南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

歴史を変える言葉の力

2009-02-05 00:17:05 | Weblog
上の写真は有名なアメリカのラシュモア山です。アメリカ初代
大統領のジョージ・ワシントン、第三代大統領トーマス・
ジェファーソン、第26代大統領セオドア・ルーズベルト、
そして第16代大統領のエイブラハム・リンカーンの4人の
大統領の顔が掘られています。

これはサウスダコタ州にあるのですが、私はここに行ったこと
はありません。なぜこの写真(これはマイクロソフトのクリッ
プアートです)をもってきたのかといいますと、原因はオバマ
大統領の演説。あのオバマ大統領の演説を聞いていますと、
アメリカの歴史をさかのぼらざるをえません。

なかでもこの右端のエイブラハム・リンカーン。オバマ大統領
はこのリンカーンのことをかなり意識しているのですが、
リンカーンと言えば有名なゲティスバーグの演説。あの「人民
の人民による人民のための政府」という演説ですね。アメリカの
歴史を語る上では、重要な演説です。

リンカーンの肉声は聞く事はできませんが、『歴代アメリカ
大統領ベスト・スピーチ集』をちょっと前に聞いてみました。
フランクリン・D・ルーズベルトからジョージ・W・ブッシュ
までの大統領の演説が出ています。これらの大統領の演説を
聞いてみると、どの人もオバマ大統領と比べるとスピーチの
技術がそれほどでもないなあと思ってしまいました。棒読みっ
ぽい感じがしてしまう人も多いです。言葉はかっこいいのです
が、何か説得力がない人もいます。そうして見るとオバマは
アメリカ史の中でもまれに見る演説の名人ということができ
のではないかと思います。

リンカーンは、87年前のアメリカ建国の歴史を振りかえり
ながらスピーチをしていますが、オバマもまた、アメリカの
建国の理念とその歴史に言及しながらスピーチをしています。
日本で言えば、江戸時代なのですが、日本の政治家がそんな
昔のことに触れるのはまずありえません。そういう意味では
アメリカの歴史は日本より短いにも関わらず、政治の歴史の
厚みがありますね。

大統領のスピーチと言えば、思い出すのが、映画『インデ
ペンデンス・デイ』の中のホイットモア大統領の演説です。
異星人との最後の戦いを前に大統領は、パイロットたちに
向かって演説をします。「7月4日はもはやアメリカのため
の独立記念日ではない。人類全体のための日となるのだ。
We celebrate the independence day!」という台詞で、
パイロットたちの士気を鼓舞します。

これ実は、シェイクスピアの『ヘンリー五世』の中の、
「聖クリスピアンの日の演説」をベースにしています。
戦力に劣り、確実に負けそうなイングランド軍の兵士たち
のやる気を引き出し、奇跡の勝利をもたらすのがこの演説。
これはお芝居の中の台詞ですが、言葉の力が歴史を大きく
動かすという例です。この演説、ケネス・ブラナーの映画
で見ましたが、実に見事です。言葉だけで、兵士たちを
どんどんやる気にさせ、十人力の働きをさせ、実際に勝つ
のです。言葉ひとつで歴史を変えられるのです。

また同じくシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』の
中のマークアントニーの演説。これまたすごいです。
実は、大学のときに、英文科だったのですが、授業で『ジュ
リアス・シーザー』の購読をやりました。先生は今は亡き
安西徹雄先生でした。言葉の力だけで民衆は右に左に動く
ということをそのとき知りました。その力の原動力が
修辞学(レトリック)であり、スピーチ能力だったのです。

言葉の力で歴史が変わっていくということはありえないこと
ではありません。オバマ大統領のアメリカでそれが可能に
なるのかどうかわかりませんが、少しでもそうなればと
思います。言葉の力で社員が変わり、会社が変わるという
こともできればいいなあと思います。