ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

地域でのネットワーキング論?番外編

2008年05月10日 | 社会福祉士
 3月末日に厚生労働省の社会・援護局長私的研究会「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書『地域における新たな支え合い」を求めて-住民と行政の協働による新しい福祉-』が出された。現在進めている「地域でのネットワーキング論?」の連載とも関係するので、ネットワーキング論と関係する部分で、興味のある内容について、書き留めておきたい。

 本報告書は、今までの地域福祉についての点検という意味が大きいが、ネットワーキング論と最も関係があるのは、「地域福祉を推進するために必要な条件とその整備方策」である。これについては、以下の6点を指摘している。

1.住民主体を確保する条件があること
2.地域の生活課題発見のための方策があること
3.適切な圏域を単位にしていること
4.地域福祉を推進するための環境として、①情報の共有、②活動の拠点、③地域福祉のコーデイネーター、④活動資金
5.核となる人材
6.市町村の役割として総合的なコミュニテイ施策の必要性

 新たな地域福祉を作り上げるために、上記のような一定の条件を作り上げることが指摘された。このことは評価できるが、では一体、具体的には、どのように、圏域を設定し、住民主体を確保し、基本となる地域の生活課題を発見し、核となる人材を見つけ出していくかの方法なり、プロセスが重要となってくる。

 このことを明らかにすることは、この研究会の趣旨ではないのであろうが、誰が、どのようなプロセスで、上記のことを進めていくかがポイントである。当然、ここでは、地域福祉のコーデイネーターと呼んでいる職員が担うことになり、その職員が専門的な知識をもって進めていくことになる。

 この地域福祉のコーデイネーターはまさにコーデイネーション機能とネットワーキング機能を果たしていく専門職であり、コミュニテイ・ソーシャルワーカーの仕事であるといえる。報告書でも、後者の機能については、「住民の地域福祉活動で発見された生活課題の共有化、社会資源の調整や新たな活動の開発、地域福祉活動に関わる者によるネットワーク形成を図るなど、地域福祉活動を促進する」ことに相当する。

 具体的なネットワーキングの方法については、実践側で作り上げていくしかないが、本報告書の中にも、具体的な方法の例示も少しあり、ヒントにはなる。また、留意点としての、①画一ではなく多様な活動方法、②地域がもっている活動の煩わしさ、監視される意識といった負の側面を意識した活動、③情報の共有化と個人情報保護とのすり合わせ、は、ネットワーキングを進める上で役立つ部分である。

ただ、一つ疑問なのは、厚生労働省は今年からコミュニテイ・ソーシャルワーカーのモデル事業を取り組むことになっているが、この報告書では地域福祉コーデイネターという名称が使われて、ある程度その内容が書かれているが、コミュニテイ・ソーシャルワーカーについてはふれられていなかったのが、不思議である。さらに、この報告書の意図では、地域福祉コーデイネーターはコミュニテイ・ソーシャルワーカーと同じイメージで捉えて良いのだろうかが、疑問である。イコールであれば、なぜコミュニテイ・ソーシャルワーカーという用語にこだわらなかったのだろうか。一度、聞いてみたいものである。

 今後の「地域でのネットワーキング論?」をお読みいただく上で、一度お読みいただくことをお勧めします。