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ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

虐めから恨みへと変わる心境『送り火』

2022-09-07 07:28:16 | ミステリー小説から見えるもの
「いじめの実態」、それはいつもいじめを先導する奴、いつも虐められる奴、いつもヤジ側になるやつがおり、友達・先輩の付き合いも「ほど」があるが、一線を越えると周りも同調し最悪の事態になる。この小説では最後に被害者がこのヤジ側にいた奴を標的とすることだ。「側にいながら止めようとしない輩が一番憎い」の心理が噴出する。映画「プログラミング ヤングウーマン」を思い出させた。
『送り火』高橋弘希
「概要」春休み、東京から東北の山間の町に引っ越した、中学3年生の少年・歩。通うことになった中学校は、クラスの人数も少なく、翌年には統合される予定。クラスの中心で花札を使い物事を決める晃、いつも負けてみんなに飲み物を買ってくる稔。転校を繰り返してきた歩は、この小さな集団に自分はなじんでいる、と信じていた。夏休み、歩は晃から、河へ火を流す地元の習わしに誘われる。しかし、約束の場所にいたのは数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった――。少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――。
ー転校生としての日々の暮らしを学校、街、新たな家での感想を綴ったものだ。だが、どこにもである「悪ガキ」での付き合いから始まる不良「いじめ」への選択だ。


孤児を嵌める悪行と生き甲斐言葉『森は知っている』

2022-09-03 07:47:59 | ミステリー小説から見えるもの
産業スパイに孤児が教育され利用されていくミステリー小説だ。身寄りもなく、たとえ亡くなったとしても誰も知られず葬ることができるを利用した組織があった。鷹野は母親に兄弟を放置され生き残った孤児で、出自、名前も改竄され南の遠島で教育を受け組織に貢献する。何の為に、誰のために生きているのか疑問を抱き何度も自殺を試みたが、生きがいを得た言葉は「1日だけでいい。ただ1日だけ生きてみろ!そしてその日を生きられたなら、また1日だけ試してみるんだ。」世の中に不満を持った人間が多いがそれを上手く闇の組織が利用する、現実でもあるのだろうか
『森は知っている』吉田修一
「概要」自分以外の人間は誰も信じるな――子供の頃からそう言われ続けて育てられた。
しかし、その言葉には、まだ逃げ道がある。たった一人、自分だけは信じていいのだ。
南の島の集落で、知子ばあさんと暮らす高校生の鷹野一彦。東京からの転校生・詩織の噂話に興じるような、一見のどかな田舎の高校生活だが、その裏では、ある組織の諜報活動訓練を受けている。ある日、同じ訓練生で親友の柳勇次が、一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも? その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとして初任務につくが――。


街に伝わる伝説をどこまで信じるか『リカーシブル』

2022-08-19 07:37:17 | ミステリー小説から見えるもの
弟の予言、街に伝わる伝説が妙に不可思議で、それを今でも伝承する同級生が妙な動きをする。そこで姉は謎を解くために観察し始める。中でも幼い弟の予言が意外な展開を見せる結末は予想外で、ミステリーとしてはもう一捻り欲しいところだ。世の中にある「予言」の多くは「頻度も多く沢山の予言」をしており、たまにその一つが当たると「予言通りだ」という説がある。
『リカーシブル』米澤穂信
「概要」父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る―。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る
弟はこの母の故郷には来たことが無いのに過去の出来事を言い当て、万引き犯の逃げた先、万引き犯がナイフを持っていたなど言い当てる。さらに古い橋から太った教授が5年前に飛び降り死んだなどを言い当てるとまんざら嘘ではないと思い悩む。
姉ハルカは迷信・伝説話である「常井民話」からタマナヒメを社会の先生から教えてもらい探求し始める。これまでの話では全て犠牲となり自殺していた
ーそんな中、社会の先生が交通事故、それも当て逃げされた事で「タマナヒメ」等の伝説の深掘りはやめた方がいい、周りに注意した方が良いと警告される。
ーやがてハルカは同級生の威助な動きと言葉が異様だと感じ始めると、弟が誘拐される。その時母は冷静で、しばらく音信のなかった夫から離婚届が届く・・・・


外国人不当労働と労働者の立場『血の記憶』

2022-08-12 07:32:49 | ミステリー小説から見えるもの
@移民、難民、移住者、外国人に対する日本の法と法的処置は諸外国と比べて目劣りする、時代遅れが多いと聞くが、まさにこれから日本は少子化対策、老齢化対策で諸外国の人力を必要としなければならない最先端国であるはずが、外国人の受け入れに一番最低国家になっている。政治家はもっぱら自分達の地位と名誉、お金だけに気を配り、外国人に対する良い意味での法的規制、規制緩和など政策が見えず、配慮が欠けているとつくづく思う。欧米諸国と比べても「安心して暮らせる国」に程遠いのは、残念だが逆に預貯金を多くしている国民の安心への知恵だと思う。
『血の記憶』麻野涼
スーパーに人質をとった事件が発生、それとは別にある部屋から左手首から切断された死体が発見された。何も部品メーカーの工場とのつながりがあると見た警察は捜査を広げる。その工場で働いていた元役員で、死体を発見したのはタレントとなった若い女性、一枚の写真から両親を探している矢先に発見した。女性は身元が公開されるのを恐れていた、それは「自分が捨て子で両親が不明」という出自を隠したいからだった。
スーパーで人質をとった犯人像は義手の外国人、要求は社長と役員の手首を切断しろ、7年前に居なくなった身元を明らかにしてほしいとの要求だった。調査が進むと7年前の死体からタレントの父親であることが判明、母はフィリッピンであることもわかった。
ー部品メーカーの社長とその部下、そこにいた外国人労働者、そこの警備員が、如何に繋がっているのか操作は難航した。


姿が見えない犯罪者を探せ『姿なき殺人』

2022-07-29 11:07:25 | ミステリー小説から見えるもの
最後までまるで犯罪者の影すら見えない「姿なき犯罪者」を女性活動家と軍人が捜査、探索するミステリー小説だ。2つの殺人と2つの犯罪に対する犯罪者を特定する証拠も事実も発見出来ない中でネルは選挙活動を展開しながらの捜査に一途の共有するヒント「昔の恨み」を発見する。 人は恨まれても忘れる、また憎まれていることを知らない人もいるが、恨む人は決して忘れない、そんな中で本人にとっては人生を狂わされたことへの恨みが犯罪となった小説である。
『姿なき殺人』ギリアン・リンスコット
「概要」第一次世界大戦終結直後の1918年、英国。婦人参政権が初めて認められた議員選挙に、女性人権活動家のネル・ブレイが立候補した。だが、有力候補が謎の爆死を遂げ、ネルを含む他の候補にも次々と魔の手が迫る。血塗られた選挙戦の結末と事件の意外な真相とは?
ー有力な立候補者の一人が自宅の広場で花火による爆発事故で亡くなる。やがて妻が殺害したのはもう一人の立候補者だと主張。通常花火で人を殺傷する事にはならないが花火には爆発力を高める鉄製ものが入っていたことを志望した体内から発見したことで事件と確認された。
ーある早朝、夫を亡くした妻から借りた車が爆発。ネルの選挙事務所の一部とポスター等が損失する事件が起こるが、これも証拠不十分で犯人が捕まらず。
ーその前に選挙に立候補しているもう一方でも家のガラスが割られお酒が盗まれるという事件があったが、同じ結果となっていた。
ー軍隊からの暴走者を捕まえに来た軍人が何者かに殺され、カカシのように吊るされていた。 そこから犯人像が「元軍人」で行方不明となっている人物が浮上するが実像が全くない。それは戦争が始まった時に二人の若者が軍隊入りし一人は戦死、一人は行方不明となっており、その行方不明となっている元軍人を追跡しに来た・・・


ミステリー小説の多くは科学的裏付けされた実存する事件『シャーロックホームズの科学捜査を読む』

2022-07-19 16:48:44 | ミステリー小説から見えるもの
@人が犯した事件事故には必ず「痕跡」が残ると言う。シャーロック・ホームズの事件簿は様々で多様な証拠を見つけ出し科学的に解明していた。その背景には、実際の事件からの証拠を著名で専門家たちが学術的、科学的裏付け検証から見出していたと言う事実だった。だからコナン・ドイルのミステリー事件小説には実感が湧き人気となったのだ。
『シャーロックホームズの科学捜査を読む』E・J・ワグナー
「概要」シャーロック・ホームズ物語を縦糸に、19世紀に実際に起きた数多くの事件や実在の人物を取り上げながら、法医学や指紋、血痕、毒物、変装、弾道学などの科学捜査の魅力的な世界へと読者をいざなう! シャーロッキアン必携!
ー「シャーロック・ホームズ」は架空の人物、だが非常に現実的で科学的な思考からさまざまな考え方「答え」を提供している。(コナン・ドイルのミステリー小説の主人公)
ー「死体から読み取る」
    環境温度、死亡状況、死者の年齢と健康状態など兆候のある(検死解剖技術)
    昔は死体は裸でアルコール漬けにされ麻袋に入れられていた
    解剖は顎から恥骨へと切開、悪臭は排泄物や吐潟物による
    幼児の死産かどうかは肺を水に入れることで判明した
ー「伝説の動物(黒い犬)」
    不可解な事件に物的証拠は最低限必須だが、呪術や幽霊、狼男や吸血鬼的な迷信もある
    「バスカヴィル家の犬」のような生霊や霊魂などの迷信も恐れられた
    殺人的な狂犬病(犬、猫、ウサギなど)悪魔と魔女的存在(魔女除け)
ー「昆虫と死体」
    「まだらの紐」など蛇など珍しい虫や動物が絡む
    小バエなど微かに残る血と生体組織に群がる(腐敗した肉に卵を産みつける)
    ミツバチや甲虫、蛾、ダニなど昆虫や植物等の習性から感染病への関連
ー「毒物の検証」
    有毒物質(ヒ素など)による殺害は魅力的な女性の犯罪者が多かった
    「4つのサイン」保険金目当ての殺害に簡単に入手利用可能(水銀)だった
    毒を持った動物(蛇など爬虫類、両生類)ヒキガエルの毒が当時人気があった
    毒ニンジン、トリカブト、バイケイソウ、アヘンなど(一部治療薬の利用)
    肌に塗る、注射するなど、食品に混ぜるなどで殺害
    ヒ素検出法が改善されたが、医者が悪事で利用した(薬物中毒)
    21世紀までペンキや壁紙などにも利用されたヒ素(防腐剤として)
ー「別人になりきる」
    「ボヘミアの醜聞」変装技術で罠を仕掛け、事実関係を引き出す
ー「些細なことほど重要」
    「緋色の習作」手がかりとなる証拠を細かい点でも見逃さない
その他検証の為の証拠検証
    指紋による検証(米国NYでは1903年から採用)
    弾丸検証(弾道学:弾丸の運動・軌跡を検証)
    足跡検証
    身体の付着物
    筆跡鑑定(必ずどこかに癖がある・タイプライターでも検証できた)
    血液鑑定(1915年から採用、それまで人間の血液型は2つだった)
    迷信との関係・頭蓋骨鑑定(前頭葉が広いのは分析力があると言われた)



テロ集団潜入手口と仕掛け『ダイナマイトパーティーへの招待』

2022-07-08 07:40:32 | ミステリー小説から見えるもの
これは1885年にロンドン爆破テロ事件をもとにしたミステリー小説だ。イギリスとアイルランド系の犯罪事件はこの爆破事件を含め1987まで多発し国が混乱した時期だ。この小説では、工作員はスポーツ選手等に姿を変え侵入とある。テロ犯罪を事前に防止、犯罪者を事前に逮捕するすることは現実ほぼ不可能で、それより防御力を強めるしかないのが現実だ。因みに、米国大統領の車は重装車と言われるが防弾ガラスの厚みは13cm、ドアの厚みは20cm、車体の重さが9トンと言われる。(トヨタレクサスで2.2トン)
『ダイナマイトパーティへの招待』ピーター・ラビゼイ
「概要」ヴィクトリア朝ロンドンでは、駅や公邸を狙った同一組織の犯行と思われる爆弾テロ事件が続発していた。テロ事件を追うクリップ部長刑事は驚くべき情報を掴んだ。警察の中に内通者がいるらしい。しかもその人間が、クリップの長年の相棒サッカレイ巡査だというのだ。クリップはサッカレイの動向を探る一方、爆弾の専門家と偽ってテロ組織に潜入するが…奥深い謎とサスペンスフルな展開で贈る英国本格。
ークリップのテロ組織潜入は上手くいき、最初の仕事を敢行する。それはダイナマイトを盗む事っだった。入江に保管された相当数のダイナマイトの一部を小船に積みかえる任務で、敵の信頼を得た。だが、臆病者のテロ仲間の一人が殺されそれを指揮していたのが指導者の娘だった。指導者は時限爆弾の操作ミスで自爆を受け顔と下半身付随となり、その娘が代わりに指揮権を取っていた。
ー決行日が近づくと米国から2人の上層部が参加し、クリップに2つの爆薬を作り、一つを爆破実験を成功させた。そのことで更なる信頼を勝ち得た。だが、事前に捕まっていた同僚のサッカレイを助け出そうとしたことで敵と見破られる。
テロ攻撃の目標は小型潜水艦に爆薬を詰め込み皇太子が乗り込む大型船舶の下で爆破させる計画だった。だがクリップも捕まり下半身不随の男とサッカレイを潜水艦に乗せ木っ端微塵にすることに上層部は計画を変えた。手首を縛られ、気絶したままのサッカレイも船内に閉じ込められどうすることもできない状況になる。
ー如何に潜水艦から時間内に逃げ出すことができるか・・・起爆装置を搭載した潜水艦は2時間しか空気がなく、2時間以内に爆破する・・・・


盗聴器の恐ろしさ『天を映す早瀬』

2022-07-03 07:43:01 | ミステリー小説から見えるもの
親戚兄弟を敬う家族は身内の悪い癖(密輸)を何とか世間にバレる前に終息させようとするが逆に秘密結社に利用される。少年を誘拐した部屋、泥棒に入られたと思った部屋には盗聴器が仕掛けられ情報が筒抜けに。私立探偵リディアと相棒のビルとの「諺・名言・暗号台詞」謎解き捜査で解決していく。現代、要注意は窃盗、盗賊で単なるコソ泥だと安易に考えないで、部屋内に「盗聴器・盗撮機・電波増幅発進器など」の仕掛けがないかどうか、第2第3の災難に遭わないようにする為再点検が必要だ。
『天を映す早瀬』S・J・ローザン
「概要」ニューヨークの私立探偵リディアと相棒のビルは、仕事で香港を訪れていた。依頼されたのは、形見の宝石を故人の孫である少年に渡すだけの簡単な仕事。初めての海外に、リディアは興奮を隠せない。だが、たどり着いた少年の家は何者かに荒らされ、少年は誘拐されていた。銃も持てず、探偵免許も通用しない異国の地で、ふたりが巻きこまれた事件の結末は?
ー誘拐事件が発生したが居合わせた顧問弁護士の指示で警察には連絡せず、ひたすら電話を待つことにする。すると2か所から、翡翠と交換条件、もう一つは大金との交換を迫った電話が来る。リディアとビルは少年を子守りしていた人物と翡翠の持つ意味に絞り捜査する。
ースタントマンで且つ工場で働く男の溺死したいが見つかる。その工場では本国中国からの密輸作業をして米国へ輸出していた。その密輸している骨董品屋と工場関係、工場主は誘拐された夫婦であり、米国から異母兄弟である整形外科医師と骨董品屋との関わり合いがると浮かび上がり関係性を探り始める。
ーリディアの相棒ビルは工場にいた元々秘密結社の2人に捉えられる。それは夫婦の部屋に盗聴器が仕掛けられていて話が筒抜けとなっていたことが起因した。秘密結社の2人は少年とビルとの交換条件を持ち出し、リディアはビルの暗号言葉から必死に少年と子守りを探す。そこにはスタントマンとして修行した男の過去の学校と繋がりがあることが判明、警察と共に捜査をする。
疑問    
    何故少年との人質交換なのか、大金との駆け引き条件を出したのは誰なのか
    本物と偽物の翡翠がどんな意味を持っているのか
    異母兄弟が何故骨董品主と接点を持ったのか(異母兄弟は少年の父親と瓜二つ)


人生は「プレイバック」もまた楽しい『プレイバック』

2022-06-29 07:41:09 | ミステリー小説から見えるもの
街の権力者は法でも金と権力で何とでもなると思い上がる。だが、異国の街での自由気ままな発言と行動は許されない。よく政治社会に居る「思い上がり」は権力を振り翳し、街ぐるみで自分の思った通りに動かす。現実に「長いものには巻かれろ」の如く、悪事でも地位を持った輩の言われるままで従う人も多いのは寂しい限りだ。真実は虚意の世の中に潜んでいる、と言うことだ。
「優しくなれ、さすれば生きていると言う証が見つかる」そんなミステリー小説。
『プレイバック』レイモンド・チャンドラー
「概要」女の尾行を依頼されたマーロウは、ロサンジェルス駅に着いた列車の中にその女の姿を見つけた。だが、駅構内で派手な服装の男と言葉を交すや女の態度は一変した。明らかに女は脅迫されているらしい。男は影のように女について回った。そして二人を追うマーロウを待つ一つの死とは。多くの謎を秘めた問題の遺作。
ー神秘性を持った一人の女性、それを追うマーロウ。だが何故その女性を追い、たどり着く先を雇われ弁護士に報告しなければならないのか最後まで理解できなかった。
ー街で権力を持った男の息子が不意に死んだのはこの女性(妻)の所為であり、息子を殺害したという判決には成らず納得がいかなかった。だが、捨てる神あれば拾うか意味あるの如く、違った街での有力者に恋を抱く。
マーロウの言葉「しっかりしていなかったら、生きていられない。優しくなれなかったら、生きている資格がない」と仕事と愛に生きる探偵を指した。


実話を検証するミステリー「ジュリア・ウオレス殺し」『顔のない男』

2022-06-28 07:40:41 | ミステリー小説から見えるもの
ミステリー殺人事件を検証するこの小説(ジュリア・ウオレス殺し)はノンフィクション事件であり、要は「犯人は夫で、本当に殺害したのか」という確たるアリバイが無いまま結審された裁判である。もし夫が殺害したのなら、その殺害の目的(金銭でも、争いでもない)に全く説明がなく問われ続けた事だった。 神のみぞ知る真実は本人の病死で葬られてしまった事件だ。
『顔のない男』ドロシー・セイヤーズ
「概要」英国黄金時代を担ったミステリー作家の女王セイヤーズ。本書は特異な動機の究明が余韻を残す表題作、不思議な遺言の謎を解く「因業じじいの遺言」、幻想味豊かな「歩く塔」など、才気横溢のピーター卿譚七編に、セイヤーズが現実の殺人事件を推理する興味津々の犯罪実話と、探偵小説論の礎をなす歴史的名評論を併載ーピーター卿の事件簿
ー顔のない男
    顔が潰されたような無惨な姿で見つかった死体。自画像を依頼した本人が嫌ったことでそれを書いた画家に容疑が動く
ー囚業じじいの遺言
    叔父の遺言が2通あり、後の遺言は館の何処かに隠されており、探す。最初の遺言からクロスワード的謎を解く事になる。
ージョーカーの使い道
    宝石を盗んだ男とのトランプの賭け。勝負に勝つことで盗まれた宝石を取り返す条件でトランプゲームを開始。八百長を見抜くことで勝を得る。
ー趣味の問題
    本物と偽物の2人のピーターが登場。いかに偽物を炙り出すか、ワインの評価で挑戦。
ー証拠に歯向かって
    自宅の車の中で自殺か。他人に見せかけるために歯の治療までさせ他犯罪。
ー歩く塔
    チェスの相手と幻想を見る。待ち侘びた友人は殺害されていた。
ジュリア・ウオレス殺し (アリバイ証言の裏付)
    若い2人暮らしの夫婦で妻が殺害される。18年間子供もいない生活で平凡な保険セールスの夫と暮らしていた。周りの評判も悪くなく中の良い夫婦だったとの証言が多く、犯人は夫なのかそれとも外部の人間だったのか意外性を世間に醸し出した。夫のアリバイを検証しても、確たる証拠は見つからず、ドアの間抜き、外出した時間帯と殺害のあった時間には疑問が残ったがそれを裏付けるアリバイもなく裁判となった。陪審員の結審は有罪となったが、最高裁で無罪と判決を言い渡され無罪放免となる。その2年後夫は孤独とがんで亡くなった。夫婦の間での争論は無く、金目当ての犯罪でもなく、外部者の犯罪も証拠がなく、裁判官は一瞬の狂気であったという説も残した。
ー探偵小説論
    探偵小説等が盛んになり始めたのは1841年~1845年、特に天才エドガー・アラン・ポオである。純探偵から純恐怖に始まる謎物語~ミステリー~恐怖。
    1927年ドイツの作家リオン・フォイヒトバンガーによるドイツ、英国、フランスの国民性を比較
英国人は本を読むときでも物的な正確さを好む(指紋や血痕、日付、時刻、場所などを重視)
・ドイツ人やフランス人はそれには興味を示さず、むしろ心的な真実を求める
    (人物描写を大胆に簡略化する英国に比べ詳細に描く)


管轄、警察の域を超えるまでに発展する事件『ガン・ストリート・ガール』

2022-06-20 07:56:30 | ミステリー小説から見えるもの
事件は富豪家族の不可解な殺害で、大胆に素早く動くダフィー刑事らが捜査する。事件発覚の原因は「主犯格3人の分配金問題で仲間割れ」、一人の男が兵器密約計画を立てた男の両親、その男、その恋人、友人を殺害、さらに兵器製造工場のもう一人の主犯格管理専任者へと証拠隠滅を図り殺害計画。事件は国家機密と警察の域を超えるまでに発展する。「仲間割れ」ほど後味が悪いものは無い。共同経営など企業でもそうだが、些細なことで分裂始めると派閥になり、会社が倒産するような事態にもなりかねない。そこにはこの小説にある「欲に絡んだ分配」だ。 人は貪欲になると必ず問題を起こすのだ。
『ガン・ストリート・ガール』エイドリアン・マッキンティ
「概要」富豪の夫妻が射殺される事件が発生した。当初は家庭内の争いによる単純な事件かと思われたが、容疑者と目されていた息子が崖下で死体となって発見される。現場には遺書も残されていたが、彼の過去に不審な点を感じたショーン・ダフィ警部補は、新米の部下と真相を追う。だが、事件の関係者がまたも自殺と思しき死を遂げ……。混迷深まる激動の時代の北アイルランドを舞台にしたハードボイルド警察小説シリーズ、第四弾にして最高潮。
ー息子のガールフレンドも自殺と見せかけた他殺死体で見つかる。そこから話は昔の学生たちが仕掛けた大麻パーティーである大臣の娘が大量摂取したとして死亡。その家の息子が逮捕された。その時この息子ともう一人がいた。
ー事件があったその現場からもう一人の人相を確認しようと捜査の範囲を広げていく。さらに広がり米国大使館内に滞在している男が浮上、その先にはミサイルシステムの盗難事件が発生する。
イギリス国家を揺るがす武器兵器の密約、米国の軍部の中佐が資金をバックアップ、中近東への売却を後押しする計画だった。


思い込みから始まる「嫉妬と誤解」『ボディーブロー』

2022-06-07 07:40:41 | ミステリー小説から見えるもの
「嫉妬と誤解」富裕家族の主人の浮気心の行動が周りを嫉妬させ、誤解させ、その終結が嫉妬した人物が殺人事件を起こすミステリー小説だ。ただ、登場人物が多く、余分な事まで細かすぎてミステリー内容の主要分から外れた内容が長いのは少々残念だ。「嫉妬と誤解」は現代社会でも多い。あまり聞き耳を持たず、思い込みで行動する人が増えた所為か、特にビジネスでは仲間割れまで発展する場面も多い。「後悔先に立たず」がよくあるケースだ。
『ボディーブロー』マーク・ストレンジ
「概要」元ボクサーのジョーはヴァンクーヴァーの高級ホテルで警備責任者を務めている。かつて経営者のレオを何者かの襲撃から護ったのがきっかけだった。ある夜、ホテルでレオの愛人だったメイドが殺される事件が起きる。ジョーは犯人探しを命じられるが、鍵となるレオの過去には濃密な死の香りが満ちていた……。
ーホテル経営者レオは従業員を囲い、浮気もする。家族も振り回され遂にはレオの妻を含めた殺人事件に発展する。家族、秘書、運転手などが複雑に絡んだ事件は、それぞれに悪巧みを考えていた。
ーそのレオの秘書的、身の回りをお世話するようになった女性が事件にあう。女性はレオの子を妊娠しており互いに結婚を意識した付き合いを始めたろ事だった。
ー「離婚、調停、敵意、怨恨」身勝手に生きてきた結果の報い
ー「物事は2つまでは偶然だが、3つあれば陰謀となる」


人間の極限での行動『地上最後の刑事』

2022-05-30 07:45:29 | ミステリー小説から見えるもの
人間は窮地に追い込まれた時にどんな行動をするのだろうか。この小説では地球が半年後に小惑星との衝突で人類が滅びるを想定したミステリーだ。社会秩序が乱れ崩壊していく中で今まで利用してきたものが使えない不便さから希望を失う。「限られた人生の中で精一杯生きること、生きる意味を見出すことの大切さ」だというが、人間の行動は「極限まで」読めない。現実、スマホ、パソコンなど使えない状況だけでもオタオタする状況は想像できるが、利用できなくなった場合、人の行動は20年前くらい前の生活に戻るのだろうか。はたまた人間の強奪する戦争が勃発するか。ウクライナ侵略戦争が世界各国を巻き込む大戦まで拡大したら人々はどんな選択をするだろうか
『地上最後の刑事』ベン・ウインタース
「概要」ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに……なぜ捜査をつづけるのか? そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事
ー生命保険の社員ピーター・ゼルの自殺はパレスには他殺だと感じ捜査を開始する。ところがピーターは麻薬中毒症でその運び屋だった。薬物中毒で自殺と見せかける仕掛け屋が姉の夫だと捜査でわかる。姉の夫は保険金詐欺を企て周りを利用し計画した。その結果4人が亡くなったが、最後まで求めたものは分からなかった。
半年後の小惑星衝突で悟ることはしきを決められたものたちの物語となる
ー半年後の世界に向け、大手のチェーン店等が倒産、電波が利用できないことで携帯、パソコンの利用も不可となり、市場が混乱、暴動が起き、社会全体の秩序が乱れ崩壊へ向かう。


「子供の孤独」に悩みを相談する場所がない『ファーストラブ』

2022-05-24 08:17:57 | ミステリー小説から見えるもの
子供虐待は現代の大きな社会課題であり、親の問題でもある。経済成長が停滞し親の仕事(ダブルインカムが当たり前)社会システムになったのは政府・国の所為かも知れない親が忙しく、団欒する家族も少なくなった現代、親子間での会話はもっぱらネット経由というのも聞くが子供の「孤独」は既に始まっており学校はさらに貴重な「場」となっている。子供の悩みはどこで解消できるのか、日本は学校に「相談室」的な存在がないことが子供の自殺率も多い原因に繋がっていると確信する。
『ファーストラブ』島本理性
「概要」川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。
ー環菜の家庭、父親は美術講師、画家で一般的な家庭として見られていた。
環菜と父親は血のつながりがない親子関係で、父親の躾、命令は絶対だった。裏切りは戸籍から抜くとも脅迫を受けていた
環菜の母親は父親の虐待に遭っており、環菜と同じように自傷行為をしていたことで娘にもその癖があると思い、被害妄想と虚言癖と決めつけていた
環菜は小学生の頃から親からの虐待を受け、自傷行為することによって父親のモデルを避けることをしていた
ー「精神的な不安定さって年齢を重ねても残るっていうか、それは家庭環境が大きいものですよね。大人なんだから親は関係ないって、どこまで言い切れて、どこまで社会が認めて考慮すべきものなのかって」
ー「愛情とは、尊重と尊敬と信頼だと思っている」


人間の欲望と戦争、どちらも止まる事を知らない『グリーン・サークル事件』

2022-05-18 07:38:35 | ミステリー小説から見えるもの
宗教思想が違うことで国が分裂し、その一部がゲリラ化する世界はこの中東諸国には昔からある。現在でも小競り合いは続いており止むことがない。武器商人にとってみれば絶好の地であり、いつでも戦争のトリガーを引き出せる場なのだ。だがよく考えてみるとそれを背後で牛耳っているのが大国であり、軍需産業を拡大している国ということになる。人間の欲望とはこの「戦争」において安定経済を推し進める一つの道だが今後、特に戦争を知らない世代での戦争は悲しいかな再び起きるのは間違いない。考えてみると過去戦争が起こると大国の経済が良くなるのは、その理由だ。
『グリーン・サークル事件』エリック・アンブラー
「概要」実業家マイクル・ハウエルは、不幸な偶然の結果、ゲリラ組織“パレスチナ行動軍”の指導者サラフ・ガレドに、組織への全面的な協力を強要される。みずからと会社を窮地から救うため、危険な賭けに出るハウエル―。当事者自身が詳らかにする、中東世界を震撼させた“グリーン・サークル事件”の真実とは。
経営者でもあり技師でもあるマイクルは事業継続の為、新たな事業企画をシリア政府に提案、それはタイル事業、電池事業、だが、その電池事業が製品不良の多さから行き詰まり(グリーン・サークル事件)蓄電池事業に展開しようとした矢先、その工業で雇われた人物が異質な物品を発注していたことが分かり調査、すると、工業内で爆薬の起爆装置を作り始めていたのを発見。ところがその現場で拳銃を持った警備に捕まりゲリラ組織ガレドに脅され念書も書かされ仕方なく従うことになる
ー爆薬は既に入試しており、電波で起爆する装置も出来上がるとそれをマイクルが保有する貨物船に乗せてある地域に運ぶ事を強要される。その前になんとか情報をイスラエルがわに知らせる方法を探し出し抑止しようとするが・・・・4人の武装したゲリラは船上 オルゴールに仕掛けた起爆装置を持ち、別の船がロケットランチャー爆薬で走行していた。
ー中東(イスラエルでの入国)では西側諸国との行き交いもありパスポートを重複しても発行している