グレッグ・イーガンの『順列都市』ようよう読み終えた。ベッドに入って寝る前に読んでいたが、毎晩結構早く寝落ちするので、数ページからせいぜい10ページというのが毎晩のペースだった。
本書の原著が1999年の発表なので、20数年のライムラグがあるけれど、とはいえ、アップツーデートなトピックだと思う。本書は「オートヴァース」という仮想空間の物語で、舞台は2053年というから、やがてはすぐにやってくるタイミングと言う時代設定なのだ。そのころ、すでに人間の記憶などはすべて、ダウンロードできるようになっていてソフトウェア化されている。登場人物たちも、リアルな存在なのかそれとも、ソフトウェアとして「オートヴァース」の中にいるのか、作中の様々な物語の中でも、わかったり分からなったりする。
そうした中で、主人公の一人のマリアはダラムの依頼にもどづき、オートヴァースの中に生命の発生からのシミュレーション宇宙を構築する。進化してきたラーンバート星人は、社会性昆虫様の存在でかれらが、このオートヴァースに干渉を加えて破壊していくのだ。そして、マリアはダラムとともに自分たちの構築したオートヴァース世界に逃れていく。
要約できたかどうか、じつにあやしい。しかし、生成AIがあらわれて、人間と会話を始め、AI搭載兵器が自律的に引き金を引く現代社会にあって、グレッグ・イーガンの描いたこの世界像が奇妙にリアリティを持ち始めているというべきかもしれない。これが、SF作家の創造力の恐ろしさともいえるだろう。