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Blog ~建築的日常生活&RUN~

静岡にある建築設計事務所、業務とそれ以外の活動、趣味の話、ちょっと考えたことなどを記録しています。

2006しずおか木造塾 第2講座 のこと

2006年11月13日 | 木造塾
 今年度もしずおか木造塾にスタッフとして参加しています。第1講座は別の予定があり欠席しましたので今回が今年度初参加となりました。今年も顔なじみの参加者が多く、いつもの皆さんと一緒に勉強していくことになります。

 今回は「デザイン」がキーワードです。前半は浜松の設計事務所「アトリエ樫」の坂田さんによる「家族・住まいのデザイン」という講座でした。自己紹介から始り、これまでの作品が写真で紹介されました。私は以前、木造塾で坂田さんの工事中の現場を見学させていただきましたが、天井が低く抑えられてた空間と、工事中の土塗り壁が印象に残っています。建物の外観もシンプルなかにプロポーションに対する意思が感じられ美しくまとまっていました。今回の話の中にはそういった建物が生まれてくる思考の過程などが紹介されていて興味深く聞くことができました。住宅を設計していくなかで寸法やスケール感に対する感覚をとても大切にされている姿勢が伝わってくる話でした。

 後半は東京の「野沢正光建築工房」の野沢さんによる「住み続ける家と環境デザイン」という講座です。野沢さんはOM研究所の所長もされていて建築と環境に関する本も書かれています。そういったことから建築と環境の関係についての話、住空間を環境性能という視点からアプローチし、設計していく手法の話などをしていただきました。住空間の環境性能を考える際に設備機械にたよるのではなく、建築自身も環境性能を備えていることが大切。それは難しいことではなく、自然の力や、先人の知恵を見直すと言う視点から生まれてくる。なんとなくイメージしていても実行に移すのは大変そうなことをですが、野沢さんはそういったことを実践されてきています。実際に屋根の上に草の生えている建物や、地面に穴を掘ってコンクリートの壁を作っただけの地下室の話など、その効果と苦労話など聞かせていただき、環境に対する建築のありかたを常に考えているのが伝わってきました。

 二人の建築士の設計という作業に対するそれぞれ異なる切り口を知ることができました。坂田さん、野沢さんありがとうございました。次回は12月、森林や木材のことについての勉強です。

しずおか木造塾(基礎編)第2講座[東部編]

2006年02月22日 | 木造塾

 先週末木造塾[基礎編]東部見学授業に参加しました。この見学会では歴史的木造建築物を学ぶということで東海館(伊東市)・起雲閣(熱海市)・旧日向邸(熱海市)を見学してきました。

 東海館は昭和初期に建てられた木造3階建旅館で平成9年に廃館されますが、現在は伊東市が所有し観光施設として保存されています。それほど広くない道に面して正面玄関があり、風格がある破風に彫り物が施された立派なものです。また、木造であるにもかかわらず、かなり幅のある建物である上に3階建のためあまり見たことの無い外観をしています。内部は客室や広間などが見学できるようになっていて、昭和の温泉旅館の雰囲気を感じることができます。

 今回の見学では一般のお客さんがご覧になる見学部分の他に構造の補強をした部分も見せていただくことができました。この建物は木造の3階なので普通このような状態ではこの地域に建てることは出来ませんし構造計算も必要です。観光施設として利用しているわけですが、いろいろな打ち合わせを行い特別の許可のもとに使用できる状態になっているのです。間取りや開口部をできるだけ残すことを考えた結果、補強のみに使う部屋を設定しその部屋を耐震のコアとして考え他の部分をもたせています。その為補強を重点的に行った部屋の中はすじ筋かいだらけで部屋の向こう側まで行くことができません。そのほか、小屋裏に補強がされていたり、壁に合板が張られていたりと、補強したのが分からないように補強されています。多くの方々が知恵を絞り、苦労されてこの建物が保存されているのが良く分かりました。


 起雲閣は大正8年に別荘として建設された後、昭和22年からは旅館として使われ平成12年から熱海市の所有となり一般公開されています。美しい庭の周囲にいろいろな時代に建てられた建物が並んでいます。

 見学の際にはじめに入るのが麒麟の間です。ここは青い壁が特徴的な座敷で庭を一望することができます。2階の座敷からの眺めは建物の周囲の様子からは想像できない緑豊かで美しいものです。この建物も耐震補強がされていて、木製の格子を耐力壁として新たに設置してあったり、基礎周りを鉄筋コンクリートで補強している部分を見ることができます。また、つづく玉姫・玉渓は建物自体は洋館といった感じの外観です。内部は玉姫のアールデコ調の光天井がとても美しく床のタイルとあわせて軽くきらびやかな空間となっています。一方玉渓は中華風のような北欧風のような装飾が施された部屋で力強さを感じる衣装になっています。その後展示室やローマ風浴室などを見て周り最後に庭に出ます。建物全体としてはいろいろな時代のいろいろな意匠が取り込まれていて統一感という点では評価しにくいですが、それぞれはさすがに手の込んだ仕事がしてあり見ていて楽しいものでした。


 旧日向邸は昭和9年に建てられました。日向氏の死後長い期間、民間企業の保養所として利用されていましたが平成16年に熱海市の所有となりました。現在見学は予約制となっています。この建物の庭園の下の地下室に作られた離れはドイツ人建築家ブルーノタウトの設計によるもので、日本的なのものと洋が独自の手法で表現されていると言われています。

 建物に入ると1階の広間がありそこでブルーノタウトのビデオが見られるようになっています。そこから地下への階段を下りてゆくと離れとなります。上屋の前にある海に向かった庭の下に離れがあるので、地上からは離れの存在が分かりません。離れは大きく分けると3部屋からなっていて手前から、社交室、洋間、日本間となっていて洋間と日本間には少し高くなった部分が隣接していて上段と表記がされていました。もっとも印象的なのは洋間の上段で真っ赤な壁が縦横の木縁で装飾され幾何学的でありながら和を感じる空間になっています。和室も太目の鴨居、回りぶちによって空間に均一間が生まれ独特なスッキリとした印象を受けます。そして、なによりも海に向かって開けられた開口部からの眺めはすばらしい。洋間についてはこの景色を眺める為の意匠にも感じられました。

 
今回の見学では3つの建築物を見てまわりましたが、普段建築雑誌などで新しいデザインや新しい素材を使った建物をよく目にしていたり、実務の中で性能や設備に重点が置かれがちな仕事をしている中で、時代が変わっても評価されるものの魅力に触れることができ、それについて考える時間をもてたことが良かったと思います。


「しずおか木造塾(座学編)」第5講座

2006年01月22日 | 木造塾
 昨日は「しずおか木造塾(座学編)」第5講座にスタッフとして参加しました。今回は建築家の三澤文子さんの講義でした。三澤さんは大阪のM‘s建築設計事務所で活動されて、現在は岐阜県立森林文化アカデミーで講師をされています。
 最初に木構造を美しく作るためのプランニング手法についてご自身の設計された実例の写真を示しながら説明されました。次に設計図から工事に必要な木材の寸法と数量を拾い出す「木拾い」の基本についての講義になりましたが、これは受講生も例題を使い実際に簡単な木拾いを体験しました。その後、近くの山の木を使って建築をする「自立循環型住宅」という考え方についてのお話をしていただきました。
 良い作品をつくりだしている建築家の考え方をお聞きすることができたのは、いろんな立場で建築に携わっている受講生に方々にとってよい時間になったのではないかと思います。今年度の木造塾(座学編)は今回で終了ですが、今後もこのような勉強会に加わっていきたいと思いますし、このような場で会うことができた人たちとのネットワークを大切にしていきたいと思います。

「しずおか木造塾(座学編)」第4講座

2005年12月15日 | 木造塾
昨日は「しずおか木造塾(座学編)」第4講座にスタッフとして参加しました。今回は木造塾に参加されている方が実際に設計された木造住宅について、構造面についての考察を行うという内容でした。 

 何件かの考察を行ったのですが、その中に大きな吹き抜けのあるL字型の平面をした建物がありました。これは計画中のものを構造家の山辺先生の事務所で、コンピューターで解析し揺れ方をシュミレーションしたものが示されました。一般的な壁量計算では問題の無い結果が出ていたにもかかわらず、シュミレーションの結果では外壁の一部が許容変形量を超えてしまうという結果が出ていました。外壁の一部が許容変形量を超えるということは仕上げにに局部的な損傷が生じる可能性がありますし、バランスの改善の余地が有るということです。

 つまり、コンピューターを使い構造の計算を行う場合、入力値や解析の方法を気をつけなければ、実際の建物の挙動とは異なる結果を導き出してしまう危険もあるということです。一般的なつくりの小規模な木造住宅ではその結果の誤差は致命的なものではないのかも知れませんが、大きな空間や、変形した計画をする場合には特に注意が必要になるでしょう。新しい空間を作り出すにはデザインだけではなく構造もよく考えなければならないのです。

「しずおか木造塾(基礎編)」第2講座[西部編]

2005年12月11日 | 木造塾
 土曜日にしずおか木造塾(基礎編)第2講座の西部編が開かれました。浜松周辺で最新プレカット工場と木造の建物の見学を行いました。プレカット工場は昨年も私は木造塾で見学したことがありましたが、何度見てもそのシステムの凄さには感心します。それが良い悪いは別にしてここまでできる技術が有ることは知っておく価値があると思いました。

昼食の後は建物の見学となりました。公共のコミュニティーセンター、デザインや空間のあり方を追求した住宅、落ち着いた外観で木造であることを追求した住宅の3件を見学しました。それぞれ、木造であるということ意外は方向性が異なっていて、木の使い方も異なっていました。それぞれの設計者の話しも聞くことができたので,ただ見るだけとは違った視点で見学することができたと思います。

「しずおか木造塾(座学編)」第3講座

2005年11月16日 | 木造塾
本日は「しずおか木造塾(座学編)」第3講座にスタッフとして参加しました。
 
 今回は梁のサイズの確認の方法を中心に講義がすすめられました。梁のサイズは上からの荷重に対して持ちこたえることができるサイズを計算しているわけですが、床の場合はそのたわみ量によって決まることが多いということです。法律で決められた数値は最低限のものであり、設計者が力の流れを考慮しその場所でのたわみの限度を設定しそれに合わせた設計をしていくことが大切ということでした。

 また、その他の話しとして最近よく雑誌などで見かける登り梁を使った工法や、大きな吹抜けをつくる場合について、構造的に注意する点やの話などもあり非常に興味深い内容であったと思います。

「しずおか木造塾(基礎編)」第2講座[中部編]

2005年11月07日 | 木造塾
 土曜日にしずおか木造塾(基礎編)第2講座が開かれました。第2講座は静岡県の東・中・ 西で見学授業が行われます。今回は私ども静岡県中部地区の青年委員が中心となって「大井川水系の木材について学ぶ」という見学授業を行いました。

 午前中は金谷で製材工場を営む落合製材所さんのご協力で、大井川上流の伐採現場で実際に木を切るところを見学させてもらいました。今回は植樹された木ではなく、実から自分の力で大きくなった檜を伐採していただきました。職人さんの手によって大きな音を立てながら倒れる木を見ることで、いつも現場にある製材されてしまった木ばかりを見て忘れてしまっている、木の生長の歴史の長さと活きている木を伐採して使うことの意味を改めて考えました。

 昼食後はまず大井川小径木加工協同組合さんの工場を見学しました。大井川近辺は昔から長いまっすぐな材が取れることで有名なのだそうです。そのため、ここは6mという長尺物を扱うことのできる機械が設置されている全国でも数少ない製材工場ということでした。ここでは基本的に柱となる材を取り扱っているとのことです。また、品質の確かな材を供給するために材の含水率と強さを瞬時に計測し、材の側面にその値を表示することのできる機械もありました。輸入材に負けないよう、品質の高い地元材を供給しようとして取り組んでおられる方々の取り組みを感じることができました。

 次に午前中に伐採を見せてくださった落合製材所さんの工場を見学しましました。こちらでは梁材や板材といったいろんな形状の材が生産されています。また、工場の一部に天然乾燥を行っている材が置かれていました。杉の梁材などは時間をかけて乾燥を行った方が色つやがきれいになるということで、天然乾燥を採用する方もいるのだそうです。木材を使っていく中で乾燥の方法も含めて適材適所に使っていくことが大切ということです。

 最後に丸天星工業株式会社さんでJパネルの製造工場を見学させていただきました。Jパネルというのは、板材を横に並べて張り合わせ板を作り、それを向きが直行する形に三層張り合わせて作られる厚さ36mmのパネルです。最近では建築雑誌などでもたまに使われていたりする材料です。地元の材を有効に使うために考え出された静岡生まれの材料で、現在は全国で3つの会社が生産しているとのことです。私も使ったことがありますが、そのボリューム感と素材感には独特の魅力があります。地元で作られているわけですから、今後もうまいかたちで使えるチャンスがあれば採用していきたいと思います。

今回は過密スケジュールでしたがおおきな遅れもなく無事見学会を終了することができました。しかし、各見学場所でもう少し時間が取れれば良かったと思いました。それでも、地元大井川の木について考えるきっかけを得ることができたのではないかと思います。

「しずおか木造塾(基礎編)」第1講座

2005年10月24日 | 木造塾
 先週の土曜日はしずおか木造塾(基礎編)第1講座でした。(座学編)とともに静岡県建築士会青年委員会の事業ですが、(座学編)がこれまでも木造塾に参加してきている方々向けの少し詳しい内容であるのに対して、(基礎編)はこれから木造を手がけていく若い設計者や学生向けの講座になっています。私はそのスタッフとして参加しています。

 今回は3名の講師の先生が、木造における構造設計の位置づけ、木造を建てる際に考える地盤調査、木造を建てる上で知っておくべきシロアリの話し、をしてくださいました。木造を計画する中では基本的な内容ですが、特にそれについて専門家の話を聞く機会をつくるのは実務を行っている中では難しいものです。そういった意味で今回の講座は改めて知識を確認し、深める良い機会になったのではないでしょうか。

「しずおか木造塾(座学編)」第2講座

2005年10月15日 | 木造塾
 昨日は「しずおか木造塾(座学編)」第2講座にスタッフとして参加しました。今回はまず、山辺先生の前回の地盤についての講義に関する受講者からの質疑への回答から始まりました。実務のなかで悩むようなことについての質疑が多くスタッフの我々も参考になりました。

 その後木構造における耐力壁の位置づけ、いろいろな耐力壁の強度試験の解説が行われました。実物大の壁の試験体を使って行われた破壊試験の話では壁が地震力に耐えるメカニズムなどが説明されました。

 次に設計における耐力壁量の計算の方法を学び、受講生は実際に計算を行い内容を確認しました。最後に小屋組みを設計する際の要点の解説が行われ講義は終了しました。最近では、コンピューターに計算を任せてしまい、数値の設定と入力のみになりがちですが、改めてその計算の過程を手計算で行うことでより理解が深まるということが認識できたと思います。

「しずおか木造塾(座学編)」第1講座

2005年09月15日 | 木造塾
 昨日、静岡県建築士会青年委員が開催している「しずおか木造塾(座学編)」第1講座にスタッフとして参加しました。

 今回の講座は建築雑誌等にも研究結果を発表されている山辺構造設計事務所の山辺先生の木造住宅の構造についての講義でした。今後山辺先生の講義が4回開催されますが今回がその初回ということで、木造住宅の地震被害の実態、木造住宅を計画するに当たっての地盤調査分析の方法、基礎構造の計画などが主な内容でした。

 スタッフなので受付などの作業をしながらでしたが、講義も聞かせていただきました。鉄筋コンクリートや鉄骨増とは異なりどうしても軽く考えがちな木造住宅の構造ですが、不確定な要素が多いだけに大変奥が深いものです。この講座を通して実務者どうしのネットワークが広がり、より良いものをつくる為の情報が交換され、参加者のレベルアップにつながればと考えています。