ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

社会福祉士資格制度の「特殊性」

2008年05月06日 | 社会福祉士
 昨日も朝日新聞の一面広告を出したい理由について書いたが、なぜこのような社会に向けての活動が必要なのかを、社会福祉士資格制度の「特殊性」という視点から、今日は述べてみたい。

 社会福祉士という国家資格は厚生労働省所管の資格であるが、他の厚生労働省所管の資格とは趣を異にする部分がある。医師や看護師といった資格は、ほとんどが厚生労働省所管の職場である病院や医院で働くことになる。法的には、厚生労働省所管の医療保険や介護保険といった中で、専門職として位置づけられ、診療報酬や介護報酬といったことがメインで、その食いぶちを得ているといっても言い過ぎではない。

 ところが、社会福祉士も、確かに厚生労働省所管内の制度の中に定着していくことが必要であることも事実である。例えば、福祉事務所や児童相談所での社会福祉士比率の驚くべき低さや、社会福祉施設での相談職での社会福祉士比率の低さ、病院での社会福祉士配置の弱さがあることも確かであり、ここでの普及をいかに図っていくかが優先課題であるが、同時に解決までに時間のかかる課題であるようにも思える。

 ただ、社会福祉士は他の専門職とは異なり、自らがマイナーな位置となる様々な職域で働くことが可能であり、それが開花しつつある。例えば、文部科学省であれば、小学校・中学校や教育委員会、法務省であれば、刑務所や保護観察官、家庭裁判所の調査官、厚生労働省でも労働部分では、職業安定所での就労支援相談員といったことが現実では考えられ、その期待も大きい。同時に、そうした職場で実際に働いている場合には、社会福祉士に対して高い評価を得ている。国土交通省との関係では、古くはオクタビア ヒルがイギリスのスラムの人への支援をするソーシャルワーカーについて言及したことがあるが、そうした職域にだって、少しは可能性がある。

 そのため、厚生労働省所管を超えて活動の道を開いていくとすれば、(社)日本社会福祉士会といった職能団体や、(社)日本社会福祉士養成校協会といった養成団体が自ら先頭を切って職域の開拓を果敢に挑戦していくことが不可欠である。厚生労働省は、省外のことであり、支援しようにも、支援しきれない側面が強い。これが他の職能団体と大きく異なることを自覚しておく必要がある。医師、看護師、介護福祉士、PT、OT、ST、管理栄養士、すべてしかりである。

 さらには、医師や看護師であっても、厚生労働省という護衛船団のもとで、その社会的地位が守られているわけではない。自らの専門性を主張し、自らが職域を広げ、社会的地位を得るために、交渉もし、主張もし、自らの研究と養成教育の実績をもとに、社会的地位を勝ち取ってきたのである。社会福祉士については、それが厚生労働省内だけに留まるのでなく、さらに他の省庁にまで及んで活用するという特殊性と、それ故に厖大なエネルギーが求められることになる。

 このことは、社養協の会長になって初めて分かったことであり、他の人々からはなかなかご理解を得られないが、社会福祉士の社会的地位を高めていくためには、並々ならぬ精進が必要であり、「関係者がスクラムを組んで」進んでいくことが、これを成し得る秘訣のように思える。この度の新聞の一面広告も、関係者がスクラムを組んでの取組の一つであると考える。ご協力いただいた会員校の皆さん、何度も申し上げますが、本当に有り難うございました。