ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

要介護認定について(東洋経済9/5号より)

2009年09月03日 | ケアや介護


 東洋経済の特大号で、「老後を誰が看るのか?」の特集を組んでおり、介護の大問題という副題になっている。ここで、最近私が気にしている要介護認定のあり方について、どのように整理されているかを紹介しておく。

 まず、要介護認定であるが、「二転三転した認定基準」というタイトルとなっている。実際、今年の3月のテキストで移動での「重度の寝たきりで移動の機会がまったくない場合」、食事摂取での「中心静脈栄養のみで、経口での食事はまったく摂っていない場合」、整髪が「頭髪が無く、「整髪」をまったく行っていない。入浴後に頭をふきう介助は全介助にて行われている場合」は、自立(介助なし)となっていたが、今回の検証の結果、すべて全介助という180度転換している。

 このなかでは、「過ちては改むるにはばかることなかれ」という格言を引き出しており、一方で、素直に戻した態度を評価すると同時に、要介護認定のいい加減さがしみしみと伝わってくる。

 いのため、要介護認定制度を廃止すればとの意見をブログに書いたことがあるが、この東洋経済では、2人が別の頁で言っている。一人は、要介護認定の中味作りに極めて深く関わっていた小山秀夫さん(静岡県立大学)と、太田秀樹医師(医療法人アスムス理事長)である。

 私も同感であるが、サービス担当者会議を義務化しているわけであり、そこで決定すれば事足りるのではないかと思っている。財源的に気になるなら、保険者がこの会議に参加すればよいのではないかと思っている。

 太田さんは「もっぱら障害の程度で判断する今の仕組みは時代遅れだ」と言っている。これは、障害の概念がICIDHからICFに変わり、要介護者本人の状態だけでなく、家族・地域や住環境での要因によっても生活障害のレベルは変わることが潮流となっている時代にあって、時代に合わないと考える。

 小山さんは、「私はもはや、要介護認定そのものをやめてもいいのではないかと考えている」と言っている。多くの国で行われている、ケアマネジャーを中心として専門職チームでやればということである。

 現実には、財源的なチェックを現状では、要介護認定制度とケアマネジャーが主宰するサービス担当者会議の二重に実施されており、後者の保険者も参加したサービス担当者会議でチェックすれば、事足りるのではないかということである。

 民主党政権になり、今後、介護保険制度について有意義な議論が展開していくことを期待したい。そのためには、ケアマネジャーの専門性である、ニーズの把握する力を身につけけさせるための継続教育やキャリアパス、待遇の改善を含めた社会的地位の確保が不可欠である。



鳩山さん くらしの注文です

2009年09月02日 | ケアや介護
9月1日の朝日新聞の29面の「生活」欄で、「鳩山さん くらしの注文です」というタイトルで、私のインタビュー記事が載っている。以下に、再掲しておく。

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情熱ある介護、夢や希望必要

                        白澤政和・大阪市立大学大学院教授(社会福祉学)


 介護職の人手不足が待ったなしの危機的な状況のなかで、民主党が公約した月4万円の賃金アップ」は、人材を確保するには魅力的な額だ。介護労働者の平均月給は21万6千円で、全産業の約7割。情熱をもって介護するには、知識や技術だけでなく、社会的に評価されているという誇りも必要だ。

 ただ、賃金銀アップのための介護報酬引き上げに必要な財源の裏付けが明らかではない。介護保険の財源は、公費と保険料がそれぞれ50%。在宅サービスでは公費のうち25%が国庫負担で、都道府県と市町村が12・5%ずつ負担している。

 「暮らしのための政治」を掲げ、保険料の引き上げなど国民の負担増を避けるのであれば、財源は国庫負担の増加でまかなわざるを得ない。負担割合を変えるのかも含めて財源の根拠を示し、また介護報酬を上げたぶんをきちんと賃金に反映することが喫緊の課題だ。

 でも、給料を上げるだけでは明日への希望や夢は描けない。認知症の人の気持ちに寄り添うケアなど介護の専門性を高める研修を充実させ、例えばヘルパーから管理職へと、キャリア形成の体系づくりも不可欠だ。

 昨年86歳で他界した妻の母親は、ヘルパーがいない時に転んで歩くのが不自由になった。でも、ヘルパーの時間介護は難しく、妻が三重県から大阪までほぼ毎日通った。私の90歳の父と84歳の母は今は元気だが、在宅で支えきれるか不安だ。持続可能な介護保険制度を実現し、質の高いサービスがだれでも受けられ、安心して老いを迎えられる制度作りに切り込んではしい。


民主党に対する「介護保険」に対する期待と不安

2009年09月01日 | ケアや介護
 民主党が圧倒的勝利を収め、政治は今新しい時代を迎えようとしている。財源が危機状況にある介護保険制度を、新政権がいかに再生してくれるか期待も大きいが、同時に不安も大きい。まずは、介護保険についてマニフェストを忠実に遂行してくれることを願うものである。

 民主党マニフェストで近々起こる問題は、介護従事者の待遇改善についてである。既に、来月から、追加緊急経済対策として、介護職員処遇改善給付金制度が始まることになっている。これは、施設や在宅の介護職に限定し、2年6ヶ月の間、常勤換算で賃金を月額1万5千円アップするものである。これについては、各都道府県で、着々と準備が進んでいる。

 ところが、民主党のマニフェストは、介護報酬を加算することで、介護労働者の賃金の月額4万円アップをうたっている。これは、今年の3月に民主党、共産党、社民党、国民新党の野党連合で提出し廃案になった「介護労働者の人材確保に関する特別措置法」をもとにしている。この法案では、介護労働者の待遇改善のために、全ての介護保険事業者を対象に介護報酬を10%加算するものであった。介護労働者の待遇改善に結びつけるために、介護事業者には、介護職員の賃金の引上げ等の努力義務を課し、その実効性を担保するために、毎年、現行の公表制度に加え、待遇改善の状況の市町村への報告を義務づけている。ここで言う介護労働者は、福祉サービスや保健医療サービスの業務に従事する者であり、当然ケアマネジャーや訪問看護師も含まれることになる。なお、この特別措置法は、介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなった時点で廃止になるとしている。

 ここでの問題は、どのように「介護労働者の人材確保に関する特別措置法」を介護労働者の待遇改善に実効性あるものに修正し、いつの時点で法案を通し、実行するかである。これは、介護保険で民主党が最初に取り組まなければならない緊急のテーマである。

 もうひとつのポイントであるが、今後の介護保険制度の方向を考えると、大きな問題がある。現在の介護保険の財源面での危機的状況を以下に打破すべきであるかである。そして、来年度は5年に1度の介護保険法見直しの年に当たり、法改正で、危機状況を脱出できるかどうかにかかっている。そこでは、前回改正の介護予防の効果を検証し、効果・効率の側面から、大なたをふるってほしいと願っている。

 その中で最も根本的な財源問題については、国庫負担割合の見直しを検討すべき好機である。残念ながら、民主党のマニフェストには、国庫負担の見直しについての記述はないが、今後民主党と連立していくとされている政党では、国家負担割合の変更を明記しており、民主党も国庫負担割合の議論は避けて通れない。公的財源の明確な担保のもとで、マニフェスト工程表に再度国庫負担割合のアップを組み入れてくれることを期待している。その意味では、「介護労働者の人材確保に関する特別措置法」がどこまで継続していくかで、国庫負担比率を恒久的に引き上げられることにもつながることになる。

 以上のような課題を解決していくことに加えて、介護労働者の継続教育を介したキャリアパスを確立ことで、民主党マニフェストで言及している、「介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する」介護保険制度に成ることを願っている。

地域包括ケアとは

2009年08月28日 | ケアや介護
 厚生労働省は、「地域包括ケア研究会報告書~今後の検討のための論点整理~」(平成20年度老人保健健康増進等事業として実施された「在宅医療と介護の連携、認知症高齢者ケア等地域ケアの在り方等研究事業」:実施主体:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)を、5月22日に公表している。そこでは、地域包括ケアの定義についての提案がなされている。

 地域包括ケアとは「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(生活圏域)で適切に提供できるような地域の体制」との試案を提示している。さらに、誰か駆けつけるのか知らないが、「おおむね30分以内に駆けつけられる圏域」として、この生活圏域を、中学校区を基本にしてはどうかと問いかけている。

 この報告を読んでの感想であるが、2点気になることがある。

 第1点は、地域包括ケアの現状についてである。研究会の地域包括ケアの定義に何ら違和感はない。私は、個々の利用者を、空間的・時間的に生活の連続性を支えていくことの重要性をブログでも主張しており、そのことが地域包括ケアであるということで異論はない。

 ただ、こうした利用者の生活の連続性を制度的に崩しておきながら、その検証や検討を論議し報告されることなく、提案されていることが残念である。すなわち、ここで示した2つの図は、時間軸での連続性が、4年前の法改正で崩れたことを示している。現状でのこの窓口が2つ分かれ、要支援者と要介護者での連続した支援が難しくなり、ワンストップサービスやケアの連続性が崩れたことに対する問題提起もなくして、地域包括ケアは推進できるのであろうかということである。




 もう1つ気になることは、中学校区とは昔聞き慣れた言葉で再現してきたことである。これは、平成2年に在宅介護支援センターができた時に、当時中学校区が1万ヶ所あり、1中学校区に1ヶ所の在宅介護支援センターを作ることが、ゴールドプランに記載され、全国に普及していった。最終的には、8千近くまで伸びたが、これが4年前に地域包括支援センターに移行した。

 その時は、高齢者が移動可能な人口2~3万を生活圏域とし、都市部や農村部では人口規模は異なるということであった。そこで、また中学校区を生活圏域にという議論である。このことは、地域包括支援センターの生活圏域設定に問題であったのか、あるいは現状の多くの地域包括支援センターが多くの人口規模を抱えて実施していることへの反省からのものであるのか。これについても、現状の地域包括支援センターの実態とその成果を検討することでの議論でありたいと思う。同時に、個々の市町村においては、生活圏域設定があまり変わるようでは、個々の住民も行政も困惑することになる。

「介護労働者の人材確保に関する特別措置法(案)」の再確認を

2009年08月21日 | ケアや介護
 総選挙に向けて、それぞれの地域で激戦が繰り返されている。マスコミの下馬評では、民主党が圧倒的に有利ということらしい。そこで、介護保険の近未来を探る上で、マニフェストも大事であるが、民主党、共産党、社民党、国民新党の野党連合で提出した法案も点検しておくことが、介護保険制度の今後を予測できるのではないかと考える。これは廃案になっているが、次は、政府案として再登場してくるかも分からないからである。

 それは、自民党が追加緊急経済対策で、ぶちあげた「介護職員待遇改善給付金」の常勤換算で月1万5千円アップの対比として、民主党を中心で野党から出された「介護労働者の人材確保に関する特別措置法(案)」はマークしておいた方が良いと判断した。これは、民主党が多数を取った場合に実現する可能性があるからである。また、介護保険制度に対する今回の民主党のマニフェストの土台にもなっている。

 本法案は、介護労働者の待遇改善のために、介護報酬を加算することを義務づけるものである。一方、事業主に対して、介護職員の賃金の引上げ等の努力義務を課し、その実効性を担保するために、毎年、現行の公表制度に加え、待遇改善の状況の市町村への報告を義務づけている。

 ここでの介護事業者は、居宅サービス事業者、地域密着型サービス事業者、居宅介護支援事業者、介護保険施設、およびこれらで介護予防をする事業者であり、そのような介護事業者が行う福祉サービスや保健医療サービスの業務に従事する者を介護労働者としている。そのため、介護労働者にはケアマネジャーや訪問看護師も含まれることにはなるが、7%の介護報酬アップということで支給されることになる。それを介護労働者の待遇改善に結びつけるために、介護事業者は介護労働者の労働条件改善の内容を、市町村に届けることになっている。

 この増額分がすべて人件費にまわった場合には、介護労働者約80 万人(常勤換算)に対して、一人当たり月額4万円程度の賃金引き上げが可能になるとしている。このことは、民主党のマニフェストと符合することである。なお、法案では、この特別措置は、介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなった時に廃止となるとしている。


「主任介護支援専門員」研修会の位置づけの不思議

2009年08月18日 | ケアや介護
 多くの都道府県では、今年の主任介護支援専門員研修会は回数や定員を倍増して実施している。いくつかの研修会に講師として伺ったが、いずれも大盛況である。それは、特定事業者加算Ⅱをとるために必要であるからである。さらに、加算の関係もあり、厚生労働省は、受講希望者を拒んではならないと指導している。

 主任介護支援専門員研修の受講者層はこの4年間で、目まぐるしく変化してきた。4年前の改正で新たに地域包括支援センターができ、初年度の受講者は、当然のことであるが、受講者は地域包括支援センターに配属される主任介護支援専門員の資格を求めてのものであった。

 ところが、その後の2年間は、地域包括支援センターの職員というよりは、居宅介護支援事業者のケアマネジャーが圧倒的に多くなっていた。この受講理由は、ケアマネジャーが自らの能力を高めたいがためであった。さらには、地域に中でリーダーなりスーパーバイザー的役割を果たしたいという思いからであった。例えば、大阪府の主任介護支援専門員研修での受講者資格には、地域のリーダーとなっているか、なる自覚があるかどうかが、、研修会受講の1つの条件になっていた。

 しかし、今回の介護報酬改訂で、特定事業者加算の敷居を低くするⅡが新設され、この加算を取りたい事業者のケアマネジャーが多数参加している状況である。そのため、受講対象者は、猫の目のように毎年のように変わっている。そのため、受講生の視点からすれば、講義内容も毎年のように変えざるを得ない側面もある。

 この主任介護支援専門員の法的根拠をみると、まずは地域包括支援センターに配置することが「介護保険法」に位置づけられており、そこでの研修の要件や内容が「主任介護支援専門員研修要綱」に明記されているに過ぎない。その意味では、介護報酬の特定事業者加算の要件に主任介護支援専門員が位置づけられてはいるが、法的には、地域包括支援センター職員としてのものであり、ケアマネジャーとしての水準を高め、スーパバイザーとして養成していくことを目指すことを目的にしたものではない。

 その意味では、「つぎはぎ」的に主任介護支援専門員を位置づけるのではなく、ケアマネジャーのキャリアパスの一貫として位置づけ、研修内容は居宅介護支援事業者や地域でのスーパーバイザーとしてだけでなく、施設の管理者としても育成していくカリキュラムを構築していく必要があるのではないか。当然、この研修を構造化することで、ケアマネジャーの社会的地位や待遇を高めることに位置づけるべきである。

介護保険施設や訪問介護事業者の離職要因について②

2009年08月15日 | ケアや介護
2 訪問介護事業者における職場の特徴と施設職員の離職との関係<施設管理者への調査をもとに>

 訪問介護事業者では担当ヘルパーの雇用が難しい状況がある。本研究では、担当ヘルパーが長期に雇用されるためには、どのような職場環境が必要であるかを明らかにすることにある。

 調査方法は、大阪市の訪問介護事業者1191箇所の管理者を対象に調査し、35.9%の有効票を回収した。

 調査結果として、管理職の離職意識として、離職が「大変高い」4.0%、「高い」26.6%、「低い」38.6%、「大変低い」28.5%となっていた。事業者により意識の差が大きいが、低いとする割合が3分の2近くもあることは注目に値する。

 管理者の捉える職場の特徴は因子分析の結果、職場内外の「職員の研修に対する体制整備」、給与・福利厚生等の「職員への待遇」、上司や仲間との関係や有給休暇や公正な人事といった「職場内の環境」、職場の社会からの評価といった「職場外との関係」の4因子に分かれた。

 次に、管理者の離職意識について、4つの因子でt検定をみると、「職場内の環境」のみに有意差がみられた。その結果、上司や仲間との関係を良くし、公正な人事や有給休暇といった制度を取り入れていくことが、担当ヘルパーの継続した雇用につながると意識していることが分かった。

 そのため、訪問介護事業者の職場内の環境を作り上げるために、職場内での職員を指導や支援していくスーバイザーの配置や、できる限りガラス張りの運営が求められる。管理者の意識として、これらが確立すれば、担当ヘルパーの定着率が高まることにつながることが分かった。

 これは、管理職の意識調査であり、離職者調査でない限界はあるが、管理職の意識として、国なり訪問介護事業者がどのような施策を行う必要があるかが明らかになった。

 今年度は、いくつかの訪問介護事業者にモデル的にお願いして、これらの明らかになった課題を具体的に解決していくことで、離職率に抑えることができるかを検証してみたいと思っている。

 最後になったが、調査にご協力いただいた皆さんに、心より感謝申し上げる次第である。有り難うございました。

介護保険施設や訪問介護事業者の離職要因について①

2009年08月14日 | ケアや介護
 介護職の離職や高いということで介護職が集まらないということで、大阪府下の特別養護老人ホームと老人保健施設の介護保健施設を悉皆で調査した。他方、大阪市内の在宅の訪問介護事業者を悉皆で調査した。これは、事業者の管理者を対象にした実態・意識調査であるが、調査にお応えいただいた皆さんに感謝する次第である。

 そこで、介護保険施設と訪問介護事業者の2回に分けて、調査結果のポイントと課題について示しておきたい。

1 介護施設における職場の特徴と施設職員の離職との関係<施設管理者への調査をもとに>

 介護保険施設の需要が高まっているが、介護施設における職員の離職率が高く、問題となっている。本研究では、施設管理者に対する調査をもとに、どのような職場の特徴が、職員離職率に関連しているかを明らかにし、施設における職員定着率を向上させるための提言を行う。

 調査方法は、大阪府の介護保険施設527ヵ所の管理者に郵送調査を実施し、回収率は29.6%(N=156)だった。

 調査の結果、離職割合について、「大変高い」が4.1%、「高い」が47.6%、「低い」40.4%、「とても低い」が4.8%と管理職が意識しており、離職意識に介護保険施設間で大きな差があることが分かった。

 管理者の捉える介護保険施設の状況について因子分析にかけた結果、「職場内外での関係」、「職場の研修体制」、「職員の待遇」、「事業所としての支援体制」、「職員に対する尊重」の5因子が抽出された。すなわち、管理職の意識として、上司や同僚や地域の人の評価といった「職場内外との関係」、職場内と外での「研修体制の整備」、給与等の「職員の待遇」、休暇等の「事業所としての支援体制」、職員の意見の反映といった「職員に対する尊重」の5つでもって、介護保険施設の構造としていることが分かった。

 この5因子を従属変数、離職状況を独立変数としてt検定を行った結果、「職場内外の関係」と「職員の待遇」において高い有意差が示された。これにより、施設内において良好な人間関係を保つことや、利用者・地域からの高い評価を得ること、職員に対する給与や福利厚生を充実させることが、施設の介護職の離職を改善することに有効であることが分かった。

 これは、管理職の意識調査であり、離職者調査でない限界はあるが、管理職の意識として、国なり介護保険施設がどのような施策を行う必要があるかが明らかになった。

 今年度は、いくつかの介護保険事業所にモデル的にお願いして、これらの明らかになった課題を具体的に解決していくことで、離職率に抑えることができるかを検証してみたいと思っている。

要介護度認定の見直しに係る検証・検討会の結末について

2009年08月12日 | ケアや介護
 4月から始まった新たに要介護認定について、大幅に改正され、一部の基準は4月以前に戻すことが、7月28日に開かれた要介護認定の見直しに係る検証・検討会で決まった。私自身も3月に「介護保険を維持・発展する1000万人の輪」として、凍結を舛添厚生労働大臣に要望した立場からすると、考えさせられるものがある。

 今回の検証・検討会の結論は、ある意味では画期的なことであり、別の意味では反省すべきことの多いものであった。画期的なこととは、国が一度決めたことをここまで変えるのかという驚きである。このようなことはあまり見たことがなく、良い意味では、国も事実に合わせて柔軟な対応ができるものと評価できるし、悪い意味では、プリテストもなく新制度の実施に踏み切った慎重さを欠いたことが非難されることになる。

反省すべきことには、こうした制度改革には、ユーザー参加の下で、慎重な審議の下で進められなければならないことが、第1に挙げられる。第2に、今回の改正は、地域による要介護度認定のバラツキを少なくすることが目的としながらも、万が一要介護度の軽度化を意図していたとするならば、これは戒めなければならない。要介護度はそのものが国民にとって現状ではファジーなものに映っており、これを操作することで、財源の抑制を図ることになれば、国民から介護保険制度に対する基本的な信頼を失っていくことになると考える。

 但し、介護保険においては、財源問題は極めて大切なテーマである。これについては、正々堂々と、保険料、公費負担、要支援者、自己負担といった国民に見えるテーマで議論し、国民が納得いく形で財源問題の解決を図っていくべきである。

 ただ、要介護認定については、まだまだ課題が多い。本当に利用者のための介護保険制度にしていくために、短期の課題、中期の課題。長期の課題に分けて整理しておきたい。

 短期の課題は、10月から新しい要介護認定制度を活用することになるが、これで本当に適切な認定がなされるかかのチェックが不可欠である。今回は、軽度者について、従来に比べて軽度に出る部分に焦点が当てられたが、重度の要介護者と軽度の要介護者が逆転していないかや、それぞれの要介護・支援者にとって適切な認定結果に収まっているか、の検証を続けていく必要がある。

 中期の課題は、今回の要介護認定の改正の基礎には、従来の、利用者の能力から要介護度を判定する基準から、「介助の方法」(どの程度介助が必要か)という名称で、介護の必要度を調査項目に入れたが、このような判定基準はとりわけ、在宅の高齢者にとっては不可欠であり、評価するものである。しかしながら、こうした項目をもとにすると、家族の介護力が間違いなく大きく影響することになる。そうすれば、従来介護保険においては、理論上は家族の介護力に関係なく、サービスを利用できるとしてきた理論上の問題について、どのような対応するかの議論が生じてくる。その結果、「保険か税(消費税)か」といった議論にも繋がっていき、国民のコンセンサスを得るためには、社会全体で議論することが大切である。

 長期的な課題では、要介護認定制度そのものの必要性についてである。基本的に、ケアマネジャーも財源を適正に活用するためのゲートキーパー(門番)的な役割を果たしており、同時に要介護認定制度を実施することは、二重の門番制度をもっていることになり、効率的な仕組みではない。さらに、この検証・検討会に稲城市での在宅者の支給限度額と実際の利用額を比較したデータが資料として提出されていたが、現実には要介護2で47.5%と最も高いが、要介護5では17.9%であり、ほとんど大多数の利用者は支給限度額にははるか及ばない利用実績である。こうした実態からしても、要介護認定制度の在り方を見直すべく、検討が必要である。

訪問介護サービスも老老介護

2009年08月10日 | ケアや介護
 現在、訪問介護事業者を中心に、民間の在宅介護サービス事業者の高齢者雇用の実態に関する研究会に入って勉強している。そこで、訪問介護事業者での担当ヘルパーの年齢構成のヒヤリング結果を聞いて、驚いた。ある大手の事業者では、登録ヘルパーは60歳以上70歳未満が28.3%、70歳以上が3.8%を占め、80歳以上の方も数名いるという。この事業者程ではないが、他の事業者でも同じような傾向が見られた。ある程度は予測していたが、ここまでヘルパーの高齢化が進んでいるとは思っていなかった。

 この結果、個々の家族内で老老介護がなされているだけでなく、介護保険という社会制度においても、老老介護が行われているということである。今回の研究は、高齢者雇用の促進ということがテーマであるため、非常勤・パートの担当ヘルパーの高齢雇用は相当進んでおり、それなりの評価が得られるものである。

 さらに、雇用されている高齢の登録ヘルパーのヒヤリング結果では、仕事に生きがいを有しており、給与とかの問題は出ていない。その意味では、日本の高齢化を考えると、こうした人々が増加することで、年金や税を使う人といった高齢者から、できる限り働き、税金を払う高齢者への方向を修正している企業集団であるとも評価できる。
 
 一方、高齢者が中心になっている担当ヘルパーについて、配慮しなければならないことも、多く浮かび上がってくる。

①現状での訪問介護において、どのような内容の介護が高齢者には適切か? 

 加齢により身体面での体力が衰えていくことはいがめない。そのため、身体介護というよりは 家事などの生活介護が中心にならざるを得ない。また、長年の経験をうまく生かすことができれば、認知症介護にも効果は大きいといえる。ただし、こうした高齢者が多いことを考慮したリスク管理が必要になっている。

②逆に、若い担当ヘルパーが少ないことをどのように考えるのか?さらには、どうすれば増えるのか?

 これには、おそらく多くのヘルパーは子育てが終わった層が、2級等のヘルパー資格を取得し、再雇用されている場合が多い。その際に、非常勤・パートタイムという職であり、相当給与が低いことが予想され、この仕事で家族を養っていくことは不可能であろう。そうすれば、誰か一家の大黒柱が別にいて、家計を補完する位置で仕事をしていることになる。ある意味では、「生き甲斐」で仕事をしていることが多い。

 これであれば、若い学生が卒業して、このような非常勤・パートタイムで働いてくれることが、土台無理であり、現実にもそうした人はほとんどいないのが現実である。そのため、非常勤・パートタイムを基本にするとしても、一定の収入が得られることが必要であり、そのための介護報酬アップが求められる。今回の介護職員処遇改善給付金では、15%程度の収入増が確保されることは意味があるといえる。

③こうした人々に介護福祉士資格の取得を求めるのか?

 現実に担当ヘルパーは密室での1対1のケアであるため、専門性の担保が不可欠である。厚生労働省でも、ヘルパーが介護福祉士資格取得までもっていこうとしているが、困難が予想される。子育てが終わった時点で、2級ヘルパーを取り、それからさらに国家資格取得となれば、どの程度の者がそこまで辿り着けるかに問題がある。そのため、2級資格ヘルパーをベースに、義務化された継続教育でもって、水準を高めていく方法がベストのような気がする。但し、介護福祉士資格取得を決して拒むものではないことも、追加しておきたい。

④若いサービス提供責任者と高齢の担当ヘルパーの関係をどのように作るのか?

 短期大学等を卒業してくる若い方は、常勤職で採用されることになり、早い時期にサービス提供責任者となる。そのため、若いサービス提供責任者が高齢の担当ヘルパーを支援・指導する立場になる。このことが、社会経験も加味した仕事であるホームヘルパー業務において、両者の関係が円滑に進むのかという不安がある。その意味では、子育てが終わって担当ヘルパーになった者についても、サービス提供責任者になる機会を、継続教育の中で作り上げていく必要がある。

 以上のことを考えると、基本的にホームヘルパーの業務には、キャリアパスの仕組みがほとんど確立されていないことになる。サービス提供責任者の終着点は決して介護支援専門員になることではなく、ホームヘルプ業務の中で、熟練し、管理者になっていくステップアップを作っていくことが大切である。その際に、常勤職と非常勤・パート職の2本のキャリアパスを作り、さらには、ある時期には、非常勤・パート職から常勤職へ、パスが移れる仕組みも大切である。


各党のマニフェスト比較②介護保険制度での公費比率の変更について

2009年08月08日 | ケアや介護
5月13日に開かれた6党の討論会では、介護保険財源が厳しい状況を迎えているという認識を、すべての党から理解が得られたと思っている。ここに、各党がどのように公費負担、特に国費負担をアップしていこうとしているかを、マニフェストから覗いてみたい。なお、現在この公費負担は、国が25%、都道府県と市町村がそれぞれ12.5%となっている(施設等給付金分については、国20%、都道府県および市町村はそれぞれ17.5%)。

自民党 公費比率の変更については記述していない。但し、「平成24年度の介護報酬改訂において、介護保険料の上昇を抑制しつつ、介護報酬を引き上げる」としており、保険料を上げないで介護報酬を上げるためには、どう見ても公費負担を増やすか、あるいは要支援者をカットするか、自己負担比率10%をアップするしか方法が考えられない。

公明党 「「新介護ゴールドプラン」を策定し、公費負担割合の引き上げなどにより、介護保険財源の安定化を図る」としており、公費負担割合の引き上げを明記している。

民主党 公費負担の変更については記述無し。全体として、「認定事業者に対する介護報酬を加算し、介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる」と書かれているが、恐らく認定事業者は介護保険事業者のことであると思われるが、どのように介護報酬を上げるのかは不明である。

共産党 「介護給付費の国庫負担割合を計画的に50%まで引き上げ」、「当面ただちに5%引きあげ」と明確にしている。

社民党 概要版であり、今後詳細な内容が示されると思うが、「医療・介護保険の国の負担割合の引き上げ」と、介護保険同様に医療保険も公費負担をアップするとしている。

国民新党 介護保険での公費負担については記述無し。しかし、介護の現場で劣悪な条件で働く人の給与を一般公務員並に引き上げる(30%増)としているが、その財源はどこから出すのだろうか。

これらのマニフェストは、公費財源(租税分)をどこから確保できるのかについては不明瞭ではあるが、8月18日の選挙公示日までに、より詳細の内容を提示してくれることを期待したい。

 各党のマニフェスト比較①(介護職員処遇改善給付金)

2009年08月07日 | ケアや介護
 「介護保険を維持・発展させる1000万人の輪」が6党の介護保険担当者にご参加いただき、「介護保険の未来」ということで公開シンポジウムを開催したのは5月13日のことだったが、このシンポジウムに参加していた立場からは、1つの大きな衆議院選挙の争点になるのは、景気対策として緊急に実施させる「介護職員処遇改善給付金」があると思った。それは、今年の10月からスタートするものであり、8月30日の投票で、それぞれが責任政党となった時に、10月からどのような対応をするのかが関心があったからである。

 さらに、長期的には、介護保険制度の公費負担の割合をどうしていくのかも大きな関心事である。その場合に、この給付金部分は、継続して実施されることになれば、公費に転化する可能性も高いからである。

 そのため、衆議院選挙に向けて各党が出揃ったマニフェストで、「介護職員処遇改善給付金」制度をどのように位置づけているかを整理した。その結果は、以下の通りである。

 介護職員処遇改善給付金について、自民党は従来通りであり、介護職員の平均1万5千円をアップするものである。公明党は、介護従事者(この用語は、一般に、介護職員以外に、ケアマネジャーや看護師も含む)の賃金の引き上げやキャリアアップ支援としているが、具体的なアップの額は示されていない。

 野党でみると、民主党は、新たに「介護労働者」という新たな用語を使い、月4万円のアップを言っている。この「介護労働者」については、「介護職員」や「介護従事者」とどう違うのかが、明確でない。共産党も同様に「介護労働者」という用語を使い、月3万円のアップをいっている。社民党は、概要版であり、8月18日から詳細なマニフェストを配布するとのことであり、看護師、福祉や介護職員の待遇の改善をいっている。国民新党は、介護の現場で劣悪な条件で働く人の給与を一般公務員並に引き上げる(30%増)としている。

 それぞれの政党の公約の詳細は読んでいただきたい。また、内容に対する個人的なコメントは控えるが、気になることが2点ある。この給付金は現状では10月から2年半で終わりことになっているが、これについて文書で、それ以降も継続していくことを明記している政党のマニフェストはない。これについて、各政党に応えて貰いたいものである。これが、永遠のものになると、自ずから、公費(国費)負担分が増加することになるからである。

 もう1点は、民主党や社民党がいっている介護労働者とは誰を指すのかを、明確にして貰いたいものである。これは、2回の介護報酬改定で、介護支援専門員等の給与が下がっており、介護職員に加えて介護保険制度に従事する者の待遇改善が必要であると思うからである。

6党のマニフェストのアドレスは、以下の通りです。
自民党 http://www.jimin.jp/sen_syu45/seisaku/pdf/2009_bank.pdf
公明党 http://www.komei.or.jp/policy/policy/pdf/manifesto2009_forweb.pdf
民主党 http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/pdf/manifesto_2009.pdf
共産党 http://www.jcp.or.jp/seisaku/2009/syuuin/20090728_kihon_1.html
社民党 http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/manifesto01.htm
国民新党 http://www.kokumin.or.jp/seiken-seisaku/pdf/kouysku-seiji-public-seiki.pdf

介護職員処遇改善給付金(仮称)の行方

2009年06月22日 | ケアや介護
 4月11日に書いたブログ「追加経済対策での「介護職員処遇改善交付金」(仮称)への期待」が、今もってよく読んでいただいている。この介護職員処遇改善交付金の具体的な概要を、6月3日に厚生労働省は提示した。「処遇改善計画」は、「福祉・介護人材確保対策について」の中の一部として示されている。

 4月からの介護報酬改定では、ほとんど介護職員の待遇改善にはつながらなかったことから、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に資金を交付し、常勤換算の介護職員の1ヶ月当たり平均1.5万円賃金引き上げを目指すものである。

 交付を受けるためには、各事業所が介護職員一人当たりの交付見込額を上回る賃金改善を行うことを含む処遇改善計画を作成し、職員に周知の上で、都道府県に申請する。都道府県から委託を受けた国保連が、各事業者に交付することになる。ただ、平成22年度からは、介護職員のキャリアパスを明確にしていない事業者については、交付金の減額をすることになっている。

 この制度は、21年の10月から始まり、2年半分で、23年度で終わるものであり、合計で3975億円が予算計上されている。

 4月のアナウンスあった時と大きく変わったことは、従来は介護職員の人件費比率に応じた交付率と考えていたが、介護職員数に応じた交付率に見直している。前者であれば、給与水準が高い事業所ほど交付金が多くなるが、後者であれば、常勤職員1人当たりに同じ額が交付されることになるからである。

 そのため、交付率を訪問介護でみれば、「全国の訪問介護の介護職員数(常勤換算)×1.5万円×12ヶ月/全国の訪問介護サービスの総費用額」ということから、訪問介護は4.0%の交付率となっている。最も高いのは小規模多機能型居宅介護の4.2%であり、グループホームが3.9%、通所介護が1.9%、通所リハが1.7%、介護老人福祉施設が2.5%、介護老人保健施設が1.5%、介護療養施設が1.1%となっている。

 そのため、それぞれの訪問介護事業所の交付金は、事業所の介護報酬総額(自己負担分も含めた)の4%となる。それが、個々の介護職に常勤職1.5万円を基準に交付されることになる。

 この交付金については介護職の待遇がよくなることであり、大歓迎であるが、問題は2つある。第1は、平成23年度以降は、どのようになるのかの議論がなされておらず、はしごを外されるようなことがあってはならない。この部分を、国の現状の負担比率の25%をアップし、制度化することで永遠のものにすることを望みたい。

 第2の問題は、介護保険に従事する職員は介護職員だけではない。ケアマネジャーや看護師もおり、例えば、ケアマネジャーについては、国の介護事業者経営実態調査では、2004年から2007年の変化をみると、相当引き下げていることが分かる。その意味では、事務職も含めて介護保険に従事する全体の待遇改善についての議論が残されている。国は、今回の介護職員待遇改善給付金が打ち上げる前には、ケアマネジャー等も含めた「介護従事者」の待遇改善をうたっていたが、それはどこにいったのだろうか。

当時のケアマネジメントを思い出す

2009年06月01日 | ケアや介護
 11回に亘り、ケアマネジメントとソーシャルワークの関係を、私の研究での経過をもとに連載してきた。

 今後は、数回に亘り、現状でのソーシャルワークとケアマネジメントの関係を少しは理論的に整理したいと思っている。ただ、少し整理の時間が必要なので、以前の3月7日のブログで約束をしていた、竹内孝仁先生と私の対談「ケアマネジメントを創造する」を再度読めるようにした。ここにリンクしておくので、是非読んでいただきたい。介護保険制度が始まる前の私のケアマネジメントに対する考えを読んでいただきたいと思っている。

 これは、月刊『総合ケア』Vol.7 No.7(1997年7月)に掲載されたものであるが、20頁ほどをとっての、特集であったように記憶している。これで、3日分のブログとしたい。なお、これは1997年4月5日に東京都港区にある「精進料理 醍醐」にて行ったものである。

福祉用具専門相談員の役割

2009年05月25日 | ケアや介護
 介護保険制度では様々な介護サービスが利用できるようになっているが、訪問入用サービス、福祉用具レンタル、福祉用具販売、住宅改修については、個別援助計画の作成が義務づけられてない。

 ケアマネジャーのケアプランに対応して、個々のサービス事業者は個別援助計画を作成する。訪問介護であれば、訪問介護計画が作成され、それに基づいて担当ヘルパーが業務を実施することになっている。

 ところが、上で述べた4つのサービスについては計画の作成を義務づけていないが、訪問入浴サービスについては、介護サービス情報の公表において、「訪問入浴サービス計画」の作成を調査項目の一つにしており、そうした訪問入浴サービス計画の作成に関する著書『訪問入浴介護サービス従事者研修用テキスト―訪問入浴介護の理論と実際』も刊行されている。そのため、現実には「訪問入浴介護サービス計画」の作成は普遍化している。

 一方、福祉用具レンタル事業についても「福祉用具レンタルサービス計画」が不可欠であると思っている。介護保険制度下で、住宅改修や福祉用具販売は一過的なサービスであるが、訪問入浴や福祉用具レンタルは、利用者の心身機能や介護者や住環境の変化により、変化する利用者のニーズに対応して、サービス内容を修正していくことが必要である。

 そこで、最近、全国福祉用具専門相談員協会が「福祉用具個別援助計画書」の様式を提示している。この計画書をベースに福祉用具専門相談員は計画の作成を積み重ね、専門性を高めていってほしいと思っている。

 福祉用具のレンタルは、販売とは異なり、常に利用者の変化を理解しつつ、利用者の変化に合わせて、レンタルする福祉用具も変化していくことになる。その意味では、福祉用具レンタルサービスは、他の介護サービス事業者と一緒で、モノではなくサービスを提供しているということである。そのため、モニタリングの業務が大切であり、利用者の状況に変化を把握していくことが重要である。当然、評価の基準としては、どの程度福祉用具専門相談員は利用者宅を訪問しているのかが、大きな要素となってくる。

 現実に、初回のサービス担当者会議には、福祉用具専門相談員が参加している割合が高く、チームケアの一員として認識されていると言える。次のステップとしては、他のスタッフが持ち寄る計画書を、福祉用具専門相談員も持ち寄れるようにしたいものである。その結果、福祉用具専門相談員も要介護者等を支える訪問介護員等と同等のチームメンバーになってほしいと思う。