南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

劉翔(リュウ・シャン)はペガサスだったのだろうか

2008-08-21 00:22:23 | オリンピック
ギリシャ神話に出てくるペガサスは翼のはえた馬でした。それに
乗ったペレロポンは、奇跡的に難敵を破り、どんどん増長して
いきます。そして、彼はとうとうペガサスに乗って天に昇ろうと
したため、ゼウスの怒りを買い、ゼウスは一匹の虻を放つのです。
その虻に刺されたペガサスは、驚いて、ペレロポンを振るい落と
し、自らはそのまま天に昇って星座(ペガスス座)となったと
いう話です。

今回の北京オリンピックの110メートルハードルの中国の国民的
英雄であった劉翔(リュウ・シャン)の名前を見ると、ついつい
天馬ペガサスを想像してしまいます。110メートルハードルで
ハードルを超える彼の姿は、走っているというよりも、確かに
空を飛んでいるという雰囲気があります。

1983年7月13日生まれの彼は、2004年のアテネオリンピックの
110メートルハードルで、12秒91の世界タイ記録で優勝し、金
メダルを獲得。その若者は一気に中国の国民的英雄となっていき
ます。2006年7月11日、ローザンヌ国際において、彼は12秒88
の世界新記録を達成します。

劉翔は日本ではそれほど知られていませんでしたが、中国では
時代の寵児でした。単にスポーツ選手というだけでなく、
アイドルであり、ヒーローであり、スーパースターでした。
去年、中国でタレントの人気度を調べた時、彼は中国であらゆる
年代でトップクラスの人気でした。ジャッキー・チェンや、アン
ディ・ラウ、バスケットボールのヤオミンと並ぶスーパースター
の彼は、必然的にCM界の人気スターにもなっていきます。

コカコーラや、VISAカード、Nikeなどの巨額予算を持つ広告主
が劉翔を起用していきます。広告収入などを含む彼の年収は
12億円とも24億円とも言われています。えらいアバウトな数字
ですが、いずれにしても天文学的な数字で私ら庶民には想像も
つきません。昨年はキャデラックとも契約をしました。その
契約金は日本円で2億4千万円だったということです。
さらにキャデラックの車ももらっていたようです。こうなると
スポーツ選手というよりも、CMキング。十数社の超王手企業
と契約しているので、もはや売れっ子タレント。ここまでくる
と本業の110メートルハードルの練習にも身が入らなかったん
じゃないかと心配してしまいます。

彼の出演していたコマーシャルを見ても、ちゃんとした質の高い
ものばかり。例えば、ナイキのコマーシャル。

http://jp.youtube.com/watch?v=Lp2ZnVPwaMw

「私は劉翔。あなたは誰?」というコピーがかっこいいです。

もうひとつナイキのCM。映像的にもかなりこっています。

http://jp.youtube.com/watch?v=FExsYO6cl-E

最後のハードルを越えるところの特撮、すごいですね。

そしてこちらはVISAカード。

http://jp.youtube.com/watch?v=7icytpilbhs

カンガルーを追いかけて走っていく劉翔。これってけっこう
大変な撮影ですよ。

そしてコカコーラ。

http://jp.youtube.com/watch?v=5Ith7KvAESI

ここまでの演技はもはや俳優レベル。あなたの本業は何?と聞き
たくなってしまいます。

ちょっとYouTubeで検索してみると、彼が登場しているCMが
ざくざくと出てきます。これだけの売れっ子だった彼がレースの
直前で棄権したのですから、バッシングしたくなる気持ちもよく
わかります。最近のかれは商業主義にまみれていて、本来の
スポーツマンシップを忘れていたんじゃないかなとさえ思えます。

また、彼は日本嫌いで、日本企業の広告には絶対に出ない人と
いうことでも知られていました。昨年、彼をとある日本企業の
広告にタレントとして起用しようと考えたこともあったのですが、
中国人から「彼は日本企業の広告には出ないよ」と言われたこと
がありました。また、彼は、「自分は黄色人種の代表であるけれ
ど、そこに日本人は含まれない」という発言をしたとかしないと
か。そういうのを聞くと日本人としては、今回の棄権騒動は、
それみたことかと言いたくなってしまいます。

彼は、北京オリンピックのレース開始直後、一台もハードルを
飛ばずに棄権してしまいます。おそらくかなりの重圧があって、
その瞬間まで棄権したくても言い出せなかったのでしょう。
広告主に申し訳がたたない。13億の国民の期待を裏切るわけ
にはいかない。そのプレッシャーは、おそらく野口みずき選手
や、途中リタイアした土佐礼子選手らの比ではなかったのでは
と推測されます。彼が背負わされていたものは相当な重さだった
のではないでしょうか。

あの出来事から二日たった今日の香港の新聞も彼の記事でいっ
ぱいです。これは香港のオリエンタル・デイリーという新聞
の一面です。



「私は戻って来る」と劉翔は言っているようですが、果たして
中国の人民が許してくれるのかどうか。「捲土重来」(けんど
ちょうらい)という何十年ぶりかで聞く四文字熟語が中国語の
記事の見出しに出てたのをみたとき、なんか懐かしかったので
すが、時がたてば彼の奇跡のカムバックもありえるのかもしれ
ません。

彼の棄権の直後、Nikeは劉翔の写真をめいっぱい使ってこんな
広告を出稿しました。



「たとえ挫折したとしてもスポーツを愛する心に変わりはない」
という言葉で一生懸命NIkeは劉翔を助けようとしています。

バッシングする者、必死に助けようとする者、その間で劉翔は
はたしてどのような気持ちなのでしょうか?
あるいはペガサスのように、誰も知らない宇宙空間で星座にでも
なってしまいたいのかもしれません。

2 コメント

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なんか (カナ)
2008-08-21 20:32:26
はじめまして。私このblogいつもチェックしてて、最近更新多くてうれしいです。今回のはすごく読みごたえありました。劉翔ツウになった気分です(笑)想像を超えたスーパースポーツタレント?!計り知れないプレッシャーとの戦いだったんですね。人間とは何か?と考えさせられました。
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カナさま、ありがとうございます (南の国の会社社長)
2008-08-22 01:47:17
カナさま、いつも見てくださっていたんですか?ありがとうございます。気まぐれでアップロードしたり、しなかったりですみません。劉翔のことは前から注目していたんで、自分が書かなかったら誰が書くだろうかという使命感(?)もあり、なんか一気に書いてしまいました。カナさんのように、こんなブログでもちゃんと見てくださっている方がいるというのは、感激です。今後ともよろしくお願いいたします。
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