Blog ~建築的日常生活&RUN~
静岡にある建築設計事務所、業務とそれ以外の活動、趣味の話、ちょっと考えたことなどを記録しています。
住宅医の知識
先週、昨年7月からほぼ月に1回通い続けた「住宅医スクール2015浜松」が終了しました。私は住宅医の資格を持っていますが、昨年度と今年度は浜松でスクールが開催されるということで、最新の講義をすべて受けようと考え参加せていただいていました。住宅医スクールは「一般社団法人住宅医協会」が「かかりつけの医者のように、患者(=既存住宅及びその施主)の状態をきちんと把握して対処できる人材の育成」を目的に開催しているもので、そのすべての講座を受講し、講座の最終回に検定を行い、事例を発表し内容の評価を受け、合格すると住宅医として認定されます。
一般的なインスペクションの講座は1日程度のものがほとんどですが、全8回24講座の住宅医スクールはどの分野も深く学ぶことができます。建物調査の基礎から法規・構造・木材・防火・設備・高齢者対応・温熱環境・省エネ・住宅関連施策と幅広い分野を勉強しました。とくに木材のシロアリやそれ以外の虫害、不朽などの講義は普通の建築関連の勉強会ではあまり出てこない分野ですが、改修の現場ではとてもよく目にする事象なのでとてもためになりました。また、毎回必須講座終了後にゲスト講座があり、そこでは第一線で活躍される建築家の方々のお話も聞くことができ、すばらしい事例を見ながら実践のイメージをすることができたことも良かったです。
私はカリキュラムの中で第2回の「構造的不具合の原因と対策~一般住宅の耐震診断の実務~」を担当しています。耐震診断・補強業務に関してはかなり進んでいると言われる静岡県の建築士として事例を説明、紹介するのが役目です。毎回もらっていたテキストも24冊を超えています、それを見るとよく勉強したなぁという感じです。これからはそれらを実務にフィードバックできるよう心掛けていこうと思います。今回、住宅医スクールで勉強した内容を記録しておきます。
「住宅医スクール2015浜松 カリキュラム」
第1回
「木造建築病理学の必要性」
・木造建築病理学の背景と取組
「建物調査と報告書の作成」
・建物調査と住まいの診断レポート
「木造建築病理学の実践」
・住宅医による木造住宅の改修事例
第2回
「構造に関する法規、基準関連」
・耐震性能に関する様々な基準
「構造的不具合の原因と対策①」
・地盤・基礎・軸組の調査診断
・一般住宅の耐震診断の実務
第3回
「木材の劣化と対策①」
・生物劣化の基礎
「木造建築物の耐久性能と維持管理方法」
・木造建築物の劣化、診断、補修の基礎
・木造住宅劣化事例
第4回
「木材の劣化と対策②」
・木材の劣化と診断
「防蟻対策の基礎」
・シロアリ駆除と予防法の事例
「構造的不具合の原因と対策②」
・限界耐力計算のやさしい解説
第5回
「防火性能の改善と対策」
・防火の基礎と火災時の安全性
「設備の劣化診断と対策」
・配管設備診断Q&A
「住宅改修における高齢者対応」
・高齢化社会と住宅改修のニーズと実践
第6回
「温熱環境の改善と対策」
・温熱・結露診断手法
・住宅の省エネルギー評価の基礎
第7回
「契約実務の留意点」
・瑕疵及び依頼者とのトラブルを回避する方法
「木造住宅関連施策の動向とその対応」
・木造住宅関連施策最新情報と対応実践事例
「住宅改修における高齢者対応」
・高齢化社会と住宅改修のニーズと実践
第8回
「既存住宅の改修方法」
・事例に見る基礎の改修方法
・事例にみる軸組・壁・床・屋根の改修方法
・事例にみる温熱・省エネ改修方法
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一歩進んだ
只今、年度末の耐震補強工事補助金を受けている工事の工事期間完了に向けて耐震補強工事、改修工事が同時にいくつか進行しているので、昼間はいろんな現場に行ったり来たりしています。そのなかでも昨年から大規模改修とともに行ってきた耐震補強工事の現場が、明日市役所の完了時現地確認を受けます。間取りや空間構成を含めた改修工事なので、以前を思い出せないくらい明るく広々とした空間に生まれ変わっています。
今日の新聞には静岡県が新年度から高齢者世帯を中心にした住宅耐震化の相談体制を充実させる方針であるという記事が掲載されていました。それを読むと、これまであまり言われていなかった、住み替えや建て替えについても相談に応じる総合的な住宅相談を進めていくとのことです。そうなると建物の耐震的な部分だけではなく、それ以外の建物の状況、今後の生活の見通しなどから全体を見わたして解決策を提案していくことになりそうです。
その流れの中で「住宅医」としての知識や技術を活かして建物を診断し、設計専業の設計事務所として一歩進んだ提案をしていければと考えています。ちょうどこちらの「住宅医より新年の抱負を一言」の下の方で、そのようなことを言っていたところでした。
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各地の住宅医スクールへ
既存住宅の調査・診断・改修設計・施工・維持管理等の基礎から実践までを学ぶ「住宅医スクール」、全24講義のなかで私は「構造的不具合の原因と対策」の講義の担当として、今年は東京・浜松・大阪の3か所でお話をさせていただきました。私自身、構造の専門家でも、大学の先生でも、特別な実績があるという訳でもないのですが、静岡県では全国に先駆けて耐震診断・補強工事に関して、補助制度などを運用して取り組んできました。その中で実務の経験を積んできた建築士の一人として話をさせていただいています。これから新築の件数は減り、既存建物の活用するための改修も建築士の重要な業務になるといわれているなかで、各地で受講されている建築士の皆さんの姿勢には熱いものを感じています。講義後の懇親会では各地域での耐震診断や補強の現状や制度について教えていただくこともあり、私にとっても勉強になります。また、そこでの出会いや、繋がりが今後仕事の上でもいい形になってくれればとも思います。ともあれ、これで任務は終わりました。今後は浜松スクールの講義に聞く立場で参加していきます。残りの講義でどんなお話が聞けるのか楽しみです。
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住宅医の仕事
既存の住宅を改修する場合その内容は様々です。部屋の壁紙を張り替えたり、外壁の塗装をする。キッチンや浴室などの住宅設備を更新する。性能強化のために耐震補強や断熱補強を行う。それらはどんな施工者、どんな建築士でも対応できるものから、専門的な知識と経験を要するものまであります。簡単と思える改修でも建物全体の状態をよくみてみると、もっと違う問題が関係していたり、優先すべき重要な欠点がみつかる場合があります。そこで、まずは既存建物の状態を調査・診断し、その後の改修のための正しい情報を提供し、計画の道筋を示す、そのような仕事が必要になってきます。
一般社団法人住宅医協会は既存住宅の調査診断、改修、維持管理の技術開発と「住宅医」の育成と業務の支援、補助を行っています。「住宅医」となるためのスクールは耐久性能と維持管理、木材の劣化、耐震、温熱・省エネルギー、など、現在は24の講義を基本として組み立てられています。全ての講義を受講し、住宅医検定会で実施物件のプレゼンテーションを行い、講師及び受講生の判断による合格者が「住宅医」として認定されます。私はその講座のひとつ「構造的不具合の原因と対策」を担当しています。
今回、一般社団法人 住宅医協会のホームページ内の改修事例報告で「坂本の家」が紹介されました。築150年の民家の改修にあたり、間取りから構造までを調査し、各部の現状を分析・診断、どんな可能性があるのか、何を優先するのかを検討しました。その結果をもとに設計・工事を行い、さらに住み続けることのできる建物になっています。時間は多少かかりましたが、改修だからこそしっかり考える、治すべきところはしっかり治す、加えるべきものは加える、そんな仕事の記録となっています。
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住宅の医者
一昨日、東京大学 弥生講堂 アネックスで行われた一般社団法人住宅医協会設立記念講演、その後の設立記念パーティーに出席してきました。住宅医協会は既存住宅の調査診断、改修、維持管理に関する技術開発と人材育成に関する目的で設立されました。これまでは住宅医ネットワークとして住宅医スクールなどを開催していましたが、このたび更なる発展と継続性を視野に入れて法人化されることになりました。私はその住宅医スクールの全31講座のうち、一般住宅の耐震診断に関する講座をここ3年ほど受け持たせていただいてきました。
設立記念講演は東京大学教授松村秀一氏による「建築・新しい仕事のかたち~箱の産業から場の産業~」でした。現在の日本の建築業界を取り囲む現状、これからの建築士の新しい仕事の可能性、そのヒント、いろいろイメージすることができました。その後の設立記念パーティーでは住宅医協会の役員の方、各講座を担当される建築家の方々、これまで受講された建築士の方々、いろいろな方々のいろいろなお話を聞くことができました。もっと、もっといろんなことができるような気分になった一日でした。
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