ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

「在宅ケア新時代」の確立を(「日本在宅ケア学会誌」巻頭言)

2009年08月19日 | 論説等の原稿(既発表)
 日本在宅ケア学会の今後についての抱負を書いたが、この学会は、看護の皆さんが多く入会していただいているが、他の医学、リハビリ関係、介護、福祉の領域の皆さんに入会し、活躍していただきたいと願っている。また、もっと実践現場で働いている方々にご参加願いたいと思っている。そこで、学会誌の巻頭言を再掲しておく。

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「在宅ケア新時代」の確立を 

 今年度から2012年度のまでの3年間,当日本在宅ケア学会の第5期理事長を,第4期に続いてお引き受けすることになった.次の3年間に,日本の在宅ケアの研究・教育は何を目指し,そこから,どのような在宅ケアの実践を拡大・深化させていくことが必要であろうか,またそこから,日本の在宅ケアに関する研究・教育者と実務者が集う本学会およびその会員の担うべき使命について考えてみたい.

1.日本における在宅ケアの現状

 本学会は,介護保険制度の創設と期を一にしており,介護保険法が成立した1997年の1年前の1996年に誕生した.それは,介護保険制度は高齢者の在宅ケアを推進するという理念のもとで作られ,それを理論的に支え,在宅ケアを推進していこうという熱意ある仲間が,保健・医療・福祉に関わる様々な領域の方々に呼びかけ,学会を立ち上げたと言える.

 そして,本学会が創設され,13年の歳月が流れたが,在宅ケアの研究・実践は確かに進み,介護保険制度での,施設ケアに比較される在宅ケアに占める財源割合は,創設時は4割であったが,2008年度でみると6割弱にまで伸びてきている.同時に在宅生活をしている要介護者・要支援者数も,1,840人から2,637万人に増えてきている.このような表面的な成果はあるとしても,現実の在宅ケアには,様々な課題が横たわっていることも事実であり,学会としてはそれらの課題に対応した研究を一層推進し,在宅ケアを量的な観点からでなく,地域で住んでいる高齢者の生活の質という観点から,貢献している責務を負っている.

2.本学会に求められる研究課題
 
 具体的な研究課題としては,地域での医師と看護師の連携のあり方,看護と介護の機能的な役割分担,ケアマネジャーと医師・看護師・介護福祉士だけでなく,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,管理栄養士,薬剤師等専門職だけでなく,多様な専門職との連携方法のあり方,病院や老人保健施設とそこの退院者を円滑に地域で受け入れるべくサービス・デリバリー・システムの確立,さらには病院と診療所の病診連携のあり方といった基本的な問題をさらに究明し,あるべき方向を示していくことが急務となっている.

 同時に,こうした在宅ケアを担う専門職の確保と人材育成の課題が横たわっている.とりわけ,昨今介護職の離職と人材不足が緊急課題となっているが,こうした課題に対して,エビデンスに基づき,地域ケアを担う人材養成に対して提言をしていく役割を担っていかなければならない.これについては,制度面での待遇改善といった社会に向けての課題と,学校教育とその連続する継続教育についての課題,さらにはスーパービジョン体制といった職場環境にもメスをいれていく研究課題がある.

 さらに,地域で高齢者が生活するためには,介護保険制度のサービスは勿論であるが,在宅医療を進めていくサービスや高齢者の権利擁護に関する制度,また住宅サービスの充実が不可欠であるが,そうしたサービスに関する研究を一層推進し,個々のサービス内容の質的充実を図っていくとともに,それを支える財源拡大にも寄与できることが,本学会の役割である.これら制度・サービス面での課題を解明していくことに加えて,現実の在宅ケアの大きな担い手となっている家族にも照準を当て,家族介護者のあるべき方法に関する研究を深めていかなければならない.同時に,在宅ケアは海外では広くコミュニティ・ケアでもって総称されるが,近隣,NPO,ボランティアといった人々を含めたコミュニティのあり方についての研究課題を有している.

 在宅ケアは高齢者だけでなく,身体・知的・精神といった障害者(児)の課題でもある.おりしも,2006年に障害者自立支援法が成立したが,ここでは障害者の地域での自立生活を支援することを理念にしている.そのため,本学会も高齢者に加えて,障害者領域での在宅ケアに関する研究にも関心を拡げていくことが求められる.この場合の在宅ケアでは,医療・保健・福祉・介護・住宅といった領域だけでなく,就労・教育や社会参加といった領域が不可欠な要素になってくる.このような専門家を一層会員として迎え入れ,研究の幅を拡げていかなければならない時期にきている.

3.本学会の特徴と使命

 以上のような研究課題を総括すると,日本の在宅ケアは,在宅ケア利用者を増やしていく量の時代から,一人ひとりの利用者が質の高い生活を確立していく「在宅ケア新時代」を迎えている.これを実現するためには,本学会は,会員全員の努力でもって,「在宅ケア新時代」の牽引者としての役割を果たしていかなければならないと考えている.

 そのためには,本学会は自らが有している特徴を大いに活かし,「在宅ケア新時代」に向けて貢献していくことが大切である.その特徴の第一は,在宅ケアに関わり医学,看護学,保健学,理学療法,作業療法,栄養学等の医療系の方々と,社会福祉学や介護学といった福祉系の方々が参加し,交流することで,在宅ケアの水準を高めていく学際学会であることである.この特徴を活かし,これら以外の在宅ケアに関わる専門領域の方々,また現在会員割合が低い福祉系の専門職に参加を得て,学際的に深みと広がりのある研究集団になっていくことである.

 本学会の第二の特徴は,研究者と実務者を擁していることである.このことは,両者が学会を介して,在宅ケアに関する実践と理論の橋渡しをすることができることにある.この利点を活かし,実践現場と教育現場との両者が共同研究等を通して一層交流を深め,多くの在宅ケアに関するエビデンスを蓄積してことを願っています.そのため,現状では,研究者の割合が7割程度と少し高く,実務者の入会が最近は増加していますが,実践現場からの参加者を増やしていく必要があると考えています.

4.本学会の具体的な活動に向けて

 こうした学会の特徴を活かすために,一つは,実務者の会員数を増やしていく中で,在宅ケアの事例なり症例研究の雑誌の刊行ができないかと考えている.これが刊行できれば,学際的な在宅ケアの専門誌として,研究面だけでなく,日本の在宅ケアの実践・制度面にも大きく寄与できると考えている.

 二つめの提案は,本学会で明らかになったエビデンスを社会的に明らかにしていくことで,実践や政策の発展に寄与することである.実践の発展への寄与については,学会の社会貢献でもある公開講座を実務者や市民向けに開催していくことである.これについては,本学会はこうした活動に取り組んではいるが,十分ではなく,この充実を図り,広く在宅ケアに関わっている専門家や地域住民に対する啓発的・教育的機能を果たしていく必要がある.

 一方,研究成果を介護保険制度や医療保険制度に活かしていくために,看護学では看護系学会等社会保険連合が(社)日本看護協会のもとで組織され,活動を始めている.本学会もこの看護系学会等社会保険連合に参加しているが,学会の研究成果が体系的・円滑に研究と政策が繋がっていく仕組みを作りことに,本学会は積極的に関与していく必要があると認識している.そのため,福祉系においても,このような団体が作られことに関心を向け,積極的にこのような研究集団である学会と実務者集団である団体が一体となり,研究成果が政策にも影響していく時代を作っていかなければならないと思っている.

 以上のような活動を進めるために,今期から理事定数を4名増やし,16名とし,評議員も10名増やし,40名にした.理事や評議員の皆さんに加えて,学会の主役である会員の皆さんと一緒になり,日本在宅ケア学会が学問的にも社会的にも一層発展することに力を尽くしていきたいと思っている.


居宅介護支援事業者の「特定事業者加算Ⅱ」はどこがとるのか 報酬単価のアップが基本

2009年08月13日 | 論説等の原稿(既発表)
「シルバー産業新聞」に連載の「介護保険10年 ケアマネジメントいまとこれから 白澤教授の快刀乱麻」の第5回が掲載されたので、再掲します。

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第5回 居宅介護支援事業者の「特定事業者加算Ⅱ」はどこがとるのか 報酬単価のアップが基本

 今回の介護報酬改定の最も大きな特徴は、40数個の加算制度を創ったことである。居宅介護支援事業者についても、8つの加算がある。その内で経営に大きく影響し、事業者間の経営的な格差を生み出す「特定事業者加算Ⅰ」や「特定事業者加算Ⅱ」がある。後者の加算は今回の介護報酬改正で新たに創設されたものであり、一定の体制を整えたうえで、常勤・専従のケアマネジャー2名以上と主任介護支援専門員が配置されていることを要件にしている。

 この「特定事業者加算Ⅱ」は、従来の「特定事業者加算Ⅰ」はごく少数の事業所しかとれず、敷居を低くし、取りやすくしたものである。ただ、このⅡの加算がどの程度の事業者がとれるかと言えば、これもごく僅かに過ぎない。

 私事であるが、昨年度に大阪市の居宅介護支援事業者を対象に悉皆調査を行ったが、その結果、3人以上の常勤職員を雇用している事業者は、2割弱に過ぎず、ほとんどが零細事業者であることが分かった。そのため、「特定事業者加算Ⅰ」ほどではないとしても、現状では2割弱程度しか加算をとれないのではないかと推測していた。

 さらに、主任介護支援専門員研修会が始まり、特定事業者加算Ⅱを取る予定の事業者を優先して受講を認めることになっている。大阪府を例にすると、特定事業者加算取得での受講者数は約400人(前半)であり、大阪府にある約2740ヵ所の居宅介護支援事業者の内の、各事業者が1名のみを受講派遣していると仮定し、多く見積もっても2割弱程度しか「特定事業者加算Ⅱ」は取れない。

 このような結果をみるにつけ、今回の介護報酬は何を意味するのであろうか。規模の大きい事業者が必ずしも質の高いサービスを提供しているとは限らない。逆に言えば、独立型の一人ケアマネの事業者では、サービスの質とは言わないが、中立公正が担保されていることは確かであり、こうした事業所への加算の話はどこに行ったのであろうか。

 その意味では、居宅介護支援事業者の特定事業者加算は、ごく一部の規模の大きい事業者に限定して、介護報酬のパイを分配したことになる。さらに問題になることは、特定事業者加算がとれた場合でも、利用者負担には関係がなく、利用者からの評価を受けなくて済むことである。これは、他のサービス事業者での加算と根本的に異なることである。

 利用者に質の高いサービスを提供するという加算の根拠が十分でない場合には、介護報酬の基本単価を上げることを基本にすべきであるというのが、私の主張である。ましてや、居宅介護支援事業者はほぼ全てが赤字であり、経営面で根本的な底上げをしなければならないならない時期にあると認識している。

 今回の「特定事業者加算Ⅱ」を、介護報酬単価に戻してみると、まずは20%の要介護者について、300単位の「特定事業者加算Ⅱ」が付いたと仮定し、これを全要介護者に分配すれば、1事例60単位に相当する。この結果、現状の要介護1~2は1000単位から1060単位、要介護3~5は1300単位から1360単位となり、介護報酬単価は5%程度アップすることになる。もう一つ、150単位がついている「独居高齢者加算」や「認知症加算」が全事例の3割を占めていると仮定すれば、これを全ケースに配分すれば45単位となり、両者の加算を合わせると、介護報酬の基本単価を1割近いアップが図れたはずである。

 改定前の居宅介護支援事業者の収支差率は、-17~18%であり、ここで仮定した単価をアップしたところで、なお赤字は続くであろう。そのため、介護報酬単価を土俵に乗せて、黒字転換に向けて改定議論をしていくことが不可欠である。その意味では、今回の「特定事業者加算」は規模の大きい事業者に有利に働き、規模の小さい事業者に不利に働くことが鮮明になり、両者間で経営面での格差を生み出すことになってしまった。

「日本在宅ケア学会」理事長就任の挨拶文

2009年07月10日 | 論説等の原稿(既発表)
 「日本在宅ケア学会」の理事長に再任され、会員向けの「ニュースレターNo.2」での、挨拶文である。在宅ケアに関心のある研究者や実務者は是非会員になっていただき、学会発表や論文発表でもって、活躍していただいたいと思います。申し込みは、以下の通りです。1月23日~24日に聖路加看護大学で、第14回学術集会を開催します。

アドレス:http://jahhc.umin.jp/html/moushi.html

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 今年の3月14日の日本在宅ケア学会総会において,理事長に再任されました.これで,理事長として2期目に突入することになりますが,学会員の皆さんのご協力・ご支援をいただき,学会の発展に努めて参りたいと思っています.

 本学会は,介護保険制度創設に先駆けた1996年に創設され,今年で13年目を迎えます.この間,要援護者を地域で支えるコミュニティ・ケアをスローガンにして,在宅ケアへの社会の関心も高まり,約900名を擁する学会にまで順調に成長して参りました.学会の顔である学会誌についても,年に2号が刊行され,多くの投稿原稿を頂戴するようになった.ただ,日本の在宅ケアには多くの問題が山積しており,その課題解決に向けて,本学会の社会的な責任はきわめて大きいと言わねばなりません.それゆえ,当学会が直面している課題があることも事実です.

 本学会の特徴は,在宅ケアに関して,一つには研究者と実務者が交流を深めて多くの在宅ケアに関するエビデンスを蓄積してことにあります.もう一つは,在宅ケアに関わり医学,看護学,保健学,理学療法,作業療法,栄養学等の医療系の方々と,社会福祉学や介護学といった福祉系の方々が参加し,交流することで,在宅ケアの水準を高めていく学際学会ということです.

 ところが,前者の現状としては,研究者の割合が7割程度で高く,実務者の入会が最近は増加していますが,実務者の割合が低いのが現状です.今後の日本での在宅ケアを推進していく上では,実践現場からの参加者を増やしていく必要があります.後者の研究領域については,看護学の研究者・実務者が大多数を占め,とりわけ福祉系の研究者・実務者が少ない状況にあります.今後は看護学以外の研究領域からの研究者・実務者にも参加していただく方策が求められています.

 これらの課題の解決に向けて,今期より理事の定数を12名から16名に,評議員の定数を30名から40名に拡大させていただき,課題の解決に向けての基礎を作ることができました.今回選出された理事・評議員の皆さんと一緒になり,課題解決に向けて邁進して参りたいと思っています.

 一方,学会の財源基盤も安定してきており,実務者の会員が増えることができれば,事例・症例研究に関する雑誌の刊行も新たに企画していかなければならないと考えています.また,本学会の将来を担っていただくべく,若手の研究者・実務者の方に研究方法についての学習機会を作っていきたいと思っています.また,当学会の「倫理綱領」も今年できたことを受け,研究で倫理的な配慮をいかに進めていくのかについても一層検討していくことが求められています.さらに,学会としての社会的責任を果たしていくために,在宅ケアの従事する実践現場の皆さん向けの公開講座や,在宅ケアに関わっている家族等の社会に対する公開講座等,を推進していくことも重要となっています.
 
 以上のような活動を積極的に推進することで日本在宅ケア学会の発展に努めて参りたいと思いますので,是非とも会員の皆さんのご支援・ご鞭撻を頂きたいと願っています.

要介護認定制度は必要か

2009年07月09日 | 論説等の原稿(既発表)
 白澤教授のケアマネジメント快刀乱麻 第4回(シルバー産業新聞7月号)より再掲
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 4月から要介護認定に混乱が生じている。それは「個々の保険者間での2次判定の認定変更のバラツキをできる限り少なくする」ことを目的にして新たに導入された要介護認定項目に対して疑義が生じたからである。現実に、従来からの利用者については、新たな認定調査で要介護度が低く出た場合には、以前の認定でもよいとのことになっており、一方、新たに介護保険サービスの利用者になった場合は、新規の認定制度で確定してしまうことになっている。そのため、今年の4月を境に、以前からと以後の認定者では、ダブル・スタンダードの認定制度になってしまっている。

 これについては、厚生労働省内に設置された要介護認定の検証委員会で、4月以降の要介護認定結果について精査し、認定項目について議論されることに期待している。

 この要介護認定について、現在大きく二つの議論がある。第一は、個々の利用者に必要な介護の程度はどのような変数でもって測ることができるのかの議論である。この議論については、私は、単に利用者の身体機能状態項目だけで要介護度は測れず、「心理状態」の項目や「社会環境状態」の項目が必要不可欠であると主張してきた。詳しくは、私のブログ(http://blog.goo.ne.jp/sirasawamasakazu)を参考にして頂きたい。

 従来は、利用者の身体機能面や行動・心理症状でもって要介護の程度を捉える変数としていたが、新たな認定では、「心身の能力」、「障害や現象(行為)の有無」、「介助の方法」の3つの評価軸に分けた。結果的に、「介助の方法」が変数に入ってくることで、心身面だけでなく、介護者や住環境といった変数が関わることになり、新たな認定項目は理論的整合性を崩してしまったのでないのかと思っている。ただ、こうしたことは、今まで議論することを避けてきた、介護の必要な程度はどのような変数により決まるのかを議論するスタート台に着けたのではないかと考えている。

 私自身は、個々の利用者の要介護の程度なり時間は身体的な機能でもって決まるのではなく、心理的な状態や家族の介護力や住環境によって異なるものであり、主として身体的機能の調査項目でもって決定していること自体に、現在の認定項目は問題があると考えている。一方、介護保険では、家族の介護力を評価しないで、要介護度を認定することになっており、家族の介護力についてどのように位置づけ、要介護認定をしていくかについて、国民のコンセンサスが必要になってきている。
要介護認定についてのもう一つの議論は、要介護認定制度そのものが本来必要なのかどうかについてである。私も共同代表をお引き受けしている「介護保険を維持・発展させる1000万人の輪」が主催し、介護保険制度についての六党の国会議員による政策討論会が先般開かれたが、そこで、現在混迷している要介護認定制度について将来どうあるべきか、六党の国会議員に尋ねた。そこでは、ニュアンスの違いはあるが、当然、様々な条件を付加しての話であるが、ほとんどの政党が「要介護認定制度」は必要ないのではないかという意見であった。

 私自身も将来的にはそのような制度にもっていく必要があると考えていたが、今までは現実離れしたように思われるのでとの気持ちから、話すことがはばかれてきた。その意味では、多くの国会議員が私に代わって、発言してくれたことでほっとした。

 確かに、現在要介護認定には、在宅の要介護・支援者は要介護度によって決められている支給限度額の平均4割程度しかサービスを利用していない事実をもとに考えても、不要論がまかり通るであろう。同時に、現在要介護認定に関わる事務経費に年間400億円から500億円が使われており、さらに市町村に設置されたコンピューター関連費用を含めれば年間2000億円という推計もあり、これが利用者の直接サービスに回ることができれば、そのメリットは極めて大きい。

 ただし、要介護認定制度を廃止するためには、これにより、利用者が適正なサービスが利用できるようになるかどうかということである。このためには、二つのことが達成されることが条件である。ケアマネジャーの専門性が高まり、ある利用者に対してどのケアマネジャーが担当しても、ほぼ同じサービスが提供できる水準に到達させることである。同時に、中立公平にケアプランが作成できるような体制を作ることである。但し、後者については、決して公的機関がケアプラン機能を担うことではあるまい。現状の民間機関でそうした体制を作り上げる創意工夫が求められている。

見える「ソーシャルワーカー」を作る

2009年06月17日 | 論説等の原稿(既発表)
 関西社会福祉学会のニュースレター(2009年度 1号)を発行するので、巻頭言を依頼された。関西社会福祉学会は日本社会福祉学会の独立した要素をもった地域組織ですが、毎年、学会を行い、年に2回ニュースを出している。今回、次号の関西社会福祉学会のNLに掲載予定の原稿であるが、その発行前に載せさせていただくことの許可を頂いた。

 それは、早く「ソーシャルワーカーデー」が創られたことを知って欲しかったからである。

 国際ソーシャルワーカー連盟は、2008年は4月15日を、世界ソーシャルワークデーと決めています。日本では、新たに7月20日(海の日)に、新たに日本の「ソーシャルワーカーデー」を決め、準備をしていが、多くの人に参加していただきたい願っている。

 ソーシャルワーカーデー中央集会会場は全国町村会館(〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-35)で、7月20日午後1時受付です。無料ですから、関心のある方は是非ご参加下さい。お持ちしています。 

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 巻頭言     見える「ソーシャルワーカー」を作る

 「ソーシャルワーカー」という言葉を知っておられる日本人がどれほどいるであろうか。さらに、ソーシャルワーカーはどのような所で、どのような仕事をしているか、ご存じの日本人はほとんどいないのではないだろうか。こうした状態で、社会福祉士や精神保健福祉士といったソーシャルワーカーの社会的地位を高めていくことは到底無理である。

 1960年代の古くに、全米ソーシャルワーカー協会(NASW)はソーシャルワークの枠組を提示しているが、そこでは、①目的、②価値、③知識、④方法と並んで、⑤社会的承認をもって、ソーシャルワークが構成されるとしている。その意味では、ソーシャルワークの価値、知識、方法を習得し、ソーシャルワークの目標達成に向けて教育や実践を一層充実していくことも大切であるが、他方、国、都道府県、市町村、ソーシャルワーク実践機関・団体・組織、利用者、国民に対して働きかけ、ソーシャルワークの社会的承認を得ていくことが不可欠である。結果として、ソーシャルワーカーの採用や利用を増大していくことになり、ソーシャルワーカーに実力さえがあれば、社会的評価を高め、ひいては待遇の改善にもつながっていく。

 こうしたアクションが日本では弱かったのではないかという反省に立ち、最近は何とかソーシャルワークの承認を高めていく努力が始まってきている。この最も大きな目玉が、今年から毎年7月20日に実施していくことになった「ソーシャルワーカーデー」である。ここでは、社会福祉士や精神保健福祉士といったソーシャルワーカーについて、広く国民の理解を得ていくことを意図している。また、日本社会福祉士養成校協会は、昨年二度にわたり、朝日新聞の一面を使って、「社会福祉士が、変わる」「社会福祉士が、広がる」というタイトルで、社会福祉士の活動を紹介した。その時は、多くの読者から驚くほど高い反響を得た。そのため、今年も社養協では、各養成校にお願いして、新聞広告を出すことを計画している。

 これら以外に、各都道府県単位で、日本社会福祉士会、日本社会福祉士養成校協会、日本社会福祉教育学校連盟等の団体が一緒になり、都道府県や政令指定都市に対して、行政の社会福祉士に限定した採用や社会福祉士や精神保健福祉士によるスクールソーシャルワーカー採用を働きかけることを始めている。また、社養協では、各都道府県単位で、高校の進路指導教員と社会福祉系大学教員との意見交換の場を作れないか、模索中である。

 このようにアクションを起こすことで、社会に見える「ソーシャルワーカー」を作っていくことを、様々な対象に向けて、様々な方法を使って進めていかなければならない。

「地域の中で暮らす」ことを支えるケアマネジメント

2009年06月16日 | 論説等の原稿(既発表)
 コミュニティ・ソーシャルワーカーのネットワーク活動で有名な豊中市社会福祉協議会の勝部さんから依頼されて、社協からケマネジャーとの連携を求めた『ケアマネジャーと地域福祉活動の連携のためのガイドラインパート2』の刊行にあたって、ケアマネジャーへのメッセージを依頼された。その再掲である。

 ケアマネジャーが地域のインフォーマルな資源にも関心をもち、それらを利用者のニーズと結びつけていくだけでなく、開発していくことに関心をもって欲しいと願っている。

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 ケアマネジメントは、人々が地域で住み続けるために、または、施設や病院から地域に復帰していくために開発された方法です。そのため、後者であれば、病院や老人保健施設を退院や退所する場合に、病院や施設との連携が不可欠であり、今回の介護報酬改訂でも加算が付いた。

 一方、どのようなケアマネジメントであっても、人々が地域社会で生活する以上、地域で活用可能な様々なフォーマルなサービスだけでなく、家族、親戚、近隣、友人、ボランティア、民生・児童委員、保護司、教会、等と人々を結びつけることで、より質の高い在宅生活(QOL)を目指すことになる。ケアマネジャーは単に、介護保険制度で利用できる介護サービスと結びつけることではない。

 このような仕事をケアマネジャーが進めていくためには、人々が地域生活をしていく上で生じている、「困っており、解決したい方向や結果」(ニーズ)について、人々から聞き出し、一緒にその解決方法を考えていくことである。その時、公的なフォーマルサービスには多くの利用制限があり、利用できないことも多いが、地域社会は「オアシス」であり、ある意味社会資源の宝庫である。この「オアシス」に視点をあてることで、人々は質の高い生活が可能になるといえる。

 ただ、誰もが地域社会で生活できることが当たり前ではある(ノーマライゼーションの考え方)が、現実には在宅生活に限界が生じたり、劣悪な在宅生活を余儀なくさせられている人々が実際に数存在している。こうしたことから、ケアマネジャーには、フォーマルな公的サービスを充実するために関わったり、地域が「オアシス」となるよう、地域住民に働きかけていくことにも着目しなければならない。地域には、既存の組織や団体に加えて、新たな組織も出来てきており、子どもから高齢者まで、潜在的な力が潜んでおり、これらの力を引き出すことで、人々が安心して、かつ質の高い生活ができるよう目指さなければならない。これは、まさにそれぞれの「地域」がもっている独自の強さ(ストレングス)を、探し当てていく作業であるといえる。

 さらに、ここでの人々とは、介護保険でのサービス利用者である要介護者や要支援者のみを指すのではない。障害者、刑を終えて社会復帰した人、子育てに不安のある家庭、虐待のおそれがある家庭、多重債務で悩んでいる家庭等である。こうした人々やその家族は、まさに地域の中で暮らしており、それ故、地域の中で、生活が支えられ、暮らしていけるよう働きかけていくことが、ケアマネジャーには求められている。

 その意味では、ケアマネジャーは、個々の人々だけでなく、地域の様々な人々や組織・団体・施設と密接に関わる必要がある。
 

なぜ、ケアマネジメントには一割の自己負担がないのか

2009年06月05日 | 論説等の原稿(既発表)
 白澤教授のケアマネジメント快刀乱麻 第3回(シルバー産業新聞6月号)より再掲
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 ご存じのように、ケアマネジャーが実施する業務について、現在は利用者には自己負担がかからず、無料となっている。しかしながら、今回の社会保障審議会介護給付費分科会での介護報酬改定での議論においても、他のサービス同様に一割の自己負担を課すべきではないかといった意見もあった。自己負担をかける制度にするためには、介護保険法の改正が必要なため、介護報酬改定だけでは済まされず、今後に先伸ばしされることは分かっていたが、次期の制度改革が抜本的なものであるとされており、今後のテーマになっていくのではないかと予感する。そこで、先手を打って、私見を述べておきたい。
 
 結論から言うと、ケアマネジメントについては、要介護者等に自己負担をかけるべきではないというのが、私の考えである。
 
 ケアマネジメントは他の介護保険のサービスと根本的に異なることを理解しておく必要がある。他のサービスは要介護者等に直接サービスを提供するものであるが、ケアマネジャーのサービスは間接的なサービスであり、厚生労働省の以前の課長がケアマネジャーの仕事について面白い表現をしていた。ケアマネジャーは、利用者に対して「過不足なく」介護サービスを提供する専門家であると。確かに、言い得ていると思う。
 
 この表現に、ケアマネジャーの仕事の本質が潜んでいる。具体的には、要求が過小である要介護者には、サービスの活用を勧め、無理なく在宅生活ができるよう支援することになる。一方、過大な要求をする要介護者に対しては、サービスの利用をできる限り抑制するよう支援することになる。
 
 このような「過不足なく」サービスを提供することで、ケアマネジャーは介護保険制度そのものを維持させていく門番的な役割を果たしている。そのため、ケアマネジャーの仕事は公共性の高い仕事であると説明できる。このような仕事に、利用者からお金を取るのかということである。すなわち、ある要介護者には、サービスの利用を抑えながら、一方で自己負担を強いることができるであろうか。
 
 海外でも、ケアマネジャーからの利用者支援は基本的に無料である。ただ、アメリカで民間で行っているプライベート・プラクティスとしてのケアマネジメントではお金を取っているが、この場合には、公的な制度の抜け道を教えてくれるという。
 
 日本のケアマネジャーの仕事は、公共性が高いとすれば、本来であれば行政が実施すべき仕事であるともいえる。ただ、行政がこの仕事を引き受ければ、コストが高くなり、土曜日・日曜日は対応できず、9時から5時までの日中しか対応できず、さらには要介護者にとっては敷居の高い所になってしまう。こうしことがあるため、行政から民間に移して、同時に公共性を保持してもらおうとするものである。
 
 ただ、現状のケアマネジャーに対して、中立公正が保てておらず、公共性が堅持されていないとの批判があることも事実である。これは制度面や介護報酬がそうさせている側面があり、制度面での改善が必要である。一方、ケアマネジャーも自らの仕事が公共性の高いものであるとの自覚が必要である。さもなければ、利用者に自己負担させる意見に対して、明確に「ノー」と自身と責任をもって返答ができないであろう。逆に言えば、ケアマネジャーが中立公正に仕事をしていないならば、利用者の自己負担の議論が起こらざるを得ないことになり、利用者の自己負担一割導入もやむを得ないといえる。
 
 ケアマネジャーには、事情はともあれ、利用者の生活をしていく上でのニーズを明らかにし、それに基づき「過不足なく」サービスを律して提供していく、仕事をしていただきたいと願っている。

学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(5)

2008年11月13日 | 論説等の原稿(既発表)
5.あるべき社会福祉専門職像のイメージ
 以上のような幅広い養成教育を行っていくためには、膨大な時間を要し、必ずしも十分なことができないことは明白である。但し、こうした養成教育を推進していくためには、あるべき社会福祉専門職像を示し、そうした人材をいかに養成していくかの具体化を示すべきである。

 創設時に社会福祉士制度は、社会人が一般養成施設に入り、国家資格を取得していくことを基本に作られ、社会福祉領域で働いていたかどうかは別にして、社会人が社会福祉士国家資格を取得していくことをモデルにしてきた。そのため、大学を卒業して即社会福祉士になることは亜流として位置づけられてきた。そこには一定の成熟した社会人が専門教育を受けて、社会福祉士という専門職になるという専門職像があった。

 しかしながら、本質的に大学教育を介して社会福祉士を育成すること、さらには現実的に大多数の国家試験受験者が大学の新卒者であるという事実からも、大学を卒業し社会福祉士として働く人の像をモデル化し、そこにどのような養成教育を実施すべきかを考えるべきである。

6.社会福祉専門職確立に向けての戦略
 こうした大学を起点にした社会福祉専門職養成教育を考えると、単に大学教育で終始するのではなく、大学院での専門職教育や継続教育によって賄わなければならない部分も多い。しかしながら、大学院専門職教育を推進するには、一定の社会的待遇と職場確保が不可欠である、現時点では大学院専門職教育に大きくシフトすることには無理があるといえる。

 ここでは、結論として、図4のように社会福祉専門職教育を、「社会人としての基礎知識」「専門職としての基礎知識」「ジェネリックな社会福祉専門職としての価値・知識・技術」「スペシフィックな社会福祉専門職としての価値・知識・技術」、さらには「マネジャーとしての価値・知識・技術」の5つの社会福祉専門職養成教育を連動させることで、社会的に信用され、かつ実践応力のある人材を養成できるかである。さらに、最も右にある「スペシフィックな専門職としての価値・知識・技術」については、個々の大学の特徴を発揮することで対応したり、社会福祉系大学での単位互換でもって対応していくことが考えられる。

学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(4)

2008年11月12日 | 論説等の原稿(既発表)
4.専門教育の課題
 一方、専門教育の充実も不可欠である。ここでは、基本となる専門職養成のジェネラリスト教育の確立と多様な領域で高い専門性を有したスペシャリスト教育への拡大の二方向が基本となる。社会福祉士養成はジェネラリスト教育であるが、この教育については新「社会福祉士養成課程」により、一定実践能力のある人材づくりに着手した。ただ、国際的に比較して実習教育は不十分であり、未だ実習教育の量的充実は残された課題である。
 
 他方、国際ソーシャルワーカー協会(IFSW)と国際ソーシャルワーク教育連盟(IASSW)が合同で、2004年にGlobal Standards for the Education and Training of the Social Work Professionを作成し、ソーシャルワーカー養成でのグローバルスタンダードを作成した。今回の新カリキュラムなりそのシラバスでは、この基準を当然満たすべきである。具体的には、①大学の目的なり使命の明示、②課程の目的とその成果、③実習を含む課程のカリキュラム、④コアカリキュラム(ソーシャルワークの分野、ソーシャルワーカーの分野、ソーシャルワークの方法、ソーシャルワークの枠組)、⑤ソーシャルワーク教職員、⑥ソーシャルワーク学生、⑦機構、管理、統制および資源、⑧文化的・人種的多様性、⑨ソーシャルワークの価値と倫理的行動綱領について、基準を遵守した教育をしていくことになる。

 さらにソーシャルワーク領域でも国際化が進む中で、国家資格がある日本、韓国、さらには中国との間においても、国家資格の互換性がなされていない。さらには、認証制度であるアメリカやイギリスの認証ソーシャルワーカーとの互換性は当然無く、国際化に中でこれらの互換性を作り出していくためには、一定の共通した科目履修や実習を整え、国際的な資格制度を指向していかなければならない。

 一方、スぺシャリスト教育の必要性が社会的に生じてきている。専門性の高い社会福祉士等が求められる情況が司法、学校、医療・保健、施設領域で生じている。特に、司法領域では出所者の社会復帰、学校領域では生徒やその家族に対する支援で、社会福祉士に対する期待が高まりつつある。それに応える教育としてのスペシャリスト教育が求められている。例えば、他領域では、スクール・カウンセラーが大学院卒の専門性が強調される中で、そうした専門性とごして仕事をしていくことが迫られている。「ソーシャルワーカーの基本は教えたから、後は就職先で教えてもらいなさい」では通用しない状況が起こっている。

 そのため、大学教育においても、単にジェネラリスト教育では社会的に通用しない時代を迎えている。そのため、可能な限り学生が卒業して就職する職場で適応するだけでなく、その領域での一定の知識と技術を備えた人材を輩出していくことが求められているといえる。



学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(3)

2008年11月11日 | 論説等の原稿(既発表)
3.基礎教育と社会福祉士の基礎科目の関係での課題
 社会福祉士養成カリキュラムでの基礎科目とされるものは、旧カリキュラムの場合は「心理学」「社会学」「法学」「医学一般」であったが、新カリキュラムでは「人の構造と機能および疾病」「心理学理論と心理的支援」「社会理論と社会システム」「現代社会と福祉」「社会調査の基礎」となり、社会福祉士受験資格の基礎科目は、より社会福祉士が実践する上で必要な知識に収斂した科目名なりシラバス内容に変更された。

 このことは、確かにメリットとデメリットがある。メリットとしては、よい専門性と関連性の深い教育となり、社会福祉専門職教育の専門性を高めることに役立つ。一方、デメリットとして、広く人材を育てる側面が弱くなったことも確かである。

 これについての見解は、社会福祉士資格試験に関わる科目としては、社会福祉士の実践に近い領域での知識の習得であり、基本的な知識については、個々の大学の特色を活かしながら、独自の教育をしていくことが基本方針である。そのため、個々の大学で独自の基礎教育が求められる。それは、日本学術会議が言う「社会思想・社会哲学」「社会史」「社会学」「経済学」「経営学」「政治学」などの社会科学、「生命倫理」「人権思想」「文化人類学」などの人文科学、「社会計画論」「社会運動論」「社会起業論」「福祉経営学」、さらにはスピリチュアリティやホスピスなど現代社会が抱える人間科学的な内容やユニバーサルデザインなど行動科学であろうか。こうした科目を単に羅列するのではなく、そうした基礎として、どのような社会福祉専門職像を築いていくかのコンセンサスが求められ、そこから基礎教育の内容が明確になってくる。

 この具体的な展開は、一般教育科目や一・二回生等のゼミナールで確保することになるが、ここでは、この一般教育科目の位置づけが単に社会人になるための必要な素養と、さらに社会福祉専門職養成に求められる素養は全て重なるわけではない。但し、前者を目的とする素養についても、かっての教養教育という視点が弱くなり、今回、日本学術会議でも「教養教育のあり方」をテーマにして提案を準備している。後者については、旧カリキュラムにおいては、基礎教育科目は多くの大学では一般教育科目で出来る限り賄ってきたのが実情であるが、今回の新カリキュラムの名称通りの教育を実施するとなると、どのような専門職像を捉え、そのために一般教育科目の位置づけを明らかにし、具体的に必要な科目の設定が求められることになる。

 ここで最も重要な社会福祉専門職像については、今後の議論であり、社会福祉の実務者と研究者との総意で創り上げていかなければならない。


学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(2)

2008年11月10日 | 論説等の原稿(既発表)
2. 社会福祉専門職としての養成の課題
 学部段階から社会福祉専門職業人を養成していくためには、基礎教育と専門教育に分かれ、それら両方のウイングに教育の幅を広げていくことが課題となる。日本学術会議の「近未来の社会福祉教育のあり方について―ソーシャルワーク専門職資格の再編成に向けて―」においても、基礎教育として、以下のような提案を行っている。

「社会福祉士養成教育に偏りすぎるきらいのある福祉系大学教育の是正には、社会思想・社会哲学・社会史、社会学、経済学、経営学、政治学などの社会科学や、生命倫理、人権思想、文化人類学などの人文科学等、幅広いカリキュラムで編成できる教育体制の構築が求められる。社会福祉制度の多元化に対応するためには社会計画論、社会運動論、社会起業論、福祉経営学など研究・教育内容を広げる必要があり、スピリチュアリティやホスピスなど現代社会が抱える人間科学的な内容やユニバーサルデザインなど行動科学的な内容にもリンクしたカリキュラム改革も必要とされる」

 一方、社会からのニーズに応えられる人材の育成のためには、現状の実践能力を有した人材が輩出できてこなかったという反省からは、専門教育へのウイングを広げていく必要がある。同じ提案の中では、以下のように言っている。

 「幅広く学際的に活躍するには修得すべき教育内容のウイングを広げる必要はあるが、学際的実践チームの一員として認められるには、社会福祉学およびソーシャルワーク実践の固有性をあわせて追究しなければ適切なポジションは得られない」

 以上の結果、基礎的な教育と専門職教育の充実の両者がバランスよく教育されることが必要となっている。しかしながら、限られた時間数の大学教育の中でこれらの両面を充実していくことは至難の業と言える。そのため、一般教育科目でのリベラルアーツ等で工夫を凝らすことが求められる。一方、学部内での専門職教育については、ジェネリックな専門職教育とスペシフィックな教育をいかに整理し、社会のニーズに応えられる人材が輩出していくかが問われることになる。


学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について(1)

2008年11月08日 | 論説等の原稿(既発表)
 昨日開催された「日本社会福祉教育学会」のシンポジウムで、「学部レベルでの社会福祉専門職養成教育における達成課題について」というテーマで報告をした。そこで、そこでの内容を再掲する。

問題提起
 日本では社会福祉教育は行われているが、社会福祉専門職教育が必ずしも十分に行われているわけではないのではないか。なぜならば、専門職教育であれば、卒業生は一般的に専門性を活かした職場に就職していくことになるが、決してそうした状態になっていない。また、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格を出しているが、合格者が低いことでも、教員・学生の両者ともに、医師や看護職のような、この資格がなければ仕事ができないという真剣さや厳しさが欠けている。そのため、社会福祉教育を超えた社会福祉専門職教育への舵を切っていくことが必要不可欠と考える。但し、この専門職養成教育は、単に知識や技術を身につけさせるだけでなく、ひとりの人間として社会で生活していく上で必要な素養を身につけた上での専門職養成教育を目指すべきである。

1. 社会福祉教育の現状
 日本の社会福祉教育の現状をみると、情況はこの20年間で大きく変わった。社会福祉士の国家資格制度発足以降20年が経過したが、この間社会福祉士を養成する大学は急増した。国家資格制度発足前の昭和61年には、日本社会事業学校連盟への加盟校数は僅か48校に過ぎなかったが、平成20年9月現在の日本社会福祉士養成校協会の会員数は大学が190校、大学院1校、短大・専修学校が47校、一般養成施設が38校、合計276校になっている。

 こうした急激に増大してきたため、社会福祉士を養成する大学は、大きく二分されているといえる。国家資格ができる前から社会福祉教育を実施してきた大学は、リベラルアーツを基礎とした社会福祉を強調し、文学部や社会学部系に位置づけられる傾向が強く、アドミッションポリシーも必ずしも社会福祉士を目指す学生を集めているのではない。一方、国家資格ができて急増してきた新設大学は、当初から専門職業人教育を目的にし、保健・看護やPT・OTといった医療系の学部・学科と並立して新設される傾向があり、アドミッションポリシーは社会福祉士を取得させ、専門職として社会に送り出すような学生を募集することになっている。もう一方、社会福祉士は社会からのニーズもそれなりに高かったことと、教員定数等容易に設置可能なため、多くの他の既存学部が学部・学科名を変更し、社会福祉士資格取得を目的にする学部・学科に移行してきた。

 社会福祉系学部・学科はこのように多様な出自をもっているが、今回のカリキュラムの変更や実習・演習の充実、さらには、数年前から始まった社会福祉士合格率の公表以降、多くの大学は社会福祉専門職教育の方向に舵は切られ始めたと考えている。


社会福祉領域での教育の目指すべき方向(下)

2008年11月04日 | 論説等の原稿(既発表)
3 「ソーシャルワーカー養成教育」と「社会福祉教育」の関係
 第2の問題 は、「ソーシャルワーカー養成教育」と「社会福祉教育」との関係はいかにあるのかである。「両者は一緒のことなのか」、「後者が前者を包摂したより広い教育なのか」、あるいは「後者は前者の一部を含む別個なものなのか」である。ほとんどの社会福祉の研究者や教育者は、このような質問に対して一瞬返事に窮するのではないだろうか。
 
 その原因は「社会福祉教育」の内容の曖昧さにある。ソーシャルワーカー養成教育と比較して、社会福祉教育を狭く捉える場合には、これを教養教育的なものとして認識していることになる。また、ソーシャルワークを社会福祉そのものとして捉える場合もある。一般的には、社会福祉教育の方を広く捉えることが一般的であり、ここでは、そうした視点から言及してみる。そのため、「社会福祉教育」を仮に社会福祉学の理論体系にもとづいて学生を教育することとしておく。

 社会福祉学の理論体系でのソーシャルワークの位置づけについては、歴史的には大いに議論されてきたが、必ずしも決着がついているわけではない。私見ではあるが、社会福祉学とソーシャルワークとは必ずしも同一ではないが、社会福祉学は確かにソーシャルワーク的視点を中核にしたものであるが、利用者を支えることになる資源論に関する内容も包含されている。逆に言えば、ソーシャルワーカー養成教育では十分でない資源論教育を、社会福祉教育によって十分補えると考えている。そのため、「社会福祉教育」がカバーする範囲を、ソーシャルワークを中心にした科目に加えてヒューマン・サービス(human services)なり社会福祉政策(social welfare policy)を含めた範囲とすることが妥当であるといえる。具体的に、社会福祉系の大学では、「医療保障論」「高齢者政策論」といった科目が追加的に実施されている。

 しかしながら、現実には、海外でも、例えば、イギリスではソーシャルワーク教育とソーシャル・アドミニストレーション教育を分離して実施しており、アメリカは両者を一体的に教育している大学とそうでない大学に分かれている。韓国や中国では、社会保障論を中心とした教育とソーシャルワークを中心とした教育が別個の教育体系のもとでなされており、そのことが体系的な教育の歪みになっているとの議論もある。

4 社会福祉領域での国際性のあるコア・カリキュラムの確立に向けて
 以上のような社会福祉領域での教育内容についての議論を急ぐのには、それなりの理由がある。文部科学省中央教育審議会大学分科会が『学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)』(平成20年3月25日)を刊行し、その中で国際的に通用する分野別のコア・カリキュラムを作っていくことが提案されている。この報告を受けて、日本学術会議は大学教育の分野別質保証の在り方に関する審議依頼を受けて、審議が始まっている。今後の大学教育は、社会福祉系学部・学科だけでなく、全ての分野において学習成果や到達目標の設定や、コア・カリキュラムの策定に進んでいくものと考えられる。

 こうした際に、社会福祉系の学部・学科では、必要となるコア・カリキュラムについて一定のコンセンサスが求められており、同時にこうしたことを支える理論的整合性が求められる。そこには、優秀な人材を輩出するために、社会福祉学を中核科目としたコア・カリキュラムの確定が急がれる。その際には、海外の動向だけでなく、2004年に国際ソーシャルワーカー協会(IFSW)と国際ソーシャルワーク教育連盟(IASSW)が合同で作成したGlobal Standards for the Education and Training of the Social Work Professionでのソーャルワーカー養成でのグローバルスタンダードは1つの基準となろう。この具体的に基準は、①大学の目的なり使命の明示、②課程の目的とその成果、③実習を含む課程のカリキュラム、④コア・カリキュラム(ソーシャルワークの分野、ソーシャルワーカーの分野、ソーシャルワークの方法、ソーシャルワークの枠組)、⑤ソーシャルワーク教職員、⑥ソーシャルワーク学生、⑦機構、管理、統制および資源、⑧文化的・人種的多様性、⑨ソーシャルワークの価値と倫理的行動綱領について基準を遵守した教育、としている。

 さらに社会福祉領域でも国際化が進む中で、国家試験がある日本、韓国、中国との間においてさえも、資格の互換性が議論されていない。さらには、認証制度(アクレデーション)であるアメリカやイギリスの認証ソーシャルワーカーとの互換性も当然無く、国際化に中でこれらの互換性を作り出していくためには、上記のような国際的な一定の基準でもって共通した科目履修や実習を整え、国際的な資格制度を指向していかなければならない。

5 まとめ
 以上のような問題提起は、ソーシャルワーカー育成を一体的なものとすることであり、ソーシャルワーカー全体としてのアイデンティティの確立を教育の側から目指すことであり、それに寄与する一つの個人的な意見である。教育、就労、司法領域等の社会福祉六法以外の領域でもソーシャルワーカーに対する期待が高まりつつあり、これに応えていくためには、社会福祉士養成教育の見直しを契機に、社会福祉領域の教育全体での見直しをしていく好機にある。この絶好の機会を生かすタイミングを逃がせば、また「空白の20 年」を生み出すことになるのではないかと危惧する。また、これらの改革は、外からの力ではなく、大学等の自らの力で創造していくものであることの自覚がなければ、この改革は進まないであろう。(完)

社会福祉領域での教育の目指すべき方向(上)

2008年11月01日 | 論説等の原稿(既発表)
 日本学術会議が編集協力している『学術の動向』から原稿の依頼を受け執筆した。タイトルは「社会福祉領域での教育の目指すべき方向」ということであり、社会学コンソーシアムを立ち上げるキックオフ・シンポジウムで報告した内容を文章化したものである。そこで、今後の社会福祉教育の方向についての私の思いを、2回に分けて再掲することにする。


1 はじめに
 昨年11月に「社会福祉士及び介護福祉士法」が20年ぶりに改正され、国家資格である社会福祉士教育内容も大幅に改革された。この改革を進める過程で、現状の社会福祉領域で行っている教育内容が3種類に分かれることが分かった。それらは、「社会福祉士養成教育」「ソーシャルワーカー養成教育」「社会福祉教育」である。今回の改正は、当然「社会福祉士養成教育」についてであり、実践能力のある社会福祉士を養成していくことが改革の主題であった。これについては、現在各社会福祉系大学でカリキュラムや演習・実習の見直しに向けた作業が行われており、「産みの苦しみ」の時期にある。この苦しみこそが、優秀な人材を輩出することで、いつかは必ず報われるものと信じている。
 
 この「社会福祉士養成教育」は、残りの「ソーシャルワーカー養成教育」や「社会福祉教育」と一致するわけではない。この小稿では、これら3つの教育の違いや関係を明らかにすることから、今後の目指すべき社会福祉領域での教育内容について検討してみる。

2 「社会福祉士養成教育」と「ソーシャルワーカー養成教育」の関係
 まず第1に、「社会福祉士養成教育」と「ソーシャルワーカー養成教育」の関係はいかにあるのかについて見てみる。「社会福祉士養成教育」は厚生労働省所管の国家資格である社会福祉士の養成を目的にした教育てあり、大学には一定のカリキュラム内容や実習・演習に関わる規定がある。こうした要件を整えた大学等で定められた科目を学生が履修すれば、社会福祉士国家試験の受験資格が得られる。ただ、このようにして養成される社会福祉士の養成教育は、ソーシャルワーカー養成の中核ではあるが、全てではない。社会福祉士養成においては、基本となるジェネリックなソーシャルワーカーの養成を目指すものであり、そのような教育のみでは、専門特化したスペシフィックな専門性を十分に得ることができない。そのため、「ソーシャルワーカー養成教育」は、ジェネリックな側面に追加した、スペシフィックな領域でのソーシャルワーカー養成教育を行うことである。
 
 この「ソーシャルワーカー養成教育」は、教育分野、司法分野、労働、保健医療、社会福祉施設等の分野で求められる専門特化したソーシャルワーカーを養成することである。現実に、各大学ではこうしたスペシフィックな人材を養成すべく、社会福祉士受験資格に必要な科目に加えて、「スクール・ソーシャルワーク論」、「医療ソーシャルワーク論」、「司法ソーシャルワーク論」、「ケアマネジメント論」等を追加的に科目設定し、実習時間・領域を広げる努力をすることで、ソーシャルワーカー養成教育を行っているのが現状である。特に、ソーシャルワーカー養成教育が求められる背景には、従来は職域としてこなかった教育や司法等の分野で、専門性の高いソーシャルワーカーが求められていることが挙げられる。

 以上の結果、社会福祉士養成教育を包括してソーシャルワーカー養成教育があり、ジェネリックを基礎にしたスペシフィックな養成教育の充実が社会的にも求められている。こうした両者の連続する教育は大学教育に収まりきれない部分が多く、大学院での専門職教育として位置づけられなければならない内容も含まれることになる。同時に、大学院教育と合わせて、職能団体等による生涯教育でもって養成していく部分もある。そのため、ここでは、「社会福祉士養成教育」の連続性のもとで「ソーシャルワーカー養成教育」が位置づけ、学部教育でどこ程度「ソーシャルワーカー養成教育」を取り入れるかが課題となる。

 ソーシャルワーカーの教育・養成を充実するために、日本では(社)日本社会福祉士養成校協会と(社)日本社会福祉教育学校連盟の2団体があるが、「社会福祉士養成教育」は前者が担当し、「ソーシャルワーカー養成教育」は幅広い教育であるため、後者が担当するといった棲み分けのもと、別個に活動してきた。そのため、例えば、(社)日本社会福祉教育学校連盟が大学院の専門職カリキュラムを検討する場合には、必ずしも社会福祉士養成教育を土台にした検討ではなかった。一方、現実の大学では、必ずしも社会福祉士養成教育のカリキュラムに終始しているわけではなく、各大学がリベラルアーツを含め独自のソーシャルワーカー養成教育を行ってきているが、(社)日本社会福祉士養成校協会は社会福祉士養成の視点のみから大学を捉えがちであったとの反省がある。こうした現実を考えると、両団体が共同で、「社会福祉士養成教育」と「ソーシャルワーカー養成教育」の連続した教育の体系化を図っていかなければならない。(続)


「更生保護でのケアマネジメント」(2)

2008年09月24日 | 論説等の原稿(既発表)
保護観察対象者へのケアマネジメント
 保護観察対象者が地域での生活を行う上では、多くの生活ニーズを満たすことが求められる。それらのニーズは個々の保護観察対象者によって異なることがあるが、主に以下のようなことが必要である。

①経済的な安定を得ること
②心身の健康を得ること
③就労や学習機会を得ること
①家族や地域での安心した生活を得ること
⑤居住の場を得ること
⑥文化や娯楽の機会を得ること

 これらのニーズは一例であり、保護観察対象者により個別的であり、人によっては親戚との関係で悩んでいたり、友人との新たな関係づくりに苦慮している場合もあろう。

 こうしたことが満たされないで困っており、ニーズを有している保護観察対象者に対して、それぞれのニーズについて公的なサービスや地域の支援を得られるよう結びつけていくことである。ここで活用されるサービスや支援を社会資源と呼んでいる。

 社会資源は、制度的な各種サービスと、制度となっていない地域での支援に分けられる。前者には、経済面での年金や生活保護の制度、医療面での医療保険制度、さらには教育や就労支援でのハローワーク、居住面での公営住宅、介護や家事面での福祉サービス等、多様な社会資源がある。

 他方、保護観察対象者に直接かかわるインフォーマルな社会資源としては、家族・親戚や友人、近隣といった者に加えて、保護観察対象者に特化した資源ともいえるボランティアとして活動されている保護司や職場を提供してくれる協力雇用主等がいる。さらに、保護観察対象者に直接かかわることはそう多くないが、そうした人々が地域で安心して生活できる基盤づくりを行っているボランティアとして、更生保護女性会やBBS会の活動がある。

 以上のような各種の社会資源に結びつけることで、保護観察対象者の生活課題を解決し、安心した地域生活を支えることになる。

 ここでは、具体的な仮想ケアマネジメント事例を示すことで、多くのネットワークでいかに地域生活を支援するかを説明してみる。

 Aさん(22歳)は仮釈放で保護観察となったが、保護観察官との相談の結果、①親家族が受け容れてくれるかどうか不安であった。さらには、②以前勤めていた工務店で再度雇用して欲しいという希望をもっていた。同時に、③今後の生活での不安に対して、必要なときに誰かに相談にのって欲しいとの希望を持っていた。

 そこで、①については、仮釈放前に家族との調整を行い、住居を得た。②については、工務店社長と調整したが不景気でダメとなり、協力雇用主であるB工務店に就職することとなった。③については、担当の保護司が定期的あるいは随時に相談機会をもつことになった。この結果、Aさんは、保護観察官、家族、B工務店、保護司といったネットワークの下で、新しい人生を再スタートすることができた。

まとめ
 ケアマネジメントを実施していくためには、保護観察対象者と保護観察官や保護司、あるいは保護観察所職員との信頼関係を作っていくことが必要である。そのため、ケアマネジャーになる者は、保護観察対象者と一緒になり、「何とか安心して地域で生活したい」という願いを共有し、相手の思いに耳を傾け、受容していく姿勢が求められる。さらには、生活課題についても、また利用する社会資源についても、保護観察対象者自身の自己決定の下で進めていくことが原則である。同時に、こうしたニーズを理解するためには、保護観察対象者との時間をかけた話合いが必要である。

 こうしたケアマネジメントを可能にしていくためには、保護観察官や保護司を中心にした地域での様々な社会資源との常日ごろからの連携が求められる。

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 いかがであろうか。社会福祉士が雇用されることで、このようなことが常態化することを強く期待したい。