小林美希の取材日記(つぶやき)

取材を通して思う素朴な疑問や、日々の出来事を紹介します。 

「ルポ正社員になりたい」(影書房)

2012-12-06 22:01:25 | Weblog

 先日、私の処女作を手掛けてくれた影書房から手紙が届いた。
 増刷分も完売したとの内容だった。

 2007年、フリーになってほどなく発刊した「ルポ正社員になりたい~娘、息子の悲惨な職場」は、現在でも多くの読者に手をとってもらっているそうだ。おそらく、いま、書店などに出ているものが最後になるのかもしれない。

 想いの詰まった第一作。この本を読んでくれたと、その次に岩波書店から出すことになった「ルポ”正社員”の若者たち~就職氷河期世代を追う」の編集者や、他の多くの編集者が連絡をくれた。

 私はよく言えば、宮沢賢次タイプなのか?、企画が時代の流れより少し早すぎて、最初の提案時に「売れないからやらない」などと言われることが多い。が、これまで、生っ粋の編集者との出会いが、現場を歩く者の問題提起を実現させてくれたように思う。ふたを開けてみれば、記者が普段から現場を歩き、人の目となり耳となって取材した、素朴な疑問、素朴な怒りというものは、活字にすれば、多くの人からの共感を得るものだ。

 記事はものつくりと似ている。
 企画ありきて企画に合わせて無理に取材したようなものは薄っぺらい。そんな記事はすぐに見破られて、読まれなくなる。が、丹念に取材してから書いた記事というものは、長く読まれ、その層も厚くなるというのが、信念を貫いてきた結果が現れ、私は、きちんとした仕事をしていけば、読者はついてきてくれると信じることができた。

 信念や理念なき出版物は長く、そして広く読者の支持を得る。
 それを多くの人が教えてくれ、影書房も、そうした代表格である。

 手紙をもらって、しみじみとした。