ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

在宅介護支援センターはどこに行ったのか

2008年05月08日 | 社会福祉士
 改正介護保険法で「地域包括支援センター」が新設され、結果として、介護保険制度ができた時点から、その位置づけがファジーになってしまっていた「在宅介護支援センター」は、どのように変貌したのか。これについての調査結果が、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会から『介護保険法改正後において、在宅介護支援センターが地域において果たすべき役割に関する調査研究事業報告書』を3月末に出している。

 この報告書では私が委員長をやっていたが、思いとしては、日本のケアマネジメントやサービス・デリバリー・システムを牽引してきた在宅介護支援センターが、最終的にどのような形で落ち着くのかを、見届けておきたいからである。それは、在宅介護支援センターのもとで、研究者として成長させて頂いた私の、せめてもの恩返しであると思っている。

 改正介護保険法ができる少し前に、これも私も委員長として参加し、在宅介護支援センターが地域包括支援センターとどのような関係になるのかについて、全国在宅介護支援センター協議会から出した報告書『地域支援事業における在宅介護支援センターの活用~地域包括支援センターと在宅介護支援センターのあるべき関係~』でもって、以下のような5つのタイプになることを整理した。

①地域包括支援センターに移行する。
②地域包括支援センターのサブセンターとなる。(地域包括支援センターの所属となり、別のところで介護予防ケアマネジメントも含めて、地域包括支援センターのミニ版として仕事を行う。)
③地域包括支援センターのブランチとなる。(総合相談等の地域包括支援センター業務の一部を担う)
④在宅介護支援センターとしての機能を継続する。(法人の自己負担であったり、行政からの補助金で運営)
⑤在宅介護支援センターを廃業する。

 この報告書では、今まで活発に機能してきた在宅介護支援センターが、①と⑤という形で、多くが切り捨てられることがないよう、厚生労働省とも協議しながら、②③④の道もあることを示し、地域包括支援センターとの連続性を作りことに努力したものである。

 今回の調査報告書から、①から⑤に移行した割合が分かった。具体的には、改正介護保険法一年前の平成16年4月時点で全国在宅介護支援センター協議会に加入していた6,734のセンターがどのように移行したのかの割合は、次の通りである。

①地域包括支援センターに移行したーーーーーーーーー24%
②地域包括支援センターのサブセンターに移行したーーー 5%
③地域包括支援センターのブランチに移行したーーーーー26%
④自主的に、または行政から有形・無形の支援を受けて在宅介護支援センターを継続しているーーーーーー18%
⑤在宅介護支援センターは廃業ーーーーーーーーーーーーー24%

 この中で、特に「自主的に、または行政から有形・無形の支援を受けて在宅介護支援センターを継続している」センターの将来に不安を感じる。また、廃業した4分の1のセンターの担当地域では、相談をうけることでの、利用者側で混乱が生じていないかが心配である。

 一方、平成20年1月に全国地域包括・在宅介護支援センター協議会に属する地域包括支援センター1561カ所を対象に、在宅介護支援センターから移行してきたかどうかをみると、以下のような結果であった。

①在宅介護支援センターから移行ーーーー80%
②新規に設置ーーーーーーーーーーーーー16%

 この2つの調査結果から、従来の在宅介護支援センターの4分の3は現在も何らかの活用をしており、現状の地域包括支援センターの8割が在宅介護支援センターが引き継いでいる。

 このように変化した中で、地域包括支援センターは従来にも増して機能できるのであろうか。在宅介護支援センターから移行した場合には、新たに求められる業務を円滑に進めていくうえでの課題が、新設の場合には、在宅介護支援センターの時代に蓄積してきた機能を新たに進めていくことでの課題が潜んでいることも明らかになった。

現状にあっては、地域包括支援センターをいかに育てていくかが重要であるが、平成2年に実質始まり、蓄積してきた在宅介護支援センターの実績を、それぞれの市町村、生活圏域、中学校区で引き継いでいくことが一つのポイントになりそうである。同時に、地域に根付くことの難しさを、在宅介護支援センターでも十分なしえなかったと思うが、地域包括支援センターでは是非実施できるようしたいものでる。これは、理論的には、このブログで始めている不連続の連載「地域でのネットワーキング論?」でもがんばろうと思います。