午後は、明日のオンライン講座の教科書である「美術の物語」(ゴンブリッチ)の第3章「大いなる目覚め ギリシャ 前7~前5世紀」を読んで過ごした。
重い本でもあり、支えていると午前中の作業の影響で左右の親指の筋肉が攣ってしまい、筋肉痛のメントールを縫ってごまかした。
「(ギリシャでは)人間によって作られた、人間のための建築だと、だれもが感じるだろう。ギリシャには、民族全体を隷従させるほどの、またそれを望むような、神のごとき支配者は現れなかった。」
「大切なのは、作者が古い定式に服従するのではなく、自分の目で見ようと決意したことだ。人体を表現する出来合いの公式など、もう問題ではなかった。」
「ギリシャの画家たちの画期的な大発見、それか短縮法の発見である。美術史上に途方もない出来事が起こった瞬間だ。紀元前500年の少し前、画家たちは歴史上はじめて、正面から見た人間の足を描こうとした。」
「彼(フェイディアス)の作った彫像は、それまで考えられていた神々の性格や意味を、一変させるだけの威厳を備えていた。ひとりの偉大な人間の姿をしていたのだ。女神の力は、威力にあるのでなく、その美しさにあった。そのとき人びとは、フェイディアスの美術作品が神についての新しい概念をギリシャ世界にもたらしたことを、感じ取っていたのである。」
「ギリシャ彫刻に特有の偉大さ、荘麗な静けさと力強さもまた、その古い規則に従うところから生まれていることがわかる。古い規則が、芸術家の自由をしばる障害物ではなくなっているのだ。人体の構造を示すことが大切だ、という古くからの考えが、いまは芸術家たちを前へとかりたてる力になっている。」
「規則に忠実であることと規則のなかで自由を見出すこと――この両者の微妙なバランスこそ、後世、ギリシャ美術がこんなにまで称賛されてきた理由だった。」
「当時のギリシャ人たちがもっと重要だと考えたのは、‥どんな姿勢の、どんな動きをする人体でも自由に表現できる、という新しい技術を使って、彼らは人物の内面を映し出そうとしたのだ。‥表現すべきは「魂の働き」であり、それには「感情が体の動きに及ぼす影響」を正確に観察しなければならない。それがソクラテスの考えだった。」
「ギリシャの芸術館たちは、人と人とのあいだに行き交う、言葉にならない感情や気分を伝える術を、十分に心得ていたのだった。」