも、より質の高い生活を過ごすよう支援することが大切である。この後者を担うのが介護であるとすれば、介護はその責任が大きく、同時に、そのためには、医療が今まで実施してきたような、介護実践からエビデンスを導き出し、国民から介護に対する信頼を得られるようにしていくことが喫急の課題である。

 そのために、介護の再構築に向けて、シンポジウムでは4つの提案を行った。それらは、①現場成果主義、②QOLの理論化とその実践の推進、③利用者の強さ(ストレングス)の推進、④介護効果を社会に見せる仕事にしていくこと、である。

 現場成果主義とは、現場実践の中から介護を理論化していこうということである。とりわけ認知症のBPSDについては、認知症の方との関わりから本質的なBPSDへの支援が可能であり、介護は医療よりもQOLを高める支援ができるのではないかという提案を行った。

 QOLについては、理論的に尺度化を確立し、それを実践に応用していくことが課題であるとした。同時に、医療は利用者の問題状況を捉えて治すという視点が強いが、介護では、利用者のもっている強さを活用したり、高める支援をすることで、介護の独自性を確立していくことを提案した。

 最後に、そうした実践の中で明らかにしてきた効果を、利用者や家族に対してはむろん、社会全体から理解を得ていく努力を得ていく必要がある。そのためには、勿論利用者と一体になってであるが、ケアプランを作り、実践していくことが基礎になければならない。

 以上のようなことを進めることで、介護が医療と対等な関係で連携していく体制を整えたいという思いで、過激なテーマにした訳である。そうなれば、介護保険も素晴らしい制度になっていくと思っている。

還暦を迎えて思うこと

2009年01月28日 | 社会福祉士
 私は早生まれで、今日1月28日が誕生日である。今年は6回目のうし年であり、還暦を迎えることになる。それもあり、今年度の終わりから来年度にかけては、小学校、中学校、高等学校、大学時代のクラス会とゴルフコンペといった類の還暦の催しが目白押しである。

 こうした状況に遭遇して、大学教員としてこの35年間を振り返ると、毎年18歳から21歳といった同じ年齢の学生と接し、気持ちとしては、大学院を修了してからずっと精神年齢が止まっているかのような錯覚に陥ることがある。確かに、年を取るという感覚が分からない環境で仕事をしているように思う。

 今日は、その60歳を迎える記念すべき日である。人生の残りの期間は予測できないが、人生の折り返し点は既に過ぎたであろうし、今後の人生でできる内容や範囲も自ずと決まってくる。

 同期の仲間の多くは会社を退職し、新しい人生を歩む時期であるが、私たちの仕事の定年はもう少し長い。そのため、しっかりと残りの期間に何をするかの目標を作り、毎日を送るのが理想である。

 大事なことは、最も優先度の高いことから、手をつけることであろうことは分かっているつもりである。この優先度の判断に迷いが生じるいるのが現実である。私個人にとっての優先度で全て決めて良いのかということである。あえて、自分のことよりも、社会のことに優先度を置くべきなのかという思いもある。この惑いは、不惑の年でもある50歳以降、今も継続して続いている。

 個人的には、地域のネットワーキングについての方法を明らかにし、それを今まで研究してきたケアマネジメント論と結びつけ、ソーシャルワークを体系的に明らかにしたいという思いがある。社会的には、社会福祉士が確立していくための条件作りについての研究し、社会に訴えていくことが付き回っている。

 最終的には同じ目的に向かっていることは事実であるが、前者は研究者としてかじりついても行いたいことであるが、時間をかかる実証的な研究がベースになり、つい周辺的な興味に目移りがするというのが現状のように思える。

 明日から、まっすぐ前を見据えて、進んでいきたい。これが、還暦を迎えて思うことである。

震災で何かできるか(4)

2009年01月27日 | 社会福祉士
 震災時には、多くのボランティアが活躍するようになった。このこと自体は評価できるが、ソーシャルワーカーやケアマネジャーといった専門職はどのようなボランティア活動できるかが分からない。

 医師や看護師といった医療職は、被災地でその専門性を生かした活動が行われている。さらには介護職の皆さんも、時には避難所で要介護の人々のケアを支援している姿をみてきた。

 阪神淡路大震災の時に、長田ケアホームを拠点で活動をした時も、介護職の皆さんは、施設入所者やデイサービスで専門性を生かして活動されていた。中越大震災の時も、三重県の小山田老人ホームの介護職の皆さんが、長岡市の震災対応の千歳デイサービスセンターで介護のお手伝いをされていた。

 ところが、ソーシャルワーカーやケアマネジャーは専門性を生かして、どのような活動ができるのかを今まで考えたり、実践もしてきたが、専門性が活かせると公言できないのが私の気持ちである。阪神淡路大震災の時は、避難所の高齢者と話をすることで、困っていることや悩んでいることを引き出して、その解決を図っていこうと、手分けをして避難所に赴いたが、信頼関係もない中で、すぐには困っていることを話してもらうまではいかず、傾聴ボランティアで終わってしまった。

 今も、あれでよかったのかと自問する。どうすれば、ソーシャルワーカーやケアマネジャーは震災時にボランティアに行って、専門性をいかした活動ができるのか。あるいは、短時間では専門性が活かしにくく、専門性にとらわれることなく少しでも役に立てればよいのでないのかという考えもある。

 これについて、私には答えが分からない。誰か、ご意見をください。

 

 

震災で何かできるか(3)

2009年01月26日 | 社会福祉士
 中越大震災での見事なケアマネジャーの活動について書いたが、在宅介護支援センターはどうであったか。新潟県では、基幹型の在宅介護支援センターを行政や社会福祉協議会が担い、地域型には、老人ホームや病院などが常勤職員を配置して活動されていた。

 在宅介護支援センターがどのような活動をしていたかについてもヒヤリング調査を行ったが、例えば、小千谷市の場合には、震災数日後に基幹型から地域型にひとり暮らしや高齢者夫婦世帯の実態把握を依頼しているが、実際に把握し終わるまでには、1週間程度かかったという。この結果、ケアマネジャー程には、個々の利用者のネットワークが作れていないことが明らかになり、地域住民が主体になり、震災時に実態が即明らかになるようなシステム構築の必要性を感じた。これは、現在では、地域包括支援センターが担うべき機能であるが、どの程度のセンターが可能であろうか。極めて疑わしい現状であろう。

 それでは、福祉事務所や町村の福祉課職員は当時どのような活動をされていたか。これらの行政職員は、第一線で、避難所の設置やそこへ地域から送ってこられた食糧等の配達といったことを担っており、個々人への支援と言うよりは、住民全体の避難生活を支えることに全力を注いでいたのが実情である。

 ある福祉事務所の職員が、以下のようなことを言っていたことが印象に残っている。「避難所に食糧をもっていったら、私の担当している高齢者が何人もおられたが、何もしてあげることができず、挨拶だけをして帰った。」このことは、行政の職員が担当している利用者に対して個別的な支援をしてもらうことには無理があるということが分かった。個別支援は、行政よりも民間の組織や団体に委ねることが効率的であると思えた。

 一方、ある病院でも印象に残ることがあった。そこの病院には医療ソーシャルワーカーが数人おられたが、震災の翌日の日曜日から診察に訪れる患者でごった返している中で、患者のツリアージャー(緊急度の仕分けをすること)を担っていたという。本当は、訪れなくてはならない患者の家庭もあったのではないかと、案じた。その意味では、医療ソーシャルワーカーはケアマネジャーに比べて、在宅の利用者を継続して支えていくという視点が弱いのかな、と思った。それは、今までのソーシャルワークはアウトリーチやモニタリングが弱いことを意味しているのかもしれない。これについては、再度、ソーシャルワークにおけるモニタリングの意義を強調していくことが求められることを実感した。

 在宅介護支援センター、行政の福祉職員、病院のソーシャルワーカーについての、我々のヒヤリング範囲内での結果であるが、こうしたことから、在宅介護支援センターでの個別支援や病院ソーシャルワークのあり方について、大いに考えさせられた。

 震災時に確認や見守りが必要な対象となる人について明らかにし、そうした人にどのような団体や組織が確認や見守りをしていくのかの整理が必要である。同時に、住民全体に対する対応は誰がしていくのかも、同時に明確にしていかなければならない。

震災で何かできるか(2)

2009年01月24日 | 社会福祉士
 阪神淡路大震災での自責の念があり、その後の2004年10月23日(土)17時56分に起こった中越大震災では、在宅介護支援センターやケアマネジャーがどのような働きができたかが、大きな関心事であった。そのため、震災後半年ほどしての、五月の連休期間を中心に、大学院生や卒業生を5名ほど連れて、長岡市、小千谷市、川口町、南魚沼町でヒヤリング調査を行い、その後、ケアマネジャーと在宅介護支援センターを対象に郵送調査を実施した。

 阪神淡路大震災と中越大震災の重要な違いの一つは、介護保険制度のケアマネジャーがいたかどうかであった。ケアマネジャーという制度ができていたことで、多くの成果を上げることができた。印象に残っていることを3点列挙したい。

 ①地震は土曜日の夕方に起こったが、翌日の日曜日の内に、ケアマネジャーは、担当者の所在をほとんど理解できていた。その理由は、家族、民生委員、ヘルパー等から連絡が入り、家庭訪問しなくとも明らかになっていた。→ 介護保険のケアマネジャーによって個々人のネットワークが確立できていることが証明された。

 ②ケアマネジャーは、当日の夜から利用者の確認に取り組んでいた。あるケアマネジャーは自宅が半壊しながら、翌日から仕事を始めていた。→ 震災により利用者の状況が変化したことで、モニタリングを実施し、ケアプランを変更することが定着していることを証明することができた。

 ③ある人工呼吸器をつけていた利用者の命を救うことができた。ケアマネジャーはライフラインが崩れて、当日自宅訪問ができなかったが、サービス担当者会議に消防署や民生委員や近隣にも参加してもらい、電気が切れれば、民生委員や近隣が手伝い、消防署がA病院に搬送してくれるように依頼してあったことが効を奏した。具体的には、民生委員や近隣の協力で、消防署の救急車で病院に搬送され、命が救われた。→ これも個々人のネットワークができていた証拠である。

 これらの事実は、介護保険で作ったケアマネジャーの制度が、極めて有効な機能を果たしたことを示している。ケアマネジャーは介護保険を動かしていく人ではなく、日々の生活を支えていく人であることを実証できたと思っている。

 ケアマネジャーは介護だけではなく、生活を支えてくれる専門職になっていることに喜びを感じた。しかしながら、現実のケアマネジャーは介護保険制度の枠内に食い込まれているために、入院や施設入所で、利用者数が減り、収入が減っていくという矛盾のものでいることに、その当時憤りを強く感じていた。

 ヒヤリングや調査に応じて下さいましたケアマネジャーの皆さんに感謝申し上げます。また大学院生を含めて、私も大いに勉強させていただきました。

 そうした内容を論文等に書いているので、提示しておきたい。

①「災害時に求められるケアマネジャーの役割」白澤政和、『介護支援専門員』7巻6号、pp.17~21、2005年
②「新潟県中越大震災における要支援・介護高齢者に対する危機管理の実態と課題」岡田直人、白澤政和他、『老年社会科学』Vol.28、pp.58~59、2006年
③「新潟県中越大震災におけるケアマネジャーの活動に関する調査研究報告書」白澤政和他、大阪市立大学都市問題研究会、2005年

震災で何ができるか(1)

2009年01月23日 | 社会福祉士
 阪神淡路大震災について、一人の研究者として大変心残りのことがある。それは、震災の半年ほど前に神戸市が高齢者のネットワークを作ることで、私も委員会メンバー(14年前のことであり、もしかすれば委員会ではなく、ヒヤリングを受けたのかもしれない)になった時のことである。

 当時私は、大阪市で「三層五段階のネットワーク」を委員長として作った実績があった。大都市ではまずはトップダウンでネットワークを作っていくことを提唱していた。大阪市に次いで、北九州市や福岡市といった政令指定都市でもネットワークづくりが進んでいた。そのため、何度か、北九州市や福岡市から相談を受け、伺ったことがある。一方、この当時、ゴールドプランのもと、中学校区に在宅介護支援センターを作っていくことが計画されて6年たち、一定の成果がでていた時期であった。

 神戸市については、各区の福祉事務所に保健師とソーシャルワーカーを置いて、そこで区全体の高齢者を把握し、保健福祉の連携により支援していくという仕組みを提案してきた。私はその時、区全体で高齢者を把握することは無理であり、在宅介護支援センターを中学校区に1つづつ作り、そのヘッド・クオーターとして区の福祉事務所を位置づけるべきであると強く主張したことを覚えている。そのため、その後の神戸市との関係がしっくりいかなくなったと実感している。

 私の意見は叶わず、神戸市は福祉事務所で窓口対応することとなり、その直後に震災を迎えてしまった。当時、多くの市町村では在宅介護支援センターができていたが、震災時点では、昨日報告をした長田ケアホームと神戸しあわせの村の二か所であり、ある人の言でいえば、アリバイ的に設置されていた。それは、これら2つの在宅介護支援センターに対する行政指導は何もなかったということであった。

 震災時に、多くの高齢者が被害にあったが、高齢者の実態を行政がほとんどつかめていなかったことが報道されるにつけて、あの時にもっと強く在宅介護支援センターを中学校区に作り、そこが高齢者の実態を把握し、相談に応じていくことを主張すべきであったことに自責の念にかられた。

 その後、兵庫県の震災復興に向けての委員会の委員として参加する中で、在宅介護支援センターを復興拠点として急遽作っていくことで、即話がまとまたことに唖然とした。確かに、兵庫県の委員会ではあったが、これは神戸市もカバーしてのものであり、あまりにも震災前後で、行政の意識が変わったことから、住民に対する行政の一貫した責任ある態度なり価値観が大切であることを実感した。

 この時に問題意識として、在宅介護支援センター等の地域拠点やそこでの職員は震災等の緊急事態にどのような役割を果たせるかを意識しながら、その後の研究をしてきた。



阪神淡路大震災で思い出すこと

2009年01月22日 | 社会福祉士
 冬休みの間の1月17日に阪神淡路大震災から14年を迎えたことと、偶然にもこの日から大学入試のセンター試験が始まった。今回この2つのことが、見事に私の中でつながっていた。

 14年前の1月17日の朝、阪神淡路大震災が襲った。14年前のその時、私は1時間目の授業のため、起きようとしていたその時に、上下に大きな振動があり、慌てて眼を覚ました。神戸からは相当距離もある三重県名張での状況であり、テレビをつけたが、6時過ぎに家を出るときには、神戸で1~2か所火災が発生している模様といったニュースのみであり、授業のために自宅を出た。

 電車が鶴橋について、状況の異変に気がついた。環状線や阪和線は動いておらず、タクシ―を探して、大学にやっとのことで辿り着いた。そこで、神戸が悲惨な状況になっていることをテレビで知った。

 それで、当然授業もできず、翌日当時逆瀬川に住んでおられ、足が弱っておられた本出祐之先生(大阪市立大学から、愛知県立大学さらには関西学院大学で教鞭をとられた)のことが気になり、水と食料をもって伺った。先生はお元気でほっとしたが、お水に不自由しておられたので、大変喜んで頂いたことを覚えている。

 その後、震災地近くで育った上智大学の冷水豊先生から電話があり、上智の学生と一緒にボランティア活動ができないかとの連絡があり、先発隊として、私が最初に神戸に入ることにした。その時、中央法規出版企画部の白石さんも同行することになった。彼は、その経験を活かして、その後『ボランティアとよばれた198人―誰が神戸に行ったのか』という本を刊行している。

 電車を乗り継ぎしながら、まずは兵庫県社協に行き、ボランティアが必要な情報を得ることにした。そこから、最も被害が大きかった長田区の長田ケアホーム(中辻理事長)のところに行くことになった。そこには、既に、馴染みの方が多くボランティアとして活動を始めていた。当時の関西のシルバーサービスの団体も来られていた。そこに上智の学生も参加し、ボランティアを始めることになった。

 あの当時の情景は今も忘れることができない。JR長田の駅から長田ケアホームまでを毎日のように行き来したが、ほとんど火災で家屋がなくなり、煙とその臭いが漂い、ただただ呆然とする状況であった。あの時の無惨な情景は、私の心に焼き付いており、やり場のない気持ちになる。

 それから14年、多くの亡くなられた人々のご冥福をお祈りします。また、14年経っても被害に遭われた人々の心の傷はなかなか癒せないとは思いますが、前を向いて歩んでいって欲しいと願っています。

 この1月17日が今年はセンター試験の一日目である。私は久々に警備を担当することになり、家内がダウンのジャケットを箪笥から出してくれた。このジャケットこそが、神戸にボランティアに行く際に買ったものである。14年ぶりに、また同じ日に着るジャケットに、感慨もひとしおである。

 このボランティアを介して、大げさに言えば、14年間社会福祉やソーシャルワークは震災で何ができるかを考えてきたが、明日から、それについて現在の思いを何回かに分けて整理しておきたい。

対談「若年性アルツハイマー病とともに生きる」を読んで

2009年01月21日 | 社会福祉士
10日間の冬休みが、さっと過ぎ去った。この間、慢性気管支炎で体調を崩していた。ただ、驚いたことは、電話で、「気管支炎がいかがですか」、「病気でも大学に来られているのですか」といった話題があり、多くの皆さんにブログを読んで頂いているのだと実感した次第である。

 休み中のこの間でも、1週間(1月11日から17日)のアクセス数は1857人で、3886閲覧数あった。そうした多くの読者がいる以上、気管支炎も完治していないが、今日からブログを再開することにした。

 国際医療で有名で、ニカラグアの地域医療の本を読ませていただいたことがある元東大教授の岩井晋先生が、若年性認知症との診断を2006年に受け、2008年に『医学と福音』4月号でそれをカミングアウトされたという。それで、『週刊医学界新聞』第2814号(1月19日版)で奥さんも一緒に、対談をされている。この記事を読み考えさせられることが大であった。

 老いとともに失われれていくことが多くなる。とりわけ、アルツハイマー病ということになれば、岩井さんがおっしゃるように字が書けなくなったり、洗濯物が干せなくなったり、運転ができなくなったりということが、目に見えて確かに多くなる。

 こうした失われていくことに、あるいはその不安に対して、私たちはどう立ち振舞っていくのか。このような不安は、初老を迎える私にもある。このことについて、当初先生はなぜ私がといった思いややるせない怒りがあったという。忘れていくこと、覚えられないことへの恐怖は計り知れないものがあると思う。どのようにしてそれを乗り越えようとされ、またカミングアウトされるようになったのかが、最も知りたかった。

 この対談から、2つの解答があるように思った。第一は、先生の場合、クリスチャンとしての宗教が大きい支柱であられるように思えた。カミングアウトされた『医学と福音』の中で、ロバート・ブラウン作の「ラビ・ベン・エズラ」から次のような引用をされている。

老いゆけよ、我と共に! 最善はこれからだ。人生の最後、そのために最初も造られたのだ。我らの時は聖手の中にあり。神言い給う。全てを私が計画した。青年はただその半ばを示すのみ。神に委ねよ。全てを見よ。しかして恐れるな。

 神に委ね、恐れることなく、全てを見るといった気持ちを、無宗教の私は、どのような別の選択肢から見つけ出していくのか。その答えは、この対談の中にヒントがあるように思った。先生は、アルツハイマー病と診断されて一時期沖縄で療養し、お年寄りと関わる中で元気になっていくことが述べられている。それは同じように老いていく仲間でもある高齢者との関わりが大きいような気がした。病気になっても、できる限り多くの仲間との関わりをもてることが、「老いゆけよ、仲間と共に」といった気持ちを作れる側面があるのではないだろうか。私はそのための準備をできているであろうか。

 第二の解答は、家族の対応にあるように思えた。奥さんは、ダメ三原則という「怒らない、ダメと言わない、押し付けない」ことを実践することで、今まで怒ってばかりの先生が怒らなくなり、奥さんも怒らなくなったという。これには、認知症者の怒りや不安に対しては、周りが本人の気持ちを受け入れてくれる状況を作っていくことの重要性である。その意味では、認知症への対応は、本人よりもその環境をどのように整えるのかが大切であることが分かった。

 認知症の人への対応だけでなく、老後をどのように生きればよいのかの両面で、大変興味のある対談であった。岩井先生には、是非、まだまだ多くのことを私たちに教えて頂きたいという思いと、奥さんやお子さんに囲まれて、残された人生を有意義に全うしてほしいと願っている。



冬休みを取らせていただきます(1月10日から1月20日まで)

2009年01月09日 | 社会福祉士
 待望の冬休みを取らせていただきます。子どもの時から、夏休み、冬休み、春休みが待ち遠しかった。教員になっても、この気持ちは変わらない。ついでに、秋休みも作って欲しいものである。

 
 夏休み同様に、明日から冬休みにさせていただきたい。リフレッシュして1月21日から再度登場します。ちょうど、正月前の風邪をこじらせ、持病である慢性気管支炎で、ゴホン、ゴホンの毎日で、しんどい日々を送っており、休養には良いタイミングであると嬉しく思っています。

 ただこの間、大学も休みであるため、いくつかの出版社から厳しい催促をされているいくつかの原稿を完成させたいと思っている。(こんなことを書くと、いくつかの出版社から、必ず「原稿できましたか」との連絡がある。気をつけなくては。)また、このブログでは、新たに「不連続の連載」を始めるべく、構想を練りたいと思っている。そのテーマは、「ケースマネジメント(ケアマネジメント)とソーシャルワークの関係」である。資料収集を含めて、この間に準備したい。乞う、ご期待下さい。

 同時に、1日ぐらいは、温泉につかって、何も考えない時間を作りたい。昨年の夏休みは温泉付きのリゾートホテルでゆっくりするつもりであったが、そこに娘が孫を連れてやってきたので、孫との付き合いで時間を使い、温泉にゆったりとはいかなかった。今回は、妻と二人で温泉にいくつもりである。
 

昨年の研究・教育成果と今年の課題(3)

2009年01月08日 | 社会福祉士
 ほとんどの大学では、紀要といったものを発行している。この紀要の類には良い論文も多い。私自身は、紀要論文から多くのことを学びながら、成長してきた気持ちが強い。ところが、この紀要の論文について研究者の世界では、その評価が低い。
 
 その理由は、大学の学内で発行していることもあり、大学内部の先生による査読であったり、大学関係者に限られた人しか書けないことにある。

 私の学部でも、以前は『大阪市立大学生活科学部紀要』という名称で、内部の教員が査読し、同時に教員の名前がなければ投稿できなかった。そこで、とりわけ、自然科学の先生から書くことが極端に少なくなっていった。それは、査読の評価が十分でないこと、それゆえ多くの研究者に読んでもらえないことが主たる理由であった。

 そのため、生活科学部の紀要は、まずは名称を『生活科学研究誌』に変え、そのミッションを「日本の生活科学研究を推進していくこと」とし、投稿者は大学院生だけでなく、卒業生にも拡大した。将来的には、生活科学研究をしている研究者であれば、だれでも投稿できるようにすることとした。もう一つは、一時期は、2名の査読者の内の一人が外部査読者に査読をお願いしていたが、現在は完全外部査読としている。

 その結果、外部の先生方に大変査読でお世話になっているが、研究誌のレベルも上がってき、評価も高くなってきている。現実に、多くの論文が掲載不可といった結果にもなっている。一方、大学院生が学位論文を書く場合も、『生活科学研究誌』は、学会誌ほど評価点は高くはないが、他の大学の紀要等よりは高く評価される仕組みとなっている。そのため、私のドクターの学生も熱心に『生活科学研究誌』にも投稿することになっている。

 他の大学においても、紀要を書く人が少ないといったことを耳にするが、我々が行った紀要の改革をお勧めする。大学がお金をだして作る紀要に対して、どうすれば自らが誇りをもち、多くの人が投稿してくれるものになれるかである。以前の教員が投稿する機会が少なかった時代に必要であった紀要が、学会も多くなり、投稿機会も増えた時代にあって、紀要の再生が求められているといえる。

 ただ困ることは、私の学部のような改革を全ての大学でされると、査読を頼まれる機会が急増し、査読が本業になってしまうのではないかと心配する。

昨年の研究・教育成果と今年の課題(2)

2009年01月07日 | 社会福祉士
 昨年の研究成果はあまり見るものがない。数はそれなりにあるが、書かなければならないと考えている著書や論文がラインアップできていないからである。今年こそは、満を持してがんばりたい。そのためには、研究のための時間を作ることが第1である。

 研究業績が重要であり、研究は多くの皆さんに読んでいただくことが大切である。その点で尊敬するのは、日本福祉大学の二木立先生である。毎月月末に「二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター」をメイルで送付いただいている。ここでは、先生がその月に書かれた論文をそのまま送っていただけるので、大変勉強になる。昨年の年末で53号であったので、四年以上続いていることになる。これは、なかなか真似られない。今日のように、タイトルのみでは申し訳ない。一度、私の論文をどのように多くの皆さんに伝えるかについて考えてみたい。


平成20年(2008年)の業績
〔編著書〕

1. 白澤政和:『くらしを豊かにするハンドブック 介護を知る』白澤政和・佐藤富士子監修、財団法人地方公務員等ライフプラン協会、pp.1~56(2008)
2. 白澤政和:第1章「ケアマネンジメントの概要」pp.2~57、第3章「対象別ケアマネジメントの実際」第1節pp.108~129、第3節pp.141~148、第5章「福祉施設におけるケアプラン」第1節pp.192~198、白澤政和・蛯江紀雄編『新版 ケアマネジメント論』新版・社会福祉学習双書編集委員会編集、全国社会福祉協議会(2008)
3. 白澤政和: 『障害者支援施設のケアプラン 障害者自立支援法対応版』白澤政和監修、全国社会福祉協議会編、pp1~220(2008)

〔編著内論文〕
1. 白澤政和:第1章「認知症の人のためのケアマネジメント」日本認知症ケア学会監修、本間昭編著『認知症ケアのためのケアマネジメント』ワールドプランニング、pp.1~32(2008)
2. 白澤政和:第5章「児童に対するケアマネジメント―児童虐待を中心にして」井形昭弘編著『『ヒューマンケアを考える さまざまな領域からみる子ども学』ミネルヴァ書房、pp.123~149(2008)
3. 白澤政和:第3章-3「ケアマネジメントにおけるセルフケアの活用―介護予防の議論をてがかりに―」『しなやかに、凛として―今、「福祉の専門職に伝えたいこと」橋本泰子退任記念論文集』大正大学社会福祉学会記念誌編集委員会、中央法規出版、pp.122~141(2008)
4. 白澤政和:第3章「平成期の高齢者福祉政策の検証―サービス面とサービス・デリバリー・システム面の変遷をもとに―」日本社会福祉学会編集『福祉政策理論の検証と展望』中央法規出版、pp.76~96(2008)

〔論文〕
1. 白澤政和:「日本における社会福祉士養成教育の現状及び課題~ソーシャルワーク教育の発展に向けて~」『地域ケアリング』2008.4月号、Vol.10、№4、pp.22~27(2008)
2. 白澤政和:「社会福祉士養成教育の課題と展望―ソーシャルワーカーとして一体化する養成体制に向けて」『月刊福祉』6月号(第91巻第7号)、全国社会福祉協議会、pp.22~25(2008)
3. 白澤政和:「児童養護施設とケアマネジメント」『児童養護』Vol.38、№4、全国児童養護施設協議会、pp.2~3(2008)
4. 林暁淵・岡田進一・白澤政和:「大都市独居高齢者の子どもとのサポート授受パターンと生活満足度」『社会福祉学』Vol.48-4号(通巻84号)、pp.82~91(2008)
5. 橋本卓也・岡田進一・白澤政和:「障害者のセルフ・エンパワメントの内的生成要因について―自立生活を送る重度障害者に焦点をあてて―」『社会福祉学』Vol.48-4号(通巻84号)、pp.105~117(2008)
6. 樽井康彦・岡田進一・白澤政和:「知的障害者施設の施設長における脱施設化施策に関する意識の現状」『社会福祉学』Vol.48-4号(通巻84号)、pp.118~130(2008)
7. 井上照美・岡田進一・白澤政和:「「地域移行」における「実践活動」に関連する要因に関する研究―入所更正施設職員に求められる支援計画の今日的課題の検討―」『社会福祉学』Vol.49-1巻、pp.60~74(2008)
8. 橋本力・岡田進一・白澤政和:「介護支援専門員のインフォーマル・サポートに関するアセスメント自己評価の構成要素」『介護福祉学』Vol.15-№2、pp.131~140(2008)
9. 樽井康彦・岡田進一・白澤政和:「知的障害者ケアにおける施設長と職員の脱施設化志向の比較」『介護福祉学』Vol.15-№2、pp.150~160(2008)
10. 林暁淵・岡田進一・白澤政和:「大都市独居高齢者における子どもの有無、子どもとの関係が日常生活満足度および全体的生活満足度に及ぼす影響」『厚生の指標』vol.55-№3(通巻858号)、pp.16~22(2008)
11. 樽井康彦・岡田進一・白澤政和:「知的障害者施設職員における脱施設化志向とその関連要因の検討」『厚生の指標』Vol.55-№13(通巻868号)、pp.25~31(2008)
12. 竹本与志人・香川幸次郎・白澤政和:「血液透析患者の精神的健康と主介護者の療養継続困難感との関連性」『メンタルヘルスの社会学』第14巻、日本精神保健社会学会、pp.53~63(2008)
13. 堂園裕美・岡田進一・白澤政和:「高齢者を対象とした在宅ターミナルケアにおける介護支援専門員の役割」『生活科学研究誌』Vol.6、pp.163~173(2008)
14. 増田和高・岡田進一・白澤政和:「ケアマネジメントにおけるアドボカシーに着目したサービス調整実践の構成要素―ケースアドボカシーに焦点をあてて―」『生活科学研究誌』Vol.6、pp.175~184(2008)
15. 鄭戴旭・白澤政和:研究ノート「介護保険制度としての韓国の老人スバル保険制度の内容と構造に関する一考察」『海外社会保障研究』№158、国立人口問題・社会保障研究所、pp.78~87(2007)

〔その他論文〕
1. 白澤政和:『連載 事例検討 予防に焦点をあてたケアマネジメント』白澤政和・川村理恵子、白木裕子:セルフケアを活用して閉じこもりを解消した予防支援事例(第3回)」『介護支援専門員』10巻1号、pp.36~43、白澤政和・山田圭子:「情報提供とケアチームによって生活力を高めた予防支援事例(第4回)」『介護支援専門員』10巻2号、pp.44~51、白澤政和・高砂裕子:「利用者のストレス軽減と意欲向上の支援のために頻回の訪問を行った予防支援事例(第5回)」『介護支援専門員』10 巻4号、pp.44~51、白澤政和・原田重樹:「入所を希望する家族の理解を得て住み慣れた地域での在宅生活を継続した予防支援事例(第6回)」『介護支援専門員』10巻6号、pp.38~45、メディカルレビュー社(2008)
2. 白澤政和他:『連載ストレングスモデルのケアマネジメント』、白澤政和・乙坂佳子「第21回 自宅で最期を迎えたい希望を実現したターミナルケアでのストレングスの視点」『月刊ケアマネジメント』1月号、pp.52~57、白澤政和・田中佐知子「第22回 「仕事をしたい」意欲をもつ知的障害者の在宅生活への支援」『月刊ケアマネジメント』2月号、pp.48~53、白澤政和・坂口真紀「第23回 独居の認知症高齢者を小規模多機能型居宅介護で支えた事例」『月刊ケアマネジメント』3月号、pp.50~55、白澤政和・高木一矢「第24回 施設からの飛び出しがみられる重度な知的障害を伴う自閉症の利用者への余暇支援」『月刊ケアマネジメント』4月号、pp.50~55、白澤政和・加藤秀子「第25回 重度の認知症でがん末期の利用者を介護老健施設で看取った事例」『月刊ケアマネジメント』5月号、pp.48~53、白澤政和・広沢昇「第26回 入退院を繰り返す統合失調症の人の思いを実現し、生活の張りを取り戻す」『月刊ケアマネジメント』6月号、pp.48~53、白澤政和「ストレングスモデルのケアマネジメントのポイント(まとめにかえて)」『月刊ケアマネジメント』7月号、pp.48~53(2008)
3. 白澤政和:「日本の現状 サービスコーディネートからソーシャルワークへ」『月刊ケアマネジメント』2月号、pp.21~23(2008)
4. 白澤政和・西川克幸「施設入所におけるケアプランづくり」『ふれあいの輪』147号、pp.5~9(2008)
5. 白澤政和・森本美貴「ターミナル期におけるケアプランづくり」『ふれあいの輪』148号、pp.4~8(2008)
6. 白澤政和・斎木文子「医療ニーズの高い利用者に対するケアプランづくり」『ふれあいの輪』149号、pp.4~8(2008)
7. 白澤政和・脇阪靖美「外国人利用者には異文化を理解した支援を」『ふれあいの輪』150号、pp.4~8(2008)
8. 白澤政和:「ケアマネジャーの存在意義と今後のあり方」『ケアマネジャー』第10巻第7号(通巻100号)、pp.38~39(2008)
9. 白澤政和:「社会福祉領域での教育の目指すべき方向」『学術の動向』2008-11、第13巻第11号、日本学術会議、pp.60~63(2008)

〔報告書〕
1. 白澤政和他:「福祉人材の確保と養成―現状と課題―」社会福祉法人大阪市福祉人材養成協議会、pp.1~124(2008)
2. 白澤政和他:「ジェロントロジィカル・ケアサイエンスの研究拠点形成研究報告書」『平成19年度大阪市立大学 重点研究』大阪市立大学大学院 生活科学研究科、pp.1~93(2008)
3. 白澤政和他:「介護支援専門員による家族介護者支援に関する研究―「ケア学」の構築に向けての実証的研究 報告書1」『平成19年度日本学術振興会科学研究費補助金(萌芽研究)』pp.1~16(2008)
4. 白澤政和他:「中国の都市部における一人っ子の親世代の老後生活意識に関する研究―ソーシャルサポート源に対する期待度を中心に―「ケア学」の構築に向けての実証的研究 報告書2」『平成19年度日本学術振興会科学研究費補助金(萌芽研究)』pp.1~12(2008)
5. 白澤政和他:「社会福祉施設入居者によるサービス評価に関する研究―「ケア学」の構築に向けての実証的研究 報告書3」『平成19年度日本学術振興会科学研究費補助金(萌芽研究)』pp.1~19(2008)
6. 白澤政和他:「ソーシャルワークの特性に関する実証的研究―ケアマネジメントとの関連をもとに―」『平成19度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(A))研究成果報告 第二報』pp.1~168(2008)
7. 白澤政和他:「コミュニティーソーシャルワークとケアマネンジメントに関する調査研究報告書『平成19年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(A))ソーシャルワークの特性に関する実証的研究―ケアマネジメントとの関連をもとに―』大阪市立大学大学院生活科学研究科 CSW・CMプロジェクト研究会、pp.1~69(2008)
8. 白澤政和他:「在宅と施設、介護と医療の連携を実現するためのケアマネジメントのあり方に関する研究」『平成19年度老人保健健康増進等事業による研究報告書』医療経済研究機構、pp.1~156(2008)
9. 白澤政和他:「地域包括支援センターの予防強化機能に向けての調査研究報告書」『大阪ガスグループ福祉財団助成研究事業』大阪市立大学生活科学研究科、pp.1~60(2008)
10. 白澤政和:「ケアマネジメントの評価研究―利用者とコストの両面から―④」『第38回三菱財団事業報告書 平成19年度』財団法人三菱財団、pp.494~497(2008)
11. 白澤政和他:「介護保険法改正後において、在宅介護支援センターが地域において果たすべき役割に関する調査研究事業報告書」pp.1~83、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会(2008)
12. 白澤政和他:「認知症高齢者のケアプラン作成マニュアル―行動障害への対応に焦点を当てて」『平成19年度長寿社会福祉基金による研究報告書』社会福祉法人青山里会、pp.1~56(2008)
13. 白澤政和他:「介護予防訪問介護等の実態に係わる調査報告書」『平成19年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)』三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、pp.1~83(2008)
14. 白澤政和他:「スクール(学校)ソーシャルワーカー育成・研修等事業に関する調査研究報告書」『財団法人社会福祉振興・試験センター委託事業』社団法人日本社会福祉士養成校協会、pp.1~35(2008)
15. 白澤政和他:「これからの社会福祉教育―社会福祉士のカリキュラム改正に向けて― 日本学術会議 社会学委員会 社会福祉学分科会主催シンポジウム報告書」、pp.1~40(2008)
16. 白澤政和他:「提言 近未来の社会福祉教育のあり方について―ソーシャルワーク専門職資格の再編成に向けて―」日本学術会議 社会学委員会社会福祉学分科会、pp.1~13(2008)
17. 白澤政和他:「高齢者の健康増進のための学際的アプローチ 日本学術会議 高齢者の健康分科会・老化分科会合同シンポジウム報告書」日本学術会議 高齢者の健康分科会・老化分科会/財団法人長寿科学振興財団、pp.1~49(2008)
18. 白澤政和:基調講演「支援の新たな道~ひと・まち・くらしを支える社会福祉士~」『社会福祉士』第15号 日本社会福祉士会、pp.27~36(2008)
19. 白澤政和他:「ケアマネジメントのあり方~ケアマネジャーの必要な人、そうでない人に焦点をあてて~報告書」ケアマネジメントシステム研究会、pp.1~31(2008)
20. 白澤政和他:特別企画「今後の社会福祉士養成教育のあり方に関する取り組みの状況と今後の課題」pp.1~23、第6分科会「演習教育のあり方」pp.273~313、『社会福祉教育年報』第27集、社団法人日本社会福祉教育学校連盟(2008)
21. 白澤政和他:『介護予防訪問介護ガイドブック(平成19年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分))』三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、pp.1~34(2008)

〔学会発表〕
1. 白澤政和:招待シンポジウム「日本におけるサービス・デリバリー・システムの展開について―高齢者領域を中心にして―」『韓国老年学会30周年記念国際学術大会』2008.11.20、pp.40~69(2008)
2. 白澤政和:招待シンポジウム「日本における介護・福祉サービス評価・開示制度の現状と課題―韓国のスバル保険に示唆できること-」“2008 Korean Academy of Social Welfare International Conference”Korean Academy of Social Welfare、2008.4.25~4.26、 pp.489~496(2008)
3. 白澤政和:日韓学術交流シンポジウム「ソーシャルワーカー養成教育での今後の課題」『日本社会福祉学会第56回全国大会プログラム』2008.10.11~12、日本社会福祉学会、pp.14~15(2008)
4. 白澤政和:日本老年社会科学会日韓交流シンポジウム「日本における介護保険制度の成果と課題―韓国の長期療養保険への示唆―」『老年社会科学Vol.30、№2』日本老年社会科学会、pp.190~191(2008)
5. 白澤政和:日本社会福祉教育学会シンポジウム「日本における社会福祉専門職養成教育の『達成課題』」『日本社会福祉教育学会第4回大会プログラム』pp.29~38、2008.11.7~8(2008)
6. 白澤政和:特別講演「介護の質とケアマネジャーの役割」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.33(2008)
7. 白澤政和:ラウンドテーブルディスカッション「実生活の中の老年学に向けて 7.ケアマネジメントの立場から」『日本老年医学会雑誌』第25回日本老年学会総会、社団法人日本老年医学会、Vol.45、№.1、pp.30~31(2008)
8. 白澤政和他:セミナー「障害者自立支援制度の現状と課題」『第12回日本在宅ケア学会学術集会講演集』2008.3.16、pp.34(2008)
9. 白澤政和:国際シンポジウム「日本から見たアドボカシーとシンポジストの内容についての日本の政策および実践への応用」『国際シンポジウム 社会福祉におけるアドボカシーおよび権利擁護の国際的現状と課題―福祉政策と実践の架け橋としてのアドボカシー―』2008.01.12(2008)
10. 白澤政和:特別講演「介護の質とケアマネジャーの役割」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.33(2008)
11. 朝野英子・綾部貴子・與那嶺司・堂園裕美・増田和高・畑亮輔・白澤政和:「介護支援専門員の役割認識と実践に関する研究~コミュニティーソーシャルワーカーとの比較調査より~」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.73(2008)
12. 畑亮輔・朝野英子・綾部貴子・堂園裕美・増田和高・與那嶺司・白澤政和:「介護支援専門員の役割認識に関する研究~ケアマネジメントの包括モデルに焦点を当てて~」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.80(2008)
13. 増田和高・朝野英子・綾部貴子・堂園裕美・畑亮輔・與那嶺司・白澤政和:「介護支援専門員による地域の組織化と地域課題への取り組みとの関連」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.123(2008)
14. 綾部貴子・白澤政和:「ケアマネジメント援助の目的や考え方に関する介護支援専門員の役割~グループインタビューの結果から」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.126(2008)
15. 畑智惠美・岡田進一・白澤政和:「自己評価に基づくケアマネジメント実践上の課題の検討」『日本ケアマネジメント学会第7回研究大会抄録集』2008.7.24~25、pp.146(2008)
16. 近藤辰比古・紀平雅司・吉住岳人・三谷綾乃・中尾由佳里・若山ひとみ・加藤秀子・松本春美・伊藤妙・堀尾栄・原田重樹・西元幸雄・鄭尚海・白澤政和:「認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)にどう対応するのか(その1)―介護施設・事業所におけるBPSDの対応の成功事例から―」『第9回日本認知症ケア学会抄録集』2008.9.26~28、pp.290(2008)
17. 紀平雅司・近藤辰比古・吉住岳人・三谷綾乃・中尾由佳里・伊藤妙・堀尾栄・若山ひとみ・加藤秀子・松本春美・原田重樹・西元幸雄・鄭尚海・白澤政和:「認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)にどう対応するのか(その2)―介護施設・事業所におけるBPSDの対応の成功事例から―」『第9回日本認知症ケア学会抄録集』2008.9.26~28、pp.291(2008)
18. 畑亮介・岡田進一・白澤政和:「介護支援専門員による家族介護者支援に関する研究~家族介護者に対する意識と家族介護者支援の関連~」『日本社会福祉学会第56回全国大会プログラム』2008.10.11~12、日本社会福祉学会、pp.18(2008)
19. 増田和高・白澤政和:「ケースアドボカシーに着目したサービス調整支援とその関連要因―サービス提供機関、職場内の上司・同僚との連携に焦点をあてて―」『日本社会福祉学会第56回全国大会プログラム』2008.10.11~12、日本社会福祉学会、pp.19(2008)
20. 林暁淵・岡本秀明・所道彦・白澤政和:「利用者のQOL変化からみたケアマネジメントの効果」『日本社会福祉学会第56回全国大会プログラム』2008.10.11~12、日本社会福祉学会、pp.26(2008)
21. 綾部貴子・白澤政和:「アセスメント・ケアプランに関する介護支援専門員の役割~グループインタビューの結果から~」『第16回日本介護福祉学会大会プログラム』2008.11.1~2、pp.20(2008)
22. 綾部貴子・林暁淵・岡本秀明・所道彦・白澤政和:「介護支援専門員による課題分析・居宅サービス計画作成等に対する達成度の関連要因」『老年社会科学Vol.30、№2』日本老年社会科学会、pp.296(2008)
23. 白男川尚・白澤政和・今井久人「地域包括支援センターの成り立ちの違いにみる各事業の自己評価-全国地域包括・在宅介護支援センター協議会のアンケート調査から-」日本地域福祉学会 第22回全国大会抄録集、同志社大学、pp.121(2008)
24. 林和美・白澤政和・今井久人「改正介護保険後の在宅介護支援センターの現状と今後の役割-全国地域包括・在宅介護支援センター協議会のアンケート調査から-」日本地域福祉学会 第22回全国大会抄録集、同志社大学、pp.122(2008)

〔その他〕
1. 白澤政和:「介護予防の意義と方法―改正介護保険の現状と課題―」『第3回日韓ケアマネジメント交流研修会』2008.3.30~4.2、pp.6~7(2008)
2. 白澤政和:「大阪市福祉人材養成連絡協議会・報告書『福祉人材の確保と養成―現状と課題―』はじめに」『ウェルおおさか』№30、大阪市社会福祉研修・情報センター、pp.1(2008)
3. 白澤政和:「我が同士の「北欧のノーマライゼーション」に思う」田中一正著『北欧のノーマライゼーション―エイジレス社会の暮らしと住まいを訪ねて』、TOTO出版、pp.128~130(2008)


昨年の教育・研究成果と今年の課題(1)

2009年01月06日 | 社会福祉士
 我が大阪市立大学大学院生活科学研究科では、1月1日から12月31日までの研究業績を毎年提出し、それが3月末に刊行する『生活科学研究誌』に載ることになる。そのため、年末にはその整理をするだけで大変である。その整理ができたので、明日のブログで、昨年の研究業績の一覧を掲載しておくことにする。

 ここでは、著書から、論文、学会発表に至るまで、多様な研究業績を整理することになるが、大学人にとっては、研究は勿論であるが、教育、社会貢献、学内の行政といった役割も重要であり、そうしたことも評価されてしかるべきである。とりわけ、教育は研究と並んで、教員を評価する重要なものであり、こうした教育への熱意や方法での工夫といったことは見えにくく、研究に比べると低く評価されるきらいがある。

 教育での評価で最も尺度化しやすいのが、学部生や大学院生に対して、学士、修士、博士の学位をどの程度出したかある。我々のような大学院大学における教授の教育業績は、博士の学位を主査としてどれだけ出したが、ひとつの評価の指標である。これについては、生活科学研究科のホームページに「博士号取得者一覧と紹介」の研究内容と取得者の声が載っているが、私の場合は、毎年2名程度に博士(学術)の学位を授与することができている。

 この数が多いのか少ないのかの評価は分からないが、市大の定年を考えると、今年からは3倍増ぐらいにピッチをあげなければ、現在残留しているドクター生に対する責任が果たせなくなる。

 この教育の評価は、明日に掲載予定の研究業績からでも少しは読み取ることができる。私なりが補助金や委託事業を取ってきて実施する調査研究に大学院が主体的に関わり、調査研究報告書を作成し、それをもとに、大学院生がファーストオーサーとなり学会誌に学術論文を書くことになる。これは、明日のブログの業績の中で連名の学術論文がいくつかあるが、これを探していただければ、教育の責任をどの程度果たしているかが分かることになる。

 なお、大阪市立大学大学院生活科学研究科の学位審査の基準は極めて高く、私の学生の場合は、学会誌等に4~6報掲載され、それらの論文をコーディネートして、学位論文を仕上げることになる。その意味では、ドクターの学生も並々ならぬ努力が求められる。

 こうしたことを、3倍増で、今年からやっていかなければならないという教育上の役割が残っている。今年は、がんばれば、4倍増になれるかもしれない。個々のドクター生がそれぞれピッチをあげているように見えるからである。

有料老人ホーム経営の難しさ

2009年01月05日 | ケアや介護
 先日、ある有料老人ホームの理事長をお話しする機会があり、有料老人ホーム経営の難しさが分かった。

 有料老人ホームは、介護が必要になってから入居する場合と、元気な時から入居する場合がある。この有料老人ホームは名門で、元気な時から入居し、介護が必要になっても最期まで看てもらえる施設である。一般には、こうした施設では、利用権方式と呼ばれる、入居時の一時金と毎月の賃料とをミックスして入居者が支払っている場合が多く、死亡時点で契約が解消されることが一般的である。この有料老人ホームはそうしたシステムをとっているが、一時金がなかったり、少ないホームもあり、一方、買取のホームもある。

 この有料老人ホームは新築してから、既に20年以上も経ち、建物自体が古くなっているが、入居時の一時金や毎月の賃料を下げることが難しいという問題をもっている。なぜなら、下げれば、今までから入居している人からクレームがくる。一般のマンションの場合は、買取であろうが賃貸であろうが、市場が決定するが、有料老人ホームには、さらに別の要素が入ってくることになる。

 そのため、常にリニューアルしたり、サービス内容を充実することで、付加価値をつけて、同じ価格を堅持することになっているという。しかしながら、こうした対応にも今後は限界がでてくるであろうことを心配している。

 同時に、以上のようなことを予測して、必ずしも価格設定してこなかったであろうし、また、最終的には、後20年程度は持つであろうが、将来は立て替えの話しも起こってくる。こうしたことも予測して作られてはいない。価格設定に減価償却分を含めているかの問題と同時に、有料老人ホームの場合はどのように立て替えをするのであろうか。

 以上、有料老人ホームの将来について、事業者と行政が一緒になり考えなければならないことが多いように思う。