南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

映画『南京!南京!』を見てきました

2009-05-17 23:56:14 | HONG KONG
香港に住んでいる私は新聞をとっていないのですが、コンドミニ
アムのロビーに、中国語の新聞と、英語の新聞がいくつかあり、
それにまじって日本の朝日新聞も置いてあります。たまにその
朝日新聞を眺めるのですが、5月15日の金曜日の夕方、その日の
朝日新聞を眺めていたら、上の写真のような記事が目にとまりま
した。

そういえば、地下鉄のポスターでこの『南京!南京!』の映画の
宣伝が出ているのを何度か見かけていました。何となくまた反日
的な映画なんだろうなと思っていたのですが、この朝日の記事を
読むと、何だかちょっと違うようなのです。



この映画を作ったのは中国人の陸川という監督。この記事を最初
に見たときに、日本人なのかなと思ったのですがこの人はルー・
チュアンと発音し、1971年新疆生まれの中国の若手監督です。
2004年に『可可西里』(ココシリ)という作品でいろいろな賞
を受賞していますが、それほどまだ作品は多くありません。

この記事を読んだときに、これは見なければいけないと思い、
香港でも5月初旬から上映されているこの映画を見に行ったので
した。



この映画が題材としている「南京第虐殺」に関して何かコメント
することは非常にデリケートなことですが、事実はどうであれ、
この映画が中国や香港、そして日本を除く世界各地で上映されて
いるということは事実であり、多くの人々がこの映画から何かを
感じているということは否定できない事実なのです。

この映画は、「南京大虐殺」を前提として展開されます。日本で
はこの「南京大虐殺」は中国のプロパガンダで捏造されたフィク
ションであるとする論議があるので、日本人のかなりの数の人が
この映画の状況設定だけで、この映画に対して嫌悪感を持ってし
まう可能性があります。

しかし私は、そういう問題点は認識しながらもこの映画を見まし
た。この映画に対して、どのように反応したらよいのかという
不安もありました。事実との対比で見れば、この映画の中で描か
れていることのどこまでが真実で、どこまでが虚構なのかという
見方もあるとは思ったのですが、芸術作品としての映画は所詮
フィクションなのです。そのように割り切って、この映画の中で
描かれているものを見極めようと思ったのです。

この映画は角川という日本兵が主役となっています。中泉英雄
という役者さんが演じています。主役という意味では、日本軍の
侵攻に抵抗する中国人たちも主役といえるかもしれませんし、
それの混乱の中を奇跡的に生き延びた中国人少年兵の小豆子が
真の主役といえるのかもしれません。

通常、中国の戦争で描かれる日本兵は冷酷無比の鬼のような感じ
ですが、ここで描かれる日本兵の角川は、そのようなステレオ
タイプではなく、血も涙もある普通の繊細な若者として描かれ
ます。外国人が描く映画の中の日本人は、日本人として見ると
違和感を持つ事が多いのですが、この映画の日本人には違和感が
あまりありませんでした。

兵隊たちが歌う「二人は若い」の歌のメロディーと、祭典での
阿波踊りのような踊りの振り付けにちょっとした違和感を感じ
はしましたが、この映画の中で描かれている人物たちは等身大で
描かれていました。日本の戦争映画で描かれる人間よりも逆に
もっとリアリティーがあるという感じさえしました。

映画の最初のほうで、日本軍と中国軍の市街戦の描写があるの
ですが、ここはすごくリアリティがあると思いました。戦場の
狂気と、どこから撃たれるかもしれない恐怖感などが見事に
描かれていました。日本の戦争映画ではここまでのリアリティー
を追求できた作品はないとさえ思いました。

この作品は、日本人をテーマにしていながらも、日本の本土に
いる日本人のほとんどは今後も見ることのない作品となるかも
しれません。南京大虐殺ということにこだわる以上、この作品
はかたくなに認めたくはないのでしょう。しかし、日本以外の
世界の人たちがこの映画を評価していくとしたら、世界の認識
は日本の常識とは乖離していく可能性があります。あまり余計
な発言をするといろいろ問題もあろうかと思いますので、この
へんにしますが、きっと日本人でも私のようにこの映画を見た
いと思う人がいるんじゃないかと思います。いろいろ考えさせ
られる作品だと思います。