小林美希の取材日記(つぶやき)

取材を通して思う素朴な疑問や、日々の出来事を紹介します。 

公的人の言動の意味

2013-11-08 10:45:18 | Weblog

 さて、山本太郎参議院議員が天皇に直接手紙を渡した件がずっと話題になっているが、個人的に、その賛否はさておき、公的な人の発言や行動には大きな意味があることを改めて認識しないといけない。

 議員もそうだが、経営者も公の人間となる。公務員も同じだろう。

 元経済記者という立場から言えば、特に、社会人のスタートが株式新聞というガラス張りの経営をしなければならない(つまり、全て公開すべき公の存在という)企業を相手に取材をするというのは、とても勉強になった。経営者や役員、広報など社の代表者は、よくよく発言に注意している。株式公開企業は、決して嘘をついてはいけないからだ。そこにスクープをとってやろうと思っている記者は五万といて、経営者や幹部らは、企業秘密に対して「ノーコメント」はできるが、「嘘」はつけない。だから、言葉のニュアンスや態度、言い回しに神経をとがらせると、必ずヒントが隠れているものだ。これは、政治家も同じだった。

 そういう意味において、経営者が誰かと会う、会わないという選択も、大きな意味を持つ。記者だからと言って、誰とでも会うわけではない。もちろん、記者でなく、相手が政治家、取引先など、いろいろなケースがあるが、とりわけ、組織のトップが「会う」ということは、何かの選択や決断につながる大きな意味をもつ。政治家はもっと意味が大きい。このタイミングでこの人と会う、ということは、例えば、選挙の打診を受けて出るか出ないかという意思決定に及ぶなど、いろいろな側面をもつ。だから、経営者も政治家も、役人も、本来、魑魅魍魎とした世界をきちんと理解している人は、簡単に人と会ったりはしないものだ。安易に信頼関係もない記者に対して秘密情報を教える者は、何か意図を持って話しているため、用心しなければいけない。利用されるからだ。

 これらを分かっていないと記者も情報はとれない。誰と会ったかはもちろん、どの方面(地域)に取材に出たかも身内にも安易に話さないものだ。口の軽い記者は決してスクープはとれない。

 こういう、暗黙のルールというか、礼儀というか、常識が、ある一定の社会的責任をもつ層には必ずある。それが分からない人が増えているのも事実であり、非常に残念だ。各界で、人間としての成熟度合が薄れている。

 自分の身近なところでも、同業者から「次はどんなテーマを書くのか」と安易に聞かれるが、私は明確には答えない。だって、それって、次の企画をバラすようなもので、人によっては、パクってやろうとか、先に自分が書いてやろうと思って聞いている場合もあるからだ。そうでなくても、どこかの出版社との上梓前のテーマについて口にするということは、その出版社の内部情報を漏らすことにつながるのだから、他社の人間に言ってはいけない。ということを分かっていない人もいて、困り者だ。ジャーナリストも、ある意味では公的存在だという自覚を持って仕事をしないといけないのだが、プロ意識に乏しい人が、年齢に問わず増えているような気がしてならない。

 いったん、公の職業や組織のトップについたならば、自分の言動の意味をきちんと自覚して行動しなければならない。

 

 
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