小林美希の取材日記(つぶやき)

取材を通して思う素朴な疑問や、日々の出来事を紹介します。 

目の前の現実

2006-08-14 14:35:20 | Weblog
 先日、親世代の男性、女性。また、同世代の男性、女性。加えて、大学生から、合計特殊出生率1・25ショックと女性の労働に関する感想をいただいた。働き盛りの娘を持つ親世代は、だから、娘は結婚や出産の道を選べないのだろうと。同世代からも、自分自身の不安や悩み、男性からは彼女や妻の置かれている立場を理解し、この問題がいかに大きなことかまだ、社会も会社も気づいていないと。大学生からは、自分たちの近未来に直面することだから、もっと詳しく話しが聞きたいと・・・。ほか、自治体などなど。

 なかには、今の女性が甘い、なんて声もあったが、それは、その人の周りの話なのだろう。腰掛程度に職業を考えている人を参考にしているようだった。昔と今は、進学率も就業率も男女がうんぬんという意識も違うのだ。

 さて、記者の仕事は、目の前の現実を記すこと。分析は、研究者の仕事。そして、いいたいことだけ言う評論家や、評論家もどきもいるが、なんだか、頭でっかちの議論が多くて、あまり参考にならない。記者は、研究者でも評論家でもなく、一人でも構造的な犠牲者がいたら、それを伝える義務がある。

 それを、読み違える人がいる。
 
 世の中には、いろんな考えの人や、いろんな立場の人がいることなんて、イヤというほど、分かっている。しかし、あえて、目の前の問題にクローズアップするべき時があるのだ。

 若年雇用問題と並んで、ヒステリーに感情がぶつけられてくるのが、少子化問題や女性の労働問題だ。

 私は、決してジェンダーを論じるタイプではない。
 それは、私が自分が比較的、女性ということがマイナスにならないできたから。これも、親世代の先輩たちのおかげだろう。だから、かえって、女性がなんとかと言うこと自体が嫌いだった。そう、勘違いされることも嫌いで、ずっと、あえて、女性の問題は仕事でも選んではこなかった。

 しかし、若年雇用問題に取り組むと、どうしても、女性の労働と出産・育児の両立問題にぶちあたる。

 これは、腰掛程度に職業を考えてはいない、働きながら、結婚や出産という人生のステージに直面した女性が避けては通れない現実。労働畑の記者として、見過ごせない、そして、なかなか世の中でクローズアップされない現実。

 だから、理解者が少なく、問題も解決しない。

 しかし、そのような意識のある女性や、出産や育児でなくさざるを得なくなった自分のキャリアに、子どもは可愛いとは思っても、心痛める女性。それを理解できる男性からは、この問題がいかに大く、いかに大事かが分かると感想をもらう。

 その立場にいるか、その立場になって考えてみようとしなければ、決して理解されない問題。これが、少子化と女性の労働問題。そして、若年雇用問題。非婚や晩婚化もそうだろう。

 個人的な理由なんて、ある意味、論じる意味はない。というか、議論にもならない。それは、何故、あなたがモテルかモテナイか、と論じるくらい、世の中的には意味がない。
 問題なのは、構造問題が理由で何かが障害になるということなのだ。

 結婚できない理由には、その人が単にもてないということもある。が、それが、中高年のリストラによるしわ寄せがきて若者が忙しすぎて恋愛に結びつかない結果、結婚できないのは問題で、以前にも特集した。

 出産できない理由には、その人が大人になりきれず出産に踏み切れない、遊びたいから出産しない、なら、個人の問題で、私が何かを記事にする意味はあまりない。そういう記事や本は、出したお金がもったいないくらい、世の中にはたくさんあるし、私も見出しだけ見て買って読んで、お金の無駄だったことが多い。が、出産できない理由が、労働市場の歪みからということなら事態は深刻。

 同じように、フリーターやニートが、ただ単に親に依存して甘えているだけで出来た人たちの場合、はっきり言って、同情の余地もない。が、それが、企業が採用を絞りこみ、就職率が50%そこそこという時代背景によるもので、頑張っても、実力があっても報われない現実が目の前にあるから、私は記事を書き続けるのだ。

 考えうる、いろんな問題を視野にいれ、そのなかでも特に問題な、なかなか、すくいあげられない人の声を、私には代弁する役割がある。

 机上の論理だけでは物事は語れない。
 だから、記者は識者とは違う現場を伝える役割があるのだ。

 
 

  
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