南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

香港の新聞に報道されたナガサキ

2010-08-11 00:21:04 | 日本

先日の記事でヒロシマの記事についてご紹介したのですが、
今日(2010年8月10日)の香港のSouth China Morning Post
にナガサキの原爆についての記事が出ていたので、ご紹介して
おきます。

それは中ページの小さな記事でした。浦上天主堂で祈りを捧げる
婦人たちの写真が印象的です。香港の新聞は、日本の新聞に比べ
て、写真の使い方が上手な気がします。日本の新聞の写真では
あまり印象的な写真がありませんが、この新聞はこんな小さな
写真一つも構図から光の具合から見事に考えられていて、素晴ら
しい写真になっています。

そしてそのキャプションがまた素晴らしい。"A survivor at a
mass at the rebuilt Urakami Cathedral, Nagasaki, for
victims of the world's second and last atomic bombing."
日本語に訳すと、「再建された浦上天主堂で、世界で二番目で
あり最後の原子爆弾爆撃の犠牲者のためのミサで祈りを捧げる
生存者たち」となっています。ナガサキの原爆を単に「二番目」
と言わず、「二番目にして(史上)最後の」と言っています。
この「最後」という言葉に、「もう二度とこのような惨劇は
繰り返してはいけない、ナガサキの原爆が人類史上最後の原爆
となるのだ」という痛烈なメッセージが込められています。
この"and last"という短い言葉、実に感動的です。

この記事の見出しは、ナガサキの65周年に英国とフランスが
出席というもので、この記事はフランスのAFPから発信されて
いるもののようです。

最初のパラグラフで、"the 65th anniversary of its destruction
by a US atomic bomb"と出ています。「米国の原爆による
破壊の65周年」という意味ですが、"US atomic bomb"という
ふうに"US"というのが強調されるように使われています。
この原爆投下は連合国のコンセンサスではなく、アメリカが
独断で行ったことであり、我々はまったく原爆投下の正当性
などは認めていないぞ、ということを強調している雰囲気が
あるような気がします。

記事は以下のように続きます。
「アメリカはヒロシマには出席したが、ナガサキには欠席した。
調整がつかなかったということらしい。英国とフランスは
金曜日の式典にも、ナガサキの式典にも両方とも出席した。
これは核軍縮を支持するためである」という文章の行間には
アメリカに対する非難と、英国、フランスの決意が表現されて
いる気がします。これは核に対する世論の大きな変化では
ないかという気がします。ヒロシマとナガサキのメッセージ
が世界を核軍縮に向けて動かしているという感じがします。

また出席した32カ国の代表の中には、これも初めて参加した
イスラエルの姿があったということも言及されています。
それが何だと詳しくは述べられていませんが、あのイスラエル
ですら参列しているのに、アメリカはどうしたという批判の
ように思えて仕方がありません。

最後は、一切の核兵器の廃絶を訴える田上市長の言葉で
締めくくられています。

短いですが、核兵器廃絶に向けての世界的な動きがこの小さな
記事に込められている気がいたしましたので、ここにご紹介
しました。アメリカの人々にも是非読んでいただきたいと
思います。

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4 コメント

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日本では読めない記事 (ちぃやん)
2010-08-11 10:43:59
考えてみれば、子供の頃から毎年のように原爆についてのニュースに接していますが、海外が伝えるものを意識したことがありませんでした。
とても有意義な記事2件を、ありがとうございます。

うちの祖父はその原爆で死に遺品も見つかりません(らしい)でした。

昔はそれで身内や他の被爆者と関係者がどんな思いでその後を過ごしてきたかに気が向いていましたが、今はどうして原爆を投下したか、それも長崎にまで投下したのかに気が向いています。

アメリカの多数を占める投下を是認する世論「戦争を終わらせるため」に二つも投下する必要があったのか?

日本は過去の歴史的資料が残ってない、或いは残してないこともあるようですが、幸い?アメリカでは公開または日本に返還されつつある資料が多くあるようです。

今回式典に参加された国々・地域の記者にも注目してもらえ、我々に史実としてキチンと伝わることを切に望みます。
それが過ちを繰り返さない第一歩になると思っています。

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ちぃやんさん、ありがとうございます (南の国の会社社長)
2010-08-11 22:46:40
コメントありがとうございます。

本当にアメリカは何で原爆を落としたんでしょうね。
「日本に戦争を終わらせるため」というのは建前の
理由なんでしょうが、本当のところは何とも言えません。

今村昌平さんの映画『黒い雨』の中の台詞に、
「アメリカは原爆を落とす必要はなかった。日本はもう
降伏しようとしとったんだから」というのがありました。
原爆がなくても日本は遅かれ早かれ降伏していたので
しょう。それを思うと原爆で犠牲になった方々が
気の毒でなりません。

日本人は、加害者なのだから自業自得だというのでは
ちょっとやりきれませんね。
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すばらしい (香港在住)
2010-08-18 23:01:25
文章とその背景を読み取る貴兄の才能はさすがですね。読んでいて涙ぐみました。
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ありがとうございます (南の国の会社社長)
2010-08-19 13:43:50
香港在住さん、そのように感じていただいたとは、身に余る光栄です。読んでいただいて本当にありがとうございます。

自分はかつて高校の英語教師になりそこねたことがあった
のですが、もし教師になっていたら、こういう記事をテキスト
にして徹底的に解読をしたくなっていたかもしれません。
授業はどんどん脱線していったかもしれませんが。

また気が向いたらお立ち寄りください。




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