ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

社会福祉研究の成果をソーシャルワーカーの報酬や社会的地位に活かす

2008年05月03日 | 社会福祉士
 看護の世界は、医学の影響を受けてか、苦労も多いであろうが、たくましく生きておられるように思える。介護保険法以降、社会福祉も保険の世界に足をかけたが、後進の立場から、看護の動きから学ぶことが実に多い。

 例えば、日本看護協会が音頭をとって作られた、看護系学会で構成する看護系学会等社会保険連合(通称:看護連)がある。ここでは診療報酬や介護報酬の改定に向けて、各学会で明らかになった看護師の業務効果についてのエビデンスを集積し、それらが診療報酬や介護報酬のアップに結びつくような方策を検討している。その結果を要望として、厚生労働省の方にあげていく仕組みをとっている。

 社会福祉の方も、措置から契約に移行し、高齢者の殆どのサービスは保険財源に基づくようになると、社会福祉領域の研究から明らかにされたエビデンスを介護報酬や診療報酬改訂の委員会に提案し、活用されれば、社会福祉士やソーシャルワーカーの活動に対する報酬に影響したり、社会的地位を高めることにもつながる。保険の時代にあっては、社会福祉士の地位を高めるのも、社会福祉士の報酬を上げることも、護衛船団に守られることはなく、自らの実力で切り開けていく以外に道はない。

 そのためには、看護同様に、学会と職能団体との連携で看護連といった組織が不可欠である。時あたかも、社会福祉系の20学会が集まり、日本社会福祉系学会連合(会長:高橋重宏先生)ができている。この連合は、日本学術会議での社会福祉学分科会にご支援いただき、シンポジウム等を可能にしている。さらに、連合独自の活動も行っているが、さらに期待されことは、(社)日本社会福祉士会、(社)日本医療事業協会、(社)日本精神保健福祉士協会等の職能団体と連携し、各学会で得られた研究成果としてのエビデンスをいかに社会福祉現場に活用していくかの仕掛けが必要ではないのか。

 あるいは、現在、大橋謙策先生を会長にソーシャルケアサービス従事者協議会が作られ、ここには職能団体、養成団体、学会が参加しているが、ここで、看護連のような機能を果たすことも可能であろう。

 一度、いずれかの協議体で議論いただくことを提案し、理論と実践をつなげるだけでなく、さらに報酬や社会的地位にもつなげていく仕掛けを作れるよう訴えていきたいと考えている。

 時あたかも、『月刊福祉』5月号で、(社)日本看護協会会長の久常節子さんがインタビューを受けている。彼女は、大阪市立大学大学院で3年ほど先輩の同門であり、「医療はもちろん大切であるが、福祉に配分するお金をもう少し拡大したほうが、国民は幸せなのではないでしょうか」と、福祉にエールを送ってくれている。先日、彼女に原稿の依頼で電話をさせていただいた時に、私が(社)日本社会福祉士養成校協会の会長をしていることを知っていたかどうかは分からないが、社会福祉もどろどろしたことに手を突っ込まないといけないのではないかというご意見を頂きました。裏には、看護は多くの苦労しながら、ここまで辿り着いた気持ちがあったのだと感じました。

 今回のインタビューで、彼女は看護と社会福祉は「対極」にあり、社会福祉は学問として樹立していったが、看護の基盤には実践であると言っています。これを読んで、あの時のどろどろしたことに手を突っ込むことの意味が、何となく分かったような気がする。